- 更新日 : 2025年7月14日
離職防止ツールとは?できることや選び方、活用方法を解説
「人間関係がうまくいっていない?」「実は不満があった?」と、あとから気づくことは少なくありません。今、企業の間で注目されているのが、社員の不調や不満の予兆を見える化し、早めに対処できる「離職防止ツール」です。
本記事では、離職防止ツールの役割やメリット、無料で使えるおすすめツールなど、人事・労務担当者が今すぐ現場で活かせる情報をまとめて解説します。
目次
離職防止ツールとは?
近年、社員の早期離職や人材定着に課題を抱える企業が増えるなかで、注目を集めているのが「離職防止ツール」です。
とくに人事やマネジメントの現場では、「辞めてしまったあと」ではなく、「辞める前のサインをいかに早くキャッチできるか」が重要になっています。
本章では、離職防止ツールの基本的な役割や仕組み、そしてなぜ今、多くの企業が導入を検討しているのかをご紹介します。
まずは、離職防止ツールがどのような支援をしてくれるのかについて見ていきましょう。
離職前の異変に気づくための支援ツール
離職防止ツールとは、社員の不調や不満といった「見えにくいサイン」を、数値やデータで見えるようにし、早めに気づけるようにするための支援ツールです。
たとえば「この社員、最近元気がないかも」といった感覚的な変化も、ツールを使えば明確な情報として確認できます。
具体的には、以下のような状態などを察しやすくなるでしょう。
- 社員が「辞めたい」と感じる前に、不満・ストレス・孤立・過重労働などの兆しを把握できる
- データにもとづいてフォローの優先順位を判断でき、対応の質とスピードが上がる
- 結果として、社員自身が「見てもらえている」と感じ、安心感や信頼感の醸成にもつながる
このように、離職防止ツールは社員を監視するためのものではなく、気づけなかったという事態を減らし、支援の行動につなげるための「気づきの補助輪」として機能します。
離職防止ツールが注目されている理由
離職防止ツールが注目される背景には、いくつかの社会的・組織的な変化があります。
- 採用難や人手不足が深刻化し、ひとり辞めるだけでも業務が回らなくなるケースが増えている
- 新しく採用して育成した人材がすぐに辞めてしまうと、採用費・教育コスト・現場の士気すべてに悪影響が出る
- コロナ禍をきっかけに、リモートワークやハイブリッド勤務が広がり、「表情・態度・雑談」などで感じ取れていた異変に気づきにくくなった
- その一方で、「エンゲージメント(働きがいや会社への信頼)」が組織の生産性や競争力と直結することも広く認識されるようになった
こうした背景から、社員の状態をデータとして把握し、離職の兆しを逃さずキャッチする仕組みづくりが急速に進んでいます。
とくに離職が業績に直結する中小企業や、人材定着が難しい業界ほど、導入の必要性が高まっています。
離職防止ツールでできること
離職防止ツールは、「社員が辞めたいと思う前に、何かに気づけるかどうか」が重要なテーマです。
導入企業では、さまざまなツールを用いて「今、誰がどのような状態にあるのか」を可視化することで、離職リスクの軽減に役立てています。
本章では、離職防止ツールによって実際に何ができるのかを、目的別にご紹介します。
コミュニケーションの質の向上が見込める
離職の原因として、よく挙げられるのが「相談できる相手がいない」「上司との関係に悩んでいた」といったコミュニケーションの問題です。
離職防止ツールを活用することで、こうした課題の可視化と改善がしやすくなります。
- 1on1面談の予定や内容をツールがサポートし、定期的な対話の機会がつくられる
- 面談の記録やフィードバックが蓄積され、フォローの漏れを防止できる
- 上司と部下の間にある温度差や、期待のズレを客観的に把握できる
- チーム内の関係性や信頼度をスコア化し、組織改善のきっかけにもなる
とくに、「話せる環境があること」は離職防止の大きな要因となるため、日常の対話支援を仕組みとして整えることが重要です。
では、なぜコミュニケーションは重要なのでしょうか。以下の記事では職場におけるコミュニケーションの重要性について解説しています。
関連記事:コミュニケーションとは?意味や能力を鍛える方法、コミュ不足による失敗例を解説
エンゲージメントを可視化できる
