- 更新日 : 2025年8月29日
在宅勤務の健康管理どうしてる?運動不足やメンタルヘルス対策例
テレワークやリモートワークなどの在宅勤務は、通勤時間が無いというメリットもありますが、従業員の運動不足やメンタルヘルスの問題が起こりやすい働き方です。この状況に対して、企業と従業員が協力して健康管理に取り組むことが、生産性を保ち、安心して働きつづけるために求められます。
この記事では、在宅勤務で生じがちな健康トラブルから、企業ができる支援策、そして従業員自身が今日から実践できるセルフケアまで、詳しい対策を解説します。
目次
在宅勤務で起こりがちな健康問題とは?
在宅勤務では、運動不足や孤独感などから、心身に不調をきたしやすいことが大きな課題です。特に、肩こり・腰痛といった身体的な症状や、コミュニケーション不足によるメンタルヘルスの問題は多くの従業員に共通して見られます。こうしたリスクを企業・個人双方共に理解していきましょう。
肩こり・腰痛・目の疲れ…身体的な不調
在宅勤務で最もよく聞かれるのが、肩こりや腰痛といった身体の不調ではないでしょうか。これらの多くは、長時間同じ姿勢でいることや、自宅の作業環境が影響しています。
オフィスのように、高さが調節された椅子やデスクがそろっている環境は少なく、ダイニングテーブルやローテーブルで作業することもめずらしくありません。
体に合わない環境での長時間のデスクワークは、筋肉の緊張や血行不良を招き、肩こりや腰痛の原因となります。また、通勤や社内での移動といった日常的な活動がなくなるため、全体の身体活動量が減少しがちです。
孤独感やストレス…メンタルヘルスの問題
身体的な不調と同じくらい、あるいはそれ以上に気をつけたいのが、心の健康問題です。在宅勤務は、知らず知らずのうちに精神的な負担を増大させることがあります。
最大の要因は、コミュニケーション不足です。オフィスにいれば、同僚との何気ない雑談や、困ったときの気軽な相談ができます。
しかし、在宅勤務ではこうした機会が激減し、孤独感や孤立感を抱えやすくなります。また、仕事の成果が見えにくかったり、正当な評価をされているか不安になったりすることも、ストレスの一因でしょう。
仕事とプライベートの境界があいまいになり、常に仕事のことを考えてしまう「オーバーワーク」も、心身の疲労を蓄積させます。
男女での健康課題の違い
在宅勤務では男女とも運動量が減る傾向があり、それによる血行不良から、冷えやむくみ、ホルモンバランスの乱れなど、身体の不調を感じる人も少なくありません。
男性の場合、通勤がなくなることによって運動量の低下がおきやすく、それにともなう体重増加や生活習慣病のリスクが課題となることがあります。
女性の場合は、在宅勤務中も家事や育児の負担を担っているケースがあり、仕事との両立による精神的ストレスを感じやすいといわれています。
こうした傾向を踏まえることで、よりきめ細やかな健康管理の支援策を検討しやすくなるでしょう。
企業に求められる在宅勤務の健康管理
在宅勤務でも従業員の健康管理は企業の義務であり、企業が事業を継続し、成長していくために欠かせません。法律で定められた安全配慮義務を果たしつつ、厚生労働省のガイドラインや健康経営の視点を取り入れて、企業の信頼性と競争力を高めるようにしましょう。
ここでは、企業が従業員の健康管理に取り組むべき理由を解説します。
法律で定められた企業の「安全配慮義務」
企業には、従業員が安全で健康に働けるように配慮する「安全配慮義務」があります。これは労働契約法第5条で定められており、働く場所がオフィスであろうと自宅であろうと変わりません。
在宅勤務においても、企業は従業員の労働環境や心身の健康状態に気を配る必要があります。たとえば、長時間労働による健康障害や、メンタルヘルスの不調を放置することは、この安全配慮義務に反すると判断される場合があります。
もし従業員の健康問題が業務に起因するものだと認められれば、企業が損害賠償責任を問われるケースも考えられます。在宅勤務は従業員の自己管理に任せる部分が大きいものの、企業としての責任がなくなるわけではない、という点をはっきりと認識しておくことが大切です。
厚生労働省のガイドライン
国も、在宅勤務における健康管理の重要性を認識しており、厚生労働省が「テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン」を公表しています。このガイドラインは、企業がテレワークを導入・運用する際のルールや配慮すべき点を示した手引きです。
とくに健康確保の措置については、以下のような内容が盛り込まれています。
- 長時間労働の防止
- テレワーク中の労働時間の適切な把握
- 従業員の健康状態の確認(オンラインでの面談など)
- 健康相談ができる体制の整備
- メンタルヘルスケアの実施
- 作業環境の整備に関する支援
これらのガイドラインに沿って対策を進めることは、企業の安全配慮義務を果たすうえでも役立ちます。
出典:テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン|厚生労働省
健康経営の視点
従業員の健康管理に投資することは、企業の生産性や競争力を高める「健康経営」という考え方にもつながります。従業員が心身ともに健康であれば、仕事への集中力や意欲が高まり、パフォーマンスの向上が期待できます。
逆に、健康問題で従業員が休職や離職に至れば、企業にとっては大きな損失です。新たな人材の採用や教育にはコストがかかりますし、残された従業員の負担も増えてしまいます。
従業員の健康を守ることは、人材の定着率を高め、企業の持続的な成長を支えることにもなるでしょう。健康管理への取り組みを積極的にアピールすることは、企業のイメージアップや、新しい人材を確保するうえでも良い影響をもたらします。
【企業編】在宅勤務の健康管理、何から始める?
