- 更新日 : 2025年3月19日
退職時に有給消化ができない?トラブルなく40日取得するポイントを解説!
退職時に有給を40日間消化するためには、会社の理解や業務の引き継ぎなど、考慮すべきポイントはいくつかあります。
本記事では、退職時に有給を40日間スムーズに取得するためのポイントをまとめました。記事を読むと、退職時のトラブルを回避しながら、スムーズに40日間有給を取得して退職する方法がわかります。
目次
退職時に40日間連続で有給消化できない?
退職時に40日間連続で有給消化ができないかもしれない、と不安に思う人は多いでしょう。結論として、有給を40日間連続で消化してから退職することは、法律上問題ありません。有給は法律で認められた権利であり、取得は労働者の自由だからです。
有給の最大保有日数は40日であり、勤続年数が長い人であれば40日間保有しているケースは珍しくありません。加えて、有給は年5日の取得義務がありますが、取得義務を果たせていない場合などに40日間有給が残っているケースが発生しやすくなります。
有給を連続して取得しても問題はないため、退職時に40日間消化することも可能です。
退職時に有給消化した場合の給料はどうなる?
有給は労働者に与えられた権利であるため、退職時に有給消化すること自体、問題ありません。しかし、退職時に有給消化した場合の給料に関して、疑問や不安を持つ人もいるでしょう。本項では、退職時に有給消化した場合の給料について、詳しく解説します。
- 退職時に有給消化しても給料に影響はない
- 有給消化中でもボーナスは受け取れる
退職時に有給消化しても給料に影響はない
退職時に有給消化をしても、給料に影響が出ることは基本的にはありません。有給の取得により給料を下げる行為は違法に当たるからです。ただし、有給取得時の給料の計算方法は以下の3つが認められているため、場合によっては減る可能性がある点には注意が必要です。
給与の計算方法 | 概要 |
---|---|
通常の賃金 | 出勤した際に支払われる予定の金額 |
平均賃金 | 直近3ヶ月間に支払われた賃金を3ヶ月の総日数で割った金額 |
標準報酬月額 | 健康保険料の決定の基礎となる標準報酬月額の金額 |
有給を取得する前に、あらかじめ自社が採用している給料の計算方法を確認しておくと、給料に影響を与えるかどうかを把握できて安心につながります。
有給消化中でもボーナスは受け取れる
退職前の有給消化中であっても、ボーナス支給日に在籍していればボーナスは受け取れます。なぜなら、支給日に在籍していることがボーナス支給の条件である場合がほとんどだからです。在籍の基準は退職日を過ぎているかどうかなので、有給消化中でも在籍していると判断されます。
ただし、有給の取得期間が長い場合は勤務実績が少なくなり、従来と比べてボーナス額が減る可能性があるため、注意が必要です。不安な場合は、自社の就業規則の確認や担当部署に問い合わせをしておきましょう。
退職時に40日間有給消化するための基礎知識
退職時に40日間有給を取得するためには、そもそも有給休暇がどういった制度であるかを把握しておく必要があります。本項では、以下の内容について解説します。
- 有給は法律で認められた労働者の権利である
- 有給は勤続年数によって付与日数が異なる
- 有給取得はいつでもできる
- 有給の買い取りは原則認められていない
退職時に有給に関するトラブルを防止するためにも、有給に関して正しく理解しておきましょう。
有給は法律で認められた労働者の権利である
有給は正式には「年次有給休暇」と呼ばれ、賃金を受け取りながら休暇を取れる労働者に認められた権利です。有給は労働基準法第39条で、以下のように定められています。
業種、業態にかかわらず、また、正社員、パートタイム労働者などの区分なく、一定の要件を満たした全ての労働者に対して、年次有給休暇を与えなければなりません(労働基準法第39条)。
有給は従業員の疲労回復や心身のリフレッシュなどを目的とする制度です。付与された有給を使用するタイミングや目的は労働者の自由であり、使用する際の申請理由も不要です。
有給は勤続年数によって付与日数が異なる
有給は勤続年数によって付与日数が異なる特徴を持ちます。具体的には、「雇入れの日から6ヶ月継続勤務」をし、「全労働日の8割以上出勤」することが付与の条件です。勤続年数ごとの付与日数は以下のとおりです。
