- 更新日 : 2024年9月4日
LGBTとは?Qとの関係や意味をわかりやすく解説
LGBTとは、「レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー」の頭文字をとった言葉ですが、性的マイノリティの人々を表す言葉として使われることもあります。
ここでは、LGBTだけではなく、「クィア/クエスチョニング」や「Aセクシュアル」といったさまざまな性的マイノリティの人々をさす言葉について解説します。
目次
LGBTとは?
LGBTとは、「レズビアン」「ゲイ」「バイセクシュアル」「トランスジェンダー」の頭文字をとった言葉です。ただし、4つに限らない性的マイノリティの人々を表す言葉として使われるのが一般的です。有名人がカミングアウトするなど、LGBTという言葉をメディアでよく見かけるようになりました。まず、LGBTが示すそれぞれの意味について解説します。
レズビアン(Lesbian)
レズビアンとは、自分を女性として自認し、かつ恋愛や性愛の対象が女性である性のあり方です。「女性同性愛者」とも呼ばれ、性的指向が女性に向く女性を指します。あくまでも、性的指向が女性に向くという意味であり、その人の容姿や仕草といった性表現が男性か女性かという点は関係ありません。たとえば、ボーイッシュな恰好をした女性で性的思考が女性という場合もレズビアンに含まれます。
ゲイ(Gay)
ゲイとは、自分を男性として自認し、恋愛や性愛の対象が男性である性のあり方を指します。「男性同性愛者」とも呼ばれます。レズビアンと同様に、男性が男性に性的指向を持つという性別と性的指向で示された言葉です。見た目が女性らしい、男性らしいといった性表現は関係ありません。
バイセクシャル(Bisexual)
バイセクシャルとは、男性・女性両方とも好きになる性のあり方を指します。「両性愛者」とも呼ばれます。性的指向が一つの性別に向くとは限らず、そのときによって好きになる性が変わります。
トランスジェンダー(Transgender)
トランスジェンダーとは、心と身体の性が一致していない人のことを指す言葉です。生まれ持った身体の性別と、その人が認識する自分の性別(性自認)が異なる人を指します。
LGBTと並ぶ「Q」とは何?
近年では、LGBTだけではなく、「LGBTQ」という表記も広まっています。「Q」とは、「クィア/クエスチョニング」の頭文字をとった用語です。自分自身の性自認や性的指向が定まっていない人、もしくはあえて定めていない人を指します。
クィア(Queer)
クィアは、もともと「妙な」「風変わりな」などといった意味を表す言葉で、ひと昔前は、ゲイやレズといった言葉と同様に、同性愛者を侮蔑する言葉として使われていました。しかし、侮蔑を向けられてきた性的マイノリティの人々があえて自分自身を指す言葉として使うようになり、現代では「規範的な性のあり方以外を包括する」ことを意味する言葉として使われるようになっています。
クィアという言葉はさまざまな性的マイノリティを包括する概念を意味するため、性的マイノリティ全体をつなぎ止め、連帯へと導く力があると言えます。
クエスチョニング(Questioning)
「性はグラデーションである」とも言われ、性自認や性的指向にはさまざまな形があります。クエスチョニングは、自分自身の性自認や性的指向が定まっていない人々、もしくは意図的に定めていない人々を指す言葉です。
上記に紹介したLGBTは一つの分類でしかなく、実際にはさまざまな性のあり方が存在しています。「LGBTs(複数形のs)」「LGBTQ+(プラス)」という言葉も生まれ、広くセクシャルマイノリティを表しています。
性にまつわるいくつかの定義
性別は、「男性/女性」という二つの区分だけではなく、いくつかの要素に分けて考えることができます。性にまつわる定義として代表的なものは、「法律上の区分」「性自認」「性的指向」「性表現」の4つです。
法律上の性区分
法律上の性区分は、出生の際に役所に届けられる性別のことです。男性器がある/女性器があるという身体的特徴をもとに、男性/女性と割り当てられます。
性自認
性自認とは、その人本人が認識している性別のことを意味します。男性と認識している、女性と認識している、または中性である、なかには性別を決めたくないなど、性自認は、人によってさまざまです。
性的指向
性的指向とは、性愛がどの性別に向いているかを示す要素です。異性を好きになる、同性を好きになる、両方の性を好きになる人々もいれば、性愛を持たない人々もいます。
性表現
性表現とは、服装や外見などで社会的にどの性別を表現するかという要素です。スカートやパンツスタイルなどの服装、化粧をするかしないか、僕や私といった一人称をどうするかなどさまざまな性表現があります。
セクシュアリティーの多様性・種類
性のあり方は多様であり、LGBTやQ以外にもさまざまな分類があります。性のあり方を知ることは、性的マイノリティへの理解を深めるポイントです。
Xジェンダー
Xジェンダーとは、自身の性を限定しない人々のことを指す言葉です。どちらでもない、どちらとも言い切れない人々を指し、「自分のなかに両方の性別が存在する」「中間であると考える」「男性・女性の区分に当てはまらない」といったあり方があります。
Aロマンティック
Aロマンティック(ア・ロマンティック)とは、他者に恋愛的に興味関心を抱かない人々のことを指します。他人に恋愛感情をほとんど抱きません。恋愛に興味がないことで、思春期に「なんで恋愛に興味がないの?」という会話から、当事者の心が傷つくことも少なくないでしょう。
