• 更新日 : 2025年8月26日

退職届はいつまでに出すべき?手続きや処理の仕方も解説!

法律上、正社員の場合は退職日の2週間前までに退職届を提出すれば、使用者の承諾がなくても退職できるとされています。ただし、就業規則に定めがある場合は従うのが一般的です。本記事では退職届を提出する適切なタイミングや、退職までの流れなどを解説します。

退職届はいつまでに出すのがいい?

民法においては、正社員の場合はいつでも退職の申出をすることが可能で、申出から2週間が経過すれば、使用者の承諾がなくても退職できるとされています。つまり、退職日の2週間前に退職届を提出すればよいことを意味します。ただし、雇用期間が定められている有期契約の場合は規定が異なるため、注意しましょう。
また、会社の就業規則で独自に退職の申出のタイミングが決められている場合もあるため、確認が必要です。

そもそも退職届とは

退職届とは、従業員が会社に辞める意志を伝える書類のことです。基本的には、会社に退職の可否を問うものではありません。

法的には必ずしも書面で提出する必要は無く、口頭のみでもよいとされています。しかし、言った言わないなどのトラブルを避けるために、記録として提出するのが一般的です。

退職願との違い

退職願は従業員が会社に退職を願い届けるための書類であり、退職が認められない可能性もある点が退職届との違いといえるでしょう。退職届は会社に退職の可否を問わず、従業員が自身の退職の意志を通告するための書類であるためです。

適切なタイミング

前述のとおり、民法では無期契約と有期契約では規定が以下のように異なります。

無期契約(正社員)
  • 労働者はいつでも退職を申し出ることが可能、申出から2週間経過すれば雇用関係が終了する
有期契約(契約社員・アルバイトなど)
  • 基本的に労働者は、その日まで退職できない
  • ただし、やむを得ない事情がある場合には、退職できるケースも
  • 労働基準法により、期間の定めがあったとしても、契約初日から1年以上経過している場合は、いつでも退職できる(原則として1年を超える契約期間の場合)

つまり民法の規定では、正社員は退職日の2週間前までに退職の申出をすればよいとされています。しかし、会社の就業規則で「退職の1ヶ月前までに退職の申出をしなければならない」などと定められているケースも少なくありません。

民法は任意規定が大半であり、法律で一定の定めをしているものの、当事者の同意や定めがある場合、そちらが優先されると解釈されます。そのため、就業規則で規定がある場合はその決まりに従い、提出するのが一般的です。

ただし、就業規則で決められた申出時期から退職日までの期間が著しく長く、従業員の退職の自由が大きく制限されるような場合は、就業規則が無効になる可能性があります。

参考:e-Gov法令検索(民法)|デジタル庁
e-Gov法令検索(労働基準法)|デジタル庁

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退職までの流れ・スケジュール

退職届は退職の意思を明確にする書類であり、会社に可否を問うものではないことを、すでにお伝えしました。つまり、基本的には退職が認められた後に、届け出る書類であることをあらわします。

従業員が退職の意思を伝え、実際に退職するまでのおおよその流れやスケジュール感は以下のとおりです。ここでは、就業規則で退職日の1ヶ月前に退職届の提出をするように定められているケースを想定しています。

【就業規則で、退職日の1ヶ月前に退職届の提出をするよう定められている場合】

タイミングやること
2ヶ月前従業員が上司に退職の意思を伝える
1ヶ月前退職届の提出、退職日が決定する
1ヶ月前~3日前業務の引き継ぎ・有給休暇の取得
退職日当日会社の人やお世話になった人への挨拶
備品の返却・必要書類の受け取り

退職までにすべき手続き

従業員は退職に伴い社会保険雇用保険の被保険者の資格を失うため、会社は従業員の退職後にこれらの脱退手続きをしなければなりません。そのため、退職前に従業員から健康保険証を返却してもらったり、雇用保険被保険者証を渡したりといった手続きが必要です。

