- 作成日 : 2022年5月20日
12月に退職した人の年末調整はどうする?
毎年年末に行われる年末調整は、「給与所得が2,000万円以下」で「12月31日時点で在籍」している従業員が対象です。そのため、12月退職の方は年末調整の対象外です。しかし、給与のタイミングや再就職の有無などによって年末調整の対象となることもあります。この記事では、12月に退職した方の年末調整についてご紹介します。
目次
基本的には12月退職の人の年末調整は不要
年末調整とは、毎月給与から源泉徴収されている所得税と、実際の税額との差額を調整する手続きです。所得税は年度の途中で「源泉徴収税額表」に基づき算出され、前払いされます。前払いされた所得税は年末調整によって清算され、徴収額が多ければ返還、少なければ追徴されます。
年末調整の対象者は、年末時点で在籍している給与所得が2,000万円以下の全従業員です。給与所得が2,000万円を上回る従業員については、年末調整ではなく確定申告によって所得税が決定されます。また、年末調整は1人1社でしか受けられないため、給与を2社以上から受け取っている従業員は最も給与が多い会社で年末調整を受けるのが一般的です。
年末調整は12月31日時点での在籍者を対象とするため、12月途中で退職された方の年末調整は基本的に必要ありません。1人1社の原則があるため、再就職先が決まっている場合はそちらの会社で年末調整を受けることになります。
- 転職前の会社:年末調整不要
- 転職後の会社:年末調整必要
しかし、既に12月の給与を受け取り年間の給与所得額が決まっている場合、病気等で退職し、再就職先が決まっていない場合は年末調整の対象となります。これらのパターンについては、次の章で詳しくご説明します。
12月退職の人でも年末調整ができるケース
前章でお伝えした通り、年末調整は12月31日時点で在籍している従業員が対象であるため、それ以前に退職した場合は年末調整を受けることができません。
転職先で年末調整を受けるか、確定申告を行う必要があります。しかし、下記に該当する従業員は例外的に他の従業員と同様年末調整を受けることが可能です。
- 12月の給与を受け取った後に退職した
- 死亡により退職した
- 心身の不調で退職し本年中の再就職が見込めない
これらの従業員は年間の給与所得額が決まっているため、年末調整の対象とすることができます。一方、下記に該当する場合は所得税を決定するために確定申告する必要があります。
- 年内に年末調整を行っていない場合
- 12月末時点で再就職していない
- 転職先で給与を受け取った後に再度退職した
- 退職後に何らかの収入を得た
- 前職の源泉徴収票を紛失して転職先の年末調整に間に合わなかった
- 年末調整時に所得控除の申請漏れがあった場合
- 退職後自営業・個人事業主になった場合
- 「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合
退職理由や退職後の就労状況に応じて年末調整の要否が変わってくるため、従業員ごとに判断が必要となります。場合によっては年末調整ではなく確定申告が必要となるケースもあるので、確認するようにしましょう。
12月中に支給される給与を支払われた人
12月中に退職する従業員でも、12月の給与を受け取った後に退職した場合は、例外的に年末調整を受けることができます。これは同年中に新たに給与を受け取る可能性が無く、年間の給与所得額が決まっているためです。この場合は、再就職の有無に関わらず他の従業員と同様に年末調整することができます。
ここで注意しなければならないのは、締め日と給与支給日の関係です。例えば、毎月20日締め月末払いの会社の場合、12月の給与は12月中に支払われるため、その給与も含めて年末調整すれば問題ありません。一方、月末締め翌月5日払いの会社の場合は、12月5日に支給される「11月分」の給与までが年末調整の対象になります。なぜなら、年末調整は「現金主義」に基づき、「同年の最後の給与を支払った時」に行われる手続きだからです。
12月退社の場合、12月に「11月分」の給与を受け取った時点で年末調整されます。1月に支払われる「12月分」の給与については、「給与所得の源泉徴収票」を添えて転職先の年末調整に含めるか、確定申告を行う必要があります。ちなみに、退職金の源泉徴収については、転職先の年末調整に含めることはできません。年末調整は、あくまで「給与所得」に対して行われる手続きです。
一般に、退職所得は「分離課税」されるため、退職時点で正しい税率で課税され年末調整は必要ありません。しかし、前章でご紹介した「退職所得の受給に関する申告書」を提出していない場合は、所得税を多く納付していることになるため、「退職所得の源泉徴収票」を添えて確定申告を行い、返還を受ける必要があります。
なんらかの理由で年間の給与収入額が確定している人
冒頭でお伝えした通り、何らかの理由で年間の給与所得額が確定している方は、年の途中で退職されても年末調整の対象となります。例えば病気やケガで退職して本年中の再就職の見込みがなく、他で給与を受け取る可能性が無い場合などです。下記に該当する場合は、最後の給与が支給された時点で年末調整が行われます。
- 死亡により退職した場合
- 心身の不調による退職で本年中の再就職が見込めない場合
- 海外の支店や子会社に転勤したことにより非居住者となった場合
- パートとして働いている人が退職し、本年中の給与総額が103万円以下である場合(ただし退職後、本年中に別の勤務先から給与を受け取る場合を除く)
死亡や心身の不調で退職して本年中の再就職が見込めない場合、年間の給与所得額が確定しているため年末調整の対象となります。海外の支店や子会社に転勤する場合は、日本の税制上の課税所得が確定するため、年末調整が必要です。
また、パートとして働いている場合、年間の給与所得が103万円以下に該当する際には所得税を支払う必要はありません。一方、源泉徴収の基準は8万8,000円で、これを超えた月は所得税が徴収されます。年収が103万円以下の場合は、年末調整によってこの所得税が清算されるのです。
ちなみに、年収が103万円を超える場合は所得税が発生し、所得控除などが必要になるため、年の途中の退職者については年末調整の対象外となります。転職先で年末調整を受けるか、自身で確定申告を行わなければなりません。
12月退職者の年末調整が必要なケースを正しく把握しよう
12月に退職する方の年末調整の取り扱いをご紹介しました。年末調整は、12月末日に在籍している従業員が対象であるため、12月中に退職した従業員は基本的には対象外です。
しかし、12月の給与を既に受け取っていたり、転職先が決まっておらず同年中に他の給与を受け取る見込みがない場合など、年間の給与所得額が確定している場合は例外的に年末調整の対象となります。
また、死亡による退職や、傷病により退職し本年中の再就職が見込めない場合などは、最後の給与を受け取った時点で年末調整されます。12月退職者の年末調整が必要なケースを把握し、正しく年末調整を行いましょう。
よくある質問
12月退職の人の年末調整はどうなりますか?
基本的に不要ですが、年間の給与所得額が確定している場合は年末調整の対象となります。詳しくはこちらをご覧ください。
12月退職の人で年末調整ができるケースにはどんなものがありますか?
12月の給与を既に受け取っている場合、本年中の再就職が見込めない場合などは年末調整の対象です。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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