エンゲージメントとは、社員の会社に対する信頼・愛着・意欲をあらわす指標です。
離職防止ツールを使えば、この目に見えにくい感情的な要素を定量的に把握できます。
- 月1回など定期的なアンケートで、職場への満足度や不安を集計
- 部署別のスコア比較によって、問題が発生しやすいチームを特定
- スコアの推移を追うことで、施策の効果も検証しやすくなる
- モチベーションの低下や人間関係の悪化など、変化を早めに察知できる
これにより、働きがいを維持するための人事施策が可能になります。
以下の記事では、エンゲージメントの重要性について解説していますので、参考にしてみてください。
関連記事:
エンゲージメントとは?なぜビジネスで重要か?高める方法や事例を解説
従業員エンゲージメントとは?低い企業のデメリットや高める方法を解説
モチベーションを高める
離職防止ツールは、問題発見だけでなく、社員の前向きな気持ちを育てるツールとしても使えます。
とくに「感謝」や「承認」が伝わりやすい仕組みをつくることで、職場の雰囲気が改善しやすくなります。
- ピアボーナスのような仕組みで、社員同士が感謝の気持ちをメッセージやポイントで送り合える
- 日々の小さな貢献が見えるようになることで、モチベーションが維持されやすい
- 行動へのフィードバックを即時で受け取れる仕組みがあると、成長実感にもつながる
- 「きちんと見てもらえている」という感覚が、離職防止に直結する
ちょっとした「ありがとう」があるかないかで、職場の空気は大きく変わります。
以下の記事では、離職防止ツール以外でできる社員のモチベーションアップ方法について詳しく解説しています。
関連記事:モチベーションとは?ビジネスシーンでの用法をわかりやすく解説!
ストレスや健康状態の変化をチェックできる
社員の体調やメンタル面の不調も、離職の大きな要因のひとつです。特別なトラブルがなくても、「頑張りすぎている社員」には注意が必要です。
離職防止ツールのなかには、ストレス状態や健康状態を可視化する機能を備えたものもあります。
- 定期的にストレスチェックや健康アンケートを実施し、自動集計
- スコアが一定以下になった社員に対して、アラートやケア提案を自動で表示
- メンタル不調の兆候(無気力・孤立・感情の変化など)を早めに察知
- 必要に応じて産業医や上長と連携し、具体的なフォローが可能になる
こうした予防的なアプローチが、長期的な定着につながります。
離職につながる予兆を早期にキャッチできる
勤怠や業務データと連携することで、離職のサインを数値として捉えることも可能です。
- 残業の増加、有給の未取得、遅刻や欠勤などをトリガーにアラートが発動
- 「連続で残業が多い」「打刻エラーが増えた」など、細かな異常を検知
- 自動アラート機能により、担当者が気づけなかったリスクも見逃さない
- 勤怠システムとつながっていれば、日々の業務フローのなかで活用しやすい
とくに人事のリソースが限られている中小企業では、こうした自動化された仕組みが大きな助けになります。
離職防止ツールの選び方
離職防止ツールは数多く存在しており、どれを選べばいいのか迷ってしまう方もいるかもしれません。
大切なのは、「自社の目的に合ったツールを選ぶこと」です。
この章では、導入で失敗しないために確認すべきポイントを4つに分けて解説します。
解決したい課題を明確にする
まずは、「なぜこのツールを導入したいのか?」を具体的に考えることが出発点です。
離職の原因や兆しは企業によって異なるため、課題に合った機能を備えたツールを選ぶ必要があります。
以下は、課題ごとに向いている機能やツールの例です。
よくある課題 | 向いている機能やツール例 |
---|---|
残業や欠勤が多い | 勤怠データと連携して異常を検知 |
社員の本音が見えない | 月次アンケートやパルスサーベイ機能 |
承認や感謝の文化が根付いていない | ピアボーナス機能 |
メンタル不調を早期に知りたい | ストレスチェック機能 |
上司とのコミュニケーション不足 | 1on1支援機能 |
まずは「何に困っているのか」を社内で整理し、それに応じたタイプのツールを探しましょう。
ツールの機能をチェックする
導入するツールによって、対応できる機能は異なります。
