
給与所得者が納税額を低く抑えるために適用できる控除は、全部で14種類あります。
これら14種類の控除は、
・年末調整時に適用される控除
・年末調整後に適用される控除
の2つに分類されます。
今回は、年末調整時と年末調整後に適用される控除をそれぞれに分けて紹介します。
年末調整時に受けることのできる控除
基礎控除
基礎控除は、誰でも受けることのできる控除となっています。基礎控除額は所得2,400万円以下の場合、控除額は48万円(2019年分以前は控除額は一律38万円)となっており、「給与所得者の基礎控除申告書」を提出することによって控除が受けられます。なお、年末調整においては、基礎控除、配偶者控除、所得金額調整控除については申告書は1枚の申告書にまとめられています。
令和2年分以降の基礎控除
納税者本人の合計所得金額 | 基礎控除額 |
---|---|
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万円超2,450万円以下 | 32万円 |
2,450万円超2,500万円以下 | 16万円 |
2,500万円超 | 0円 |
配偶者控除・配偶者特別控除
配偶者控除とは給与収入が103万円以下の配偶者がいれば給与者に適用される控除で、給与者の収入によって控除額が変わってきます。
また、配偶者の給与収入が103万円を超えてしまった場合でも、収入が201.6万円までであれば給与者の収入によって配偶者特別控除を受けることができます。配偶者特別控除額の幅は1万円から38万円まであり、給与者の所得や配偶者の所得金額が多いほど控除額が低くなります。
たとえば配偶者の給与収入が104万円(所得49万円)だった場合の配偶者特別控除額は38万円となり、配偶者の給与収入が200万円(所得132万円)だった場合の配偶者特別控除額は3万円となります。
配偶者控除
控除を受ける人 の所得金額 | 控除額 | |
一般の控除対象配偶者 | 老人控除対象配偶者 (70歳以上) |
|
900万円以下 | 38万円 | 48万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 | 32万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 | 16万円 |
配偶者特別控除
配偶者の所得 | 控除を受ける人の所得金額 | ||
900万円以下 | 900万円超 950万円以下 | 950万円超 1,000万円以下 |
|
48万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
扶養控除
扶養控除とは給与収入が103万円以下の16歳以上の扶養親族などに適用される控除で、控除額は原則として48万円(2019年分以前は38万円)以下の場合に対象となります。
扶養家族のうち、その扶養親族が19歳以上23歳未満の特定扶養親族に該当すれば扶養控除額は63万円となり、同居している扶養親族が70歳以上であれば扶養控除額は58万円、同居していない70歳以上の扶養親族がいれば扶養控除額は48万円となります。
生命保険料控除
支払った生命保険料に基づき適用される控除で、
- 一般の生命保険料
- 介護医療保険料
- 個人年金保険料
ごとに上限控除額が設定されており、平成24年以降に締結した保険契約の場合はすべての保険料を合わせて最大12万円まで控除されます。
地震保険料控除
支払った地震保険料や、経過措置対象となる長期損害保険料が控除対象となります。最大控除上限額は5万円となっています。
小規模企業共済等掛金控除
小規模企業共済等掛金控除は、小規模企業共済法で定められた掛金を支払った場合に受けることのできる控除です。
該当する掛金には、
- 小規模企業共済法の規定により独立行政法人中小企業基盤整備機構と締結した共済契約の掛金
- 確定拠出年金法で規定されている企業型年金加入者掛金や個人型年金加入者掛金
- 地方公共団体が実施する心身障害者扶養共済制度の掛金
の3種類があります。
小規模企業共済等掛金控除に上限額はなく、その年に支払った金額すべてが控除額となります。
社会保険料控除
1年間に支払った健康保険料や介護保険料、国民年金保険料、厚生年金保険料などが社会保険料控除として適用されます。自分の保険料だけでなく、扶養している家族の分も合計して控除されます。
障害者控除
納税者本人に障害がある場合だけでなく、配偶者や扶養親族に障害がある場合に適用される控除となります。
障害者控除額は原則として27万円となりますが、特別障害に該当した場合は40万円、特別障害者が同居している場合は75万円となっています。特別障害に該当するかどうかの基準は、障害等級や指定医の判定などによります。
ひとり親控除、寡婦控除
一定の要件のもと、ひとり親が受けられる控除です。ただし、事実婚により住民票の続柄に未届の夫又は妻となっている場合は対象外となります。
一律35万円の控除額となっていますが、寡婦に該当する場合は27万円となります。
寡婦の要件は次のいずれかとなります。
- 子以外の扶養親族を持つ寡婦で所得500万円以下の人
- ひとり親以外の寡婦で所得500万円以下の人
勤労学生控除
給与収入が130万円以下の勤労学生控除の要件に該当する学生で、給与所得以外の所得が10万円以下の人に適用される控除額で、一律27万円となっています。
年末調整時に適用される控除
控除名 | 控除額 |
---|---|
基礎控除 | 48万円など(給与者の所得により変動) |
配偶者控除 | 38万円など(給与者及び配偶者の所得により変動) |
配偶者特別控除 | 1万円~38万円(給与者及び配偶者の所得により変動) |
扶養控除 | 38万円~63万円 (親族の年齢や同居有無などによって変動) |
生命保険料控除 | 最高控除額12万円 |
地震保険料 | 最大控除額5万円 |
小規模企業共済等掛金控除 | 該当する掛金全額が控除額となる |
社会保険料控除 | 該当する社会保険料全額が控除額となる |
障害者控除 | 27万円~75万円 (障害の程度や同居有無によって変動) |
ひとり親控除、寡婦控除 | 寡婦は27万円、ひとり親は35万円 |
勤労学生控除 | 一律27万円 |
年末調整後に受けることのできる控除
年末調整後に適用される控除には、
があります。
年末調整を終えたあとに確定申告することによって、納め過ぎた所得税を取り戻すことができます。
これらの控除は納税負担を考慮する性質があるため、年末調整時にまとめて控除することができず、確定申告を行なうことによって個別に対応する必要があります。そのため一定額を控除するものではなく、申告内容に応じて控除額が決定します。
また住宅ローン控除は所得控除の14種類には該当しませんが、上記14種類の所得控除を適用したあとでさらに差し引くことのできる税額控除となっています。
住宅ローン控除を受けるために初年度は確定申告が必要となりますが、2年目以降は年末調整と一緒に適用させることができます。
まとめ
所得控除を受けるためには、それぞれの要件を満たす必要があります。
特に妻や子どものアルバイト収入が適用基準額を上回ってしまうと配偶者控除や扶養控除が適用されなくなり、所得税が増額する可能性が出てきます。これらの控除を上手に活用して、賢く節税しましょう。
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