• 更新日 : 2025年7月14日

勤怠管理で遅刻を正確に管理する方法は?注意点まで徹底解説

遅刻を正確に管理するには、勤怠システムの活用と明確なルール整備が欠かせません。勤怠管理が曖昧なままだと、給与トラブルや不公平な評価につながるリスクもあるため注意が必要です。

本記事では、勤怠管理で遅刻を正確に管理する方法からメリット、注意点までを徹底解説します。

勤怠管理で遅刻を正確に管理する4つの方法

勤怠管理で遅刻を正確に管理するには、どのように対応すべきかを事前に確認しておくことが大切です。対応方法を把握していれば、トラブルを防ぎながらスムーズに運用できます。

以下では、遅刻管理に有効な4つの方法を紹介します。

1. 勤怠管理システムを導入する

勤怠管理システムを導入すれば、打刻時間から遅刻・早退・残業などの状況を自動で分類・集計できます。多くの勤怠管理システムにはアラート機能があり、遅刻回数が一定数を超えると通知されるため、見逃し防止が可能です。

打刻はWebやPC、スマホなどから行え、リアルタイムでデータが反映されるため、オフィス外でも遅刻状況を把握できます。さらに、遅刻の回数や時間は蓄積され、月次レポートとして確認・分析することが可能です。

勤怠管理システムを活用することで、遅刻の見える化と的確な勤怠指導が可能になり、労務リスクの軽減につながります。

2. 遅刻に関する処分を就業規則に明記する

遅刻を正確に管理するには、就業規則に遅刻に関する処分規定を明記しましょう。

たとえば「欠勤・遅刻・早退が本人の過失による場合、懲戒処分を科すことがある」と定めておけば、遅刻の常習化を防ぐ意識づけになります。電車の遅延など正当な理由がある場合は、証明書を提出させることで客観的に対応できます。

また、処分を行う前には注意・指導の履歴を記録し、本人に説明や弁明の機会を設けるなど、手続きを明確にすることが必要です。

適切な対応を徹底すれば、法的リスクを避けながら遅刻を防止する効果も期待できます。

就業規則の作成方法は、以下の記事で詳しく解説しているため、あわせてご覧ください。

関連記事:就業規則とは?作成手順や記載項目を解説!

3. 遅刻時間の自動集計・レポート機能を活用する

効率的に遅刻を把握するには、勤怠システムの自動集計・レポート機能を活用することが効果的です。

システムは打刻データから遅刻や早退の時間を自動で判別し、個人別・部署別に集計できるため、担当者の管理工数を大幅に削減できます。リアルタイム通知機能があるシステムであれば、遅刻が発生した際に即時で把握でき、対応の遅れを防げます。

さらに、月次レポートで部署ごとの傾向を可視化すれば、遅刻が多い時間帯や曜日などの分析が可能です。

給与計算ソフトや人事評価システムと連携すれば、遅刻時間に応じた控除や人事評価への反映も自動で行われ、ミスを防ぎながら正確な管理が実現します。

4. テレワーク・在宅勤務の遅刻にも対応できる仕組みを整える

テレワークや在宅勤務で遅刻を正確に管理するには、勤務実態を把握できる仕組みを整えましょう。

パソコンの使用状況やネットワークへのログイン情報、打刻データを組み合わせて確認すれば、実際の稼働状況を把握しやすくなります。さらに、隠れ残業や始業・終業時刻の打刻漏れを防ぐには、週1回程度の面談や日報提出を習慣づけて、始業時間に実際に稼働しているかを確認することが効果的です。

また、勤怠システムだけに頼らず、上司が遅刻傾向を把握し、注意・指導までの流れを明確にすることが実効性のある管理につながります。

遅刻の勤怠管理が必要な4つの理由

遅刻の勤怠管理を行うには、目的を明確にしておくことが重要です。理由を理解していれば、勤怠管理に関するトラブルや労務リスクの予防につながります。

以下では、遅刻の勤怠管理が必要とされる各理由を解説します。

1. 適切に給与計算するため

遅刻を正確に勤怠管理することは、適切な給与計算に欠かせません。

労働時間は所定労働時間から遅刻・早退分を差し引いて算定するため、原則として1分単位での記録が必要です。15分や30分単位での切り上げ計算は認められていません。

また、「ノーワーク・ノーペイの原則」により、労働者に原因がある遅刻や、不可抗力による不就労でも、働いていない時間分の賃金は控除できます。

ただし、控除できるのは実際の遅刻時間分のみです。遅刻時間を正確に記録・集計しておくことで、給与計算のミスを防ぎ、適切な賃金支払いが実現します。

2. 労働トラブルを防ぐため

遅刻の勤怠管理を徹底することは、労働トラブルの予防に直結します。

まずは、遅刻に関するルールを就業規則に明確に定め、「無断遅刻は就業規則違反」「懲戒対象に含まれる」などの文言を記載し、全従業員に周知しましょう。

曖昧なルールでの運用は、不満やトラブルを招くおそれがあります。また、遅刻が発生した場合は、口頭での注意から書面での指導へと段階的に対応し、履歴を記録しておきましょう。