Aセクシュアル
Aセクシュアル(ア・セクシュアル)とは、他者に性的に興味関心を抱かない人々のことを指します。恋愛感情を持ったとしても、性的欲望をほとんど抱くことがありません。Aロマンティック・Aセクシュアルは人によってさまざまであり、恋愛感情も性的欲望もない人もいれば、そのときどきによって異なるという場合もあります。
パンセクシャル
パンセクシャルとは、性的指向が性別にとらわれない人々のことを指します。バイセクシャルのなかでも、恋愛感情や性的欲望の対象基準に性別がない人々を指します。
ビジネスの場におけるLGBTに関する注意点
性的マイノリティの人々は、周囲の人々の理解のない言動から、ビジネスの場で傷ついたり、悩まされたりすることがあります。性的マイノリティの人々に対するセクハラは、会社として防止に取り組まなければいけないものの一つです。
セクハラ(セクシャル・ハラスメント)とは、本人の意に反して職場で性的な言動を行い、職場環境を害することを言います。性的な言動の内容には、性的な事実関係を尋ねることや、性的な冗談やからかいをすることも含まれます。職場で、女性の性的表現をする男性に対して「男の人が好きなの?」と発言することはセクハラに該当するでしょう。セクハラを防ぐためにも、企業としてはLGBTをはじめとした性的マイノリティへの理解を深めることが重要です。
参考:2 職場におけるセクシュアルハラスメントとは|厚生労働省
また、職場の制度や法的な制度で困難に直面することもあります。たとえば、同性パートナーは婚姻が認められないことから、「扶養手当が支給されない」「そもそも社会保険の扶養に入れない」などといったことで、性的マイノリティの人々が、職場の制度や法的な制度で公平でないと感じることが多くあります。そのほか、トランスジェンダーの人が戸籍上の性別が記載された書類を提出することに苦痛を感じるといったことがあるかもしれません。
性的マイノリティの人々は、世間の無理解だけでなく、社会的構造から困難や支障に直面することが少なくありません。性的マイノリティの人々が抱える悩みを知ることが、職場でこれまでは「あたりまえ」とされていた制度やあり方を見直すきっかけになります。
LGBT受入における注意点についての案内文‐無料テンプレート・ひな形
企業がLGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)の人々を職場に受け入れる際に考慮すべき事項をまとめた案内文を作成しました。
以下より、LGBT受入における注意点についてのテンプレート(エクセル・ワード)を無料でダウンロードいただけます。ぜひご活用ください。
LGBTの世界的な現状・事例
世界的にも、多くの企業がLGBTをはじめ性的マイノリティの人々に対して、働きやすい職場作りを進めています。
企業の取組み日本マイクロソフト社
日本マイクロソフトでは、性指向や性自認による差別を禁止しています。誰もが平等に扱われる職場・社会づくりの実現を目的とした法律制定のための国際署名キャンペーンである「EqualityActJapan(イクオリティーアクトジャパン)」による「ビジネスによる LGBT 平等サポート宣言」に賛同し、企業の方針を明らかにしています。
参考:日本マイクロソフト、「ビジネスによる LGBT 平等サポート宣言」に賛同 – News Center Japan|Microsoft
ゆれうごくアメリカ
アメリカでは、カリフォルニア州教育委員会が2017年に、中学校までの教科書にLGBTについての内容を記載することを認めるなど、教育現場でのLGBT教育が進んでいます。ただし、LGBT教育の在り方は州ごとに異なります。
カリフォルニア州のような動きがある一方で、2022年1月にフロリダ州では、小学校で子どもたちが性自認・性的指向などの話し合いを禁じる法律、通称「ゲイと言ってはいけない法案(Don’t Say Gay)」を可決しました。この法律は、小学校3年生までの子どもたちに対して、性的マイノリティや性自認などに関する話題は相応しくないとして、学校での議論を厳格に制限するものです。この法律は、LGBTなど性的マイノリティの人々を孤立させ、自由でオープンな教育の機会を奪うものであると全米から非難を浴びています。
参考:
Florida’s law limiting LGBTQ discussion in schools, explained|The Washington Post
米フロリダ州、学校での「性自認の議論禁止」法が成立|日本経済新聞
性的マイノリティについて知り職場づくりを考えよう
性的マイノリティの人々に「会ったことがない」という人もいるかもしれません。しかし、多くの場合は周囲に対してカミングアウトしていないだけで、学校や職場といったさまざまなコミュニティで、性的マイノリティの人々が存在しています。
LGBTをはじめ、性的マイノリティについて基礎的な知識を学ぶことは、差別的な振る舞いを行わないうえで重要です。日常的な困難や困りごとについて知ることが、職場での制度改善につながるでしょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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