- 更新日 : 2025年4月3日
日本で働く外国人労働者の賃金は低い?平均賃金や問題の解決策を徹底解説
外国人労働者を雇用する際、働きやすい環境を整える一環として適切な賃金設定が重要です。事前に外国人労働者の平均賃金を把握し、適切な賃金設定と法的遵守により賃金によるトラブルを防げます。
本記事では、外国人労働者の平均賃金や問題点を解説し、解決策を提案しているためぜひ参考にしてみてください。
目次
外国人労働者も最低賃金が適用される
外国人労働者にも最低賃金が適用されるため、使用者は最低賃金額以上の賃金を支払う義務があります。最低賃金法第4条に基づき、使用者と労働者が最低賃金を下回る賃金で合意しても、契約は無効となり、最低賃金額で締結したものとされるため注意が必要です。
最低賃金には、都道府県ごとの地域別最低賃金と、特定の産業ごとに設定される産業別最低賃金が定められています。
たとえば、地域別最低賃金が時給800円の地域で、入国前に時給400円とする労働契約を結んでいた場合でも、実際の支払いは最低賃金である時給800円以上でなければなりません。さらに、最低賃金未満の賃金支払いは違法となるため注意が必要です。
地域別最低賃金に違反すると最低賃金法違反として、50万円以下の罰金が科されます。また、特定最低賃金に違反した場合には労働基準法違反となり、30万円以下の罰金が科される可能性があります。
したがって、使用者は外国人労働者に対しても適切な賃金を支払うことが重要です。
最低賃金については、下記の記事で詳しく解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。
厚生労働省のデータからみた外国人労働者の平均賃金
厚生労働省のデータによると、外国人労働者の平均賃金は業種や雇用形態によって異なることが報告されました。
製造業や建設業では比較的高い水準の賃金が設定されている一方、飲食業やサービス業では低めの傾向があります。また、技能実習生や特定技能労働者といった在留資格によっても賃金の差があるため、事前に把握しておくことが重要です。
以下では、各ジャンルの平均労働時間と賃金について詳しく紹介します。
在留資格別の平均労働時間・賃金
在留資格によって労働時間と賃金の差が生じます。
在留資格 | 平均賃金 | 平均所定内実労働時間 |
---|---|---|
外国人常用労働者計 | 26万7,700円 | 155.8時間 |
専門的・技術的分野 | 28万5,900円 | 158.6時間 |
うち技術・人文知識・国際業務 | 30万2,400円 | 157.3時間 |
うち特定技能 | 23万2,600円 | 159.9時間 |
うち高度専門職 | 60万600円 | 151.9時間 |
技能実習 | 20万4,100円 | 163.2時間 |
留学 | ー | ー |
身分に基づくもの | 30万2,300円 | 149.5時間 |
うち永住者 | 31万2,300円 | 149.2時間 |
うち定住者 | 28万7,100円 | 153.0時間 |
その他 | 21万100円 | 131.5時間 |
厚生労働省のデータによると、高度専門職の賃金は最も高い60万600円ですが、労働時間は151.9時間と比較的短めです。一方、技能実習生は最も長い163.2時間働いており、賃金は20万4,100円と低めの傾向にあります。
上記のように、在留資格によって平均賃金や平均労働時間は大きな差が生じることがわかります。
職業別の平均労働時間・賃金
外国人労働者の賃金と労働時間は職業によって異なります。
職業 | 平均賃金 | 平均所定内実労働時間 |
---|---|---|
外国人常用労働者計 | 26万7,700円 | 155.8時間 |
管理的職業従事者 | 68万1,000円 | 158.2時間 |
専門的・技術的職業従事者 | 37万100円 | 153.0時間 |
事務従事者 | 30万1,900円 | 156.7時間 |
販売従事者 | 25万1,100円 | 144.9時間 |
保安職業従事者 | ー | ー |
サービス職業従事者 | 23万4,500円 | 160.4時間 |
農林業従事者 | 20万4,100円 | 168.8時間 |
生産工程従事者 | 23万9,200円 | 155.1時間 |
輸送・機械運転従事者 | 29万800円 | 160.8時間 |
建設・採掘従事者 | 23万1,000円 | 162.9時間 |
運搬・清掃・包装等従事者 | 21万500円 | 148.5時間 |
