• 更新日 : 2022年2月10日

年末調整における法定調書とは?内容と書き方を解説!

年末調整が終わったら、源泉徴収票支払調書などの法定調書を作成し、提出期限までに税務署へ提出します。法定調書提出時には「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」の添付も必要です。

法定調書の書き方、作成から提出までの流れについて解説します。電子化による電子データでの提出についても紹介しますので、参考にしてください。

年末調整における法定調書とは?

法定調書とは、所得税法相続税法などで税務署に提出することが義務付けられている資料のことです。年末調整が終わっても、年末調整で計算した給与や所得税の計算結果を記載した法定調書や法定調書合計表、支払調書などを作成し、原則として翌年1月31日までに税務署に提出しなければなりません。

税務署は、税金の対象となる資金の支払いがあっても、その資金の動きを把握することができないことがあります。法定調書を提出することで、税務署は資金の動きを把握します。年末調整業務は、法定調書などの資料を税務署に提出することでやっと終わるのです。

法定調書について詳しく知りたい方は、この記事と併せて以下の記事も参考にしてください。

法定調書合計表について

法定調書合計表の正式名称は、「給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表」です。役員や従業員への給料や退職金、原稿料、税理士や弁護士への報酬など、社内や社外に対して支払った金額や徴収した源泉所得税の金額などを記載して、税務署へ報告するために使います。

法定調書合計表は、以下の6つの項目に分けて記載します。

  1. 給与所得の源泉徴収票合計票
  2. 退職所得の源泉徴収票合計表
  3. 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表
  4. 不動産の使用料等の支払調書合計表
  5. 不動産などの譲受けの対価の支払調書合計表
  6. 不動産等の売買又は貸付のあっせん手数料の支払調書合計表

令和3年 法定調書合計票
引用:令和 年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)|国税庁

支払調書とは

支払調書とは、税理士や弁護士に支払った報酬や不動産の使用料など、企業が外部のものへ支払った相手先やその支払い金額、源泉徴収金額を記載した書類のことです。法定調書合計表には支払調書の内容を記載する必要があり、源泉徴収票や支払調書に法定調書合計表を添付して、税務署に提出します。

支払調書は支払ったすべての人や法人について提出する必要はなく、提出する範囲や要件は、それぞれの内容に応じて決められています。

報酬等を受け取った個人は、確定申告を行う際に、この支払調書の内容を参考にして申告書に受け取った金額や源泉徴収された金額を記載することができます。

支払調書について詳しく知りたい方は、この記事と併せて以下の記事も参考にしましょう。

法定調書合計表の作成方法

法定調書合計表に記載する内容と記入方法について、わかりにくい部分と注意点を解説します。以下の①~⑥に分けて見ていきましょう。

ステップ① 給与所得の源泉徴収票合計表の記入

<給与所得の源泉徴収票合計表の記入項目と注意点>

  • Aの「 俸給、給与、賞与等の総額」欄は、「給与所得の源泉徴収票」の提出が省略できるものも含め、給与の支払いがあったすべての人について記載します。年の中途で入社した従業員については、入社した日以降の分を記載し、前職で受け取った給与は含みません。
  • 「左のうち、源泉徴収税額のない者」欄は、源泉徴収税額が0円となる従業員数を記載します。
  • Bの「 源泉徴収票を提出するもの」欄には、「給与所得の源泉徴収票」を提出する人の人数、支払い金額、源泉徴収税額を記載します。年の中途で入社した従業員についても、前職で受け取った給与と徴収された源泉所得税額に含めて記載するため、注意しましょう。
  • 「 源泉徴収票を提出するもの」には、支払金額が150万円を超える役員、支払金額が500万円を超える従業員、支払金額が250万以上の弁護士や税理士(給与等として支払った場合)などが該当します。「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書」を提出する場合には、ステップ3で説明する「報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表」の欄に記載する必要があるため、注意しましょう。
  • 「災害減免法により徴収猶予したもの」欄は、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の規定によって源泉所得税の徴収を猶予された人の人数と猶予された税額を記載します。

令和3年 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)
引用:令和 年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)|国税庁

ステップ➁ 退職所得の源泉徴収票合計表の記入

<退職所得の源泉徴収票合計表の記入項目と注意点>

  • Aの「退職手当等の総額」欄には、退職所得の源泉徴収票の提出が省略できる人を含めたすべての人の人数、退職手当の支払金額、源泉徴収税額を記載することに注意しましょう。
  • Bの「Aのうち、源泉徴収票を提出するもの」欄には、「退職所得の源泉徴収票」を提出する人の人数、退職手当の支払金額、源泉徴収税額を記載します。

