• 更新日 : 2026年1月30日

モラハラとは?家庭内や職場で発生しやすい例や対処法などを解説

モラハラ(モラルハラスメント)とは、倫理や道徳(モラル)に反した言動によって、相手の精神や尊厳を傷つける「精神的な暴力」のことです。肉体的な暴力(DVや傷害)と異なり、目に見える傷跡が残らないため表面化しにくい一方で、被害者はうつ病や適応障害などの深刻なメンタルヘルス不調に陥るリスクがあります。

企業においては、職場内のモラハラを放置することは安全配慮義務違反に直結し、法的・経営的に甚大なダメージをもたらします。また、従業員が家庭内でモラハラを受けている場合も、パフォーマンスの低下や突発的な休職の原因となるため、人事労務担当者として正しい知識を持つことが不可欠です。

目次

モラハラ(モラルハラスメント)とは?

モラハラ(モラルハラスメント)とは、モラル(道徳や倫理)に反した嫌がらせのことです。

物理的な力を使わずに、言葉、態度、身振り、文書などを用いて、相手の人格や尊厳を傷つけ、精神的な苦痛を与える行為を指します。

モラハラの定義と厚生労働省の見解

モラハラは、働く人の人格を否定し、職場環境を悪化させて退職に追い込む卑劣な行為です。厚生労働省のポータルサイト「こころの耳」では、職場におけるモラハラを以下のように定義しています。

「言葉や態度、身振りや文書などによって、働く人間の人格や尊厳を傷つけたり、肉体的、精神的に傷を負わせて、その人間が職場を辞めざるを得ない状況に追い込んだり、職場の雰囲気を悪くさせること」

引用:メンタルヘルス関係:用語解説|こころの耳:働く人のメンタルヘルス・ポータルサイト 厚生労働省

このように、特定の個人を標的にして精神的・肉体的に傷つけ、就業の継続を困難にさせる行為がモラハラの本質です。

モラハラとパワハラの違い

モラハラとパワハラ(パワーハラスメント)の主な違いは、嫌がらせの背景にある「職務上の優位性」の有無です。

パワハラは上司から部下へのように「優越的な関係」を背景としますが、モラハラは役職に関係なく、同僚間や部下から上司に対しても発生する可能性があります。

項目モラハラ(モラルハラスメント)パワハラ(パワーハラスメント)
主な背景個人の倫理観、道徳の欠如職場内の優越的な関係(役職・経験等)
発生する関係全方位(上司、同僚、部下、集団)主に上位者から下位者(逆転現象もあり)
攻撃の手段無視、陰口、嫌な態度などの精神攻撃暴言、過大な要求、身体的攻撃を含む
共通点どちらも精神的苦痛を与え、就業環境を悪化させる行為

※現代の職場では、優越的な背景があるモラハラは「パワハラ」の類型に含まれることも多く、両者を明確に切り分けるよりも、包括的なハラスメント対策として捉えるのが実務上は適切です。

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家庭内で起こるモラハラとは?

家庭内におけるモラハラは、配偶者を心理的に支配し、自尊心を奪うことで家庭内での優位性を確立しようとする行為です。 身体を傷つける暴力(フィジカルDV)とは異なり、周囲から見えにくいため孤立しやすく、被害者が「自分が至らないから怒られるのだ」と洗脳状態(ガスライティング)に陥り、被害が長期化する傾向があります。

精神的な追い詰めと人格否定

家庭内モラハラの代表例は、日常的な言葉の暴力による人格否定です。 

「お前は本当にダメな人間だ」「家事も満足にできないのか」と罵倒し続けることで、相手の自信を喪失させます。また、子供の前でパートナーを無能扱いして笑いものにしたり、実家の両親や友人の悪口を吹き込んで社会的に孤立させたりする行為も、典型的なモラハラに該当します。

経済的制約による支配(経済的DV)

金銭的な自由を奪うことで、相手を逆らえない状況に追い込む手法も多く見られます。

十分な収入があるにもかかわらず、生活費を極端に低く抑えたり、何を買ったか領収書を1円単位で提出させて厳しく叱責したりする行為です。これにより、被害者は「別れたくても生活できない」という心理的な檻に閉じ込められ、支配関係が固定化してしまいます。

不機嫌による威圧

直接的な暴言がなくても、態度によって相手をコントロールする行為もモラハラの一種です。

自分の意に沿わないと数週間単位で無視を続ける、大きな音を立ててドアを閉める、溜息をつくなど、無言の圧力で相手を萎縮させます。これは近年「フキハラ(不機嫌ハラスメント)」とも呼ばれ、家庭内に常に緊張感を生じさせ、家族の心身を疲弊させる重大な問題です。

職場で起こるモラハラとは?