従業員の退職にあたって渡す、あるいは返却するものには以下のようなものがあります。

書類概要
源泉徴収票
・所得税の確定申告または年末調整を受けるために必要
・退職後1ヶ月以内の交付が義務付けられている
雇用保険被保険者証
・従業員が雇用保険に加入していたことを証明する書類
・再就職する際や専門実践教育訓練給付金を申請する際に必要
・会社が保管している場合は退職までに返却する
退職証明書(本人希望時)
・本人の希望に応じて、就業期間や業務内容、社内の地位や賃金などを記載する
離職票(本人希望時)
・雇用保険の失業給付などを受ける際に必要
・退職後、期間をあけずにすぐに再就職することが決まっている場合は不要
健康保険資格喪失証明書(本人希望時)
・退職後、国民健康保険に加入する場合に必要

退職届の注意点

退職届を休職中に提出できるかどうか、また退職届と退職願で提出のタイミングに違いがあるかどうかが気になっている方もいるかもしれません。ここからは、それぞれの内容について解説していきます。

休職中も退職届は提出できる?

結論からいうと、休職中でも退職届を提出できます。前述のとおり、民法では無期雇用の場合はいつでも退職の申出ができ、申出から2週間が過ぎれば退職が可能です。

また、雇用期間が決められている契約社員やアルバイトなどでも、やむを得ない場合には、退職できます。たとえば、休職の理由が病気やけがの場合、回復状況によっては復帰が難しいというケースもあるかもしれません。その場合、一般的には退職もやむを得ないと判断されるでしょう。

一般的な退職であれば、退職の意思を伝えるのは直属の上司であることがほとんどです。しかし、休職中に退職する場合は、人事部に報告するケースも少なくありません。病気やけがで休職している場合、体力が落ちていたりメンタルが不安定になっている可能性が高いでしょう。

体力面や精神面にかかる負担を考慮すると、そのような状況において、直属の上司に退職の話をするのは適切でない場合もあります。その場合は、人事部が直接退職の意思を確認することになります。

退職届と退職願で提出のタイミングに違いはある?

退職届と退職願の提出のタイミングは、異なるのが一般的です。退職願は退職の意思表示をするタイミングで提出し、その後、退職日が確定した際に退職届を提出しましょう。

退職願が会社に退職を願い届ける書類であるのに対し、退職届は会社に退職の可否を問わず、従業員が自身の退職の意思を通告する書類であるためです。

退職届を受け取った後の社内処理と情報共有のポイント

退職届が提出された後、企業は速やかに社内対応を開始する必要があります。適切な部門への連絡、関係部署との情報共有、退職者の個人情報や社内資産の管理など、押さえておくべきポイントを解説します。

関係部署への情報共有はタイミングと範囲を意識する

退職届が受理された時点で、まず人事部門が確認し、社内で関係する部署への情報共有を行う必要があります。対象となるのは、直属の上司・所属部署・総務・経理・システム部門などです。

ただし、情報共有のタイミングには注意が必要です。退職の申し出を受けた段階ではなく、「退職日が確定し、受理された後」に連絡を行うのが基本です。また、社内全体への周知は退職者本人の意向も確認しながら、適切な時期を見極める必要があります。早すぎる発表は職場の混乱や人間関係への影響を招くことがあるため、慎重な対応が求められます。

システム・アカウント・備品の管理を徹底する

退職が決定したら、情報システムや業務ツールに関連する管理業務を速やかに進めます。まず、メールアカウントや社内システムへのアクセス権限の削除予定日をIT部門に連絡し、退職日以降の不正利用を防止する対応を指示します。

また、パソコンやスマートフォン、セキュリティカード、制服、名刺などの貸与物についてもリストアップし、回収漏れがないようにチェックリストを作成しておくと安全です。機密情報を取り扱うポジションの場合には、データのバックアップや閲覧ログの確認など、リスク管理も併せて実施します。

