• 更新日 : 2021年6月9日

租税公課とは何?必要経費で処理できる税金と注意点をわかりやすく解説!

租税公課とは何?必要経費で処理できる税金と注意点をわかりやすく解説!

租税公課」とは国や地方に納める税金(租税)と公共団体へ納める会費や罰金など(公課)を合わせた名前です。租税公課には、確定申告の際に経費算入が認められるものと、経費とは認められないものがあり、この経費算入が可能か否かということは直接損益に影響する大切な事柄です。
事業の利益に対して課税されますので、節税の側面からは経費が多ければ収益が減って納税額を抑えられます。しかし、経費に含める事ができない租税公課も多数あります。そこで、確定申告の際に経費算入できるものとできないものとを具体的に説明します。

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租税公課とは「租税」と「公課」を合わせた勘定科目

「租税公課」とは「公租公課」ともいわれ、国や地方に納める税金(租税)と、公共団体へ納める会費や罰金など(公課)を合わせた勘定科目です。租税公課はすべてが経費として認められるわけではありません

租税とは

租税とは、国や地方公共団体に納付する税金の総称です。

租税の対象になるものの一例

  • 不動産取得税
  • 固定資産税
  • 自動車税
  • 軽自動車税
  • 登録免許税
  • 税込み方式の消費税
  • 印紙税
  • 事業税
  • 事業所税
  • 都市計画税
  • 地価税
  • 公課とは

    公課とは、租税以外に国や地方公共団体が徴収する手数料、罰金等のほか、その他公共団体へ納める会費等を含めた総称です。

    公課の対象になるものの一例

  • 国や地方公共団体が発行する各種証明書の発行費用
  • 行政サービスの手数料
  • 延滞税、不納付加算税、過怠税などの罰金
  • 交通反則金
  • 商工会、同業者団体などの会費
  • 損金算入できる租税公課の対象

    確定申告の際に経費に計上できる租税公課は、事業を運営する上で必要なものが対象です。
    たとえば事業税や固定資産税、自動車税などがあります。個人事業主の場合は、事務所や車などを公私兼用で使用している場合もありますが、その場合は、事業での利用と個人での利用とで租税公課全体を按分する必要が出てきます。

    たとえば自動車税を例に挙げますと、一台の車を仕事と私用とで使う場合、仕事で利用した分のみ経費として計上することができます。仕事で利用した割合の求め方としては、例えば月間の走行距離を基準として公私の比率を割り出す方法などがあります。また事業に係わる店舗や倉庫などの固定資産税も同じように、例えば全体の延べ床面積を事業と私用に按分する方法などがあります。

    事業税のように事業年度に損金算入する租税公課

    たとえば事業税のように、申告した事業年度に損金算入できる租税公課があります。税務申告により納付する税額を確定し、納付する方法を「申告納税」と呼びます。

    「申告納税」の租税公課の具体例としては

  • 事業税
  • 事業所税
  • 酒税
  • 印紙税
  •  などがあります。

    「申告納税方式」の租税公課の場合、損金算入時期は「申告した日が属する事業年度」となります。

    固定資産税のように賦課決定のあった事業年度に損金算入する租税公課

    租税公課の中には、国や地方公共団体が独自にその税額を決定し、「あなたはこの金額の税金を払ってください」と通知してくるものがあります。これを「賦課決定」と呼びます。

    「賦課決定」される租税公課の具体例としては

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 不動産取得税
  • 自動車税
  • 軽自動車税
  •  などがあります。

    「賦課決定方式」の租税公課の場合、損金算入時期は「賦課決定があった日が属する事業年度」となります。

    軽油取引税のように特別徴収される租税公課

    たとえば軽油引取税のように、国や地方公共団体が税金を負担する人(納税者)から直接税金を徴収するのではなく、事業者を経由して間接的に税金を徴収する方法があります。これを「特別徴収方式」と呼びます。

