- 更新日 : 2025年3月18日
外国人雇用の採用手続きと必要書類|確認事項や注意点も解説
外国人雇用は、日本人採用と異なる手続きが必要です。誤った手続きをおこなうと、雇用者だけでなく、企業側にも法的なリスクが生じます。
本記事では、外国人の雇用手続きや注意点、活用できる助成金について解説します。ぜひ参考にしてください。
目次
外国人労働者の採用前に確認しておくこと
外国人労働者を採用する際は、スキル経験の確認にくわえて、法的な事前確認が不可欠です。本章では、採用前にチェックしておく事項をわかりやすく解説します。
なお、以下の記事では外国人労働者を雇用するメリットや採用方法を紹介しています。あわせて。ぜひご覧ください。
関連記事:外国人労働者を雇用するには?受け入れるメリットや問題、採用方法を解説
在留資格
外国人労働者の在留資格が、就労可能な業務であるか確認することが重要です。
在留資格には、「就労が認められるもの」・「就労が制限されているもの」・「就労が一切認められないもの」があります。
確認箇所 | 種類 | 概要 |
---|---|---|
「就労制限の有無」欄 | 就労不可 | 一切働けない在留資格 |
在留資格に基づく就労活動のみ可 | 在留資格で認められた職種に限り就労可能 | |
指定書により指定された就労活動のみ可 | 個別に指定された業務のみ従事可能 | |
就労制限なし | 就労の制限がない在留資格 | |
裏面の「資格外活動許可」欄 | 許可(原則週28時間以内・風俗営業等の従事を除く) | 学生などがアルバイトとして働ける場合 |
許可(資格外活動許可書に記載された範囲内の活動) | 特定の条件下で認められた活動 |
上記の確認を怠ると、企業側も罰則を受ける可能性があります。採用時には、必ず各項目を正確にチェックしておきましょう。
在留カードの偽造
在留資格の確認にあわせて、在留カードに偽造がないかも確認しましょう。偽造と見抜けずに雇用した場合、企業側は不法就労助長罪で罰則を受ける可能性があります。確認方法は以下のとおりです。
方法 | 詳細 |
---|---|
在留カード等読取アプリケーション |
|
在留カード等番号失効情報照会 |
|
見た目で確認 |
|
外国人労働者を安心して雇用できるように、必ず在留資格・在留カードの真偽を確認しましょう。
【ケース別】外国人労働者を採用する前の手続き
外国人労働者の内定後は、労働契約を結びます。その際に準備する書類は以下のどちらかです。
雇用契約書 |
|
---|---|
労働条件通知書 |
|
双方の認識にズレが生じないようにし、トラブルを回避しましょう。内容を確認する際は、合意した証拠を残せる「雇用契約書」が望ましいです。
なお、雇用契約書や労働条件通知書を作成する際のポイントは、以下のとおりです。
- 母国語での記載
- 停止条件の記載
外国人労働者が契約内容を正しく理解できるように、母国語で書類を用意できるとよいでしょう。日本語のみでは誤解を生むおそれがあります。英語・中国語・ベトナム語など、必要に応じて多言語対応できるとよいです。
停止条件とは、外国人労働者が在留資格を取得できなかった場合など、契約効力が無効となる条件を指します。トラブルを避けるためにも、契約が無効になるケースも伝えておきましょう。
なお、外国人労働者の雇用手続きは、ケースによって異なります。次章より、ケースごとで必要な手続きについて解説します。
- 日本企業で働く外国人を採用する場合の手続き
- 外国人留学生を正社員で採用する場合の手続き
- 海外在住の外国人を採用する場合の手続き
以下の記事で、入社後のフォロー方法について解説しています。あわせて、ぜひご覧ください。
関連記事:外国人の入社手続きについて徹底解説!注意点や入社後のフォローも解説
日本企業で働く外国の採用手続き
外国人が日本国内で転職する場合、新たにビザを取得するのではなく、現在の在留資格が自社の業務に適しているかを確認することが大切です。
就労可能かは在留資格の種類によって決まります。具体的には以下のとおりです。
- 前職と同じ区分に転職する場合は、ビザの変更は不要
- 前職と異なる区別に転職する場合は、在留資格変更許可申請が必要