厚生労働省のデータによると、管理的職業従事者は最も高い68万1,000円の賃金ですが、労働時間は158.2時間です。一方、農林業従事者は最も低く、20万4,100円で、労働時間は168.8時間と長くなっています。
上記のように、職業によって賃金と労働時間に大きな差があることがわかります。
短時間労働者の平均労働時間・賃金
外国人の短時間労働者は、在留資格によって労働時間や時給に差があります。
在留資格 | 平均時給 | 平均所定内実労働時間 |
---|---|---|
外国人常用労働者計 | 1,400円 | 81.1時間 |
専門的・技術的分野 | 1,800円 | 105.5時間 |
うち技術・人文知識・国際業務 | 1,600円 | 114.3時間 |
うち特定技能 | ー | ー |
うち高度専門職 | ー | ー |
技術実習 | ー | ー |
留学 | 1,300円 | 71.2時間 |
身分に基づくもの | 1,400円 | 81.9時間 |
うち永住者 | 1,400円 | 82.1時間 |
うち定住者 | 1,300円 | 83.1時間 |
その他 | 1,200円 | 72.7時間 |
参考:令和5年外国人雇用実態調査の概況(10項)|厚生労働省
厚生労働省のデータによると、外国人短時間労働者は、平均時給1,400円で81.1時間働いている結果となりました。
なかでも技術・人文知識・国際業務の労働時間は114.3時間と長く、時給も1,600円と高めです。一方、留学生の時給は1,300円で、労働時間は71.2時間と短めです。
上記のように、職種や資格によって時給や労働時間に違いがあることを理解しておきましょう。
外国人労働者の在留資格による賃金格差が生じるケース
外国人労働者の賃金は在留資格によって異なります。職種や労働時間にも差があり、資格によって待遇が異なるため注意が必要です。以下では、具体的なケースについて紹介します。
永住者や日本人の配偶者等の資格を持つ場合
永住者や日本人の配偶者等の在留資格を持つ外国人労働者は、原則として職種の制限がなく、幅広い仕事に就くことが可能です。
安定した在留資格があるため、企業からの信頼が得やすく、賃金も比較的高い傾向にあります。日本語能力や日本での生活経験が豊富な場合、仕事の効率やコミュニケーション能力が評価され、給与が上がることも珍しくありません。
一方で、職種の選択肢が広いにもかかわらず、低賃金の仕事に就くケースもあり、在留資格による賃金格差が生じる要因となっています。
技能実習生の場合
技能実習生は、日本の技能や技術を開発途上地域へ移転し、経済発展の支援を目的とした制度のもとで働く外国人です。
技能移転が主な目的であるため、他の在留資格と比べて賃金が低くなる場合があります。技能実習生は教育・訓練を受ける立場のため、賃金が低めに設定されることがほとんどです。
さらに、技能実習生は就労可能な職種や業種が限られているため、選択肢が狭まり、賃金が低い仕事に従事する傾向があります。厚生労働省の平均賃金データによると、技能実習生の平均賃金は20万4,100円と、在留資格区分別で最も低い水準であることが現状です。
外国人労働者の賃金に関する問題
外国人労働者の賃金をめぐるトラブルは、珍しくありません。事前に問題を理解することで、労働者は適正な条件で働くための対策をしやすく、企業側も法的リスクを回避できます。以下では、具体的な賃金に関する問題について解説します。
日本人と外国人労働者の賃金に差がある
日本人と外国人労働者の賃金に差があることは、同一労働同一賃金の原則に反する可能性があります。
本来、労働基準法では国籍による賃金差別を禁じています。そのため、同じ仕事内容であれば、国籍を問わず適正な賃金が支払われるべきです。しかし、実際には外国人労働者が日本人より低い賃金で働いているケースがあり、企業にとって法的リスクが伴う可能性があります。
また、外国人労働者の貢献や労働力が正当に評価されないと、不公平感が生じるため注意が必要です。とくに外国人労働者が十分な技術や経験を持つにもかかわらず、賃金が低く設定されることが課題となっています。
外国人労働者が思っていたよりも賃金が低かった
外国人労働者が想定より低賃金で働くケースは大きな問題です。
技能実習制度の調査によると、技能実習生の失踪原因の約44%が最低賃金違反、契約賃金違反、過大な賃金控除、割増賃金不払いに関連しています。
賃金や待遇が悪いと、より良い条件を求めて退職するケースも少なくありません。しかし、技能実習生は原則として転職できず、1年から5年間は同じ企業で働く必要があります。
さらに、同じ送り出し機関を通じて来日した仲間と待遇を比較しやすく、不満が溜まりやすい傾向にあります。賃金が低いことは生活費の負担を増大させ、外国人労働者にとって重大な問題となるでしょう。
