• 更新日 : 2024年7月16日

管理職の定義や役割は?役職者との違いや求められる能力も紹介

管理職とは、企業内で部や課といった組織を率いる人のことです。業務管理や人財育成などの役割とともに、一定の権限が付与されます。管理職に求められる能力には、ヒューマンスキルやコンセプチュアルスキル、テクニカルスキルなどがあります。多くの場合、管理職になると残業代が支払われなくなります。また、管理職にはなる年齢は決まっていません。

管理職とは?

企業において自分の部や課を持ち、組織の長として部下を統率する立場にある人が管理職と呼ばれます。一般的に部長や課長が管理職とされますが、正式にはどのように定義されているのでしょうか。管理職の役割や、役職者やマネージャーとの違いについて説明します。

管理職の定義

管理職は企業において部や課といった部署の長、あるいはプロジェクトや複数のチームのトップを指す言葉です。部下やメンバーを統率し、一定の権限を持って与えられた業務を遂行します。一般的には本部長・部長・次長・課長といった肩書きを持つ者が管理職とされますが、企業によってはゼネラルマネージャー・マネージャーといった肩書きが与えられる場合もあります。

管理職にどのような権限が与えられるかについても、企業によって異なります。一般的には組織内をまとめ、与えられた仕事の完遂に必要な権限の付与が行われます。多くの場合、予算管理や人員管理、売上管理に関する権限が与えられ、管理職は自分の裁量で予算を配分したり、部下・メンバーに業務を割り振ったりすることができます。

管理職の役割

管理職に求められる主な役割は、業務や部下・メンバーを管理することです。与えられた業務の進捗状況などを管理したり、予算管理を行ったりすることが、管理職の果たすべき役割とされます。また、人材育成も管理職の重要な役割の一つです。

さらに、管理職は労働時間を管理する役割も担います。2019年4月から労働時間の適正な把握が義務付けられ、長時間労働に上限規制が設けられました。働き方改革により労働時間の削減が必要とされていることによるもので、労働者の健康障害を引き起こすおそれがある長時間労働の削減において、管理職による労働時間の管理は特に必要とされています。

管理職と役職者の違い

どのような役職を置くかは企業によって異なりますが、一般的な役職には本部長・部長・次長・課長・主幹・主任・係長、あるいはゼネラルマネージャー・マネージャー・チームリーダーといったものがあります。多くの企業では、これらのうち課長・マネージャーより上位の役職を管理職、主幹・主任・係長やチームリーダーを一般職としています。

管理職には一定の権限が付与されるのに対し、役職者であっても管理職ではない主幹・主任・係長やチームリーダーには権限の付与は行われません。役職者のうち、上位の者には管理職として業務の遂行に必要な権限が付与されます。一方、役職者であっても下位の者には権限が付与されず、一般職として組織の一員という性質を有したまま業務遂行にあたることが求められます。

管理職とマネージャーの違い

マネージャーは役職名の一つで、多くの場合は課長に相当します。通常は上司に相当するゼネラルマネージャーのもと、課員に該当するメンバーを統率して担当業務を遂行します。

マネージャーを管理職と位置付ける企業が多いものの、そうでない企業もあります。役職者のうち上位のどこまでを管理職、下位のどこから一般職とするかは企業によって異なります。マネージャー=管理職である場合とそうでない場合があり、管理職である場合には一定の権限が付与されます。

管理職の仕事内容 – 何をする?

管理職には組織を束ねて業務にあたり、完遂することが求められます。具体的な仕事内容には、どういったものがあるのでしょうか。5つに分けて説明します。

目標設定

まず、目標設定が挙げられます。目標がなければ、組織として何をすべきかわかりません。部下・メンバーが一丸となって取り組むことができる、適切な目標を設定する必要があります。

目標は組織に与えられた使命・ミッションをもとに、実現可能性が適正であるものを設定しなければなりません。実現が不可能に近い、あるいは容易に達成できる目標は、モチベーション低下の原因となります。また、使命・ミッションを無視した目標を設定すると、達成した場合でも企業から評価されないため、目標としては相応しくありません。

管理職は部下・メンバーが高いモチベーションを維持しながら取り組めて、企業活動に貢献するような目標を設定することが求められます。

チームづくり

設定した目標の達成に向けたチームづくりも、管理職の仕事です。付与されている権限の範囲内で人事権を行使して必要な人材を揃え、最適なチームをつくり上げることが求められます。チームづくりは、チームビルディングとも呼ばれます。能力の高い人材を集めたからといって、良いチームができるとは限りません。設定した目標の達成に必要とされる、さまざまな能力・スキルを持った人材を、もれなくチームに参加させることが求められます。

業務管理

業務管理は、管理職が行う仕事の中でも大きなウェイトを占める、重要なものです。業務が滞りなく進んでいるかどうかを管理する進捗管理の他、予算管理も徹底して行うことが管理職には求められます。また、問題が生じた場合に他部署に対して行う連絡や調整、PDCAサイクルのような業務を滞りなく行うための仕組みづくりも管理職の重要な仕事です。

メンバー管理

チームメンバーの管理も、管理職の重要な仕事の一つです。管理職は適材適所への配置や、労働時間管理などの労務管理も行わなくてはなりません。特に近年は、労働時間管理を厳密に行うことが求められています。長時間労働が労働者の健康に悪影響を及ぼすことから、管理職には労働時間を正確に把握して、上限規制を超えないようにするために注意・警告を行ったり、有給休暇の取得を促したりすることが求められます。

