• 更新日 : 2025年2月28日

「有給」と「有休」はどっちが正しい?日数や使い方もわかりやすく解説

「有給」と「有休」はどっちが正しい表現なのか気になったことはありませんか?この記事では、2つの言葉の違い、法律上の正しい使い方、そしてビジネスシーンでの実際の運用方法について詳しく解説します。この記事を読めば、「有給休暇」についての正しい知識を身につけ、職場で適切に活用できるようになります。

「有給」と「有休」はどっちが正しい?

「有給」と「有休」は、いずれも年次有給休暇を指す略語で、意味としてはどちらも間違いではありません。ただし、それぞれ略し方が異なるためニュアンスに違いがあります。

「有休」は「有給休暇」の「有(有給)+休(休暇)」を組み合わせた略称で、他の言葉に紛れることなく有給休暇だけを意味します。一方、「有給」は「給料があること」、つまり無給の反対語としての意味も持つ単独の言葉です。

例えば「有給の研修」というように「給料が支給される」という文脈でも使われるため、「有給」と書いただけでは「給料がある」という意味に捉えられてしまう可能性があります。このように意味の幅が異なることから、休暇を意味する略語としては「有休」の方がより正確だと言えるでしょう。

もう一つ、略語としての成り立ちの視点から違いを見てみましょう。他の休暇制度では、産前産後休暇は「産休」、育児休業は「育休」、病気休暇は「病休」など、「○休」という形で略されるのが一般的です。このルールに倣うと、有給休暇は「有休」と略すのが自然な形となります。一方の「有給」は先述のとおり略語以外の意味を持つため、漢字二文字で休暇を表す略称としてはやや統一感に欠けます。

このような背景から、「有給」より「有休」の方が正しいという見解も多く見られます。しかし結論としては、どちらも慣習的に使われており誤りではないので、過度に心配する必要はありません。

法律上の正しい表現

法律上は「有給」「有休」という略語は用いられず、正式名称が定められています。法令で定められている有給休暇の正式名称は「年次有給休暇」と言います。これは労働基準法第39条により定義された制度で、一定の条件を満たした労働者に対し有給で休暇を与えることを企業に義務付けているものです。したがって、公的な文書や法律上の文脈では「年次有給休暇」あるいは略さず「有給休暇」と表記するのが正しい表現となります。企業の就業規則などでも正式名称で記載されるのが通常です。

なお、「年次有給休暇」はしばしば「年休」と略されることもあります。これは「年次有給休暇」の「年(年次)+休(休暇)」をとった略称で、主に労務管理の場面などで使われることがあります。例えば行政や企業の書類上では「年休取得率」などの形で使われる場合がありますが、一般の会話ではあまり馴染みがないかもしれません。

ビジネスシーンでの使われ方

職場で日常的に使う場合、「有給」と「有休」のどちらを使うかは企業や職場の慣例によって異なります。テレビや新聞などのメディアでも両方の表記が見られるように、実際のビジネスシーンでも厳密なルールはなく、どちらを使用しても問題ありません。ただし、社内でどちらかに統一している場合はそのルールに従う方が無難です。例えば社内の公式書類やシステム上の表記が「有休」で統一されていれば、社員同士の会話やメールでも「有休」に揃える方が分かりやすいでしょう。

一方で、文章に書く場合は略さず「有給休暇」と書くことが望ましいという意見もあります。特に社外向けの文書や正式なメールでは、「有給」あるいは「有休」だけでは読む人に伝わりづらい恐れがありますし、「『有給を取りたい』というのは『給料が欲しい』という意味か?」などと揚げ足を取られる可能性もゼロではありません。そのため、誤解を招かないように正式名称で記載することをおすすめします。また、会話の中でも目上の人や取引先に対しては「有給休暇をいただきます」のように丁寧に言い表すと良いでしょう。

労働基準法における「有給休暇」の取り扱い

年次有給休暇(有給休暇)は、労働基準法第39条で定められた労働者の権利です。簡単に言えば、一定の勤務期間を満たした労働者に対し、働きながら休暇を取得できる制度を保障するものです。労働者が休みたいと希望したときに、その日を有給で休めるよう会社に義務付けた制度であり、賃金を保障しつつ労働義務を免除する休暇と定義できます。これは労働者の心身のリフレッシュを図り、ワークライフバランスを促進する目的が込められています。

労働基準法で定められた正式名称「年次有給休暇」が示す通り、この休暇は毎年発生する有給の休暇です。つまり一度きりではなく、条件を満たしている限り毎年規定の日数が付与されます。なお、有給休暇の具体的な付与条件や日数についても法律で細かく規定されています。2019年の法改正では、有給休暇の取得を促進するため、年5日の取得義務が設けられ、企業は従来以上に適切な有給休暇管理が求められるようになりました。

有給休暇の取得条件

年次有給休暇が付与されるための基本条件は2つあります。

  1. 雇い入れから6ヶ月継続勤務していること
  2. その期間の全労働日の8割以上出勤していること

参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省

この条件を満たした労働者には、法律上必ず有給休暇が与えられます。ポイントは、正社員かアルバイトかといった雇用形態に関係なく適用されるという点です。たとえパートタイムや契約社員であっても、上記の勤続期間と出勤率を満たせば所定の日数の有給休暇が与えられます。