企業として在宅勤務における従業員の健康を守るために、労働時間の把握やコミュニケーションの仕組みづくり、相談窓口の整備、運動不足解消の支援など、段階的に実行できる施策を積み重ねましょう。
特別な機材や多額の費用をかけなくても、すぐに始められることはたくさんあります。ここでは、企業が取り組むべき健康管理の支援策を紹介します。
労働時間をきちんと把握する
まずは、従業員の労働時間を正確に把握することから始めましょう。在宅勤務は、オフィス勤務と比べて働きぶりが見えにくく、従業員自身もつい長時間働きすぎてしまうことがあります。
勤怠管理システムを導入し、始業・終業時刻を客観的に記録することが基本です。PCのログオン・ログオフ時間と実際の申告時間に大きな乖離(かいり)がないかを確認するのも一つの方法です。
また、時間外労働や休日労働を原則禁止とし、必要な場合は必ず事前の申請・承認をルール化することで、だらだらとした残業を防ぎます。
一定の残業時間を超えた従業員には、上司や人事から声をかけるといった仕組みも効果的です。
コミュニケーションを増やす仕組みづくり
在宅勤務における孤独感や不安を和らげるには、意識的にコミュニケーションの機会を設けることが大切です。業務連絡だけでなく、雑談や相談がしやすい雰囲気をつくる工夫をしましょう。
たとえば、毎日決まった時間にチームで短いオンライン朝礼をおこなう、業務とは関係のない雑談専用のチャットルームを用意するといった方法があります。
1on1ミーティングを定期的におこない、上司が部下の体調や困りごとをヒアリングする機会を設けるのもよいでしょう。こうした小さな積み重ねが、チームの一体感を醸成し、従業員の精神的な安定につながります。
健康について相談できる窓口をつくる
従業員が心身の不調を感じたときに、一人で抱え込まずに相談できる場所を用意しておくことは、問題を深刻化させないためにとても大切です。
社内に相談窓口を設置し、プライバシーに配慮した形で人事労務担当者や保健師が対応できる体制を整えます。また、産業医とのオンライン面談を設定したり、外部のEAP(従業員支援プログラム)サービスを契約したりするのも有効な手段です。
EAPサービスでは、カウンセラーによるメンタルヘルスの相談だけでなく、健康や法律、家計に関する相談まで幅広く対応してくれるものもあります。
大切なのは、こうした窓口があることを全従業員に周知し、誰もが気軽に利用できる雰囲気をつくることです。
運動不足解消や健康意識を高める支援
従業員の運動不足解消や健康リテラシーの向上を後押しする支援も、企業ができることの一つです。従業員が健康づくりを「自分ごと」としてとらえられるような、楽しく参加できる企画がよいでしょう。
たとえば、以下のような取り組みが考えられます。
- オンラインで参加できるヨガやストレッチ教室の開催
- ウェアラブル端末の購入費用の一部補助
- ウォーキングイベントの開催(チーム対抗で歩数を競うなど)
- 健康に関するコラムや動画の定期的な配信
- 健康的な食事のとり方に関するセミナーの実施
すべてを一度におこなうのは難しくても、自社の状況に合わせてできそうなことから始めてみてはいかがでしょうか。
【個人編】今日からできる!在宅勤務のセルフケア
在宅勤務を無理なく続けるには、運動不足の解消やオンとオフの切り替え、正しい作業環境の整備、そして食生活の改善といった日常の小さな工夫が大切です。快適で健康的な働き方をするためにも主体的にセルフケアを行いましょう。ここでは、日々の仕事の中で簡単に取り入れられる健康管理の工夫を紹介します。
意識して体を動かす習慣づくり
在宅勤務で最も課題となる運動不足は、意識的な習慣づくりで解消しましょう。通勤がなくなった時間を、軽い運動にあてるのがおすすめです。
たとえば、始業前に15分ほど近所を散歩したり、ラジオ体操やストレッチをしたりするだけでも、体を目覚めさせ、血行を促進する効果があります。
昼休みには、食事を早めに済ませてウォーキングに出るのもよい気分転換になるでしょう。
仕事中も、1時間に1回は立ち上がって背伸びをしたり、少し歩き回ったりするだけでも違います。
昇降式のデスクを導入して、立つ時間と座る時間を交互につくるのも、足腰への負担軽減や運動不足解消に効果的です。
仕事とプライベートの境界線をつくる
自宅が職場になると、仕事と生活の区別があいまいになりがちです。オンとオフの切り替えをはっきりさせる工夫を取り入れ、心身をしっかり休ませる時間をつくりましょう。
まず、仕事専用のスペースを決めることをおすすめします。個室がなくても、部屋の隅にデスクを置き、パーテーションで区切るだけでも「仕事モード」に入りやすくなります。