業務改善

業務改善も、管理職が担うべき重要な仕事です。現状の問題や課題の解決は一般社員には困難な部分が多く、管理職だからこそできる仕事といえるでしょう。問題点や取り組むべき課題に気づき、解決方法を論理的に考えたり、他部署と調整したりすることが求められます。また、円滑に進んでいる業務も見直したり、改善方法を探したりする意欲を持つことも大切です。

教育

管理職は、メンバーに対する教育も行わなければなりません。内部研修を確実に受講させたり、業務遂行に役立つ外部の講習を受けさせたりすることも、管理職が行うべき仕事です。

企業の方向性や経営方針、理念といったトップ・経営陣の考えを、一般職に伝えることも管理職に与えられた重要な役割です。企業として団結するために、上層部の経営に関する考えを一般職に伝えるメッセンジャーとしての役割を管理職は担っています。そのため、管理職は経営理念などに対する理解を深め、自分自身もそれに見合った行動を取ることが求められます。

管理職に求められる能力

管理職に求められる能力にはさまざまなものがありますが、代表的なものとしてヒューマンスキル・コンセプチュアルスキル・テクニカルスキルの3つがあります。

ヒューマンスキル

対人関係のスキルがヒューマンスキルで、良好な人間関係を築くことができる能力です。具体的には、以下のようなスキルがヒューマンスキルに該当します。

  • コミュニケーションスキル
  • プレゼンテーションスキル
  • ネゴシエーションスキル
  • ヒアリング能力
  • リーダーシップ
  • コーチング
  • ファシリテーション力

コンセプチュアルスキル

物事の本質を見抜き、課題を解決する能力がコンセプチュアルスキルです。管理職は広い視野を持ち、組織の発展のために何をすべきかを理解することが求められます。具体的には、以下のようなスキル・能力がコンセプチュアルに含まれます。

  • ロジカルシンキング
  • クリティカルシンキング
  • ラテラルシンキング
  • 多方面視野
  • 俯瞰力

テクニカルスキル

業務を行う上で必要な技術や知識が、テクニカルスキルです。ビジネスマナーや語学力、マネジメント能力、論理的思考力などがテクニカルスキルに該当します。また、営業職の場合は商品知識や商談スキル、人間関係構築力など、事務職の場合は事務処理能力やパソコンスキル、文書作成能力などがテクニカルスキルに該当します。

管理職に与えられる権限

管理職には、率いる組織が業務を遂行するために必要な、一定の権限が与えられます。

  • 顧客との取引について承認や決済を行う権限
  • 下請について条件や取引先を決定する権限
  • 予算を組む権限
  • 経費支出の承認や決裁を行う権限
  • 部下が作成する書類について承認や決済を行う権限
  • 部下の勤怠状況を管理する権限
  • 部下からのさまざまな申請に対して承認や否認を行う権限

管理職に与える権限について社内規定を設ける場合は、職務権限規程を作成します。職務権限規程は、管理職の責任の範囲を明確にするため、与える権限を定めておく社内規程です。

管理職のスキルの可視化に活用できるテンプレート

管理職のスキルや能力、経験を評価する際には、スキルマトリックスシートを活用すると効果的に可視化することができます。

以下のリンクから、テンプレートを無料でダウンロードいただけます。自社に合わせてカスタマイズし業務にお役立てください。

管理職になる年齢には決まりはある?

管理職になる年齢について、特に決まりはありません。企業においても「何歳以上」とする規程を設けているところはなく、若くても能力があれば管理職になることができます。

古いデータですが、民間調査機関の労務行政研究所による2009年の調査では、33.9歳が最も若い課長昇進年齢であることが報告されています。同所は2004年に同じ調査を実施しており、前回調査との比較を尋ねた質問(課長に昇進するスピード)について、56.9%が「変わらない」、28.5%が「早くなった」と回答しています。

管理職の給料は、一般社員と違う?

一般的に、管理職には残業や休日出勤に対する割増賃金の支払いがありません。多くの企業では「管理職=管理監督者」として、時間外労働時間に対する割増賃金の支払対象としなくなるためです。

管理監督者とは経営者と一体的な立場にあるとして、労働時間や休憩、休日について労働基準法の規定が適用されない者を言います。しかし、深夜労働に対する割増賃金については支払いの対象となっているため、深夜手当は一般社員と同じように支払われます。また管理職と管理監督者は違うため、管理職であっても管理監督者に該当しない場合は、時間外労働時間の割増賃金の支払対象となる点にも注意が必要です。

管理職を十分に理解し、人事上での取り扱いを正しくしよう

管理職には部や課を統率し、責任を持って与えられた業務を遂行することが求められます。目標設定・チームづくり・業務管理・メンバー管理・業務改善・教育が管理職の主な仕事内容で、管理職に必要なスキルにはヒューマンスキル・コンセプチュアルスキル・テクニカルスキルなどがあります。

管理職になる年齢に決まりはなく、若くても能力があれば登用されることがあります。一般的に、管理職になると時間外労働時間に対する割増賃金が支払われなくなりますが、管理職であっても管理監督者に該当しない場合は、一般職と同じように残業代などを支払う必要があります。こうした点をよく理解し、正しい取り扱いができるようになりましょう。


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