• 更新日 : 2025年6月19日

雇用契約書に印鑑は不要|印鑑のない契約書の法的効力や印鑑の代用品も紹介

雇用契約を結ぶ際に作成する雇用契約書には署名と印鑑をもらうのが一般的ですが、実際は印鑑がなくても契約を締結できます。

人事の担当者の中には「印鑑が不要なら廃止しても問題ない?」「雇用契約の締結を効率化したい」などと考えている人もいるでしょう。

そこで本記事では、印鑑の必要性や雇用契約の締結を効率化する方法などを詳しく解説しています。

雇用契約を締結する方法

雇用契約を締結する方法は、主に書面での締結、口頭での締結、電子契約での締結の3つがあります。

一般的なのは、雇用契約書を作成して署名と印鑑をもらう方法です。雇用契約書の作成は法的に義務付けられているわけではないため、企業と従業員の双方の合意があれば口頭でも契約を締結できます。

ただ「言った・言っていない」のトラブルが発生する可能性があるため、きちんと雇用契約書を作成して契約を締結するのが望ましいです。労働契約法の第4条の第2項でも、労働契約の内容はできる限り書面で確認するものとされています。

なお、最近だと書面ではなく電子契約で雇用契約を締結する会社も増えています。電子契約での締結に関しては、本記事の「電子契約なら印鑑不要で契約締結まで効率化できる」という見出しで詳しく解説しているため、気になる方はご参照ください。

参考:労働契約法 | e-Gov 法令検索

雇用契約書に印鑑は不要?

雇用契約書に印鑑はなくても問題ありません。

内閣府、法務省、経済産業省が連名で交付した『押印についてのQ&A』でも以下のように記載されています。

  • 私法上、契約は当事者の意思の合致により、成立するものであり、書面の作成及びその書面への押印は、特段の定めがある場合を除き、必要な要件とはされていない。
  • 特段の定めがある場合を除き、契約に当たり、押印をしなくても、契約の効力に影響は生じない。

引用:押印についてのQ&A|内閣府 法務省 経済産業省

特定の場合を除いて印鑑は必要な条件とはされておらず、署名だけでも雇用契約は締結可能です。

また、同じく『押印についてのQ&A』に押印がなくても契約の効力に影響しないとあることから、署名のみで押印のない雇用契約書でも法的効力は発生することが分かります。

印鑑はなくても問題ないのに求められるのはなぜ?

雇用契約書だけでなく、さまざまな契約書を取り交わす際に押印を求められるのは、主に以下の2つが理由となっていると考えられます。

  1. 署名+印鑑が慣習化されているため
  2. 偽造や捏造はされていないと示すため

明治時代に実印の偽造や盗用が問題視されており、署名+実印が義務化されたようです。当時の署名+実印が現代でも慣習となって残っているため、契約を締結する際に押印を求められるのでしょう。

また印鑑が必要なのは、契約書を偽造したり捏造したりしていないと示す目的もあると考えられます。署名だけよりも署名+印鑑の方が、偽造された可能性は低いと判断してもらいやすいです。

現行の法律では印鑑だけでなく署名も義務付けられていないため、制度は整備されているもののそれまでの慣習を継続しているケースも少なくありません。

参考:ハンコによる契約を「規制」してきた法令とその変遷 | クラウドサイン

印鑑の代用となるもの

印鑑がない場合に代用となるのは、主に以下のものなどです。

  • 自筆の署名:自身の苗字を印鑑代わりに手書きすること
  • 拇印:親指に朱肉をつけて指紋をつけること
  • 電子印鑑:データ化された印鑑のこと

署名のみでも雇用契約の締結は可能ですが、心許ない場合は上記のもので代用すると良いでしょう。

電子契約なら印鑑不要で契約締結まで効率化できる

電子契約とは、オンライン上で契約締結ができる方法のことです。

電子契約サービスを利用して雇用契約を締結すれば、本人に直接署名してもらったり印鑑を押してもらったりする必要がなくなります。

また、オンラインで契約を締結できるようになるため、雇用契約書の印刷や管理などの手間も省けます。

最近はさまざまな電子契約サービスがあり、マネーフォワードの「マネーフォワード クラウド契約」でも電子契約が可能です。

電子契約サービスのメリット

電子契約サービスのメリットは以下の通りです。

  • 署名や印鑑を直接もらう必要がなくなる
  • 保管している契約書を簡単に探し出せる
  • コストを削減できる
  • 雇用契約書だけでなく業務委託契約書も電子化できる

電子契約サービスを利用すれば、契約相手の従業員から署名や印鑑を直接もらう必要がありません。遠方や海外にいる社員ともスムーズに契約を締結可能です。

また、締結が完了した雇用契約書を簡単に探し出すこともでき、相手の名前や締結日などで絞り込み検索ができる電子契約サービスもあります。

電子契約サービスは印紙税の課税対象ではないため、紙の契約書であれば発生する印紙代を節約できるほか、印刷代や郵送する際の郵便料金などのコストも削減できます。

さらに、雇用契約書だけでなく業務委託契約書も電子化が可能です。社員よりも業務委託の方が多い会社でも電子契約サービスは重宝するでしょう。

電子契約サービスのデメリット

電子契約サービスのデメリットは以下の通りです。

  • 業務フローを調整する必要がある
  • 雇用契約書を電子化する場合は相手の合意を得る必要がある
  • セキュリティ対策を講じる必要がある

電子契約サービスを導入した場合、業務フローを調整しなければなりません。具体的には、電子契約サービスを管理する担当者を決めたり契約書の作成や承認のルールを定めたりなど、さまざまな対応が必要です。

また、電子契約サービスを利用する場合は、契約を締結するたびに相手の合意をもらう必要があります。電子化した雇用契約書を使用しても良いか確認し、拒否されたり紙の契約書を希望されたりしたら、従来の雇用契約書で契約締結をしてください。

電子の契約書はサイバー攻撃の対象となる可能性があるため、セキュリティ対策を講じる必要があります。情報漏えいやファイルの破損などが心配な場合は、アクセス権限の設定やウイルスソフトの導入などを検討してみましょう。

電子契約サービスで雇用契約を締結する方法

電子契約サービスで雇用契約を締結する方法は以下の通りです。

  1. 雇用契約書を作成する
  2. 相手に送信する
  3. 相手が承認手続きを行うのを待つ

最初に電子契約サービスで雇用契約書を作成してください。雛形を利用したり雇用契約書をアップロードしたりして、雇用契約書の情報を入力すれば作成できます。

雇用契約書が完成したら、契約を締結する相手の名前やメールアドレスを入力して送信します。

送信したあとは、相手が契約内容を確認し承認手続きを行うのを待ちましょう。承認手続きが完了したら契約を締結したことになります。

なお、クラウド型の電子契約サービスであれば、クラウド内に雇用契約書が保管されます。契約を締結した雇用契約書をクラウド内で簡単に検索可能です。

電子契約でも法的効力はあるの?

一定の要件を満たす本人の電子署名がある電子文書は、真正に成立したものとみなされて法的効力を持ちます。

一定の要件とは以下の2つです。

  1. 電子文書の作成者が本人であると示すための措置であること
  2. 電子文書が改変されていないと確認できる措置であること

上記のどちらも満たした電子署名がある電子文書は、契約が成立したと判断されます。

もし電子の雇用契約書に法的効力を持たせたいなら、2つの要件を満たした電子署名ができる電子契約サービスを利用すると良いでしょう。「マネーフォワード クラウド契約」は、法的効力のある電子署名ができます。

参考:電子署名及び認証業務に関する法律 | e-Gov 法令検索


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