- 更新日 : 2025年9月22日
雇用保険を会社都合退職で受給する場合
会社を退職する理由としては、さまざまな理由が想定されます。自らの都合で会社を退職する場合もありますが、時には会社の都合により会社を退職するケースもあります。
会社側からの解雇通告により離職するケースや業績悪化に伴って会社が倒産してしまうケースはもちろんのこと、就職時に提示された労働条件と実際の労働環境に差がありすぎるケースや、賃金の支払いに関して会社側の債務不履行があった場合など、会社側の都合により離職という選択をしなければならない場面もあります。
雇用保険における基本手当(失業保険)の支給については、年齢だけでなく、自分と会社、どちらの都合で退職したかによっても、支給が受けられるまでの支給制限期間や、受給期間などが異なります。
ここでは、会社都合による退職で雇用保険の基本手当を受給する場合の内容を、自己都合による退職の場合と比較しながら説明します。
会社都合と自己都合による雇用保険の基本手当支給の違いについて
個人的な理由で、あるいは定年退職で離職した人は、「一般離職者」として認定されます。また、会社の倒産や解雇がその理由である場合には特別な枠が設けられており、「特定受給資格者」となります。
一般離職者と特定受給資格者では雇用保険の基本手当の支給日数に差があり、支給額も変わってきます。それぞれの基本手当
が支給される日数の違いについては以下の通りとなっています。
雇用保険の年齢要件と受給期間
一般離職者と特定受給資格者それぞれの年齢要件と受給期間については、次の表の通りです。
一般離職者
雇用保険の加入期間 | 10年未満 | 10年以上 20年未満 | 20年以上 |
---|---|---|---|
所定給付日数 | 90日 | 120日 | 150日 |
特定受給資格者
退職時の年齢 | 雇用保険の加入期間 | ||||
---|---|---|---|---|---|
1 年未満 | 1 年以上 5 年未満 | 5 年以上 10 年未満 | 10 年以上 20 年未満 | 20 年以上 | |
30 歳未満 | 90 日 | 90 日 | 120 日 | 180 日 | ‐ |
30 歳以上 35 歳未満 | 90 日 | 120日 | 180 日 | 210 日 | 240 日 |
35 歳以上 45 歳未満 | 90 日 | 150日 | 180 日 | 240 日 | 270 日 |
45 歳以上 60 歳未満 | 90 日 | 180 日 | 240 日 | 270 日 | 330 日 |
60 歳以上 65 歳未満 | 90 日 | 150 日 | 180 日 | 210 日 | 240 日 |
※平成30年9月時点
自分の都合で会社を退職した一般離職者と比べると、会社側の都合により退職を余儀なくされた特定受給資格者のほうが、より長い期間雇用保険の基本手当が支給され、生活の安定を長期的にバックアップしてもらえるように設定されています。
雇用保険受給までの待期期間と給付制限期間
一般離職者と特定受給資格者では、雇用保険の基本手当が支給されるまでの期間の長さにも違いがあります。
会社都合による退職の場合は、待期期間が7日間になります。個人的な理由で退職した場合には、待期期間の7日間に加えて、3ヵ月間の給付制限期間が設けられます。
待期期間と給付制限の期間中については、給付金を受け取ることができません。受給期間と同様に、一般離職者と会社側都合により離職しなければならなかった特定受給資格者とでは、手当が支給される開始時期において開きがあります。
契約期間満了による退職となる際の注意点
契約期間を定めて働く人で、契約期間が満了したために会社を退職する場合は、契約の更新状況に応じて退職が自己都合扱いになったり、会社都合扱いになったりというように分かれます。
どちらによる退職の扱いになるかは、勤続年数・会社からの雇止め通知の有無・労働者の契約更新希望の有無等の条件から判断されますので、事前に知りたい場合は個別にハローワークに確認する必要があります。
また、雇用保険の基本手当の支給日数のみでなく、給付制限期間の有無についても、それらの条件により異なります。
まとめ
会社都合による離職でも、自己都合による離職でも、会社を退職することには違いありません。ただし、会社都合の場合は急な退職を余儀なくされるケースがかなり多く、突如として生活が不安定になることもあります。
そんな事態への配慮から、会社都合による退職である特定受給資格者のほうが、雇用保険の基本手当の支給期間が長く設けられ、待期期間終了の翌日から3ヶ月間の給付制限期間もありません。
会社を退職することを検討する際には、自己都合と会社都合とで、雇用保険の基本手当の受給内容に違いがあることをしっかりと考慮し、安定した再就職への取り組みにつなげる必要があります。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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