職場のモラハラは、業務上の信頼関係を破壊し、労働者のキャリアや健康を損なわせる不法行為です。

役職上の権限がなくても、集団による無視や専門知識の独占などの「優位性」を背景に発生するのが特徴です。これらは厚生労働省が定義する「パワハラ6類型」のうち、特に精神的な攻撃や人間関係からの切り離しに深く関連しています。

陰湿な疎外と人間関係からの切り離し

特定の従業員を意図的に孤立させる行為は、職場のモラハラの典型例です。 必要な会議に一人だけ呼ばない、業務連絡のメールから外す、挨拶を完全に無視するといった「大人のいじめ」が該当します。また、ランチや休憩時間に一人だけ誘わない、周囲に「あの人と関わらない方がいい」と吹き込むなど、職場全体を巻き込んでターゲットを孤立させる手法もよく見られます。

業務を通じた嫌がらせ(過大・過小な要求)

業務量や内容をコントロールすることで、精神的に追い詰める手法です。

到底終わらない量の仕事を無理な期限で押し付ける(過大な要求)一方で、専門職に対して誰でもできるコピー取りや雑用のみを命じる、あるいは一切仕事を与えず席に座らせておくだけにする(過小な要求)といった行為です。これらは「自己有用感」を奪い、休職や退職に追い込むことを目的として行われます。

プライバシーの侵害と精神的攻撃

業務とは無関係な私生活や属性を攻撃対象にすることもモラハラです。

「独身なのは性格に問題があるからだ」といった憶測を広める、休日の過ごし方やSNSの投稿を監視して説教するなどの行為が挙げられます。また、指示を出していないのに「なぜやっていないんだ」と責めるなど、被害者が自分の記憶や判断力に自信を失うまで追い詰める「ガスライティング」的な手法も、深刻なメンタルヘルス不調を招きます。

モラハラが被害者と企業に及ぼす悪影響とは?

モラハラは個人の心を壊すだけでなく、組織の経営基盤を揺るがす甚大な損害をもたらします。

被害者に現れる心身の支障

継続的なモラハラは、脳のストレス耐性を限界まで削り、以下のような疾患を引き起こします。

  • うつ病: 意欲の低下や不眠が続き、死を考えるほどの深い絶望感に襲われる。
  • 適応障害: 職場や家庭という特定の環境にいるだけで、激しい動悸、涙が止まらない、腹痛などの身体症状が出る。
  • 心身症: ストレスが原因で、円形脱毛症、メニエール病、重度の偏頭痛などの実質的な病気が表れる。

企業が負う法的責任とコストリスク

人事労務担当者が認識すべきは、モラハラ放置が「経営上の負債」になるという事実です。

  • 安全配慮義務違反: 従業員がモラハラで罹患した場合、企業は多額の損害賠償責任を負う可能性があります。
  • 生産性の低下と採用難: 加害者だけでなく、それを見ている周囲のモチベーションも低下し、職場全体のパフォーマンスが落ちます。また、悪評が広まれば「ブラック企業」として採用が困難になり、莫大な採用・教育コストが浪費されます。

職場や家庭でモラハラが発生する原因は?

モラハラが発生する背景には、個人の性格の問題だけでなく、ストレスフルな環境や閉鎖的な人間関係といった「構造的な要因」が複雑に絡み合っています。多くの場合、加害者側が抱える心理的な葛藤や、周囲の環境がハラスメントを助長させてしまうことが主な原因です。

加害者側に潜む心理的背景と自己正当化

モラハラを行う側には、自身の不安や自信のなさを「他者をコントロールすること」で解消しようとする心理が働くことがあります。 

特に「自分は正しいことをしている」という強い思い込み(自己正当化)がある場合、相手への攻撃が「熱心な指導」や「家族のためのしつけ」にすり替わってしまいます。自分の非を認められない心の脆さが、結果として身近な存在や立場が弱い人への攻撃へと繋がってしまうのです。

閉鎖的な環境とストレスの蓄積

家庭や職場が「逃げ場のない閉鎖的な空間」になっていることも、モラハラを悪化させる大きな原因です。

職場においては、過度なノルマや長時間労働によるストレスの「はけ口」として特定の個人が標的にされるケースがあります。家庭においても、外部との交流が少なく相談相手がいない状況では、加害者の言動を客観的に指摘する存在がいなくなり、ハラスメントが日常化・深刻化しやすくなります。

組織や家庭内のゆがんだパワーバランス

ハラスメントは、両者の間に「反論しにくい空気」があるときに発生します。 

職場であれば上司と部下という職権だけでなく、ベテランと新人といった知識の差が背景になることもあります。家庭では収入の差や家事の負担割合などが不均衡な場合、一方が優位に立ち、もう一方を支配下に置こうとする歪んだパワーバランスが生じ、モラハラが誘発される原因となります。

職場や家庭でモラハラ被害者になった場合の対処法は?

