- 更新日 : 2025年8月20日
退職後の住民税の手続きを徹底解説!会社と退職者本人がそれぞれやるべきこととは?
退職者の住民税は、在職中と支払い方が大きく変わるため、「いつ、いくら請求されるのだろう」「何か手続きが必要なのだろうか」と不安に感じる方も少なくありません。住民税は前年の所得に対して課税されるため、退職して収入がなくなった後も支払い義務が生じます。
この記事では、退職後の住民税に関する手続きについてわかりやすく解説します。退職時期による納付方法の違いやご自身でやるべきこと、納付書がいつ届くのか、そして支払いが困難な場合の対処法まで解説しますので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
退職後に住民税の支払いが必要な理由
会社を辞めたのになぜ住民税を払う必要があるのか、疑問に思う方もいるでしょう。ここでは、住民税の基本的な仕組みと、在職中との納付方法の違いについて解説します。
住民税は後払いの税金
住民税が退職後も課税される最大の理由は、その課税方式にあります。住民税は、その年の所得ではなく前年1月1日から12月31日までの1年間の所得をもとに税額が計算され、翌年に納付する仕組みです。
例えば、2024年中に得た所得に対する住民税は、2025年6月から2026年5月にかけて支払うことになります。そのため、2025年に退職して収入がなくなったとしても、2024年分の所得に対する住民税の支払い義務は残るのです。この点を理解しておくことが重要です。
給与天引きの特別徴収から、自分で納付する普通徴収へ
在職中は、会社が毎月の給与から住民税を天引きし、本人に代わって市区町村に納付する「特別徴収」という方法が取られています。しかし、退職すると給与からの天引きができなくなるため、原則として、自分で直接市区町村に納付する「普通徴収」に切り替わります。
退職後の住民税の納付方法
住民税の納付方法は、退職した月によって大きく2つのパターンに分かれます。ご自身の退職時期がどちらに該当するかを確認し、適切な対応を把握しましょう。
退職時期 | 5月までの 住民税の支払い方法 | 翌年5月までの 住民税の支払い方法 |
---|---|---|
1月1日~5月31日 | 最後の給与・退職金から 一括徴収 | 6月から新年度分を 普通徴収 |
6月1日~12月31日 | 退職月分まで給与天引き | 残りの月分を普通徴収 または一括徴収(選択可) |
1月1日~5月31日に退職した場合
1月1日から5月31日の間に退職した場合、その年度の5月分までの住民税(前年分の所得に対する税金)の未納分が、最後の給与や退職金から一括で天引き(一括徴収)されます。これは地方税法で定められており、原則として本人が選択することはできません。
例えば3月末に退職した場合、3月・4月・5月の3ヶ月分の住民税が、3月の最終給与からまとめて差し引かれます。一度に引かれる金額が大きくなるため、事前に給与明細などで月々の住民税額を確認しておくと安心です。
6月1日~12月31日に退職した場合
6月1日から12月31日の間に退職した場合は、2つの選択肢があります。退職する会社に申し出をしない限り、原則として普通徴収へ移行します。
普通徴収の場合、退職した月の住民税までは最後の給与から天引きされ、残りの期間(翌年5月まで)の分については、後日、市区町村から送られてくる納付書を使って自分で支払います。
本人が希望すれば、残りの税額を最後の給与や退職金からまとめて支払う一括徴収も選択可能です。引越しなどで手続きを一度に済ませたい場合に便利です。
従業員の退職後に会社が行う住民税の手続き
従業員が退職すると、会社は退職日の翌月10日までに「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」という書類を、従業員が住む市区町村の役所に提出する義務があります。
この書類によって、会社は「この従業員は退職したので、特別徴収から普通徴収に切り替えます」あるいは「残りの税額を一括徴収しました」ということを役所に報告します。この手続きは会社が行うため、原則として本人が役所で手続きをする必要はありません。
参考:給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書|総務省
退職者本人が行う住民税の手続き
6月〜12月に退職し、普通徴収を選択した場合、特別な手続きは不要です。会社が「給与支払報告・特別徴収に係る給与所得者異動届出書」を提出すると、市区町村がそれを元に普通徴収用の納付書を作成し、あなたの自宅へ郵送します。
納付書が届いたら、記載された納期限までに、金融機関の窓口、コンビニエンスストア、または口座振替などで納税します。通常、年4回(6月、8月、10月、翌年1月)に分けて支払いますが、同封されている全期分の納付書を使えば一括での支払いも可能です。