対応ルールを明確にし、記録を残すことで、不当な扱いを主張された場合にも法的リスクを軽減できます。

3. 人事評価につなげるため

遅刻の勤怠管理は、人事評価の根拠となる重要な情報です。

「遅刻が多い」「改善された」のような勤務態度を正しく評価するには、勤怠システムを活用して遅刻の有無や回数を正確に記録・管理しておく必要があります。

曖昧な記録では、公平な評価ができず、従業員の納得も得られません。正確な勤怠データがあれば、評価面談の際に具体的なフィードバックを行いやすくなり、従業員自身が行動を振り返る資料として活用できます。

勤怠情報を人事評価に反映することで、働き方の改善と組織全体のモラル向上にもつながります。

人事評価については、以下の記事をご覧ください。

関連記事:人事評価とは?意味や目的、作り方を解説!

4. 社内の時間意識を向上させるため

遅刻を含む勤怠管理の徹底は、社内全体の時間意識を高めるうえで欠かせません。

時間を守る文化が社内で定着すれば、締め切りや納期にも余裕を持って対応でき、業務の効率化が期待できます。一方で、始業時刻を守らない従業員が多ければ、進行の遅れや残業コストの増加などのリスクが生じるため注意が必要です。

勤怠を正確に管理し、遅刻に対する意識を浸透させることで、組織全体の時間管理が強化され、生産性の向上にもつながります。

遅刻の勤怠管理における課題

遅刻の勤怠管理には、制度上や運用面でさまざまな課題が存在します。勤怠管理における課題を把握しないまま運用を進めると、適切な対応ができずトラブルにつながるおそれがあります。円滑な勤怠管理を実現するためには、事前に課題を確認し、必要な対策を講じておきましょう。

以下では、遅刻の勤怠管理における主な課題を紹介します。

数分の遅刻の扱い

数分の遅刻の扱いは、勤怠管理において注意すべき課題です。

労働基準法第24条の「賃金全額払いの原則」により、遅刻時間を15分や30分単位で丸めて処理することは、原則認められていません。実際の労働時間を正確に記録し、賃金と整合させる必要があります。

曖昧なルールや丸め処理は、実労働時間とのズレが生じ、不公平な勤怠管理となりかねません。さらに、小さなミスや不正の積み重ねが、未払賃金トラブルや従業員の不信感を引き起こし、企業の信頼性やコンプライアンス意識が問われるおそれもあります。

数分の遅刻でも、正確かつ一貫した記録と対応が求められます。

打刻漏れや不正打刻のリスク

打刻漏れや不正打刻は、遅刻の勤怠管理における重大なリスクです。

打刻がなければ、遅刻か勤務かの判断ができず、正確な管理が難しくなります。たとえば、同僚に代理で打刻してもらうと定時出勤に見えてしまい、不正が見逃されるおそれがあります。

手作業での打刻や勤怠ルールが曖昧な場合は、不正打刻や代理打刻などリスクが高まるため注意が必要です。

対策として、本人のみが打刻できる勤怠管理システムやアプリの導入を検討しましょう。また、打刻修正には理由付きの申請と上司の承認を必須とすることで、記録の改ざんを防止できます。信頼性の高い勤怠管理には、ルールと仕組みの整備が欠かせません。

在宅勤務やフレックス制度の整合性

在宅勤務やフレックス制度を導入している場合も、遅刻を含めた勤怠管理の正確さが求められます。

とくに、出社しない勤務形態では、始業時刻の確認が難しいため、客観的に労働時間を把握できる仕組みが必須です。たとえば、PCのログイン情報や専用アプリによる打刻を活用すれば、勤務開始をリアルタイムで確認できます。

勤怠管理の仕組みがなければ、遅刻の見落としや不公平な扱いが発生し、労務管理上の盲点となるおそれがあります。そのため、柔軟な働き方を維持しつつ、公平かつ正確な勤怠管理を行う体制を整えましょう。