賃金の未払いが生じている
外国人労働者への賃金未払いは深刻な問題です。
とくに技能実習生への未払いが原因で、企業関係者が逮捕されるケースもあります。賃金の未払いは、最低賃金法違反や時間外労働の割増賃金不払いによる労働基準法違反に該当し、30万円以下の罰金や6ヶ月以下の懲役が科される可能性があります。
また、技能実習制度の認定が取り消され、5年間の技能実習生受け入れ禁止のペナルティを受けることもあるため注意が必要です。
賃金未払いは労働者の生活に大きな影響を与えるだけでなく、企業にとっても大きなリスクとなるため、適正な支払いが重要です。
外国人労働者の賃金問題に対する解決策
外国人労働者の賃金問題が発生した際は、迅速な対応が重要です。解決策を事前に把握することで、労働者は権利を守り、企業側はトラブルを防げます。以下では、具体的な解決策について紹介します。
同一労働同一賃金を遵守する
同一労働同一賃金は、同じ企業や団体内で、正規雇用と非正規雇用の労働者間における不合理な待遇差をなくすことが目的の制度です。日本では主に「パートタイム・有期雇用労働法」と「労働者派遣法」に基づき、不合理な待遇差が禁止されています。
同一労働同一賃金は、基本給や昇給、賞与、各種手当だけでなく、教育訓練や福利厚生にも適用されます。外国人労働者であっても、非正規雇用であれば基準が適用され、国籍や雇用形態による不当な賃金設定は違反となるため注意が必要です。
企業は適正な賃金体系を整備し、公平な待遇を確保することで、労働環境の改善とトラブルの防止につながります。
同一労働同一賃金の詳しい情報については、下記の記事で詳しく説明しているため、ぜひ参考にしてください。
最低賃金を下回らない
最低賃金は、労働者に保証される最低額です。
具体的な規定は最低賃金法により定められており、外国人労働者も国籍に関係なく適用されます。最低賃金未満の支払いは違法で、使用者には50万円以下の罰金が科される可能性があるため注意が必要です。
企業は最低賃金を守り、労働環境を整えることで外国人労働者の権利を保障できます。
労働基準法に基づいて割増賃金を支給する
外国人労働者への割増賃金の支払いは、労働基準法に基づき日本人と同等に行う必要があります。
時間外労働には25%以上、深夜労働(午後10時から午前5時)には25%以上、休日労働には35%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられています。とくに技能実習生に対し、内職の名目で不当に低い割増賃金を支払う行為は、労働基準法違反です。
適正な賃金を確保するためには、外国人労働者の権利を守り、企業の法的リスクを防ぐことが重要です。
外国人労働者の賃金を設定する際のポイント
外国人労働者の賃金を設定する際は、適正な基準を守ることが重要です。賃金設定のポイントを押さえれば、未払いトラブルや法的リスクを防げます。以下では、具体的なポイントについて紹介します。
賃金を高めに設定する
外国人労働者は、自身や家族を養うため、より高収入の企業を選ぶ傾向があります。そのため、同業他社と比較して賃金を高めに設定すれば、優秀な外国人労働者の応募が増える可能性があります。
応募者が増えれば、企業はより適切な人材を確保しやすくなるでしょう。また、賃金が高いことで労働者の定着率が向上し、採用や教育にかかるコスト削減にもつながります。
適正な賃金設定は、企業と労働者双方にメリットをもたらします。
年収ではなく月収で賃金を設定する
外国人労働者は、年収よりも月収を重視して勤務先を選ぶ傾向があります。
日本では、社会保障が整っています。一方、海外では個人が自分の生活を守る意識が強く、福利厚生よりも毎月の収入の安定を優先する考え方が一般的です。そのため、月収ベースでの賃金設定は、外国人労働者の生活設計を助け、転職や就職先を決める際の安心感につながります。
企業が月収ベースで求人を出すことで、応募者が増え、より適した人材を確保しやすくなるでしょう。
外国人労働者の賃金を適切に設定して定着率をアップさせよう
外国人労働者の賃金を適切に設定することは、企業の長期的な成長においても重要です。
賃金を設定する際は、同一労働同一賃金を守り、法的な基準を遵守することで労働者の定着率が向上し、企業にとっても安定した労働力を確保できます。適切な賃金設定が企業の信頼性向上にもつながるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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