多くの機能を備えていると便利な面はありますが、必要なものだけに絞ることでコストや運用負担も抑えられます。
たとえば、以下のような機能は離職防止に効果的です。
- アンケート機能:社員の状態を定期的に調査できる
- 面談管理機能:1on1の実施状況や記録を管理できる
- アラート機能:異常があれば自動で通知してくれる
- データ連携機能:勤怠・人事データとスムーズに連携できる
- レポート機能:結果をグラフやスコアで見える化し、施策の改善に活用できる
ツールを選ぶ際は、「必要なことにしっかり対応できるか?」という視点で機能をチェックしましょう。
直感的な操作ができる
どんなに高機能でも、「使いにくいツール」は結局使われなくなってしまいます。
とくに人事担当者や現場のマネージャーが日常的に使う場合は、直感的に操作できることが非常に重要です。
選定時には、以下のポイントを確認しましょう。
- 管理画面の構成がわかりやすいか
- スマートフォンでも操作できるか
- マニュアルや操作説明が用意されているか
実際にトライアルを使ってみる、他社のレビューを確認するなどして、「使いやすさ」のチェックを怠らないことが大切です。
料金とサポート体制を比較する
価格やサポートの充実度も、導入の判断材料になります。
料金体系はツールごとに異なりますので、以下のような点を確認して比較しましょう。
- 初期費用の有無
- 月額費用は人数制か定額制か
- 導入時のサポートがあるか(初期設定や操作レクチャー)
- 導入後の相談や質問対応などの運用フォローがあるか
とくに導入に不安がある場合は、サポートが手厚いかどうかをチェックしておくと安心です。
また最近は「無料トライアル付き」のツールもあります。
まずは無料で使ってみて、必要であれば本格導入に切り替えるといったステップもおすすめです。
成功事例から学ぶ離職防止ツールの活用方法
全国各地で「町ごとホテル」を展開する株式会社NAZUNAでは、離職防止の取り組みとして福利厚生の強化に注目しました。宿泊・観光業界では、シフト勤務や地方配属などにより、社員の住環境がストレスとなることも少なくありません。
そこでNAZUNAは、マネーフォワード クラウド福利厚生賃貸を導入し、社員に対して毎月約1万円の手取りアップを実現できる仕組みを整えました。
これは、住まいに関する費用を企業が一部負担することで、社員の生活の安定を支える制度です。
離職防止ツールの導入に取り組んだ結果、以下のような成果が感じられています。
- 住居支援により、金銭的不安の軽減と精神的な安心感
- 離職率が低下し定着率が向上、結果採用コスト・離職コスト双方の削減
- 人事担当者の追加リソースは不要となり、業務効率化
- 通勤負担の軽減や、生活環境の安定によりメンタルケアにも寄与
「社員が安心して働き続けられる環境づくり」に対し、マネーフォワードのツールが実務面での運用効率もサポートした好例といえるでしょう。
参考:マネーフォワード 福利厚生賃貸導入事例(株式会社NAZUNA)
勤怠データから離職予防をするならマネーフォワードが最適
離職防止において「社員の変化に早く気づくこと」は何より重要です。その点で、勤怠データは現場のリアルを映す大きなヒントになります。
マネーフォワード クラウド勤怠なら、次のような理由から離職予防の第一歩として最適なツールといえます。
- リアルタイムで勤怠状況を確認できるため、残業の増加や遅刻・欠勤といった兆しをすぐに把握
- 勤怠データはもちろん、給与・社会保険・労務管理ともスムーズに連携でき、管理の手間を大幅に軽減
- 残業時間のアラート設定機能もあり、過重労働の防止にもつながる
- 正社員・パート・リモートなど、多様な働き方に柔軟に対応可能
- 操作画面がわかりやすく、導入のハードルが低いの
「なんとなく疲れているようだ」「無理をしていそう」という感覚を、勤怠データが裏づけてくれることで、早めの声かけや面談につなげる判断が可能になります。
日々の数字にこそ、社員のコンディションが表れます。マネーフォワードのツールは、その気づきをシンプルに、確実に支えてくれる存在です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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