勤怠管理システムで遅刻を記録するメリット

勤怠管理システムで遅刻を記録することには、正確な勤怠管理を実現するうえで多くのメリットがあります。あらかじめメリットを理解しておけば、日々の運用でも意識的に勤怠を管理できるようになるでしょう。

以下では、勤怠管理システムを活用することで得られるメリットを紹介します。

勤怠情報を可視化できる

勤怠管理システムを使えば、打刻時刻や遅刻・早退・残業の状況をリアルタイムで確認でき、勤怠管理の精度が向上します。

さらに、PCログやネットワークのアクセス履歴と勤怠データを照合することで、実際の稼働と記録の不一致も早期の把握が可能です。

管理者だけでなく、従業員自身も自分の遅刻傾向や残業時間をリアルタイムで把握でき、日常的な行動を見直すきっかけになります。勤怠の可視化は、正確な記録と自己管理意識の向上に効果的です。

勤怠に関する証拠を残せる

勤怠管理システムを導入すれば、遅刻や出退勤時刻などの勤怠情報を客観的に記録・保存できます。

打刻データは労働時間を立証するうえで重要な証拠となり、法的トラブルへの備えにもなります。たとえば、遅刻に対する指導や懲戒、減給措置を行う際、記録が不十分だと「不当処分」と主張されるリスクがあるため注意が必要です。

一方で、記録が明確に残っていれば、労働審判や労基署の調査でも有力な証拠となり、企業として適切に対応できます。勤怠データを確実に残すことは、労務管理の公正性とコンプライアンス維持に直結します。

業務効率化とコンプライアンス強化を両立できる

勤怠管理システムを導入すれば、遅刻の打刻情報を自動で収集・分類でき、手作業による集計や月末処理が不要になります。

遅刻データは日次で一覧化され、管理者はリアルタイムに状況を把握できます。日々の遅刻データを自動で一覧化できるため、人事担当者の手作業による確認や再集計の負担が大幅に軽減され、ミスのない正確なデータ管理が可能です。

また、労働安全衛生法では始業・終業時刻の客観的な記録が求められており、遅刻も対象に含まれます。システム上で証拠が残ることで、法改正や内部監査、労務トラブルにも対応しやすくなります。業務効率化と法令遵守の両立が図れる点は、大きなメリットです。

遅刻管理する際の注意点

遅刻を管理する際には、正確な記録や運用ルールの整備など、いくつかの注意点があります。注意点を理解しておくことで、勤怠管理の精度が高まり、労務トラブルのリスクを防ぐことが可能です。

以下では、遅刻管理で押さえておくべき注意点を解説します。

始業時間と遅刻の時間を明記する

遅刻を適正に管理するには、始業時間と遅刻の判断基準を明確に定めましょう。

労働基準法第89条では、始業・終業時刻は就業規則の絶対的必要記載事項とされており、曖昧なままでは労務管理上の混乱や不当な対応を招くおそれがあります。

たとえば「8時20分以降は遅刻」といった社内の慣習があっても、就業規則や勤務規程に明示されていなければ、従業員に強制できず、懲戒や減給の根拠にもなりません。遅刻に関するルールを明文化し、全従業員に周知すれば、トラブルの防止と公平な勤怠管理につながります。

時間の区切りを曖昧にせず、記録と運用の基準を一致させることが重要です。

勤怠ルールを従業員に周知する

遅刻を適切に管理するには、勤怠ルールを従業員に周知する必要があります。

たとえ就業規則に遅刻の処分規定を記載していても、周知が不十分であれば効力が認められず、後の懲戒や人事評価がトラブルにつながるおそれがあります。とくに、口頭での説明だけでは「知らなかった」と主張されるリスクがあり、証拠としても不十分です。

遅刻の判断基準や処分内容は文書で明確にし、書面の配布や社内ツールを通じて、誰もが確認できる形で共有することが大切です。周知を行ったうえで、適切な管理や指導を実施すれば、労務トラブルを未然に防げます。

人事や上司間で遅刻に対する対応を統一させる

遅刻を適切に管理するには、人事や上司間で対応方針を統一することが重要です。

遅刻や早退時の連絡先や手段を明確にし、全社員に共通ルールとして周知・運用することで、対応のばらつきを防げます。

もし、対応が統一されていないと、不公平な扱いと受け取られるおそれがあります。また、就業規則には「無断遅刻は注意→指導→懲戒」と段階的な対応を明記し、上司間での判断のブレを防ぐことが必要です。

さらに、評価や処分を部署間で一貫させるには、上司同士の定期的な情報共有も効果的です。対応を標準化することで、公平な勤怠管理と労務トラブルの防止につながります。


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