- 更新日 : 2025年8月29日
30分刻みのタイムカード計算は違法?労基法で違反となる刻みの範囲やケース
タイムカードの打刻時間を30分刻みで計算し、労働時間を切り捨てる運用は、多くのケースで労働基準法に抵触するとされています。賃金は働いた時間にもとづき1分単位で計算するべきものであり、意図せず未払い賃金が発生しているかもしれません。
この記事では、30分刻みの勤怠管理が違法となる範囲や具体的なケース、例外的に認められる処理、そして企業がとるべき正しい対応について、わかりやすく解説します。
目次
30分刻みのタイムカード計算は原則として違法
労働時間の管理方法は法律で厳密に定められています。給与計算において、労働時間を30分単位などで切り捨てることは、法律が定める「賃金全額払いの原則」に反するため、原則として認められていません。
1分単位での労働時間管理が原則
給与計算の基本は、従業員が実際に働いた時間にもとづいて、1分単位で正確に計算することです。 労働基準法では、労働時間に応じて賃金を支払うことが定められています。
たとえば、終業時刻が17時で、従業員が17時15分まで残業した場合、企業はその15分間の労働に対しても賃金を支払う義務があります。これを「15分未満は切り捨て」として処理することは、労働の対価を支払っていないことになり、問題となるわけです。
この「実労働時間」を管理するという考え方に基づいて、勤怠管理をすることが重要です。
時間の切り捨てが問題となる理由
労働時間の切り捨てが問題となるのは、労働基準法第24条で定められている「賃金全額払いの原則」に違反するためです。この原則は、労働者に対して、給与の全額を定められた期日に支払うことを企業に義務付けているものです。
たとえば、15分や25分といった労働時間を「30分未満」として切り捨ててしまうと、その時間分の賃金が支払われません。たとえ数分のことであっても、労働者から見れば労働の対価が支払われていない状態であり、法律違反にあたる可能性があります。
このような運用が慣習化していると、従業員との信頼関係を損なう原因にもなりかねません。
出典:労働基準法 第二十四条(賃金の支払)|e-Gov法令検索
15分や5分刻みなどでも同様に問題
労働時間の切り捨ては、30分刻みに限りません。15分、10分、5分といった短い単位であっても、労働者の不利益になるような切り捨て処理は、ケースによっては違法と判断されることがあります。たとえば、「10分未満の労働は切り捨て」といったルールを設けている場合も、1分単位の原則に反します。
重要なのは「何分刻みか」ということよりも、「労働時間を切り捨てているかどうか」という点です。労働者にとって不利益な時間のまるめ処理は、原則として認められないと理解しておくことが大切です。
30分刻みで労基法違反となるケース
どのような場合に労働基準法違反と判断されるのでしょうか。ここでは、始業・終業時や休憩時間において、企業が注意すべき具体的なケースを解説します。意図せず違法な運用になっていないか、自社の状況と照らし合わせてみましょう。
ケース1:始業時刻の切り上げ
実際の出社時刻より遅い時刻に始業時刻をまるめることは、違法となる可能性があります。
たとえば、会社の始業時刻が9時00分で、ある従業員が8時35分にタイムカードを打刻し、すぐに業務を開始したとします。この場合、労働は8時35分から始まっていると考えられます。にもかかわらず、会社のルールで「始業時刻は9時00分として計算する」と処理した場合、25分間の労働に対する賃金が支払われていないことになります。
たとえ従業員が自身の判断で早く出社していたとしても、業務を開始している場合は労働時間として扱わなければなりません。
ケース2:終業時刻の切り捨て
始業時刻の切り上げとは逆に、終業時刻を実際の退勤時刻より早くまるめることも、もちろん認められません。
たとえば、終業時刻が18時00分の会社で、従業員が業務の都合で18時25分にタイムカードを打刻して退勤したとします。この25分間の労働を「30分未満は切り捨て」として扱い、18時00分までの勤務として給与計算をおこなうと、25分間の残業代が未払いとなります。