住民税に関する手続きや相談の窓口は、その年の1月1日時点で住民票があった市区町村の役所(住民税課や課税課など)です。例えば、2025年1月1日にA市に住んでいて、3月にB市へ引っ越してから退職した場合でも、2025年度の住民税を納めるのはA市になります。問い合わせや相談をする際は、管轄の市区町村を確認しましょう。
退職本人が住民税以外に行う手続き
退職後は、住民税以外にも健康保険や年金、失業保険など、生活に関わる重要な手続きがいくつもあります。ここでは、一般的な手続きの順番を紹介します。それぞれの期限も確認しておきましょう。
1. 失業保険の手続き
退職後、次の就職先が決まっていない場合は、失業保険(雇用保険の基本手当)の受給手続きを行います。
手続きは、自分の住所地を管轄するハローワークで行います。会社から交付される離職票と、マイナンバーカード、本人確認書類、写真、印鑑、預金通帳などを持参します。手続き後、待機期間や給付制限期間を経て、手当が支給されます。
2. 健康保険の切り替え手続き
退職すると、会社の健康保険(社会保険)の資格を失います。健康保険の切り替え手続きは、原則として退職日の翌日から14日以内に行う必要があります。以下のいずれかを選択して手続きを進めましょう。
- 国民健康保険に加入する
- 任意継続被保険者制度を利用する
- 家族の扶養に入る
どの選択肢が最適かは、保険料やご自身の状況によって異なります。
3. 年金の切り替え手続き
会社員は厚生年金に加入していますが、退職後は国民年金への切り替えが必要です。こちらも退職日の翌日から14日以内に、市区町村の役所の国民年金担当窓口で手続きを行います。本人確認書類のほか、年金手帳または基礎年金番号通知書、退職日がわかる書類(離職票など)などが必要です。
これらの手続きは、将来の生活を支える上で非常に重要です。期限内に忘れずに行いましょう。
退職後の住民税に関してよくある質問
ここでは、退職後の住民税に関して多くの方が抱く疑問について、Q&A形式で具体的にお答えします。いざという時に慌てないよう、事前に確認しておきましょう。
退職後、住民税の納付書はいつ届く?
退職時期と、お住まいの市区町村の処理状況によって異なります。
- 6月〜12月に退職した場合
会社からの異動届出書を役所が受理した後、随時発送されます。一般的には退職してから1〜2ヶ月後が目安ですが、会社の事務処理の状況によって前後します。 - 翌年度分の納付書
前年所得に対する新しい年度の納税通知書と納付書は、毎年6月上旬から中旬にかけて一斉に発送されます。
退職後、住民税は何ヶ月分を支払う必要がある?
住民税は、毎年6月から翌年5月までを1つの年度として支払います。
例えば、9月末に退職した場合、その年度の住民税は9月分までが給与から天引きされます。残りの期間である10月分から翌年5月分までの合計8ヶ月分を、普通徴収または一括徴収で支払うことになります。自分がいつ退職し、何月分まで天引きされているかを確認することが大切です。
住民税の支払いが困難な場合、免除や減免は可能?
退職して収入が大幅に減少した場合でも、前年の所得に基づいて課税されるため、原則として住民税の免除はありません。
ただし、会社の倒産や解雇といった理由で失業した場合や、災害、病気などで生活が著しく困難になった場合には、減免制度を利用できる可能性があります。適用条件は自治体によって大きく異なるため、支払いが難しいと感じたら、速やかに管轄の市区町村役場に相談してください。その際、離職票や雇用保険受給資格者証など、失業を証明する書類が必要になる場合があります。
転職先が決まっている場合の住民税の手続きは?
退職後、間を空けずに(おおむね1ヶ月以内)次の会社へ入社する場合は、転職先で特別徴収を継続できる場合があります。
この手続きを希望する場合は、まず退職する会社の人事・総務担当者にその旨を伝え、転職先の会社にも特別徴収の継続を希望する旨を申し出てください。会社間で必要書類のやり取りが行われ、スムーズに引き継がれれば、自分で納付する手間が省けます。
退職後に住民税の手続きをしっかりと理解しましょう
この記事では、退職後の住民税について解説しました。まず、住民税は前年の所得に対する後払いのため、退職して収入がなくても支払い義務が続きます。手続きの大部分は会社が行いますが、納税自体は本人が行うなど、役割分担を把握することが大切です。
納付方法は退職月によって決まり、特に1月〜5月に退職すると最後は一括での天引きになります。もし支払いが困難になった場合は、決して放置せず、速やかに役所に相談してください。そして、住民税だけでなく、健康保険や年金など、期限のある手続きを計画的に進めることが、退職後の生活を安定させる上で非常に重要です。この記事を参考にご自身の状況を確認し、落ち着いて準備を始めましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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