    「特別徴収」される租税公課の具体例としては

  • 軽油引取税
  • ゴルフ場利用税
  • 入湯税
  •  などがあります。

    「特別徴収方式」の租税公課の場合、損金算入時期は「納入申告書を提出した事業年度」となります。

    確定申告で租税公課なのに経費にできないもの

    確定申告で租税公課すべてが経費計上できるわけではありません。次に挙げるものは「経費に含めることができない」主な租税公課です。原則的に事業を運営する為にかかる支出ではなく、事業の存在そのものにかかる租税公課や事業主の不注意により発生した課金がそれに当てはまります。

    法人税や住民税のように税引き前利益から支払われるもの

    法人・個人を問わず、会社の儲け、いわゆる「所得」に対して法人税住民税などが課税されます。しかしこれらの税金は経費に含めることができません

    法人税や住民税などを経費にできない理由として、「利益処分説」と「所得波動説」の2つが挙げられます。

    1. 利益処分説
    2. 法人税や住民税は「税引き前の所得」に対して課税されるものであり、これら税金は「所得の利益処分であって経費ではない」とする考え方が「利益処分説」です。

    3. 所得波動説
    4. 法人税や住民税を経費としてしまうと「税引き前の所得」が税金の分だけ減少し、減少した「税引き前の所得」に対してまた法人税等の再計算をしなければなりません。

      これを繰り返していくうちに「税引き前の所得」はどんどん減少し、法人税はどんどん増加してしまいます。そのような状態は税務政策上好ましくないとする考え方が「所得波動説」です。

    以上の理由にもとづき、住民税や法人税などの税金は税法上「経費としては認められない租税公課」となっています。

    損金不算入として経費にできない租税公課の具体例には

  • 法人税、地方法人税
  • 法人都道府県民税
  • 法人市町村民税
  • などがあります。

    反則金・延滞金のように罰則に該当するもの

    本来期限内に支払うべき税金を延滞したり手続きが遅滞したりした場合、ペナルティとして延滞税や不納付加算税などを支払わなければなりません。

    延滞金等は租税公課ではありますが罰則的な税負担です。これを経費として認めてしまうと懲罰としての意味合いが薄れてしまいますので、税法ではこれを経費として認めてはいません

    同じような理由で「交通反則金」も経費としては認められず「損金不算入」となります。

    損金不算入の租税公課の具体例として

  • 延滞税(国)
  • 延滞金(地方公共団体)
  • 不納付加算税
  • 過怠税
  • 交通反則金
  •  などが挙げられます。

    法人税額から控除する所得税など

    預貯金の利息や株式の配当金から「所得税」が控除されていることがあります。

    利息や配当金といった利益のもと(源泉)から所得税が直接控除されることを「源泉徴収」と呼び、「源泉徴収」された所得税のことを「源泉所得税」と呼びます。

    源泉所得税は租税公課ではありますが「前払いした税金」です。したがって納付する税金から控除することはできますが、経費とすることは認められません

    損金不算入の租税公課の具体例には、

  • 利息にかかる源泉所得税
  • 配当金にかかる源泉所得税
  •  などがあります。

    注意が必要な租税公課の仕訳例

    以上のように、租税公課には経費として認められるもの、認められないものがあります。
    税務申告は会計に基づいて作成しますので経理処理をする際には特に注意が必要です。

    ここで具体的な事例を挙げ、その仕訳を例示してみましょう。

    消費税

    消費税の申告では「税抜経理方式」と「税込経理方式」の2通りの計算方法を選択することができます。

    <税抜経理方式の場合>

    「税抜経理方式」は

  • 決算書試算表の利益・経費が消費税抜きで表記されるため消費税の影響を受けない「正確な期間損益」を見ることができる。
  • 税抜きした消費税の差額から納付する税額を簡単に計算することができる。
  • などのメリットがありますが

