- 更新日 : 2025年3月19日
外国人雇用に人数制限はある?特定技能の受け入れ上限や雇用時の注意点を解説
外国人労働者の雇用を考えている企業は、受け入れ人数に制限はあるのか気になる方も多いでしょう。
原則として外国人労働者の雇用に人数制限はありません。しかし、特定技能や技能実習制度においては受け入れ可能な人数が定められているケースがあります。
本記事では、外国人労働者の人数制限について、特定技能の受け入れ上限や注意点を詳しく解説します。
目次
企業ごとの外国人雇用の人数制限は原則としてない
外国人労働者を雇用する際、基本的には企業ごとの受け入れ人数に制限はありません。そのため、受け入れ体制が整っていれば、法律上は制限なく外国人を雇用することが可能です。
しかし、特定技能の建設業や介護分野または技能実習制度では、企業や事業所ごとに受け入れ可能な人数が制限されているケースがあります。
これらの業種では、常勤職員の総数や業界ごとの基準に応じて上限が決められており、制限を超えた雇用は認められません。そのため、雇用計画を立てる際には、これらの条件を確認する必要があります。
以下の記事では、外国人労働者を雇用するメリットや問題について詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
特定技能の業種・分野によっては外国人雇用の人数が制限される
特定技能の受け入れについては、業種や分野ごとに受け入れ人数の上限が決められている場合があります。
ここでは、それぞれの人数制限について詳しく解説します。
特定技能・建設業の人数制限
建設業では、特定技能1号の外国人労働者を受け入れる際に、受け入れ企業の常勤職員数が基準となります。
受け入れ可能な外国人労働者の人数は、受け入れ企業の常勤職員(日本人または適法な在留資格をもつ外国人)の総数を超えないことと定められています。なお、外国人技能実習生や1号特定技能外国人は、常勤職員の総数に含まれません。
また、建設業では、特定技能外国人の受け入れにあたり、以下の条件が課されます。
- 外国人の報酬予定額等を明記した受入計画の作成
- 国土交通大臣の審査・認定・巡回訪問による計画実施状況の確認
- 受入企業および1号特定技能外国人の建設キャリアアップシステムへの登録
- 特定技能外国人受入事業実施法人(JAC)への加入
建設業における外国人雇用は、企業の受け入れ体制や法令遵守が求められます。これらを満たしていない場合、雇用契約が無効になる可能性もあるため注意が必要です。
特定技能・介護分野の人数制限
介護分野では、特定技能1号の外国人を受け入れる際に、事業所単位で人数の上限が設けられています。
受け入れ可能な外国人労働者の数は、事業所の「日本人等」の常勤介護職員の総数を超えないことが条件です。外国人技能実習生や1号特定技能外国人はこの常勤職員の総数に含まれません。
日本人等には、以下の外国人も含まれます。
- EPA介護福祉士試験に合格した外国人
- 在留資格「介護」をもつ外国人
- 身分・地位にもとづく在留資格をもつ外国人(永住者・定住者など)
介護分野では、適切なサポート体制の構築や、既存の職員との連携が求められます。
日本の特定技能制度には、受け入れ見込み数の上限がある
特定技能制度は、日本の人手不足を補うために設けられた制度ですが、全体としての受け入れ人数には上限があります。
2024年4月からの5年間で、特定技能外国人の受け入れ見込み数は82万人です。この受け入れ数は、日本国内の労働市場の需給バランスを考慮して算出されており、特定の産業に対する人材不足を補う目的があります。
業種別の受け入れ見込み数は、下記のとおりです。
業種 | 令和5年度末までの 受け入れ見込み数 | 2024年4月から5年間の 受け入れ見込み数 |
---|---|---|
介護 | 50,900人 | 135,000人 |
ビルクリーニング | 20,000人 | 37,000人 |
工業製品製造業 | 49,750人 | 173,300人 |
建設 | 34,000人 | 80,000人 |
