• 更新日 : 2025年3月18日

就業規則の周知は義務?周知方法・タイミング・周知の対象者も解説

就業規則の周知は、労働基準法で義務付けられています。修正・変更した場合も同様に周知しなければなりません。

ただ「どのような方法で周知すればいいの?」「就業規則を周知するタイミングはいつ?」などと疑問に思う人もいるでしょう。

そこで本記事では、就業規則を周知する3つの方法や周知する適切なタイミングなどを解説します。

就業規則の周知は義務?

就業規則の周知は、労働基準法の第106条によって義務付けられています。作成した就業規則を従業員に開示するのはもちろん、修正や追記した際も周知しなければなりません。

就業規則を周知していなかったり、修正や追記したことを知らせていなかったりした場合は、就業規則の規定が無効になる可能性が高まります。

たとえば、就業規則の変更によって、法定休日を日曜から土曜に変更したとしても、周知がなされていなければ、その変更は無効となります。この場合、変更前と同様に日曜を法定休日として扱わなければなりません。また、従業員にとって不利益な変更は原則として禁止されています。従業員の同意を得るか、合理的な理由がないと変更は認められません。

もし、就業規則の周知を怠ると労働基準監督署から指導が入り、悪質と判断された場合は罰則が科されることもあります。就業規則を周知していない会社は、従業員に会社のルールを知ってもらうためにもすぐに開示してください。

参考:労働基準法| e-Gov 法令検索

就業規則を周知する3つの方法

就業規則を周知する方法は3つあります。いずれかの方法で就業規則を周知できていれば、周知義務を満たしていることになります。

ただし、3つのいずれにも該当しないような方法だと、周知しているとはみなされません。具体的には、口頭だけで就業規則の内容を説明したり、役員や管理職しか閲覧できない状態であったりすると、就業規則が無効になる可能性があります。

参考:労働基準法| e-Gov 法令検索

1. 常に会社の見やすい場所に掲示する

一つ目は、常に会社の見やすい場所に掲示する方法です。従業員のワークスペースや給湯室など、誰でも入れるような場所に掲示していれば周知しているとみなされます。

就業規則を書類に印刷して、誰でも手に取れるファイルや棚に保管しておく方法でも問題ありません。全ての従業員が就業規則を確認できるかどうかが重要です。

ただ、就業規則に何か修正を加えたり追記したりした際は、新しい就業規則を掲示する・印刷する必要があります。古いバージョンのまま残さないように注意してください。

また、本社以外にも支社や営業所などがある場合は、支社ごと・営業所ごとに就業規則を掲示しなければなりません。全ての事業場に掲示する必要があると覚えておきましょう。

2. 書面で従業員に配布する

二つ目は、書面で従業員に配布する方法です。就業規則を書類に印刷し、入社した際や部署に配属された際に配りましょう。

書面で配布する方法には注意点があり、就業規則を変更した際に印刷し直して再び配布する必要があります。コストや手間がかかるだけでなく、配布し忘れの恐れもあるため、従業員数が多い会社にはおすすめできません。

また、就業規則に多くの機密事項を記載している場合は、社外への持ち出しを制限した方がいいでしょう。自宅への持ち帰りや飲食店での閲覧などを禁止して管理してください。

3. PCファイルに記録し、いつでも閲覧できる状態にする

3つ目の方法は、PCファイルに記録して常に閲覧できる状態にする方法です。PDFとして就業規則を保存して、全ての従業員が参加しているチャットツールに貼り付ける方法でも問題ありません。

変更や修正した際も手間がかからないため、最近はPCファイルやPDFに保存して周知する会社が増えています。従業員数が多い会社や多数の支社・営業所がある会社にもおすすめです。

ただ、このPCファイル・PDFに保存する場合も、社外へ持ち出していないか管理する必要があります。自宅や飲食店での閲覧を制限したり、書類に印刷したりするのを禁止する項目を就業規則に記載しておくと分かりやすいでしょう。

就業規則を周知するタイミング

就業規則を周知するのは、労働基準監督署へ提出する前のタイミングです。提出までの流れをまとめると、以下のようになります。

  1. 就業規則を作成・変更する
  2. 就業規則を従業員に周知する
  3. 労働組合もしくは労働者を代表する人に意見聴取を行い、意見書としてまとめる
  4. 就業規則に意見書を添付し、「就業規則(変更)届」と併せて労働基準監督署に提出する