  • 仕訳を「税抜金額」と「消費税額」の2つに分けなければならず処理が煩雑になる。
  • といった、デメリットもあります。

    税抜経理方式の場合、もらった消費税を「仮受消費税(負債科目)」、支払った消費税を「仮払消費税(資産科目)」として処理しますので、そもそも経費にはなりません。

    (例)得意先に商品を11,000円(税込金額)で現金販売した。

    借方貸方
    現金   11,000円売上高10,000円
    仮受消費税1,000円

    <税込経理方式の場合>

    「税込経理方式」は

  • 仕訳を「税込金額」で計上すればよいので処理が簡単になる。
  • といったメリットがありますが

  • 決算書や試算表を見ただけでは納付する消費税額を確認できない。
  • 収益や費用が消費税額を含むため「正確な期間損益」を読み取ることが難しい。
  • といったデメリットがあります。

    消費税は「申告納税方式」であり、税込経理方式の場合、申告納税をした事業年度の租税公課として損金に算入できます

    (例)仕入先から商品8,800円を掛仕入した。

    借方貸方
    仕入高8,800円買掛金8,800円

    固定資産税

    固定資産税は「賦課決定方式」で課税される税金で、賦課決定された日の属する事業年度において租税公課として損金に算入できます

    (例)市役所から固定資産税(第1期分)80,000円が普通預金口座から引き落としされた。

    借方貸方
    租税公課80,000円普通預金80,000円

    印紙税

    印紙税も租税公課として損金に算入することができます

    (例)法務局で収入印紙20,000円を現金購入した。

    借方貸方
    租税公課20,000円現金  20,000円

    所得税・住民税

    所得税や住民税は「所得に対して課税される税金」です。課税対象が所得である税金は租税公課として損金に算入することはできません

    (例)確定申告による法人税500,000円を銀行で現金納付した。

    借方貸方
    法人税等500,000円現金  500,000円

    確定申告で未払い租税公課の処理

    税金の納付が翌年になった場合、未払いの租税公課に関する確定申告はどのようにすればよいのでしょうか。
    その年分の各種所得の金額の計算上必要経費に算入する租税は、原則として、その年12月31日までに申告や賦課決定等により納付すべきことが具体的に確定したものとされています。
    ただし、固定資産税、不動産取得税、自動車税などの賦課課税方式による租税のうち納期が分割して定められているものについては、各納期の税額をそれぞれの納期の開始の日の属する年分又は実際に納付した日の属する年分の必要経費とすることもできます
    例えば、固定資産税の第4期分の税額は、原則として賦課決定を受けた年分の必要経費になりますが、その翌年2月が納期となっていますので、納期の開始の日である翌年分の必要経費にすることもできますし、又は実際に納付したその後の年分の必要経費とすることもできます。

    借方貸方
    租税公課50,000円未払金  50,000円

    賦課決定を受けた年分の必要経費とする場合にはその金額を租税公課(借方)として計上し、同時に未払金(貸方)にも計上することになります。

    まとめ

    以上のように、租税公課には経費にすることができるものとできないものがあることがおわかりいただけたかと思います。租税公課という勘定科目が示すとおり、「税金」や「賦課金」などを総称したものではありますが、内容に応じて税法上の取扱いは大きく異なります。費用として考えていた租税公課が実は損金不算入であり、結果として多額の税金を納めなければならない…といった事態も想定されます。
    何が経費になる租税公課なのか?を正確に把握しておきましょう。

    【参考】
    国税庁|損金の額に算入される租税公課等の範囲と損金算入時期

    よくある質問

    租税公課とは?

    国や地方に納める税金(租税)と、公共団体へ納める会費や罰金など(公課)を合わせた勘定科目で、「公租公課」とも呼ばれます。詳しくはこちらをご覧ください。

    損金算入できる租税公課の対象は?

    確定申告の際に経費に計上できる租税公課は、事業を運営する上で必要なもののみです。詳しくはこちらをご覧ください。

    確定申告で租税公課なのに経費にできないものは?

    事業の存在そのものにかかる租税公課や事業主の不注意により発生した課金は経費に含めることができません。詳しくはこちらをご覧ください。


    ※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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