造船・舶用工業 | 11,000人 | 36,000人 |
自動車整備 | 6,500人 | 10,000人 |
航空 | 1,300人 | 4,400人 |
宿泊 | 11,200人 | 23,000人 |
農業 | 36,500人 | 78,000人 |
漁業 | 6,300人 | 17,000人 |
飲食料品製造業 | 87,200人 | 139,000人 |
外食業 | 30,500人 | 53,000人 |
自動車運送業 | – | 24,500人 |
鉄道 | – | 3,800人 |
林業 | – | 1,000人 |
木材産業 | – | 5,000人 |
参考:出入国在留管理庁|特定技能制度の受入れ見込数の再設定(令和6年3月29日閣議決定)
工業製品製造業・飲食料品製造業・介護分野がそれぞれ10万人以上ともっとも多く、受け入れが積極的に進められる見込みです。
一方で、鉄道や林業といった分野では受け入れ枠が限られており、慎重な受け入れ方針が取られています。
このように、業種ごとの労働需要を考慮しながら、バランスよく外国人労働者の受け入れが進められているのが特定技能制度の特徴です。
外国人労働者の受け入れ人数の実態
特定技能制度にもとづく外国人労働者の受け入れは、年々増加傾向にあります。2021年から2024年にかけて、受け入れ人数は25万人以上に達しました。
年度 | 特定技能在留外国人数の推移 |
---|---|
2024年6月 | 251,747人 |
2023年12月 | 208,462人 |
2022年12月 | 130,923人 |
2021年12月 | 49,666人 |
2020年12月 | 15,663人 |
出典:出入国在留管理庁|特定技能制度運用状況(令和6年6月末)
日本国内の人手不足を補う目的で特定技能制度が導入された結果といえるでしょう。
しかし、実際の受け入れ人数と政府が設定した見込み数には開きがあり、介護や建設分野ではいまだに深刻な人手不足が続いている状況です。このギャップは、業種ごとの受け入れ環境の違いや、外国人労働者にとっての就労条件が影響している可能性があります。
以下では、国籍別・都道府県別、業種・産業分野別の特定技能在留外国人数の推移を解説します。
国籍別
令和6年6月末現在時点での国籍別の特定技能外国人数は、下記のとおりです。
国籍 | 特定技能1号在留外国人数 |
---|---|
ベトナム | 126,740人 |
インドネシア | 44,298人 |
フィリピン | 25,303人 |
ミャンマー | 19,058人 |
中国 | 15,660人 |
カンボジア | 5,461人 |
ネパール | 5,383人 |
タイ | 5,174人 |
その他 | 4,517人 |
国籍別に見ると、東南アジア出身者が圧倒的に多い状況です。とくにベトナムからの労働者が多く、全体の50%以上を占めています。
これは、ベトナムとの経済交流の活発化や、技能実習制度を経て特定技能に移行するケースが増加しているためです。
また、フィリピンやインドネシアからの受け入れも増加傾向にあります。東南アジア諸国が、特定技能制度の受け入れにおいて重要な役割を担っていることがわかります。
都道府県別
令和6年6月末現在時点で、特定技能1号在留外国人の受け入れ人数が多い都道府県は、下記のとおりです。
都道府県 | 特定技能1号在留外国人数 |
---|---|
愛知県 | 20,740人 |
大阪府 | 16,533人 |
埼玉県 | 15,520人 |
千葉県 | 15,183人 |
東京都 | 14,914人 |
神奈川県 | 13,639人 |
茨城県 | 12,869人 |
北海道 | 10,886人 |
福岡県 | 8,955人 |
兵庫県 | 8,933人 |
特定技能外国人の受け入れ人数を都道府県別に見ると、都市部に集中していることがわかります。愛知県での受け入れが多く、ついで大阪府、埼玉県と続いている状況です。