在留資格で認められていない業務に就くことは不法就労となり、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があります。
外国人留学生を正社員採用する場合の手続き
日本にいる留学生を正社員雇用する場合は、留学ビザから就労ビザへ変更する必要があります。
申請者本人で、最寄りの出入国在留管理局・出張所などへ申請をおこない、許可されれば就労ビザへ変更されます。
企業側は、必要書類の準備や在留資格変更に関するサポートをおこない、スムーズに入社できるようにしましょう。審査期間は、通常1ヶ月〜3ヶ月程度かかります。
海外在住の外国人を採用する場合の手続き
国内在住の外国人・留学生は、海外在住の外国人に比べて手続きに時間がかかる点に注意が必要です。内定後は、すぐに行動をはじめましょう。
4月入社など、入社時期が決まっている場合は、逆算しておくと安心です。申請の流れは以下のとおりです。
- 企業が入国管理局「在留資格認定証明書」を申請
- 「在留資格認定証明書」が発行
- 労働者本人が現地の日本大使館へ就労ビザの申請
- 許可されると就労ビザ取得
在留資格認定証明書とは、日本へ入国する外国人の活動が在留資格に適合するかを証明する書類になります。なお、発行から3ヶ月以内に入国しなければ、無効となってしまう点に注意しましょう。
もし、申請手続きが不安な場合は、人材派遣会社を介しての採用がおすすめです。人材派遣会社によっては、申請から入社まで一通りの手続きをサポートしてもらえます。
外国人労働者の雇用手続き
外国人労働者が実際に入社したら、以下の2つの手続きが必要になります。
雇用状況の届出をする
外国人が採用・退職した場合は、ハローワークへ「外国人雇用状況の届出」をおこなう必要があります。
雇用保険に加入の場合は、「雇用保険被保険者資格取得届」 が届出の代わりになるため不要です。雇用保険被保険者の対象者は、日本人雇用と同様に雇用保険加入手続きが必要です。
以下より流れを確認しておきましょう。
1. 加入対象の確認 |
|
---|---|
2. 必要書類の準備 |
|
3. 提出先と期限 |
|
4. 手続き完了 |
|
過去に雇用保険に加入している場合は、以前の雇用保険番号を確認し、雇用保険被保険者資格取得届に記載して提出します。
社会保険・厚生年金の加入手続きをする
健康保険・厚生年金に加入の事業主に雇用されている外国人労働者も、一定の条件を満たすことで被保険者となり、手続きが必要です。加入条件は以下のとおりになります。
- 健康保険・厚生年金に加入している事業所に雇用されていること
- 正社員だけでなく、一定の条件を満たすパート・アルバイトも対象
なお、手続き方法は日本人労働者と同様です。
1. 提出書類 |
|
---|---|
2. 提出先 |
|
3. 提出期限 |
|
また、外国人労働者がマイナンバーを登録していない場合は、以下の書類により本人確認がおこなわれます。
- 旅券の資格外活動許可証印のページの写し
- 資格外活動許可書の写し
- 就労資格証明書の写し
- 運転免許証
- パスポート
- 現地における公的機関の発行した資格証明書(写真付き)等の写し
外国人を採用・雇用する際の注意点
外国人労働者を採用する際は、日本人を雇用する場合とは異なるいくつかの重要なポイントに注意する必要があります。以下をおさえておきましょう。
- 業務に沿った在留資格が必要
- 在留資格の管理と更新
- 同一労働・同一賃金の遵守
業務に沿った在留資格が必要
外国人の雇用は、在留資格と業務内容が一致することが不可欠です。
たとえば、「技術・人文知識・国際業務ビザ」の在留資格を有する外国人労働者であれば、エンジニア・通訳・デザイナーなどが可能です。そのため、在留資格に記載がない工場作業をさせることはできません。
認められていない業務に従事させる行為は、「不法就労」に該当し、企業側も「不法就労助長罪」として、以下の罰則を受ける可能性があります。必ず確認しましょう。
- 3年以下の懲役または300万円以下の罰金
- 企業名が公表される場合もある
ただし、在留資格は代表的なものだけでも20種類以上あり、どの資格が自社の業務に適するか不明なケースもあります。在留資格と一致するか判断が難しい場合は、 行政書士や入管業務の専門家へ相談するとよいでしょう。