これは会社が明示的に許可しなくても法律上自動的に発生する権利であり、会社側が「うちの会社ではそのような制度はない」と言っても通用しません。一旦労働者に付与された有給休暇は、労働者が自由に使える権利として保障されます。

有給休暇の日数

有給休暇の日数は、最初の6ヶ月経過時に付与される10日(週の所定労働日数が少ない場合は比例付与)から始まり、その後の勤続年数に応じて段階的に増えていきます。

例えば所定労働日数が週5日以上のフルタイム労働者であれば、6ヶ月経過時に10日、1年6ヶ月経過時に11日…というように、勤続年数が長くなるほど最大20日まで付与日数が増加します。また、付与された有給休暇は2年間有効であり、2年を過ぎると時効により権利が消滅する仕組みになっています。

したがって労働者は、付与された休暇日数を翌年まで繰り越すことはできますが、2年以内に消化しないと消えてしまうため注意が必要です。

有給休暇の取得を会社は拒否できない

原則として、会社が有給休暇の取得そのものを拒否することはできません。有給休暇は法律で認められた労働者の権利ですから、社員が条件を満たしていて休暇残日数がある限り、会社側は「休ませない」「有給は認めない」という対応は許されません。

ただし、労働基準法第39条には「時季変更権」と呼ばれる例外規定があります。これは、労働者が指定した有給休暇の時季について、事業の正常な運営を妨げる場合に限り、使用者(会社側)が休暇の時期を変更させることができる権利です。

重要なのは、この時季変更権は有給休暇の取得自体を拒否できる権利ではないという点です。会社はあくまで「その日に休まれると業務に支障が出るので別の日に変えてほしい」とお願いできるだけであって、有給自体を取り消したり無期限に先延ばしにしたりすることはできません。

「有給休暇」の使い方・運用ルール

有給休暇を適切に運用するには、企業側も守るべき法律上のルールを把握しておかなければなりません。違反すると罰則の対象となる場合もあります。企業の人事労務担当者が特に注意すべきポイントを整理すると、次のとおりです。

年5日の取得義務

年次有給休暇が年間10日以上付与される労働者には、少なくとも5日は毎年取得させることが会社の義務です。これは2019年の法改正で定められたもので、万一この義務を怠ると会社に対して30万円以下の罰金刑が科される可能性があります。従業員任せにせず、必ず5日間は消化されるよう管理しましょう。また、取得状況を把握するため「年次有給休暇管理簿」を作成し3年間保存することも企業の義務です。

有給休暇の理由の強要禁止

有給休暇は労働者の正当な権利であり、申請時に理由を伝える必要は本来ありません。会社側が「理由によっては認めない」といった対応をするのは違法行為です。私用だろうと旅行だろうと、理由は自由です。どうしても業務上支障がある場合は前述の時季変更権で調整するしかなく、理由如何で取得を拒むことはできないことを周知しましょう。また「なぜ休むのか言いづらい」という心理的負担を社員に与えないためにも、有給の申請理由を記入させない運用(申請書の理由欄を任意・空白可にする等)が望ましいです。

有給休暇の取得者への不利益禁止

有給休暇を取得した労働者に対し、取得を理由とした報復的な扱いをすることは禁止されています。例えば「有給を取るとボーナス査定が下がる」「休みが多いと昇進に響く」などの風潮があれば、それ自体が違法またはハラスメントに該当しかねません。こうしたことがないよう就業規則や社内周知で明確に謳い、管理職にも徹底する必要があります。

「有給休暇」の事前申請

法律上、有給取得の何日前までに申請しなければならないかといった具体的な期限は定められていません。そのため各企業が就業規則などで独自にルールを決めることになります。一般的には、有休の申請期限は取得希望日の2~3日前までと定める会社が多いようです。遅くとも1週間前程度を目安に設定するケースが見られます。

大切なのは、あまりに長い申請期限(例えば1ヶ月前申告など)にすると従業員が予定を立てにくく逆に取得を阻害してしまうため、従業員が申請しやすい適切な期限を設けることです。急病や急用の場合には当日申請でも認める柔軟さを持たせるなど、運用上の配慮も必要でしょう。会社として事前申請のルールを明文化し周知しておけば、従業員も安心して計画的に有給を取得できます。

「有給」と「有休」の違いは理解できましたか?

この記事では、「有給」と「有休」の言葉の違いから始まり、法律上の正式な表現、有給休暇に関する労働法上の権利と企業の義務、そして職場での適切な運用方法について詳しく解説しました。「有給休暇」は全ての働く人に認められた重要な権利であり、適切に理解し活用することで働きやすさやワークライフバランスの向上につながります。略語の使い分けに神経質になる必要はありませんが、正しい知識を身につけておくことは大切です。法律で保障された権利を正しく行使し、企業側もルールを順守してサポートすることで、誰もが安心して休暇を取りやすい快適な職場環境を実現しましょう。


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