- 更新日 : 2024年8月29日
ギャップイヤーとは?大学の取り組みや事例、メリット・デメリットを解説
ギャップイヤーとは学生が進学や就職の前に長期の休みを取り、学業から離れたさまざまな経験を積む期間のことです。本記事ではギャップイヤーの過ごし方とギャップイヤーのメリット・デメリット、ギャップイヤーに力を入れている大学の取り組みなどについて解説します。ギャップイヤーに興味のある方はぜひ参考にしてください。
目次
ギャップイヤーとは?
ギャップイヤーは、学生が大学入学前や在学中に一時的な休学期間を設け、学外での多様な経験を積むための期間です。この期間を利用して、留学・インターンシップ・ボランティア活動などのさまざまな社会体験を行います。
ギャップイヤーの期間
通常、ギャップイヤーは1年間であることが多いです。例えば2024年の大学入試で合格した学生が、1年間のギャップイヤーを取得した場合、2025年の4月から本大学に入学することとなります。
ギャップイヤーを選択する理由や目的は人それぞれですが、普段の生活や勉強から離れることで得られる経験は大変貴重です。日本ではまだ浸透していませんが、ギャップイヤー制度に力を入れている大学もあります。
日本と世界のギャップイヤーの現状
ギャップイヤーの制度は、1960年代のイギリスで始まりました。学生が海外のボランティア活動に参加したり、文化施設を訪問したりするために1年間の休暇を取ったことが起源とされています。やがて、この文化はイギリスを中心に欧米やオセアニアなどの英語圏で広く受け入れられるようになりました。
イギリスやアメリカでは、ギャップイヤーを取ることが一般的になっており、多くの大学が入学前や在学中にギャップイヤーを奨励しています。例えば、ハーバード大学やオックスフォード大学などの名門大学でも、ギャップイヤーを利用して学生が多様な経験を積むことを推奨しています。
一方、日本ではギャップイヤーの浸透が進んでいないのが現状です。ギャップイヤー制度を正式に取り入れている大学は限られており、学生が自らの意思で休学を選択して社会経験を積むことはまだまだ珍しいでしょう。
しかし、近年ではグローバル化の進展に伴ってギャップイヤーの価値が徐々に認識されるようになっています。一部の大学では短期留学プログラムやインターンシップ制度を整備し、学生が学業の合間に社会経験を積む機会を提供しています。
ギャップイヤーの有効的な過ごし方
ここでは、ギャップイヤーを取得した学生がどのような過ごし方をするのかを紹介します。
海外留学
ギャップイヤー中の主な過ごし方の1つが、海外留学です。現地の大学に通って専門的な知識を身につけたり、語学学校で学習したりします。
ワーキングホリデービザを利用して現地で働きながら学ぶこともできるため、実生活での語学力向上はもちろん、異文化に対する理解も深めることが可能です。
ボランティア
ギャップイヤーを利用してボランティア活動に参加することも、貴重な社会経験を得る方法の1つです。ボランティアには環境保護活動や地域コミュニティの支援、教育支援などさまざまな活動があります。
これらの活動を通じて、他者と協力しながら課題解決能力やコミュニケーションスキルを磨くことが可能です。
スキルアップ
ギャップイヤーによって、語学スキルやコミュニケーションスキル以外にもさまざまなスキルが身につきます。ギャップイヤー中は、自分自身で計画を立てて活動することが求められるため、自己管理能力や時間管理能力も自然と向上します。
これらのスキルは学業や仕事をする上で非常に重要であり、物事を推し進めるのに大きな力となるでしょう。
また、ギャップイヤー中に新しい環境や文化に触れることで、物事を多角的に考える力も養われます。これにより、問題解決能力やクリエイティブな思考が向上し、学業や仕事での課題に対して柔軟に対応できるようになります。
アルバイト
アルバイトを通じて働く経験を積むことも、ギャップイヤーの有効な過ごし方といえるでしょう。例えば、リゾート地での季節労働やカフェでのバリスタの仕事などが挙げられます。自ら稼ぐことで、労働の大変さややりがいを肌で感じることができます。
お金を得るだけでなく、働く現場での人間関係や実務スキルも身につけられ、成長につながるでしょう。
インターンシップ
ギャップイヤー中にインターンシップに参加することは、将来のキャリア形成において非常に有益です。実際の職場で働くことでビジネススキルを学べ、業界の動向を知ることで自分の興味や適性を確認する良い機会にもなるでしょう。
インターンシップで実務経験を積むことで、将来の就職活動にも大いに役立ちます。
ギャップイヤーのメリット
ここからは、ギャップイヤーにはどのようなメリットがあるのかを解説します。
自分を深く考える時間が持てる
ギャップイヤー中は、通常の学生生活では得られない多様な経験ができ、自分自身を見つめ直す貴重な機会となります。ギャップイヤーを通して、自分が本当にやりたいことや将来の目標についてじっくり考える時間を持つことで、自己成長を促せるでしょう。
自己理解を深めることで、将来のキャリア形成における選択肢が増えるのもメリットです。
新たな人脈が広がる
ギャップイヤーにおける国内外での活動を通じて、異なるバックグラウンドを持つ多くの人々と出会えます。これらのつながりは、社会人になった後も貴重なネットワークとなり、さまざまな場面で役立つことがあります。
