• 更新日 : 2025年3月18日

外国人雇用にかかる費用は?内訳と費用を抑えるコツを解説

近年、日本の労働力不足を背景に、外国人の雇用を検討する企業が増えています。しかし、外国人労働者を採用する際には、採用にかかる費用や渡航費など、さまざまな費用が発生します。

そのため、事前にコストの内訳を把握しておくことが重要です。

本記事では、外国人雇用にかかる費用の内訳を詳しく解説します。

日本における外国人雇用の実態

日本では年々、外国人労働者の数が増加しています。厚生労働省の「外国人雇用の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)」によると、外国人労働者の総数は2,302,587人です。

前年から253,912人増加しており、届け出が義務化された平成19年以降、過去最多を更新しました。

また、外国人を雇用する事業所数も342,087所(前年比23,312所増加)となり、こちらも過去最多となっています。日本の労働市場において、外国人労働者の活躍がますます重要になっていることを示しています。

参考:厚生労働省|「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(令和6年10月末時点)

外国人雇用・採用にかかる費用と内訳

外国人を雇用する際には、採用コスト、在留資格申請費用など、さまざまな費用が発生します。国内採用と現地採用によってもコストは異なるため、適切な計画を立てることが重要です。

ここでは、外国人を雇用する際に発生する費用と内訳を解説します。

外国人労働者の雇用を予定している方は、以下の記事もあわせてご参考ください。

人材紹介会社に支払う手数料

外国人労働者を採用する際に人材紹介会社を利用すると、求める人材をスムーズに確保できるメリットがあります。ただし、紹介手数料として理論年収の20~35%を支払う必要があります。

理論年収の計算式は、「(基本給+各種手当)×12ヶ月+賞与」です。

厚生労働省の「令和5年外国人雇用実態調査」によると、外国人労働者(一般労働者)の平均給与は267,700円です。これをもとに、理論年収を約320万円と仮定すると、紹介手数料は約64~112万円となります。

また、人材紹介会社の多くは成果報酬型しており、実際に採用が決まった段階で費用を支払うケースが一般的です。そのため、紹介手数料を考慮した上で採用コストを計算することが重要です。

参考:厚生労働省|令和5年外国人雇用実態調査の概況(8p)

在留資格(就労ビザ)の申請にかかる費用

外国人労働者を雇用するには、在留資格(就労ビザ)の取得が必須です。在留資格とは、外国人が一定期間、日本に滞在し、活動できることを証明する資格です。

在留資格には期限があり、更新や変更の手続きが必要となるため、事前に費用を把握しておきましょう。

費用の種類費用
在留資格認定証明書交付申請・在留資格取得許可申請無料
在留資格の更新許可・変更許可申請4,000円

※2025年4月以降は6,000円(オンラインは5,500円)

業務委託する場合の費用10~15万円

申請に必要な書類は多く、手間がかかるため業務委託するケースも少なくありません。

事前に必要書類を確認し、コストと手続きの負担を考慮した上で、自社対応か業務委託か慎重に選択しましょう。

参考:
出入国在留管理庁|在留手続
出入国在留管理庁|在留手続等に関する手数料の改定

在留資格の申請準備にかかる費用

在留資格の申請には、以下の書類を準備する必要があります。自社で手続きする場合と業務委託する場合でコストが異なります。

項目費用
卒業証明書約500円
在職証明書約1,000~2,000円
健康診断書約1万円
書類の翻訳費用約4,000~6,000円
その他、郵便などにかかる費用1,000~2,000円

書類発行を業務委託する場合は3~4万円、自社で手続きのうえ費用を負担する場合は1.5万円~2万円ほどかかります。

コストを抑えたい場合は自社対応を検討し、手間や正確性を重視する場合は業務委託を活用するなど、自社の状況に応じて選びましょう。

渡航費

海外在住の外国人を採用する場合、面接官が現地へ行く場合の渡航費や、採用後に外国人労働者が来日する際の渡航費が発生します。

項目費用
面接官の海外出張費

(アジア圏の場合)

往復10~15万円
外国人労働者の渡航費来日時の渡航費:5~7万円

渡航費は国や時期によって変動するため、事前に確認しておくことが重要です。

研修・日本語教育費にかかる費用

日本語を学ぶ必要がある外国人を採用した場合は、日本語教育費用が発生します。一般的には、日本語学校に通わせる方法が多く、費用の相場は10~15万円です。

教室によっては数十万円かかることもあります。企業が負担する場合は、教育コストを抑えるために社内研修やオンライン学習を活用する方法もおすすめです。

家賃や携帯電話などの生活費

外国人が日本で生活するためにかかる費用も、企業が負担するケースが多い傾向です。企業が外国人労働者の生活をサポートする場合、下記の費用が発生します。

項目費用
住居にかかる費用

(家賃・敷金・礼金など)

