- 更新日 : 2025年3月5日
【36協定】管理職の残業時間に上限はない?残業代や有給などの決まりを解説
36協定では、管理監督者には残業代の支払いは発生しませんが、管理監督者でないにもかかわらず残業代が未払いなのは違法です。
企業や職場で管理職とされてはいるものの、一般の従業員と同じ待遇であるにもかかわらず、残業時間の上限がなく残業代が支払われない現状に、不満を抱く人もいるでしょう。
36協定における管理職と管理監督者の違いや、それぞれの残業における決まりなどについて解説します。
目次
36協定における管理職と管理監督者の違い
36協定では、管理職にあたる従業員には残業代の支払いや残業時間の上限が適用されません。
ただし、管理職のなかでも管理監督者に該当する場合に限ります。管理監督者に該当しない場合、職場で管理職と定めていても、残業代の支払いが発生したり残業代に上限が設けられたりするため、注意が必要です。
36協定で定められている、管理職と管理監督者の違いについて解説します。
36協定で定められている管理職の対象は?
管理職は、企業や組織において部下の育成や業務の運営を担当する職位を指し、たとえば、課長や部長などの役職が該当します。また一般的に「管理職」とみなされる特徴は以下のとおりです。
- 決裁権を持つ
- 部下の育成に携わっている
- 主体的に業務の割り振りを行っている
- 業務において責任のある立場にある
上記以外にも、企業内で管理職に対する独自の基準や役職が設けられており、総じて管理職としている場合もあります。ただし、あくまで企業内での決まりであって、法律で定義されているわけではありません。
管理職の定義や役割については、以下の記事で具体的に解説しているため、あわせてお読みください。
36協定で定められている管理監督者の対象は?
管理職のなかでも、総合的に判断して以下に当てはまる場合は、36協定で定められている「管理監督者」に該当します。
- 経営者との一体的な立場にある
- 労働時間や休日などの規制を超えて活動せざるを得ない権限と責任がある
- 労働基準法や36協定で定められている取り決めになじまない立場にある
- 賃金において、管理職としての立場にふさわしい特別な待遇を受けている
管理監督者に該当する場合は、36協定および労働基準法の労働時間・休憩・休日の適用から外れます。
管理職はあくまで企業や職場側が決められますが、上記に当てはまる場合は役職名や立場にかかわらず「管理監督者」として考えます。
つまり「名ばかり管理職」や上記に当てはまらない場合は、職場が管理職としていても労働基準法や36協定のルールが適用されるのです。
36協定における管理職に対する残業や有給休暇などの決まり
36協定における管理監督者に該当せず、あくまで企業や職場が決めている「管理職」について、残業や有給などに関する決まりを解説します。
残業時間の上限がある
管理監督者でない場合は、企業や職場が管理職としていても、通常の従業員と同じ残業時間の上限が適用されます。
- 36協定を締結していない場合は、1日8時間および週40時間を上限とした労働時間が適用される。
- 36協定を締結している場合は、月45時間・年間で360時間を上限とした残業時間が適用される。
- 特別条項を利用する場合は、年間で720時間を上限とした残業時間が適用され、月45時間を超過できる回数は年6回までとされる。
管理監督者でないにもかかわらず、上記の上限を超えた残業時間が発生した場合は違法です。
残業代と休日出勤手当が支払われる
管理監督者でない場合、企業や職場で管理職としていても、通常の従業員と同じ残業代や休日出勤手当の支払いが適用されます。
労働基準法第37条にもとづき、法定労働時間を超えて働いた場合は残業代の支払いが義務付けられます。具体的には、残業代は通常の賃金に対して25%以上の割増賃金が発生するため注意が必要です。とくに、月の残業時間が60時間を超える場合は、割増率が50%以上に引き上げられるため注意が必要です。
休日出勤した場合、通常の賃金に対して35%以上の割増賃金が支払われます。休日出勤を行った場合、代休を取得しても休日出勤としてカウントされ、割増賃金の支払い義務が生じます。
管理者と管理監督者の残業代については、以下の記事でも詳しく解説しているため、あわせてお読みください。
深夜勤務における割増賃金が発生する
管理監督者でない場合、企業や職場で管理職としていても、深夜勤務を行った場合は通常の従業員と同じ割増賃金が発生します。
具体的には、22時〜翌日5時まで勤務した場合は、通常の賃金の25%以上の割増賃金が発生します。
有給休暇が付与される
管理監督者でない場合、企業や職場で管理職としていても、通常の従業員と同じように有給休暇の付与が必要です。
有給休暇の付与日数は、入社から6ヶ月が経過した時点で10日間の有給休暇が付与され、勤続年数が増えるごとに付与日数が増加します。具体的には、勤続年数に応じて以下の有給休暇が付与されます。
【勤続年数別の有給休暇の付与日数】
| 継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
36協定における管理監督者に対する残業や有給休暇などの決まり
36協定で定められている管理監督者に該当する場合の、残業や有給休暇における決まりを解説します。管理監督者に該当する場合は、通常の従業員とは異なる決まりが適用されます。
残業時間の上限が適用されない
管理監督者は一般の従業員とは異なる扱いを受けるため、労働基準法上の労働時間の上限規制が適用されません。
つまり管理監督者は時間外労働を行う場合でも、法的な上限が存在せず、残業時間が100時間を超えたとしても合法とみなされます。
ただし管理監督者であっても、過労死ラインや健康に関するリスクを考慮する必要があります。労働時間が長くなることで健康に悪影響を及ぼす可能性があるため、企業は適切な労働環境を整えることが必要です。
残業代と休日出勤手当の支払いが適用されない
管理監督者は経営者と一体的な立場にあり、賃金においては、一般的な従業員とは異なる優遇を受けています。そのため、労働基準法や36協定で定められている残業代や休日出勤手当が発生しません。
深夜勤務における割増賃金が発生する
36協定で定められている管理監督者に該当する場合であっても、通常の従業員と同じ、深夜勤務における割増賃金が発生する点に注意が必要です。
深夜勤務における割増賃金は、22時〜翌日5時まで勤務した場合に、25%以上の割増賃金が発生します。
管理監督者は、労働時間や休日の規定が適用されないため、残業代と休日出勤手当の支払いは発生しません。しかし、深夜勤務における割増賃金は発生するため注意しましょう。
有給休暇が付与される
36協定で定められている管理監督者に該当している場合でも、従業員と同じように有給休暇の付与が必要です。
有給休暇の付与日数は、入社から6ヶ月が経過した時点で10日間の有給休暇が付与され、勤続年数が増えるごとに付与日数が増加し、最大で20日間まで増えます。
【勤続年数別の有給休暇の付与日数】
| 継続勤務年数 | 0.5 | 1.5 | 2.5 | 3.5 | 4.5 | 5.5 | 6.5以上 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 付与日数(日) | 10 | 11 | 12 | 14 | 16 | 18 | 20 |
管理監督者ならば有給休暇の付与は発生しないと誤解しやすいため、注意が必要です。
管理職(管理監督者)の勤怠を管理するには?
