- 更新日 : 2025年9月9日
賃金台帳に有給休暇はどう記入する?記入例をテンプレートと共に解説
有給休暇は、労働した日数と時間に含まれるため、忘れずに賃金台帳へ記載することが重要です。
賃金台帳に有給休暇を記入する際は、有給休暇の取得を判別しやすいように印をつけると、より透明性の高い書類の作成が可能です。また、有給休暇には種類があるため、区別ごとに記載し、取得時間も明確に記載するようにしましょう。
本記事では、賃金台帳に有給休暇の記入例について解説します。賃金台帳の作成をご検討している方は、ぜひ本記事を参考にしてみてください。
目次
賃金台帳とは
賃金台帳は、従業員に支払う給与の支払い状況や勤務時間などを記載した書類です。賃金台帳の目的は、従業員に対して適切な賃金の支払いを促すことです。
賃金台帳で適切に賃金の計算・支払いを行うことにより、給与支払いのトラブルがあった場合でも法的要件を守るための根拠となります。
法定四帳簿の1つ
賃金台帳は、法定四帳簿のひとつです。法定三帳簿とは、労働基準法により作成が義務付けられている帳簿を指します。具体的には、「賃金台帳」「労働者名簿」「出勤簿」「年次有給休暇管理簿」などのことです。
賃金台帳は、労働者の賃金支払い状況を記録した帳簿で、基本給や手当、控除額などの詳細を記載します。賃金台帳を作成するのは、適切な支払いを証明する役割を果たし、万が一トラブルが発生した際の証拠資料としても役立ちます。
企業は従業員のためにも賃金台帳を作成し、5年間(当分の間は経過措置として3年間)の保存義務があるため注意が必要です。
全従業員が対象
賃金台帳の作成は、会社で働くすべての従業員が対象です。正社員や管理監督者だけでなく、アルバイトや日雇いの従業員も対象となります。
個人事業主でも、従業員がいる場合は賃金台帳の作成が義務付けられています。。
役員については、会社と雇用契約を結んでいる従業員には含まれないため、基本的には作成の必要はありません。しかし、役員報酬が支払われている場合、社会保険の手続きを行う際は賃金台帳が必要です。
そのため、基本的に従業員がいる場合は全従業員に対する賃金台帳の作成が必要であることを理解しておきましょう。
必要になる場面
賃金台帳は、雇用保険や社会保険の手続きで、新しい従業員を雇用した際や退職時に必要となる場合があります。
また、助成金の申請時にも必要書類として求められるケースがあります。さらに、労働基準監督署による立ち入り調査があった場合、賃金台帳の提出が求められることが一般的です。
調査では、残業時間や休日出勤の状況などがチェックされるため、適切に管理されていないと、是正勧告を受ける可能性や再提出を求められることがあります。
賃金台帳を整備しておくことは、法令遵守とスムーズな手続きのためにも重要です。
賃金台帳の書き方に決まりはある?
賃金台帳の書き方に明確な決まりはありませんが、労働基準法施行規則の第54条で定められている項目があります。そのため、賃金台帳を作成する際は、労働基準法施行規則を満たした帳簿の作成が重要です。
万が一、賃金台帳の作成に法定項目が抜けている場合、悪質であると判断されれば30万円以下の罰金が科される可能性があるため注意が必要です。
書式の規定は無い
賃金台帳の書式は自由とされており、必須の記載項目が記入されていれば、様式に規定はありません。そのため、Excelや手書きなど、利用しやすい方法を自由に選択可能です。
しかし、実際には多くの企業でパソコンを利用して賃金台帳を保管しています。。パソコンで賃金台帳を保管する場合、紙媒体に印刷する必要もないため、保管のしやすさがメリットといえます。
ただし、賃金台帳は個人情報を含む重要書類のため、厳重に保管できる環境を整えることも重要です。
賃金台帳の記載項目
賃金台帳には下記の10項目を必ず記載する必要があります。
従業員の氏名 | 従業員の氏名を記載する 雇用形態に関係なく、全従業員が対象 |
---|---|
従業員の性別 | 従業員の性別(男性または女性)を記載する |
賃金の計算期間 | 賃金を計算する期間を記載する |
労働日数 | 賃金計算期間中の労働日数を記載する |
労働時間数 | 賃金計算期間中の総労働時間数を記載する |
早出残業時間数 | 労働時間数のなかで、所定時間外に労働したすべての時間を記載する |
深夜労働時間数 | 時間外労働のうち、22時から翌5時までの労働時間を記載する |
休日労働時間数 | 法定休日や所定休日に労働した時間を記載する |
基本給や手当 | 基本給および手当の内容を具体的に記載する |
控除項目と額 | 年金や保険料など、控除される項目と金額を記載する |
賃金台帳は、従業員の労働時間に対して適切な賃金を支払っているかを記録するための書類です。
そのため、上記の項目の記入は従業員に対する透明性の確保のためにも重要です。とくに、労働時間や賃金の記録はトラブル回避や税務調査の際にも役立つため、不備なく記入する必要があります。
従業員に安心できる労働環境を提供するためにも、適切に作成しましょう。
賃金台帳の有給休暇の記入例
有給休暇は、労働基準法において労働日や労働時間に含める必要があります。そのため、賃金台帳の記載項目の「労働日数・労働時間」には、有給休暇を取得した日も労働日として換算し、記録しなければいけません。
たとえば、労働者が1日8時間労働で、月20日のうち2日間、有給休暇を取得した場合は下記のように記載してください。
- 労働日数:20日(有給休暇2日を含む)
- 労働時間:160時間(20日×8時間。有給休暇2日分を含む)
賃金台帳で有給休暇を記入する場合は、上記のように休暇の日数や時間を該当欄に記入し、有給休暇だとわかるように米印やカッコをつけるなどして記載してください。
わかりやすく記載することにより、有給休暇が適切に労働時間として扱われていることが明確になり、帳簿の透明性も向上します。
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賃金台帳の有給休暇を適切に記入しよう
有給休暇は、法律上労働したものとみなされるため、休暇の日数や時間を適切に賃金台帳へ記載する必要があります。
賃金台帳は労働基準法により、作成・保存が義務付けられている帳簿です。そのため、適切に記入しなければ、罰則を科される可能性があります。
有給休暇が適切に労働時間として扱われていることを一目で判断するためには、有給休暇だとわかりやすいように米印やカッコなどで印をつけることが重要です。
従業員のために適切な賃金台帳を作成するためにも、本記事の有給休暇の記入例を参考にしてみてください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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