自動車産業や、製造業が集積している地域での労働力不足が背景にあると考えられます。一方で、茨城県や北海道などの地方都市でも受け入れが進んでいるのが特徴です。
地方では、農業や介護分野での人手不足が深刻なため、特定技能制度を活用して労働力を確保しているケースが増えています。
業種・産業分野別
令和6年6月末現在時点で、業種・産業分野別の特定技能1号在留外国人の数は、下記のとおりです。
業種・特定産業分野 | 令和5年度末までの 受け入れ見込み数 |
---|---|
介護 | 36,719人 |
ビルクリーニング | 4,635人 |
素形材・産業機械・電気電子情報関連製造業分野 | 44,044人 |
建設分野 | 31,853人 |
造船・舶用工業分野 | 8,703人 |
自動車整備分野 | 2,858人 |
航空分野 | 959人 |
宿泊分野 | 492人 |
農業分野 | 27,786人 |
漁業分野 | 3,035人 |
飲食料品製造業分野 | 70,202人 |
外食業分野 | 20,308人 |
飲食料品製造業での受け入れがもっとも多く、ついで介護分野が続いている状況です。とくに飲食料品製造業では、即戦力となる労働力を確保するために、特定技能制度を積極的に活用してきました。
一方で、宿泊業では受け入れ人数が約500人と低水準にとどまっています。コロナ禍による観光業の縮小や、外国人労働者にとって宿泊業の労働環境が厳しいことが要因と考えられます。
今後、宿泊業においても受け入れ環境の整備や労働条件の改善が必要となるでしょう。
外国人雇用の手続きの主な流れ
外国人労働者を雇用する際は、適切な手続きを踏むことでスムーズな受け入れが可能です。採用から就労開始までの流れは、下記のとおりです。
外国人雇用の手続きの流れ | 詳細 |
---|---|
就労ビザの取得見込みを確認する | 外国人労働者が担当する職務や在留資格の適合性を確認する |
面接を実施し、内定を出したあとに雇用契約書を作成する |
|
雇用契約書を作成後、就労ビザの申請を行う | 入国管理局への申請手続きが必要となる |
入国管理局で就労ビザの審査が行われる | 審査には数週間~1ヶ月程度かかる場合がある |
就労ビザ取得後に雇用を開始する | 在留期間の更新時期を管理し、社会保険・労働保険の手続きを行う |
適切な手続きを踏むことで、外国人労働者が安心して働けるようになります。その結果、長期的な戦力として、企業への定着が期待できるでしょう。
外国人雇用する際の6つの注意点
外国人労働者を受け入れる際には、日本人労働者と異なる法的要件や文化的な違いがあるため、注意が必要です。
採用から就労後のサポートに至るまで、適切な対応を行わなければ、労働トラブルや法的リスクを招く可能性があります。
ここでは、外国人を雇用する際の注意点を解説します。
1.雇用できる外国人の条件を確認する
外国人労働者を採用する際は、在留資格の確認が必須です。外国人が従事できる業務は在留資格によって定められており、資格範囲外の業務に就かせると不法就労に該当します。
外国人を雇用する際に確認すべきポイントは、下記のとおりです。
- 在留カードの確認:在留資格や在留期限を確認
- 業務内容との適合性:資格範囲内の業務か確認
- 在留期限:在留期限が切れていないか確認
在留カードのコピーを保管し、期限や内容を定期的にチェックすることで、誤った雇用を防止できます。
条件に満たない外国人を雇用した場合の罰則
在留資格の確認を怠り、不法就労となる外国人を雇用した場合、企業には厳しい罰則が科せられる可能性があります。
具体的な罰則は、下記のとおりです。
違反内容 | 罰則 |
---|---|
不法就労助長罪 (雇用主側) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 |
資格外活動 (外国人労働者側) | 1~3年以下の懲役または200万~300万円以下の罰金+強制退去 |
集団密航者の受け入れ | 5年以下の懲役または300万円以下の罰金 (営利目的なら10年以下の懲役または1,000万円以下の罰金) |