これが積み重なると、大きな金額の未払い賃金につながります。
ケース3:休憩から早く業務に戻った時間の未計算
休憩時間が決められていても、予定より早く切り上げて業務に復帰した場合、その時間も労働時間として計算する必要があります。 たとえば、12時00分から13時00分までの1時間を休憩時間と定めている会社で、従業員が12時35分に業務を再開したとします。
この場合、25分間多く働いたことになります。この25分間を労働時間として扱わず、休憩を1時間とったものとして処理すると、その分の賃金が未払いとなります。従業員の自己判断によるものであっても、企業がそれを認識し、業務を許容している(黙認している)場合は、労働時間とみなされるのが一般的です。
30分刻みが問題とならない例外的な計算方法
原則として1分単位での管理が必要な労働時間ですが、事務処理を簡素化するために、例外的に端数処理が認められるケースもあります。ただし、これには厳格なルールがあり、どのような場合でも認められるわけではありません。
労働者に有利な「切り上げ」は問題なし
労働時間の端数処理において、労働者にとって不利益にならない切り上げ処理は、労使合意や就業規則での明示があれば認められることがあります。
たとえば、8時51分に出社した従業員の始業時刻を、8時45分や8時30分に切り上げて計算するようなケースです。
この場合、従業員は実際に働いた時間よりも長い時間分の賃金を受けとることになり、不利益を被ることがありません。同様に、18時22分に退勤した従業員の労働時間を18時30分に切り上げて残業代を計算することも、労働者にとって有利な扱いであるため問題にはならないでしょう。
例外的に認められる1ヶ月単位での端数処理
給与計算の事務を簡便にする目的で、1ヶ月単位の時間外労働(残業)、休日労働、深夜労働の時間数合計に対して、例外的な端数処理が認められています。
これは、毎日の労働時間をまるめるのではなく、1ヶ月間の残業時間などをすべて合計した最終的な数値に対してのみ適用できるルールです。
具体的には、1ヶ月の時間外労働の合計時間に1時間未満の端数が生じた場合に、労使協定や就業規則に明示されていれば、次のような処理が認められることがあります。
- 30分未満の端数を切り捨てる
- 30分以上の端数を1時間に切り上げる
あくまで1ヶ月分の合計時間に対する処理であり、日々の労働時間計算で端数を切り捨てることは認められていない点を混同しないように注意しましょう。
出典:労働時間の端数処理はどうしたら良いのでしょうか?|厚生労働省 鹿児島労働局
正しい端数処理の計算例
では、具体的にどのように計算するのでしょうか。正しい例と誤った例を見てみましょう。
【誤った日々の処理の例】
日付 | 実残業時間 | 30分単位で切り捨てた残業時間 |
---|---|---|
7月1日 | 25分 | 0分 |
7月2日 | 40分 | 30分 |
7月3日 | 20分 | 0分 |
合計 | 1時間25分 | 30分 |
このように、日々の残業時間で切り捨てをおこなうと、実際の残業時間よりも大幅に少ない時間で計算されてしまい、違法となります。
【正しい1ヶ月単位の端数処理の例】
日付 | 実残業時間 |
---|---|
7月1日 | 25分 |
7月2日 | 40分 |
7月3日 | 20分 |
合計 | 1時間25分 |
1ヶ月の残業時間の合計は「1時間25分」です。この合計時間の端数「25分」は30分未満なので、切り捨てて「1時間」として残業代を計算することが、例外的に認められています。
もし合計が「1時間35分」だった場合は、端数の「35分」が30分以上なので、「2時間」に切り上げて計算します。
30分刻みの勤怠管理を続けるリスク
30分刻みのような不適切な勤怠管理を続けることは、企業にとってさまざまなリスクを抱えることになります。単なる計算上の問題と軽視せず、どのような危険性があるのかを正しくはあくしておきましょう。
従業員からの未払い賃金請求のリスク
不適切な端数処理によって生じた未払い賃金は、従業員から請求されるおそれがあります。賃金請求権の時効は、法改正により、2020年4月から5年となりましたが、当面の間は経過措置として引き続き3年とされています。
