- 更新日 : 2021年11月4日
マイナンバー導入で相続はどう変わる?
平成28年から本格的に稼働した社会保障・税番号(マイナンバー)制度では、同年1月1日以後に生じた相続または遺贈により取得した財産についての申告から、マイナンバーの記載が必要となります。
マイナンバーが導入され、これからの相続はどう変わっていくのでしょうか。ここでは相続税申告の手続きだけでなくマイナンバーの様々な用途を踏まえながら、今後の相続税対策のあり方について解説します。
マイナンバー導入で資産状況が筒抜けに!
「相続税の申告書」にもマイナンバー記入欄
(出典:相続税申告書|国税庁HP)
平成27年6月30日、国税庁のページに「相続税の申告書第一表」が掲載されました。この書類上部にある「各人の合計(被相続人)」と「財産を取得した人」の欄の下に、「個人番号又は法人番号」の欄が設けられています。
その他のマイナンバーの用途
マイナンバーは相続税申告以外にもあらゆる資産に関する申告に記載が必要とされています。
贈与税申告でも申告書に受贈者のマイナンバーが必要ですし、所得税申告では申告者だけでなく、控除対象配偶者、控除対象扶養親族、事業専従者のマイナンバーが必要です。
給与・年金等の源泉徴収票でも給与支払者、給与受給者、控除対象配偶者、扶養義務者のマイナンバーを源泉徴収票に記載しなくてはなりません。
その他上場株式や投資信託の取引内容が記載される特定口座年間取引報告書、株式配当や投資信託の分配金の支払を証明する配当金・分配金支払調書、200万円以上の金の買取に必要な金買取調書などにもそれぞれ関係者のマイナンバー記載が平成28年1月から必要となります。
また政府は平成30年1月から、マイナンバーを預金口座に紐付ける「預貯金口座付番制度」を開始しています。現状で新規口座開設や氏名・住所変更時にマイナンバーの届出を依頼するが、提示するかどうかは任意となっています。
銀行預貯金口座へのマイナンバーの付番が開始されてから3年を目処に「預金口座に対する付番状況等を踏まえて、必要と認められるときは、預金口座への付番促進のための所要の措置を講じる旨の見直し」を行う予定であることも公表しており、預金者の銀行等に対するマイナンバーの提出が義務付けられる可能性もあります。
マイナンバー導入で資産状況が筒抜けに

マイナンバー導入によって相続財産や贈与財産、給与や年金、配当金や分配金、そして預貯金などあらゆる資産にマイナンバーは紐づけられます。
マイナンバーさえわかれば国民の資産状況が把握できるので、政府の国民の資力調査・税務調査の効率が向上するのです。特に被扶養者にも関わらず預金残高が多い人や、株や投資信託の取引・配当の多い人、過去の収入に比べて死亡時の財産が少ない人などは、税務調査の対象となる可能性が高くなるでしょう。
これまで以上に計画的な相続税対策を!
マイナンバーにより資産状況が筒抜けにはなりますが、相続税対策の基本はこれまでと変わりません。その基本とは以下の5つです。
1.相続人を増やして税率区分を下げる。
→相続税は所得税と同じ累進課税です。そのため養子縁組制度を利用して相続人を増やし、1人あたりの相続額を少なくすることで納税額を軽減することができます。また相続人が1人増えるごとに600万円ずつ基礎控除額が追加されます。
2.所有財産の評価額を下げる。
→土地や建物などの不動産は、その状況に応じて財産評価額が変動します。更地を持っている人はアパートやマンションを建てるなどすると、評価額を下げることが可能です。
3.返済可能な借金を作っておく。
→借入金残高は全て「債務控除」として扱われるので、相続税額を減少させる効果があります。
4.財産を生前贈与する。
→年間110万円までの基礎控除のほかにも、贈与税には様々な特例があります。これらを利用して相続財産を減らしておけば、相続税額を減らすことが可能です。
5.納税資金として生命保険などを活用する。
→大口の生命保険に加入すれば相続税を支払うためのお金が用意できると同時に、保険の掛け金の支払によって相続財産の低減にもなります。
しかしこれまでよりも資産の「ごまかし」が通用しにくくなるのは確かです。今後はあらかじめ専門家に相談するなど、計画的な節税対策が求められます。
まとめ
マイナンバー導入の目的の1つはより公平・公正に課税することです。だからこそあらゆる資産の申告にマイナンバーの記載を義務付け、資産状況の透明化を図っているのです。
これにともなってこれまでのような資産の「ごまかし」は通用しなくなります。とはいえできるだけ税金は少なくしたいもの。そのためにもこれまで以上に計画的な節税対策を行う必要があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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