ギャップイヤーを利用して得られる人脈は、人生における財産となり、自分自身の成長や仕事に大きな影響を与えるでしょう。
キャリア経験ができる
ギャップイヤー中のインターンシップやアルバイトを通じて、ビジネススキルや職場での実務経験を得られます。自分の適性や興味を確認でき、将来のキャリア選択に役立ちます。
社会人になると、まとまった時間を取って新たな経験を積むのは難しいため、ギャップイヤーは非常に貴重な期間となるでしょう。
進学・就職時のアピールポイント
ギャップイヤー中の経験は、進学や就職時に大きなアピールポイントとなります。ギャップイヤー期間中にどんな経験をしたのか、その中でどのようなスキルや視点を得たのかを具体的に説明できれば、他の候補者と差別化が図れるでしょう。
実際に体験したことをもとにしたエピソードは、面接で強力な武器となります。
ギャップイヤーのデメリット
ギャップイヤーには以下のようなデメリットもあります。
お金がかかる場合も
ギャップイヤーの大きなデメリットの1つは、費用がかかることです。例えば海外で生活する場合には渡航費や滞在費、保険料などの多くの費用がかかります。十分な貯蓄がない場合には、これらの費用をカバーするための資金計画が必要です。
活動支援金や奨学金を活用する方法もありますが、事前にギャップイヤー中にかかる費用を見積もってしっかりと準備を行わなければ、金銭的な負担が大きくなる可能性があります。
目的がないと時間が無駄に
ギャップイヤーは自由度が高いため、明確な目標や計画がない場合には時間を無駄に過ごしてしまう可能性があります。目的を明確にしないままギャップイヤーに入ると、結果としてダラダラと過ごしてしまい、後悔することにもなりかねません。
ギャップイヤー中に得られる経験やスキルをより充実したものにするために、事前にしっかりとした計画を立て目標を明確にすることが大切です。
大学のギャップイヤーの取り組み
ここでは、大学が行っているギャップイヤーの取り組みについて解説します。
活動支援金の給付
大学はギャップイヤーを奨励するために、学生に対して活動支援金を給付しています。この支援金は、留学やボランティア、インターンシップなどの活動に参加するための費用をカバーするものです。
支援金のような金銭的サポートがあることで、経済的な理由でギャップイヤーに参加できない学生でも、積極的にチャレンジすることが可能になります。
単位取得の促進
大学はギャップイヤーの活動を単位認定と連動させることで、学生が学業と社会経験を両立できるよう支援しています。例えば、ギャップイヤーが終わって帰国後に提出するレポートによって単位を認定している大学があります。
ギャップイヤーで得た経験が単位として認められることで、学生は積極的にギャップイヤーに参加できるでしょう。
大学のギャップイヤーの実施事例
ここでは実際の大学のギャップイヤーの実施事例をみていきましょう。
FLY Program|東京大学
東京大学の「FLY Program(Freshers’ Leave Year Program)」は、2013年度から開始されたプログラムです。このプログラムは、入学したばかりの学部学生が申請し1年間の特別休学期間を取得できる仕組みです。
ギャップイヤー期間中、学生は東京大学以外の場所でボランティア活動や就業体験、国際交流などの社会体験活動に参加します。プログラムの内容は、学生自身が主体的に決定できるため個々人の興味や目標に応じた多様な活動が可能です。
ギャップイヤー入試|国際教養大学
国際教養大学では、高校卒業後にギャップイヤーを活用できる「ギャップイヤー入試」を導入しています。この入試制度は、ボランティアやインターンシップなどの活動を通じて、能動的かつ主体的に成長を目指す学生を対象としています。
出願要件は以下の通りです。
- 合格後の9月に入学できること
- ギャップイヤー期間中(4~8月)の活動計画書を提出できること
選考は「自己アピール書」と「ギャップイヤー活動計画書」をもとに、英語小論文と面接(日本語および英語)の結果で総合的に判断されます。
ギャップイヤープログラム|小樽商科大学
小樽商科大学のギャップイヤープログラムは、入学前に国内外の大学で一定期間学習する機会を提供しているのが特徴です。大学入試に合格した年から1年間のギャップイヤープログラムが始まり、終了後の翌年4月に本学に入学することになります。
プログラム参加者は、派遣先の大学で語学の授業や専門科目を履修し、授業料や滞在費を補助する返還不要の奨学金が支給されます。
参考:2024年度小樽商科大学ギャップイヤープログラム(海外派遣プログラム)募集要項|小樽商科大学
ギャップイヤーを有効活用して未来の選択肢を増やそう
ギャップイヤーは日本ではまだまだ浸透していませんが、ギャップイヤーに力を入れ金銭的な支援を行っている大学もあります。ギャップイヤーにはメリットだけでなくデメリットも存在しますが、有効に活用することで将来の選択肢が広がる可能性があります。
ギャップイヤーの過ごし方は人によってさまざまです。自分に合った選択をして有意義な時間を過ごしましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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