つまり、従業員は過去3年分にさかのぼって未払い残業代などを請求できる権利を持っています。
1人あたりの金額は小さくても、対象となる従業員が複数人いたり、長期間にわたって不適切な運用が続いていたりした場合、企業が支払う金額は高額になるかもしれません。退職した従業員から請求されるケースも少なくありません。
出典:未払賃金が請求できる期間などが延長されています|厚生労働省
労働基準監督署による是正勧告や罰則
従業員が労働基準監督署(労基署)に相談(申告)した場合、労基署による調査(臨検監督)が実施されることがあります。 調査の結果、法違反が認められれば、是正勧告書が交付されます。是正勧告は行政指導であり、直接的な強制力はありませんが、無視していると書類送検され、最終的に罰則が科される可能性もあります。
労働基準法第24条(賃金全額払い)や第37条(割増賃金)に違反した場合、使用者に対して30万円以下の罰金が科されることがあり、是正勧告を無視していた場合には書類送検されるケースもあります。
訴訟に発展した場合の企業の信用の低下
従業員との話し合いで解決せず、労働審判や訴訟に発展した場合、企業はさらなる負担を強いられることになります。 裁判で未払い賃金の支払いが命じられると、本来支払うべき金額に加え、遅延損害金や、付加金(未払い賃金と同額まで裁判所が支払いを命じることができるペナルティ)の支払いが必要になるケースもあります。
また、訴訟が報道されるなどして外部に知られれば、「法律を守らない会社」「従業員を大切にしない会社」といった評判が広がり、企業の社会的信用やブランドイメージが大きく傷つくことになるでしょう。
タイムカードの30分刻み問題はどこに相談すべきか
自社の勤怠管理に問題があるかもしれないと気づいた場合、または従業員の立場として疑問を感じた場合、どこに相談すればよいのでしょうか。それぞれの立場から、適切な相談先を紹介します。
企業の担当者が相談する場合
企業の経営者や人事・労務担当者が、自社の勤怠管理の見直しや法改正への対応で迷った場合は、外部の専門家に相談するのが確実です。
- 社会保険労務士(社労士):
人事労務管理の専門家です。就業規則の見直しや、法律に準拠した勤怠管理・給与計算の仕組みづくりについて、的確なアドバイスを受けられます。 - 弁護士:
とくに労働問題に詳しい弁護士であれば、法的なリスクの分析や、万が一従業員とトラブルになった際の対応について相談できます。 - 勤怠管理システムの提供会社:
法律に準拠した勤怠管理を実現するためのシステム導入を検討する際に、相談に乗ってもらえます。
従業員(労働者)が相談する場合
従業員の立場で、自社の給与計算に疑問を持った場合は、段階的に行動を起こすのがよいでしょう。
- 社内の人事労務担当部署や信頼できる上司:
まずは会社の正式な窓口に、計算方法について質問してみましょう。単なる誤解や勘違いである可能性もあります。 - 労働組合:
社内に労働組合があれば、相談することで会社側と団体交渉をしてもらえる場合があります。 - 労働基準監督署:
全国に設置されている「総合労働相談コーナー」では、予約不要・無料で専門の相談員にアドバイスを求められます。匿名での相談も可能です。法違反の疑いが強い場合は、行政指導などを求める申告をすることもできます。
30分刻みのタイムカード運用は法令に沿った見直しが必要
30分刻みなどの端数処理による勤怠管理は、見過ごされがちですが、法律違反にあたる可能性があります。労働時間は1分単位での管理が原則であり、切り捨て処理が常態化していると、未払い賃金や労基署からの是正勧告、従業員とのトラブルに発展するリスクもあります。
現状の勤怠運用が適正かどうかを点検し、必要に応じて社内ルールや就業規則の見直しを進めましょう。制度面だけでなく、システムや現場の運用も含めて改善することが、法令を遵守した公正な職場づくりにつながります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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