- 更新日 : 2024年12月24日
退職金規定の記載事項は?作り方のポイントをテンプレートとあわせて解説
退職金制度は、従業員の長期雇用においてモチベーションの維持や安心して働ける環境づくりに欠かせません。
しかし、退職金規定を作る際には、法的な要件を考慮して記載しなければ思わぬトラブルに発展する可能性があります。
本記事では、退職金規定に記載すべき事項や作り方のポイントを分かりやすく解説します。
規定の作成時に活用できるテンプレートも紹介するため、自社の方向性に合わせた妥当性のある退職金規定を作れるでしょう。
目次
退職金規定の作成は義務?
結論からいえば、退職金規定の作成は法律的に義務付けられていません。
従業員に対する退職金の支給の有無は、企業が任意で決められます。
ただし、退職金を支給する場合は明確な基準を定めることが重要です。
不明瞭なルールで退職金規定を定めると、従業員とのトラブルに発展する可能性があります。
金額の公平性や支給要件の透明性を確保するためには、明確な規定を従業員に周知することが大切です。
退職金制度を設けるなら就業規則に規定しておく
企業で退職金制度を設ける場合は、退職金規定を就業規則に規定する必要があります。
労働基準法によると、退職金の支給条件によっては「賃金」に該当する可能性があります。
賃金である場合には労働基準法が適用され、就業規則に明確な支給基準や計算方法などを明示しなければなりません。
就業規則と分けて規程化する必要はない
退職金規定は就業規則とは別の規程として作成されるケースが多いですが、独立した規程として設けることは必須ではありません。
労働基準法の要件と企業の制度運用を考慮して、就業規則と分けるか一体化するかを選択しましょう。
管理や運用を簡潔にしたい場合は就業規則と一体化させ、退職金規定もカバーすると効率的です。
より詳細な運用ルールを定め、改正などの柔軟性を重視したい場合には独立した規程とすると良いでしょう。
退職金規定に記載する事項
退職金規定に記載すべき事項には以下の3点が挙げられます。
- 退職手当の定めが適用される労働者の範囲
- 退職手当の決定、計算および支払の方法
- 退職手当の支払の時期に関する事項
それぞれ詳しく解説します。
退職手当の定めが適用される労働者の範囲
従業員の雇用形態や勤続年数など、退職手当の支給要件を明示します。
正社員のみを対象とする場合、契約社員やパートは対象外である旨を記載する必要があります。
一定期間以上の継続勤務が支給条件となる場合には、「勤続3年以上」など、具体的な数値を示すことが必要です。
また、懲戒解雇といった、退職手当の支給免除となる事例についても明記しておきましょう。
退職手当の決定、計算および支払の方法
退職金規定では、退職手当の決定や支払の方法を具体的に規定します。
計算の基準は基本給や勤続年数をもとに退職金の計算式を以下の例のように設定します。
支給率は退職時の評価や役職の有無、退職理由に応じて設定するのが一般的です。
また、退職手当の支払いは一括であるか分割かを記載します。
分割の支払いを選択できるようにする場合は、回数や期間を明記しましょう。
退職手当の支払いの時期に関する事項
退職手当の支払時期も、「退職後3ヶ月以内」のように具体化する必要があります。
退職金制度を導入している企業では、支払い時期を退職から1〜2ヶ月後に設定しているケースが多いです。
会社の経営状況に応じて、支払の延期をする場合の対応方法について明記することも大切です。
もし延期することになった場合は、退職者の承諾を得ることや、遅延による利息について具体的に記載します。
退職金規定の作り方のポイント
退職金規定を作成する際のポイントは以下の3点です。
- 退職理由による不支給や減額の規定を定める
- 適用範囲とする雇用形態や勤続年数を明確にする
- 改廃規定を設けておく
各ポイントについて詳しく解説します。
退職理由による不支給や減額の規定を定める
手当の減額または支給の有無を、退職理由によって判断できる規定を定めます。
退職理由の主な判断基準は以下のとおりです。
- 定年退職か自己都合退職か
- 懲戒解雇や業務上の過失が発生した場合
- リストラによる退職の場合
- 従業員の殉職等により退職した場合
定年退職と自己都合退職の2パターンに分けられ、「自己都合退職は支給額の50%」などのように減額するのが一般的です。
懲戒解雇や業務上の重大な過失を犯した場合など、退職手当が不支給となる事象についても記載します。
人件費削減のために早期退職者を募る場合には、特別に増額して支給する規定もあります。
適用範囲とする雇用形態や勤続年数を明確にする
支給の公平性を確保するためには、雇用形態や勤続年数によって支給の有無・増減を規定することが大切です。
正社員・契約社員・派遣社員・パートやアルバイトといった雇用形態のなかから支給対象を明確にします。
契約社員やパートにも支給する場合には、「雇用期間3年以上」のように、適用範囲を具体的に明記します。
「勤続◯年以上」のように適用範囲を具体的に数値化し、年数増加にともなって段階的に支給率を上げるのも重要です。
多くの企業では、勤続年数3〜5年以上を支給対象とするのが一般的です。
改廃規定を設けておく
経営状況に応じて退職金制度を改正・廃止する際の規定を定めることは、トラブル防止には欠かせません。
法令の変更や経営状態の悪化など、改廃に至る条件を明確に提示します。
従業員の合意のもとで行われるか、改廃内容に合理性があるかが重要なポイントです。
不利益変更となる場合には、十分な説明による透明性の確保が求められます。
退職金制度の改廃に関しては従業員とのトラブルに発展しやすいため、変更条件や内容、事前の説明によって信頼関係の保持に努めることが重要です。
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就業規則がない会社でも退職金規定は作成できる?
従業員が10名未満の会社は就業規則の作成義務がないため、就業規則を設けていない職場もあります。
就業規則がない場合でも、退職金規程を単体で作成することは可能です。
単体で作成する場合は、独立した社内規程として退職金規程を書面化し、従業員へ周知することで効力を発生させられます。
従業員数や就業規則の有無に関わらず、公平性のある退職金規程を従業員全員が把握できることが重要です。
ポイントや要件を踏まえて自社に合った退職金規定を作成しよう
退職金制度は従業員のモチベーションを向上させ、長期雇用の促進に大きく貢献します。
退職金制度そのものは企業に対して義務付けられておらず、支給の有無は企業が自由に選択できます。
ただし、退職金を支給する場合は労働基準法上の「賃金」に該当する可能性があるため、退職金規定の作成が必要です。
退職金規定を作成する際には支給条件や計算方法、適用範囲を明確化し、改廃規定を設けることでトラブルを防止します。
改廃に関する基準や範囲などの規定を詳細に作成しておくことで、経営状態に応じた変更もスムーズに行えるでしょう。
就業規則がない会社も退職金規程として単独で作成可能であり、公平なルールの策定と従業員への周知が重要です。
退職金規定の具体的な記載方法は、無料テンプレートを積極的に活用するのがおすすめです。
様々なツールを利用し、法的要件や自社の運用方針に合わせた退職金規定を作成しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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