令和3年 退職所得
引用:令和 年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)|国税庁

ステップ③ 報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表の記入

<報酬、料金、契約金及び賞金の支払調書合計表の記入項目と注意点>

  • 各区分に分けて、それぞれの支払調書の合計額を記載。「人員」欄には、個人と個人以外に区分して記載します。
  • 「支払金額」欄は、個人と個人以外に支払った金額の合計を記載し、「源泉徴収税額」欄には、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の規定により源泉所得税の徴収を猶予された税額は除きます。
  • 「所得税法第 204 条に規定する報酬又は料金等」欄は、支払調書の提出が省略できるものを含め、すべての報酬や料金などについて記載することに注意しましょう。
  • Bの「Aのうち、支払調書を提出するもの」欄は、支払調書を提出するものについての合計をそれぞれ記載します。
  • 「災害減免法により徴収猶予したもの」欄は、災害被害者に対する租税の減免、徴収猶予等に関する法律の規定により源泉所得税の徴収を猶予された人の人数と猶予税額を記載します。

令和3年 報酬・料金・契約金及び賞金
引用:令和 年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)|国税庁

ステップ④ 不動産の使用料等の支払調書合計表の記入

<不動産の使用料等の支払調書合計表の記入項目と注意点>

  • Aの「使用料等の総額」欄は、その年中に支払いが確定した不動産の使用料などを記載。この欄には支払調書の提出が必要ではないものも含み、支払った人の人数と支払金額の合計を記載します。
  • Bの「Aのうち、支払調書を提出するもの」欄には、支払調書を提出する人の人数と支払金額の合計を記載します。
  • 「摘要」欄の記載にも注意してください。例えば以下のような場合に記載します。
    支店が支払った分の支払調書を本店でまとめて本店の所轄税務署長に提出する場合
     1.本店が提出する支払調書合計表には、支払調書を本店が取りまとめて提出する旨と支  店の所在地、名称及び賃借している不動産の種類を記載
     2.支店が提出する支払調書合計表には、支払調書を本店が提出する旨及び本店の所在  地を記載

不動産の使用料などの支払いがなく、不動産の使用料等の支払調書の提出を要しない場合 には、その旨を記載します。
不動産の使用料等

ステップ⑤ 不動産等の譲受けの対価の支払調書合計表の記入

<不動産等の譲受けの対価の支払調書合計表の記入項目と注意点>
ステップ⑤記載のポイントは、ステップ④の内容とほぼ同じ手順で記載することです。その年中に支払いが確定した不動産などの譲受けの対価や資産の移転に伴い発生した各種損失の補償金について記載していきます。

  • 租税特別措置法第33条の課税の特例に規定する特定土地区画整理事業の事業施行者、租税特別措置法第33条の2の課税の特例に規定する特定住宅地造成事業のための買取りをする者、租税特別措置法第33条の4に規定する公共事業施行者に該当する場合には注意しましょう。買取りなどの対価の支払いがあった場合、摘要欄にその事業名、工事名、買取りなどの申出年月日を記載する必要があります。法令の内容をよく確認してから記載してください。

令和3年 不動産等の譲受けの対価
引用:令和 年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)|国税庁

ステップ⑥ 不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書合計表の記入

<不動産等の売買又は貸付けのあっせん手数料の支払調書合計表を記入するときの注意点>
ステップ⑥記載のポイントは、ステップ④の内容とほぼ同じ手順で記載することです。その年中に支払いが確定した不動産などの売買または貸付けのあっせん手数料について記載していきます。

  • ここで使用する支払調書に記載すべき事項を、ステップ④の「不動産の使用料等の支払調書」またはステップ⑤の「不動産の譲受けの対価の支払調書」に記載して提出し、ステップ⑥での支払調書の作成・提出を省略する場合には、注意しましょう。摘要欄に、支払った者の人数、支払金額をそれぞれ記載する必要があります。

令和3年 不動産等の売買又は貸付けのあっせん
引用:令和 年分 給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表(OCR帳票)|国税庁

法定調書合計表に関する注意点

その他の法定調書合計表を記載するときの注意点を見てみましょう。

法定調書合計表や法定調書を記入する際には、記入間違いがないように気をつけましょう。支払調書の枚数が多く、もしも誤りがあって訂正する場合には、間違っている個所を見つけて修正するのに時間と手間がかかります。

1つ1つ確認しながら、丁寧かつ正確に記入することが大切です。

税務署に提出する際は、提出する要件に該当する給与所得者の源泉徴収票と各種①~⑥までの支払調書に法定調書合計表を添付する必要があります。したがって、源泉徴収票は社員に渡す分と税務署に渡す分の2通が必要になります。

法定調書合計表は複写になっており、税務署提出用と会社控え用の2枚に分かれます。税務署に提出すると、1枚は会社控えとして返されます。万が一のために、会社控えは大事に保管しておきましょう。

作成した書類はどこに提出する?