在留資格の管理と更新
永住者を除く外国人は、在留期間が定められています。そのため、長期的に外国人労働者を雇用する場合は、在留資格の更新が必要になります。
在留期間を過ぎた状態の就労希望者の場合は、「在留期間更新許可申請」をおこないましょう。更新手続きは、在留期限の3ヶ月前から申請可能です。
在留期限を過ぎてしまうと、労働者本人は不法滞在となり、企業は不法就労助長罪に問われる可能性があります。更新を忘れないようにしましょう。
更新忘れの防止は、外国人労働者の在留期限をリスト化して管理するなどが有効的です。
同一労働・同一賃金の遵守
同一労働・同一賃金とは、国籍に関係なく同じ賃金・待遇を支払うべきというルールです。たとえば、以下のようなケースは認められません。
- 同じ業務をしているのに外国人の方が給与が低い
- ボーナス、手当、福利厚生が外国人だけ対象外
- 外国人だからという理由だけで昇進の機会が制限される
「外国人だから」という理由で待遇に差をつけることは違法です。守らない場合は、以下のような罰則が科されます。
- 労働局からの指導・勧告
- 企業名の公表
- 従業員から損害賠償請求を受ける可能性
在留資格は、外国人労働者が日本で安定した生活が送れることを前提に許可されます。そのため、同一労働・同一賃金は賃金だけでなく、在留資格の取得にも影響を及ぼします。
たとえば、給与が極端に低いと「この条件では生活が成り立たない」と判断され、在留資格の取得・更新できない場合です。
同一労働・同一賃金が遵守されていないと、採用しても入社できない可能性があります。いま一度、待遇面を確認してみましょう。
外国人雇用の際に活用できる助成金
外国人雇用の際に活用できる助成金に、「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」があります。外国人が安心して働ける環境へ整える目的であれば、経費が支援される制度です。
以下より、助成金の概要・受給要件をまとめています。ぜひご参考ください。
項目 | 内容 |
---|---|
助成金の名称 | 人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース) |
目的 | 外国人労働者が働きやすい環境を整備するための経費を助成 |
対象企業 | 外国人労働者を雇用する事業主(雇用保険適用事業所) |
対象労働者 | 雇用保険被保険者となる外国人労働者 |
助成対象となる取り組み | 外国人向けの就業規則・労働条件通知書の多言語化 外国人労働者向けの相談窓口の設置 通訳・翻訳サービスの導入 社内研修の実施(日本語教育、異文化理解など) |
助成額 | 【賃金要件を満たしている場合】 対象経費の1/2 (上限57万円) 【賃金要件を満たす場合】 対象経費の2/3 (上限72万円) |
申請期限 | 取り組み完了後、所定の期限内に申請が必要 |
なお、助成金を受けるには以下の条件を満たす必要があります。
- 外国人労働者が雇用保険に加入していること
- 外国人向けの就労環境整備に取り組むこと
- 就労環境整備計画期間終了後の一定期間経過後における外国人労働者の離職率が10%以下であること
- 労働関係法令を遵守していること
助成金をうまく活用することで、外国人労働者の働く環境だけでなく、企業の負担も減らせます。詳しい要件や申請方法については、厚生労働省の公式ページからも確認ください。
参考:厚生労働省「人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)」
採用前に入社前・入社後の手続きを確認しておこう
外国人労働者を採用する際には、在留資格の確認や在留カードの真偽チェックなど、確認作業が多岐にわたります。手続きが誤っていると、採用企業側にも罰則が科されます。
また、労働内容・賃金も公平にすることが大切です。トラブルを未然に防げるように、手続きを正確におこない、双方が安心して働ける環境を目指しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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