書類管理と個人情報の保護を適切に行う

退職届自体は、労働契約書や雇用履歴とともに人事ファイルとして保存します。保存期間の目安は、労働関係の記録は経過措置として3年の保管で足りるとされていますが、本来の保管期間に基づき5年保管しておくことが望ましいでしょう。

また、退職者の個人情報(住所、口座番号、連絡先など)は、退職後も適切に保護されなければなりません。不要な情報の削除やアクセス制限を設け、社内での取り扱いに細心の注意を払う必要があります。離職証明書の作成や退職証明書の発行など、公的書類の管理も含めて、法令順守の観点から整備された体制が求められます。

退職届の受理を拒否された場合の対応

従業員が退職届を提出したにもかかわらず、企業側が受理を拒否する場面は珍しくありません。ここでは、受理拒否の扱いと適切な対応について解説します。

退職の意思表示は「一方的に有効」とされる

労働者が退職の意思を示した場合、その意思表示は民法627条に基づき、雇用主の承諾がなくても成立します。これは「退職の自由」として法的に保護されており、期間の定めのない雇用契約では、退職の申し出から2週間経過すれば労働契約は終了します。

したがって、会社が「退職届を受け取らない」「今は辞めさせない」といった理由で受理を拒否しても、法的には退職の効力を妨げることはできません。拒否したかどうかにかかわらず、労働者が退職の意思を明確に伝えれば、それは有効に成立します。

トラブル回避のためには文面で退職の意思を伝えたほうがよい

企業が退職届の受理を拒否しても、従業員が退職日以降に出社しない、または私物を引き揚げた場合、「黙示の退職」として見なされる可能性が高くなります。実務では、受理の有無よりも退職の意思とその通知記録があるかどうかが重視されます。

トラブルを避けるためには、口頭ではなく、書面またはメールなど証拠が残る形で退職の意思を伝えることが望ましいです。仮に手渡しで退職届が拒否された場合は、内容証明郵便で会社に送付する方法も有効です。

企業側がとるべき対応とは

企業側としては、退職の申し出があった場合には、その意思を尊重し、速やかに手続きに移ることが望まれます。無理に慰留する、または受理を拒むと、退職者との関係悪化だけでなく、労働トラブルに発展するリスクもあります。

退職届の記録・保管、離職票や社会保険の手続き、業務引継ぎの段取りなど、粛々と退職処理を進めることが、円満な退職につながります。また、退職理由をめぐる労災やハラスメント問題が関係する場合には、会社としての記録と対応を明確に残しておくことも重要です。

退職代行を使う場合は退職届は不要?

退職代行サービスを利用する人が増えるなか、「退職代行を使えば退職届は出さなくてもいいのか?」という疑問を持つ方も少なくありません。結論として、退職代行を使った場合でも、退職届の提出は基本的に必要です。ここではその理由とポイントを解説します。

退職の意思表示自体は退職代行でも可能

退職は、労働者が会社に対して一方的に意思表示をすることで成立します。つまり、会社側の承諾は不要です。退職代行業者を通じて退職の意思が明確に伝えられた場合、その時点で法律上は「退職の申し出」があったとみなされます。

民法第627条では、期間の定めのない雇用契約の場合、退職の意思表示から2週間が経過すれば契約は終了すると定められています。したがって、退職代行が会社に退職の意思を確実に伝えたのであれば、労働契約の終了手続きは原則として進められます。

退職届は書面としての証拠となる

一方で、退職届は単なる形式的なものではなく、労働者本人の意思を文書で明示した証拠として機能します。後日、退職理由や退職日をめぐってトラブルが生じた際、会社側も退職者側も「言った・言わない」の争いを避けるために、書面での退職届が重要な役割を果たします。

また、退職届は就業規則や社内手続きの一環として必要とされるケースも多く、提出がなければ「退職手続きが完了しない」とみなされることもあります。退職代行業者から「退職届の提出は不要」と言われても、実務上は書面の提出が望ましいと考えるべきです。