企業や職場の経営者には、管理職および管理監督者の勤務時間を適切に把握する義務があります。把握することで従業員の健康維持に努めたり、残業代の未払いを防いだりする必要があるのです。
従業員の勤怠を管理する効果的な方法には以下の2つがあります。
- 勤怠管理ツールを導入する
- パソコンやサイトの使用記録を使用する
多くの勤怠管理ツールには、タイムカードのように出勤と退勤の時間をワンクリックで記録でき、勤務時間から給与の合計まで自動計算してくれる機能も付いています。
しかし勤怠管理ツールでは、従業員が退勤を記録したあとに再び業務を進める可能性もあります。勤務時間を正確に把握する場合は、従業員のパソコンや業務に使用するサイトの使用履歴を記録する方法もおすすめです。
勤務時間の把握を管理者任せにせず、企業や職場が手間なく把握できる仕組みを作りましょう。
36協定での決まりに反した場合の罰則
36協定に違反した場合、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
管理監督者でないにもかかわらず、残業時間に上限を設けなかったり残業代が未払いだったり、36協定にて定められた労働条件を遵守しない場合が該当します。
さらに違反が発覚すると、企業名が公表される場合もあり、社会的な信用を失います。
どうしても管理職(管理監督者)の残業時間が減らない場合の対処法
人員不足や業務量の過多により、管理者・管理監督者の残業時間を減らすことがどうしても困難な場合もあります。残業時間を減らすための対処法について提案します。
業務の自動化ツールを導入する
業務を自動化または代行してもらうことで、自社の業務量を減らして従業員の負担を軽減させましょう。業務の自動化または代行には以下の方法がおすすめです。
- RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の活用
- AI機能が搭載されたツールの活用
- 業務代行サービスの利用
RPAとは、初めから完了までの手順が一貫している、定型化された業務を自動でこなしてくれるロボットツールです。RPAに、実施してほしい業務をあらかじめ命令しておくことで、業務を短時間かつ正確にこなしてくれます。
さらにAI機能が搭載されたツールなら、AIが自ら学習するため、任せられる業務範囲の拡大や正確性の向上が期待できます。
また昨今では、文章作成やデータ入力など簡単な業務を代行してくれるサービスがあります。代金を支払ってでも利用して、業務量を減らす方法が効果的です。
残業ができない日を多く設ける
残業ができない日を設けることで、強制的に定時で帰宅する習慣を作る方法が効果的です。定時退社があたりまえになる職場環境の構築につながります。
とある企業では、従業員自身にノー残業デーを決めさせ、決めた日は決して残業しないよう業務を調整するルールを決めました。結果、職場全体で残業しない雰囲気が構築され、残業時間の大幅な削減および生産性の向上につながりました。
また、繁忙期や忙しい日にあえてノー残業デーを設け、残業時間の削減を図った企業があります。結果として、忙しい場合は残業して業務をこなすという考え方から、いかに効率よく業務を完了させるか、といった考え方にシフトするようになったのです。
残業しやすい環境下では、生産性が落ち人件費のコストが上がります。そのため、残業時間を設けにくい環境を作り、定時までに業務を効率よく終わらせる環境づくりが大切です。
労働時間を可視化し指導する
勤怠管理システムで労働時間を可視化できるようにすることで、従業員自身が労働時間を意識する仕組みが構築できます。
さらに、従業員自身だけでなくほかの従業員の勤務時間も、全員が可視化できるとなおよいです。従業員全員が可視化できれば、労働時間や残業時間を自他ともに意識できます。
勤務時間を意識し残業時間を削減すれば、人件費の削減につながり、生産性が向上します。また、結果を出せば従業員のモチベーション向上にもつながります。
36協定を締結しても管理監督者でない管理職には残業代が発生する
36協定を締結していても、管理監督者に該当しない場合は、役職にかかわらず割増賃金が適用されます。
管理職と管理監督者の違いを把握していなければ、残業代の未払いや法律違反につながる恐れがあるため注意が必要です。
どうしても残業時間が減らせない場合は、業務を自動化するツールの導入や、残業させない雰囲気づくりが大切です。
管理職と管理監督者の違いを理解し、従業員の勤務時間を把握したうえで、法令を遵守した経営を継続しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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