不法入国者・不法上陸者のかくまう行為 | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金 (営利目的なら5年以下の懲役または500万円以下の罰金) |
参考:厚生労働省|不法就労に当たる外国人を雇い入れないようにお願いします。
企業は、必ず在留資格を確認し、不法就労を防ぐ責任があります。
2.労働条件を明確にする
外国人労働者との間で労働条件の不一致が発生すると、トラブルにつながる可能性が高くなります。雇用契約書には下記の内容を明確に記載し、労働者が理解できるように説明を行いましょう。
- 給与・昇給制度
- 労働時間・休憩・休日
- 福利厚生・社会保険の適用
- 業務内容
雇用契約書は日本語に加えて、外国人労働者の母国語で作成すると誤解を防ぎやすくなります。また、社会保険の加入についても事前に説明し、理解を得ることが大切です。
3.職場環境や生活支援を適切に提供する
言語や文化の違いから、日本での生活に困難を感じる外国人労働者も多くいます。そのため、下記のような支援を行うと、スムーズな定着につながります。
- 業務マニュアルやルールを母国語で用意
- 住居の手配・在留カード更新・銀行口座開設などのサポート
- 日本語学習の支援(業務上必要な日本語レベルの指導)
企業が適切なサポートを行うことで、外国人労働者が安心して業務に集中できる環境を整えられます。
4.異文化や働き方の違いを受け入れる
外国人労働者は、日本人とは仕事に対する価値観や文化が異なる場合があります。違いを理解せずに、日本の働き方を一方的に押しつけると、労働者が働きにくさを感じてしまいます。具体例は、下記のとおりです。
- 家族優先の価値観:日本は仕事優先が一般的
- 宗教的な配慮:食事制限、礼拝時間の確保
- 指示は明確に:日本特有の「空気を読む」は通じない
企業側がこれらの文化の違いを受け入れ、柔軟な対応を心がけることで、外国人労働者が職場に馴染みやすくなるでしょう。
5.社内の意識改革を促進する
外国人労働者の受け入れにあたって、既存の日本人社員の理解を深めることも必要です。外国人労働者を受け入れる目的や意義を明確に伝えることで、社内の理解が進みます。
社内の意識改革のポイントは、下記のとおりです。
- 外国人を雇用する目的や意義を明確に伝える
…人手不足解消・グローバル化対応など - 外国人の文化や価値観を学ぶ研修を実施する
- 外国人労働者とコミュニケーションを円滑にする機会を設ける
…交流イベント・食事会など
現場の理解が不十分なまま外国人労働者を受け入れると、社内で軋轢が生じる可能性があります。そのため、外国人労働者を受け入れる準備を、社内で整えておきましょう。
6.日本人と同じ待遇で雇用する
外国人労働者を日本人と比べて低賃金や不利な条件で雇用することは違法となります。労働基準法にもとづき、適正な待遇を提供することが求められます。
外国人労働者の待遇で注意すべき点は、下記のとおりです。
- 給与は同等の技能をもつ日本人と同水準にする
…最低賃金の遵守 - 社会保険・労働保険の適用
…労働時間によっては加入義務あり - 労働時間・休憩・休日・残業代のルールを守る
外国人労働者への不当な待遇は、法的リスクだけでなく、企業の評判にも悪影響を与える可能性があります。公平な待遇を徹底し、外国人労働者が安心して働ける環境を整えましょう。
外国人雇用の人数制限を理解し、適正な雇用を実現しよう
外国人労働者を適正に雇用するためには、人数制限や受け入れ条件を正しく理解し、適切な手続きを進める必要があります。
労働条件や待遇を明確にし、文化や働き方の違いを受け入れることで、外国人労働者が長期的な戦力として定着しやすくなります。
本記事を参考にし、企業全体で理解を深め、公平な待遇と働きやすい環境を提供しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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