法定調書合計表は、給与所得者の源泉徴収票と各種①~⑥までの支払調書に添付して、納税地となる支払事務を取り扱う事業所の所在地を管轄する税務署長に提出します。なお、給与の支払事務を支店でする場合には、支店の所在地が納税地となり、必ずしも本店だけとは限りません。

提出方法は、以下の3つの方法から選ぶことができます。

  • 書面による提出
  • e-Taxを利用した国税電子申告・納税システムによる提出
  • 法定調書の記載事項を記録した光ディスクなど(CD、DVDなど)の提出

参考:法定調書の提出義務者|国税庁

書類の提出期限はある?

法定調書合計表は、給与所得者の源泉徴収票と各種①~⑥までの支払調書に添付して、原則として、その計算対象となる翌年の1月31日までに提出します。源泉徴収票を従業員に渡しただけでは、年末調整の手続きは終了しません。提出期限を守り、期日管理をしっかりと行いましょう。

法定調書合計表の提出方法は?電子で可能?

2021年1月1日以降は、法定調書の種類ごとに、提出した年の前々年の法定調書の提出枚数が「100枚以上」であるものについては、e-Tax、CD・DVDなどの光ディスクなどによる提出が義務化されました。

例えば2022年1月に提出する場合、この「100枚以上」とは、前々年、つまり2020年1月~12月までに提出すべきであった法定調書の提出枚数が基準になります。

法定調書合計表など、提出に必要なフォーマットは国税庁のホームページからダウンロードして利用することができます。現在は、電子データでの提出も可能であり、法定調書合計表の電子化は進み、現在ではe-Taxソフトをインストールしてすべての法定調書を作成し、提出することができるようになっています。さらにe-Taxソフト(WEB版)を利用すれば、一部を除き、e-Taxソフトをインストールしなくても、法定調書の作成・提出が可能です。

また、給与・公的年金等の法定調書は、新しいサービスeLTAX(地方税ポータルシステム)も便利。源泉徴収票と支払報告書の一括作成と提出が可能で、eLTAXで一括して送信すると、源泉徴収票は所轄税務署に提出され、支払報告書は各市区町村に提出されます。

大量の法定調書は、CD・DVDなどの光ディスクで提出するのが便利です。e-Tax、eLTAXも検討し、自社に適した提出方法を選択しましょう。

参考:
法定調書のe-Tax等による提出義務化の概要について | 【e-Tax】国税電子申告・納税システム(イータックス)
給与支払報告書、公的年金等支払報告書及び源泉徴収票の電子的提出の一元化について | eLTAX 地方税ポータルシステム

法定調書の記入は丁寧かつ正確に行おう

法定調書とは、所得税法や相続税法などで税務署に提出することが義務付けられている資料です。年末調整が終わっても、給与や所得税の計算結果を記載した法定調書や法定調書合計表、支払調書などを作成し、原則として翌年1月31日までに税務署に提出しなければなりません。

法定調書合計表は、役員や従業員への給料や退職金、原稿料、税理士や弁護士への報酬など、社内や社外に対して支払った金額や徴収した源泉所得税の金額などを記載して、税務署へ報告するためのものです。

支払調書とは、税理士や弁護士に支払った報酬や不動産の使用料など、企業が外部のものへ支払った相手先やその支払い金額、源泉徴収金額を記載した書類です。

法定調書合計表や法定調書を記入する際には、1つ1つ確認しながら、丁寧かつ正確に記入しましょう。

よくある質問

法定調書とはなんですか?

法定調書とは、所得税法や相続税法などで税務署に提出することが義務付けられている資料のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

法定調書合計表について提出期限はありますか?

法定調書合計表は、給与所得者の源泉徴収票と各種必要に応じて作成した支払調書に添付して、原則として、その計算対象となる翌年の1月31日までに提出します。詳しくはこちらをご覧ください。


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