また、始業時と終業時に「儀式」を取り入れるのも一つの手です。たとえば、仕事の前に部屋着から少しきちんとした服に着替える、仕事が終わったらPCの電源を完全にオフにしてデスク周りを片付ける、といった簡単なことでかまいません。
こうした行動が、気持ちのスイッチを切り替えるきっかけになります。
正しい姿勢と作業環境
肩こりや腰痛を防ぐためには、作業環境を見直すことが近道です。体に負担の少ない姿勢を保てるように、身の回りの環境を整えましょう。
椅子に深く腰かけ、足の裏全体が床につくのが基本の姿勢です。ひじの角度は90度、ひざの角度も90度くらいになるように、椅子や机の高さを調節します。
ノートパソコンを使っている場合は、画面が目線より下になりがちで、猫背の原因になります。パソコンスタンドを使って画面の高さを上げ、外付けのキーボードやマウスを使うと、自然と良い姿勢を保ちやすくなるでしょう。
また、定期的に休憩をとり、窓の外の遠くの景色を眺めるなどして、目の疲れを和らげることも忘れないようにしましょう。
食生活でコンディションを整える
在宅勤務では、つい食事の時間が不規則になったり、手軽なもので済ませてしまったりすることがあります。しかし、日々のパフォーマンスを保つためには、バランスのよい食生活が欠かせません。
できるだけ決まった時間に3食とることを心がけ、食事のリズムを整えましょう。とくに朝食は、体温を上げて脳と体を活動モードにする大切なスイッチです。
昼食は、麺類や丼ものだけで済ませず、野菜やタンパク質がとれる定食のようなメニューを意識すると、午後の眠気防止にもつながります。
自宅にいると、ついお菓子や飲み物に手が伸びがちですが、量や時間を決めて、だらだらと食べつづけないようにすることも大切です。
在宅勤務の健康管理に役立つツールやサービス
近年は、企業の健康管理を効率的にサポートしてくれる便利なツールやサービスが増えています。すべて自社の人員だけでおこなうのは大変ですので、これらをうまく活用することで、人事労務担当者の負担を軽減し、より専門的で質の高い支援が可能になります。
健康状態を把握する管理ツール
従業員一人ひとりの健康状態を目に見える形で把握するために、健康管理システムやツールが役立ちます。これらのツールは、年1回の健康診断の結果だけでなく、日々のコンディションを管理するのに適しています。
たとえば、従業員が毎日の体調や気分を簡単に入力できるアプリや、ストレスチェックの結果を経年で管理し、変化の大きい従業員を自動で知らせてくれるシステムなどがあります。勤怠管理システムと連携し、残業時間の多い従業員や、休みがちになっている従業員にアラートを出す機能を持つものもあります。こうしたデータを活用することで、不調のサインを早期に発見し、深刻な事態になる前に対処することがしやすくなるでしょう。
オンラインで気軽に使える健康サービス
従業員への健康支援策として、オンラインで利用できるサービスを導入する企業も増えています。場所を選ばずに利用できるため、在宅勤務との相性がよいのが特徴です。
たとえば、以下のようなサービスがあります。
- オンラインフィットネス:
プロのインストラクターによるヨガや筋力トレーニングのレッスンを、自宅で好きな時間に受けられます。 - オンラインカウンセリング:
臨床心理士や公認心理師といった専門家に、チャットやビデオ通話で気軽にメンタルヘルスの相談ができます。 - 食事管理アプリ:
食べたものを記録すると、AIが栄養バランスを分析し、アドバイスをくれるサービスです。管理栄養士による指導が受けられるものもあります。
これらのサービスを福利厚生として提供することで、従業員が健康づくりに取り組むきっかけを提供できます。
在宅勤務の健康管理が、元気な働き方を支える
在宅勤務(リモートワーク)の広がりとともに、健康管理はこれまで以上に大切なテーマになっています。心も体も健やかでいることは、仕事への集中やチームの活気にもつながり、生産性や定着率の向上にも影響します。
企業は、日々の働き方に寄り添った支援を整え、従業員はセルフケアを意識することで、無理なく健康を保つことができます。小さな工夫や気配りの積み重ねが、安心して働ける職場づくりにつながっていきます。
これからの時代、在宅勤務を前提とした「健康との向き合い方」は、企業にとっても従業員にとっても、よりよい働き方をつくる大きなカギになるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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