退職代行利用時の注意点

退職代行サービスを利用する場合、事前に退職届を自筆で用意し、業者に代理提出を依頼するのが一般的な方法です。退職日や退職理由、氏名、日付などを明記し、会社宛に郵送または直接届けてもらうよう手配します。内容証明郵便などを使えば、提出の事実を法的に証明することも可能です。

なお、退職代行業者の中には弁護士資格を持たない民間業者もあります。その場合、会社と交渉を行うことは違法となるため、手続きが滞るリスクもあります。交渉が必要な場合(未払い賃金や有給消化など)は、弁護士が運営する退職代行を選ぶことが安心です。

退職届を提出後に撤回はできる?

退職届を提出したものの、「やっぱり辞めたくない」と思い直すケースもあります。このとき、提出済みの退職届を撤回できるのかどうかは、退職の成立時期や会社の対応によって異なります。ここでは、退職届の撤回が認められるかどうかの判断基準と注意点を解説します。

基本原則:会社が受理していなければ撤回は可能

民法上、退職は労働者の一方的な意思表示によって成立しますが、その効力は相手方(会社)に到達した時点で生じます。したがって、退職届を提出後、会社がまだ退職を了承していない段階であれば、撤回は原則として可能です。

たとえば、退職届を提出しても、まだ人事部が確認していない、受理通知が来ていないなど、退職手続きが進んでいない状況であれば、速やかに「撤回したい」と申し出ることで受け入れられる余地があります。

退職届の受理後や処理済みの場合は撤回できない可能性が高い

一方で、会社が退職の意思を受け入れ、既に人事手続きが進んでいた場合は、退職の効力が確定していると見なされ、撤回は認められないことが一般的です。
たとえば、後任の人事異動が決まった、有給消化や退職日が通知された、社内システムから削除されるなど、退職を前提とした対応が具体的に行われている場合には、撤回の申し出は拒否される可能性があります。

このため、撤回のタイミングが重要です。「提出したが即時に後悔した」といった場合は、速やかに意思を明確に伝えることが重要です。

実務上の対応と文書の取り扱い

退職届を撤回する際には、できる限り書面またはメールなど証拠が残る方法で撤回の意思を伝えることが望ましいです。口頭だけでは撤回の事実を証明しにくく、会社が「受理済み」と主張した場合に争いになることがあります。

また、退職届が「退職願」であった場合、会社の承諾をもって退職が成立するため、承諾前であれば撤回の余地が比較的高くなります。一方、「退職届」は労働者の明確な退職の意思表示であり、会社が受理した時点で一方的な撤回は難しくなります。

退職届の提出期限についてしっかり理解し、スムーズに手続きを行いましょう!

民法の規定上は、正社員であれば退職日の2週間前までに、退職の申出をすればよいとされています。会社によっては、それよりも早いタイミングで退職の申出をするように就業規則で定めているケースもあるかもしれません。その場合、就業規則に従って提出してもらうようにしましょう。

ただし、どのような就業規則でも法律よりも優先されるわけではありません。従業員の退職の自由が極端に制限されるような、退職日までの期間が著しく長い規定は無効になる可能性があります。

退職に関して、会社と従業員に認識のずれがあると、後で大きなトラブルに発展する可能性があります。会社として法律や就業規則をしっかりと理解するとともに、従業員にも適切な情報共有を行うことが重要です。

よくある質問

退職届はいつまでに出すのがいいのでしょうか?

民法では、正社員であれば退職日の2週間前までに提出をすればよいとされています。就業規則に定めがある場合は、そちらに従うのが一般的です。詳しくはこちらをご覧ください。

退職までにどんな手続きを行うべきですか?

退職前に従業員から健康保険証を返却してもらったり、雇用保険被保険者証を渡したりといった手続きが必要です。詳しくはこちらをご覧ください。


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