勤続年数 | 0.5年 | 1.5年 | 2.5年 | 3.5年 | 4.5年 | 5.5年 | 6.5年以上 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
付与日数 | 10日 | 11日 | 12日 | 14日 | 16日 | 18日 | 20日 |
有給の付与日数は、最大でも1年間で20日となっています。ただし、有給は付与された日から2年で消失することが定められているため、最大でも40日までしか保有できないので注意が必要です。
また、労働基準法の改正により、年10日以上の有給が付与される労働者に対して、企業は最低5日の有給を取得させることが義務付けられている点も押さえておきましょう。
有給取得はいつでもできる
有給取得のタイミングは労働者の自由であるため、いつでも好きなタイミングで取得ができます。基本的に、有給の取得に関して企業は拒否できません。
また、有給を取得する際には企業に取得理由を伝える必要はなく、仮に伝える場合でも「私用のため」で問題ありません。
ただし、一定の条件を満たしている場合に限り、企業は有給の時季変更権を行使できる可能性があるため、注意が必要です。
有給の時季変更権とは
有給の時季変更権とは、企業が従業員の有給取得日を変更できる権利です。基本的には、従業員の希望する日に有給を取得させる必要があります。しかし、事業の正常な運営を妨げる場合にのみ、企業は時季変更権を行使できます。
時季変更権を行使できる具体例は以下のとおりです。
- 有給の取得者が複数重なったとき
- 長期間連続で有給を取得するとき
- 他の従業員では対応できない仕事の期日が迫っているとき
- 研修で本人の代替を立てられないとき
時季変更権は、企業に与えられた権利です。しかし、条件に当てはまっていないのに濫用すると労働基準法違反に該当する可能性があります。有給の時季変更権について詳しく把握したい場合は、以下の記事も併せて確認してください。
関連記事:有給休暇の時季変更権とは?行使するための条件も解説!
有給の買い取りは原則認められていない
有給の買い取りは原則認められておらず、労働基準法違反に該当する行為です。有給は労働者のリフレッシュを目的としているため、買い取り行為は制度の趣旨に反してしまいます。
ただし、退職時に消化しきれない有給に関しては、制度の趣旨に反しないと判断されるため、例外として買い取りが認められています。買い取り対応しているかは企業によって異なるため、就業規則や人事部門に確認をしましょう。
関連記事:退職時の有給買取は拒否できる?検討した方が良い場合や計算方法を解説
退職時に40日間の有給消化をするための3Step
退職時に40日間有給を消化するための3つの手順を以下で解説します。
- 有給の残日数を確認しておく
- 上司に退職の意思を伝える
- 引き継ぎを行う
手順に沿って対応すると、スムーズに有給消化ができるので、ポイントを押さえておきましょう。
Step1.有給の残日数を確認しておく
有給を40日間消化するために実施すべき1つ目の手順は、有給の残日数の確認です。有給を40日間取得するつもりでも、残日数が40日に満たなければ取得はできません。
前述したとおり有給は2年間で消失する時効が設けられているため、40日保有していると思っていても実際には時効で消滅している可能性もあります。
有給の残日数は給与明細や勤怠管理システムなどに記載されているため、あらかじめ確認しておきましょう。
Step2.上司に退職の意思を伝える
有給を40日間消化するために実施すべき2つ目の手順は、上司に退職の意思を伝えることです。退職の意思を伝え、退職日のすり合わせを行いましょう。退職理由が転職の場合は、転職先への入社日を考慮したうえで退職日を決める必要があります。
上司とすり合わせをする際に、有給を40日間消化したいと明確に意思表示をしておきましょう。以下の項目を明確にすり合わせておくと、有給消化をスムーズに進められます。
- 最終出社日
- 引き継ぎ期間
- 有給消化期間
退職の意思を伝えるタイミングは、就業規則では1〜2ヶ月前で問題ないと定めている企業が多い傾向です。ただし、40日間取得するためには、引き継ぎを考慮すると最低でも3ヶ月前には伝えておく必要があります。
40日間連続で取得することが引き継ぎの関係上難しい場合もあるでしょう。その場合、40日連続ではなく20日を2回に分けて取得したり細切れに休みを取ったりするなど、柔軟に対応すると40日分の有給を消化できる可能性を高められます。
有給を40日間消化するためには、あらかじめ余裕を持ったスケジュールを立てる必要があります。