モラハラの問題に直面した際は、被害の深刻化を防ぐために早期介入と客観的な証拠の確保が最も重要です。

人事担当者は感情的な判断を避け、事実に基づいた適正なフローで対応を進めることが求められます。

事実関係の調査と客観的な証拠の収集

モラハラの解決には、第三者が見てもハラスメントと判断できる客観的な事実を積み上げることが不可欠です。

人事は被害者からのヒアリングだけでなく、メール、チャット、録音データ、指示書のコピーなどの提出を求めます。また、周囲へのヒアリングを行い、言動が「業務上の必要性」を逸脱しているか確認します。

被害者が作成した「いつ、どこで、誰に、何をされたか」を記した日記やメモ、さらにメンタルヘルス不調を証明する「精神科の診断書」も、法的な損害賠償や労災認定において非常に有力な証拠となります。

被害者の保護と加害者への適正な措置

事実が確認された場合、企業は速やかに被害者の安全を確保し、就業環境を是正しなければなりません。

まずは被害者のメンタルケアを優先し、必要に応じて産業医との面談設定や、加害者と物理的に距離を置くための部署異動を検討します。

一方で加害者に対しては、就業規則の規定に基づき、訓戒、減給、出勤停止などの懲戒処分を適正に下します。この際、加害者による報復行為が行われないよう、継続的なモニタリングを行う体制も重要です。

法的解決と慰謝料請求の視点

深刻なケースでは、民事上の不法行為として損害賠償(慰謝料)を請求することも検討されます。 職場であれば加害者個人および会社(使用者責任)、家庭であれば配偶者に対して請求を行います。慰謝料の相場は被害の程度や期間によりますが、数十万〜数百万円に及ぶこともあります。企業としては、社内処分で終わらせるだけでなく、必要に応じて弁護士等の専門家へ繋ぐ導線を用意しておくことが、二次被害の防止と安全配慮義務の履行に繋がります。

公的な相談機関と個別労働紛争解決制度の活用

社内での解決が困難な場合や、より専門的な助言が必要な場合は、外部の公的機関を活用しましょう。 

厚生労働省が運営する「総合労働相談コーナー」では、専門の相談員がアドバイスを行うほか、紛争を解決するための助言・指導や、第三者を交えた話し合いで解決を図る「あっせん」という制度が利用可能です。

これらは「個別労働紛争解決制度」と呼ばれ、裁判に比べて迅速かつ無料で利用できるため、企業と労働者双方の負担を軽減する有効な手段となります。

家庭内の問題に対する企業としてのサポート

従業員から家庭内のモラハラについて相談を受けた場合、企業は私生活のことと切り捨てず、適切なリソースへ繋ぐ役割を担います。

家庭内の問題は仕事のパフォーマンスに直結するため、自治体の配偶者暴力相談支援センターや、弁護士会が運営する法律相談窓口などを紹介する導線を整えておきましょう。企業が導入しているEAP(従業員支援プログラム)がある場合は、カウンセリングの利用を促すことも、安全配慮義務を果たす上での重要な一歩となります。

人事労務が講じるべきモラハラ予防策と対処法

企業には、2022年4月から全面施行された「パワハラ防止法」に基づき、適切な措置を講じることが義務付けられています。

出典:職場におけるハラスメントの防止のために(セクシュアルハラスメント/妊娠・出産等、育児・介護休業等に関するハラスメント/パワーハラスメント|厚生労働省

方針の明確化と社内周知

会社として「モラハラを含むあらゆるハラスメントを許さない」という断固たる姿勢を示します。就業規則にハラスメント禁止規定と厳格な罰則を明記し、全従業員に向けたトップメッセージや定期的な研修を通じて、何がモラハラに該当するのかという共通認識を作ります。

相談窓口の設置と事実関係の調査

被害者が安心して相談できる体制を構築します。 社内の窓口だけでなく、利害関係のない外部の専門家(弁護士や社労士)による窓口を設けるのが効果的です。

相談があった際は、プライバシーを徹底的に保護した上で、被害者・加害者・第三者から迅速にヒアリングを行い、客観的な証拠(メールや日記、ログ等)を収集します。

適正な措置とアフターケア

事実が確認された場合、就業規則に基づき加害者に異動や懲戒処分を下します。同時に、被害者に対しては産業医との面談設定や業務負荷の調整など、メンタル面のフォローを最優先で行います。

また、家庭内のモラハラに悩んでいる従業員がいた場合も、EAP(従業員支援プログラム)の紹介など、企業として可能な支援の導線を用意しておくことが望ましいでしょう。

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モラハラのない健やかな職場・家庭環境を実現するために

モラハラとは、単なる性格の不一致や厳しい指導ではなく、相手の心身を破壊する深刻なハラスメント行為です。職場いじめや精神的DVといった形態をとって現れるこの問題は、被害者の自尊心を奪い、うつ病や適応障害などのメンタルヘルス不調を引き起こすだけでなく、組織全体の活力を削ぐ要因となります。

企業の人事労務担当者にとっては、職場内でのモラハラ対策(パワハラ防止措置)を徹底することはもちろん、従業員が家庭内モラハラ等のプライベートな悩みでパフォーマンスを低下させていないか、早期にサインを察知し、適切な相談窓口や公的機関へ繋げる体制を整えることが重要です。

モラルハラスメントという「見えない暴力」を許さない組織文化を醸成し、全ての人が職場でも家庭でも尊厳を持って過ごせる環境を築くことが、結果として企業の持続的な成長と安全配慮義務の履行に繋がります。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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