15~30万円
携帯電話の契約~5,000円+端末代

手続きを代行会社に依頼する際は、別途費用が発生します。住居費は、ひとつの住居に複数人が住むことでコストを抑えられるため、シェアハウスの利用なども検討するとよいでしょう。

特定技能の受け入れにかかる費用相場

特定技能外国人を受け入れる際には、一般労働者と同様に人材紹介会社の手数料や在留資格申請費用が発生 します。また、特定技能制度特有の費用として、支援機関への委託費用や送り出し機関の手数料などが必要です。

特定技能外国人の受け入れに必要な主な費用は、下記のとおりです。

項目費用
義務的支援委託費用2〜4万円/月
送り出し機関への手数料10〜60万円/回
事前ガイダンス等の費用1.5〜4万円

国外在住の外国人を受け入れる場合、渡航費や住居の準備費用も発生します。承諾を得れば、渡航費用・住居費用は本人負担も可能なため、事前の話し合いが重要です。

なお、建設業で特定技能の在留資格をもつ外国人を雇用する場合は、国土交通省の認定を受ける必要があるため、注意が必要です。また、一般社団法人建設技能人材機構(JAC)またはJAC正会員の建設業者団体への加入が必須となります。

年会費や受け入れ負担金が発生するため、事前に確認しておきましょう。

参考:
国土交通省|建設分野での外国人受入れ関係
国土交通省|建設分野における外国人材の受入れ

外国人雇用の費用を抑えるコツ

外国人雇用には、採用費やビザ取得費、研修費など多くのコストがかかります。しかし、採用方法の工夫や助成金の活用、社内研修の実施などによって、費用を大幅に削減することが可能です。

以下では、国内採用・現地採用のコストを抑える方法や、住居費の節約策について詳しく解説します。

国内で採用する場合

国内で外国人を採用する場合は、渡航費やビザ取得の手続きが不要または軽減されます。そのため、コストを抑えやすいのが特徴です。

また、日本の生活習慣や文化に慣れているため、教育やサポートにかかる負担も少なくなるでしょう。

下記の方法を活用すれば、採用コストの削減が可能です。

  • ハローワークの利用:無料で求人掲載ができ、費用をかけずに採用可能
  • 日本語学校の活用:日本での就職を希望する人も多く、即戦力となる可能性が高い
  • 外国人ネットワークを活用:SNSや外国人向けの求人サイトを利用し、広告費を抑えながら採用可能

方法を組み合わせることで、費用を最小限に抑えつつ、自社に適した外国人材を効率的に採用できます。

以下の記事では、外国人の入社手続きについて詳しく解説しています。あわせてご覧ください。

現地で採用する場合

外国人を現地で採用する場合、渡航費やビザ申請手続きのコストが発生します。しかし、採用方法を工夫すれば、効率的にコストを抑えられます。

おすすめのコストを抑える方法は、下記の3つです。

方法詳細
SNSの活用無料または低コストで求人情報を掲載し、求職者にアプローチできる
現地の学校でスカウト
  • 日本語学校や専門学校で、企業の魅力や募集要項を直接アピールする
  • 適切な人材を見つけやすい
人材紹介会社の活用
  • 手数料はかかるが、企業のニーズに合った外国人労働者を迅速に採用できる
  • 時間と手間を省ける

現地採用の際は、これらの方法を参考にし、コストを抑えながら効率的な採用を実現しましょう。

社内研修を実施

外国人労働者の教育にはコストがかかります。しかし、外部の日本語研修機関や専門教育機関を利用すると、費用が高くなります。そのため、コストを抑えるなら、社内研修を活用するのが効果的です。

具体的な方法詳細
社内研修の導入
  • 先輩社員が直接指導することで、研修コストを削減できる
無料または低コストの日本語学習支援プログラムを活用
  • YouTubeの無料日本語学習チャンネルや、企業向けの日本語教育補助制度を活用する
  • 必要最低限の教育コストでスキルアップを図れる
eラーニングの導入
  • 従業員が好きな時間に日本語や業務知識を学べる
  • 効率的にスキルを向上させられる

これらの方法を活用すれば、低コストで外国人労働者の能力向上を実現できるでしょう。

社宅・シェアハウスの活用

社宅・シェアハウスの活用も、コスト削減につながります。

企業が社宅を提供することで、住宅手当を支給するよりもコストを抑えられます。たとえば、企業が一括で賃貸契約をすれば、家賃の値下げ交渉ができる可能性があり、住居費の削減につながるでしょう。