Step3.引き継ぎを行う
有給を40日間消化するために実施すべき3つ目の手順は、引き継ぎを行うことです。スムーズに有給消化するためには、最終出社日までに自分が担当していた業務をすべて引き継ぐ必要があります。引き継ぎに関しては、法律上の義務はありませんが、労働契約上の義務に該当します。
担当していた業務量に依存しますが、引き継ぎ期間は2週間〜1ヶ月程度を見込んでおきましょう。引き継ぎに想定以上の時間がかかってチームに迷惑をかけてしまわないように、スケジュールを逆算して設定しておきましょう。
退職時に40日間の有給をスムーズに消化するための方法
退職時に40日間の有給をスムーズに消化するためには、以下のポイントを押さえておくと効果的です。
- できるだけ早めに上司に相談する
- 引き継ぎ資料をあらかじめ準備しておく
早めに上司に相談をすることで、引き継ぎ期間や後任の手配に余裕を持てるため、スムーズな退職につながりやすくなります。また、引き継ぎ資料を作成する際には、以下のポイントを押さえておくと効果的でしょう。
- 担当業務を細分化して一覧表にする
- 業務ごとに引き継ぎの必要性や引き継ぎ先を確認する
- 業務マニュアルを作成する
- 誰が見てもわかるようにデータを整理する
あらかじめ準備した引き継ぎ資料をもとに関係者と引き継ぎに関する打ち合わせを行うと、スムーズに引き継ぎが実施できます。引き継ぐ際はどの業務を誰に引き継ぐかを明確にしておくと、効率的です。
上記のポイントを押さえておくと、退職時に40日間有給消化できる可能性を高められます。
有給消化を拒否されたときの対処法を3つ解説
退職時に有給消化を拒否された場合の対処法を以下で3つ解説します。
- 拒否された理由を確認する
- 人事部などに相談する
- 労働基準監督署に相談する
基本的に退職時の有給消化を拒否する権利を企業は有していませんが、万が一拒否された場合は以下の対処法を参考にしてください。
1. 拒否された理由を確認する
1つ目の対処法として、拒否された理由を確認することが挙げられます。まずは、なぜ有給消化を拒否されたのか、理由を明確にしましょう。
たとえば、引き継ぎ期間が足りない場合であれば、退職日を調整することで引き継ぎする余裕が生まれ、有給を消化できる可能性が高まります。一方で、正当な理由がなく拒否されているのであれば、企業は労働基準法違反に当たります。
拒否されている理由によって対処法は異なるため、理由を確認したうえで話し合い、有給消化に向けて適切な対応を取りましょう。
2. 人事部などに相談する
そのため、正当な理由がなく有給消化を拒否された場合は、人事部といった社内の然るべき部門への相談が重要です。一般的に社内の相談先として適切な場所は以下のとおりです。
- 人事部
- 総務部
- 本社
- 労働組合
- コンプライアンス部門
有給消化の拒否が上司の独断によるものであれば、上記場所に相談すると適切に指導してくれる可能性があります。ただし、中小企業や零細企業など、企業によっては適切な相談先がない可能性もあります。相談先がない場合は外部への相談を検討しましょう。
3. 労働基準監督署に相談する
3つ目の対処法として、労働基準監督署に相談することが挙げられます。労働基準監督署は、労働問題に関する労働者の権利を守るために活動する、厚生労働省が管轄する公的機関です。
正当な理由のない有給取得の拒否は、労働基準法違反に該当するため、労働基準監督署の管轄内に当たります。労働基準監督署に相談すると、会社に指導や是正勧告が入り、有給を取得できる可能性が高まります。
ただし、労働基準監督署に相談をしても指導が入らない場合もあるため、注意が必要です。「労働基準監督署に相談する」と企業に伝えるだけでも有給取得の拒否を回避できる可能性があるため、指導が入らない場合は相談する旨を伝えてみましょう。
退職時に有給を40日間取得できる方法を知ろう
退職時に40日間有給消化するための手順やポイントを解説しました。有給は労働者に認められた権利であるため、企業に拒否する権利はなく、自由に取得できます。
有給を取得する際は、早めに上司に退職の意思を伝えたり引き継ぎ準備を進めたりすると効率的です。ポイントを押さえて、円満に40日間の有給を取得してください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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