就業規則を作成したときは、労働基準監督署へ提出する前に従業員へ周知することが望ましいでしょう。労働組合もしくは労働者の過半数を代表する人の意見を聴き、意見書として添付する必要があるためです。

就業規則を変更したときも同様に、従業員へ周知し意見聴取を行ってから労働基準監督署へ提出してください。

ただ、変更後の就業規則を有効にしたい日付が数週間〜数ヶ月後になる場合、就業規則の最後に施行日を記入しましょう。変更内容と併せて施行日も従業員に周知します。

なお、意見聴取して意見書を添付することは、労働基準法の第90条で義務付けられています。意見聴取を怠ると、労働基準法の第120条により30万円以下の罰金が科されるため、必ず実施してください。

参考:労働基準法| e-Gov 法令検索

就業規則を周知する対象の従業員

就業規則を周知する対象の従業員と対象外の従業員は、以下の通りです。

対象の従業員対象外の従業員
  • 正社員
  • パートやアルバイト
  • 契約社員
  • 役員
  • 業務委託
  • 派遣社員

雇用形態は関係なしに、全ての従業員に周知する必要があります。加えて、時短勤務中の従業員も対象です。

ただ、役員・業務委託・派遣社員は従業員に含まれません。業務委託は労働契約を締結する従業員ではなく、請負契約や委託契約などを締結する事業主に当たります。また、派遣社員の場合は、雇用する派遣元の会社に就業規則の周知義務があります。

なお、就業規則は雇用形態ごとに作成するか、雇用形態ごとの項目を設けて分かりやすくするのがおすすめです。働き方や賃金などが大きく異なるため、雇用形態に合った規則を作成して周知しましょう。

従業員が10人未満の場合も就業規則を周知する必要がある?

就業規則の作成義務があるのは、従業員が常時10人以上いる会社です。従って、従業員が10人未満の会社は、就業規則の作成義務はありません。ただし、任意で作成することは可能であり、作成義務がある場合と同様に周知しなければ効力は生じません。

「常時10人以上」とは、常に10人以上の従業員が出勤している状態ではなく、常態として10人以上の従業員が所属している状態を指します。たとえば、臨時でパートや派遣社員を雇って10人以上になっても、契約期間が終了して10人未満になるケースは「常時10人以上」とみなされません。

また、「従業員」には前述の通り、正社員・パートやアルバイト・契約社員が該当します。

つまり、会社に在籍する正社員やパートなどの従業員が10人未満の場合、就業規則を作成する義務はないことになります。

10人未満なら作成義務はありませんが、社内のルールを浸透させたい・トラブルを防いで秩序を守りたいと考える場合は、就業規則を作成し周知することが望ましいでしょう。厚生労働省が「モデル就業規則」を交付しているため、ぜひ参考にしてください。

就業規則の周知に関する注意点

就業規則の周知に関する注意点を2つ紹介します。どちらも重要な内容のため、最後まで確認してください。

周知義務を満たせていないと罰則を科されることがある

就業規則の周知義務を満たせていないと、罰則が科されることがあります。

具体的には、前述の「就業規則を周知する3つの方法」のいずれにも該当しない方法で周知したり、労働組合や従業員の代表者に意見聴取をしなかったりした場合です。

適切な方法で周知していない・意見聴取をせずに意見書を作成したことが判明すると、労働基準監督署から指導や是正が入ります。悪質と判断されれば、労働基準法の第120条に基づき30万円以下の罰金が科される可能性もあります。

就業規則について、適切な方法で周知と意見聴取を実施し、労働基準監督署に提出しましょう。

参考:労働基準法| e-Gov 法令検索

周知していない就業規則は無効となる可能性がある

周知できていない就業規則は、無効となる可能性があります。

たとえば、就業規則を口頭で説明しただけだと、就業規則を周知したことにはなりません。規則に違反した従業員に罰則を与えようとしても、罰則を与えられない場合があります。

また、就業規則を変更した際も従業員に周知する必要があります。変更内容を周知していないと、変更後の規則を適用できません。

よって、自社に合った適切な方法で、就業規則の内容や変更内容を従業員に周知しましょう。

就業規則を適切に周知し、社内ルールを浸透させよう

就業規則は、全ての従業員がいつでも確認できる状態にしておかなければなりません。労働基準法にも就業規則の周知が義務付けられています。

また、就業規則を修正したり追記したりした場合も、変更内容を周知する必要があります。

本記事で紹介した適切な方法で就業規則を周知すれば、社内ルールを浸透させられるでしょう。トラブルを未然に防いで社内秩序の維持にも期待できます。


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