また、シェアハウスの利用も、外国人労働者に魅力的な選択肢のひとつです。個別に住居を提供する場合に比べ、企業側の負担を軽減しつつ、外国人労働者に安価で住居を提供できます。

さらに、外国人同士で生活すれば、言語や文化の違いに適応しやすくなり、定着率の向上も期待できるでしょう。企業が住居サポートを行うことで、外国人労働者の満足度を高め、長期的な雇用につなげることが可能です。

外国人雇用で活用できる助成金

外国人を雇用する際には、採用コストや研修費、住居費など多くの費用がかかります。しかし、助成金を活用すれば、負担の軽減が可能です。

以下では、外国人雇用に役立つ助成金の種類や受給要件を詳しく解説します。適用できる助成金を活用し、外国人労働者の採用・定着をスムーズに進めましょう。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

外国人労働者を雇用する企業が、職場環境の整備や外国人の定着を促進するためにかかった費用の一部を支援する制度です。

助成金を活用することで、長期的な雇用の維持とコスト削減が可能です。主な受給要件や受給額について、下記にまとめていますので、参考にしてください。

項目詳細
主な受給要件外国人労働者を雇用している事業主であること
認定を受けた就労環境整備計画に基づき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(1と2は実施必須となり、3~5の取り組みはいずれかを実施する必要がある)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること

  1. 雇用労務責任者の選任
  2. 就業規則等の社内規程の多言語化
  3. 苦情・相談体制の整備
  4. 一時帰国のための休暇制度の整備
  5. 社内マニュアル・標識類等の多言語化
助成対象となる費用
  • 通訳費
  • 翻訳機器導入費(上限10万円)
  • 翻訳料
  • 弁護士・社会保険労務士等への委託料
  • 社内標識類の設置・改修費
支給額(上限額)賃金要件を満たしていない場合:支給対象経費の1/2(上限額57万円)

賃金要件を満たす場合:支給対象経費の2/3(上限額72万円)

出典:厚生労働省|外国人労働者を雇用する事業主の皆様へ

さらに、外国人労働者の離職率と日本人労働者の離職率に関する要件を満たす必要があります。

  • 外国人労働者の離職率:計画期間終了後1年以内に10%以下であること(2~10人の場合はひとり以下)
  • 日本人労働者の離職率:計画期間前の1年間と比較し、離職率が上昇していないこと

これらの要件を満たすことで、助成金を受給できます。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

職業経験が不足している求職者や就職が困難な求職者を、一定期間試行的に雇用する企業に対して支給される助成金です。企業は求職者の適性を見極めながら雇用できるため、雇用のミスマッチを防げます。

企業側の受給要件は、下記のとおりです。

  • 雇用保険に加入している事業主であること
  • ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介で求職者を採用していること
  • 原則3ヶ月間のトライアル雇用を実施すること
  • 1週間の所定労働時間が、通常の労働者と同じであること

参考:
厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)
厚生労働省|トライアル雇用助成金リーフレット(事業者向け)

助成金の支給額は、支給対象者ひとりにつき月額4万円です。対象者が母子家庭の母等または父子家庭の父の場合は、ひとりにつき月額5万円支給されます。助成金は最長3ヶ月間、受給可能です。

助成金を活用することで、企業は新たな人材の採用コストを抑えながら、適性のある人材を見極められます。

外国人を雇用する際の注意点

外国人労働者を雇用する際には、日本の労働基準法が適用されます。そのため、日本人と同様に最低賃金以上の報酬を支払う義務が生じます。

  • 国籍を理由とした賃金や労働条件の差別は禁止
  • 最低賃金を下回る契約は無効(最低賃金法が適用される)
  • 最低賃金法第40条により、違反すると50万円以下の罰金が科せられる

参考:厚生労働省|最低賃金法

国籍を理由とした賃金や労働条件の差別を禁じており、最低賃金を下回る報酬は違法になるため、注意しましょう。企業は、適正な労働環境を整備することが求められます。

以下の記事では、外国人雇用の注意点を詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

適切なコスト管理で、外国人雇用をスムーズに進めよう

外国人雇用の際には、さまざまな費用が発生します。しかし、国内採用の活用や助成金の利用などの工夫によって、費用を抑えることが可能です。

適切なコスト管理と効果的な採用戦略を取り入れることが大切です。ぜひ本記事を参考にし、外国人労働者の定着率を高めながら、企業の成長につなげていきましょう。


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