- 更新日 : 2025年4月18日
ESG投資とは?メリット・デメリットや注目されている理由を徹底解説
ESG投資は、企業や投資家にとって持続可能な成長とリスク管理を両立できる投資手法として注目されています。
環境(E)、社会(S)、ガバナンス(G)の3要素を考慮し、財務リターンだけでなく、社会的価値も重視する点が特徴です。本記事では、ESG投資のメリット・デメリット、注目される理由、具体的な手法まで解説します。
目次
ESG投資とは3つの要素を考慮した投資方法
ESG投資は、財務情報だけでなく、環境・社会・ガバナンス(ESG)の要素を重視した手法です。
「環境」は気候変動や生物多様性への対応、「社会」は労働環境や人権の尊重、「ガバナンス」は企業統治や株主との対話などを意味します。
上記の非財務的要素も企業価値に影響を与えると考えられており、長期的な成長を重視する投資家から注目されている投資方法です。
年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)も、2017年度からESG指数に基づく投資を開始し、2023年度末時点で約17.8兆円を運用しています。
ESG投資は、持続可能な社会と企業の成長を両立させる手段として、今後も注目が高まっていくでしょう。
ESGに関しては、下記の記事で詳しく解説しているため、ぜひ参考にしてみてください。
ESG投資には7つの手法がある
ESG投資には、グローバル・サステナブル投資連合(GSIA)が分類する7つの手法があります。
手法 | 内容 |
---|---|
ESG統合型 | 財務情報にESG要素を加味して投資判断を行う |
エンゲージメント・議決権行使型 | 対話や議決権行使を通じて企業のESG改善を促す |
ネガティブ・スクリーニング | 基準に合わない企業を投資対象から除外する |
ポジティブ・スクリーニング | ESG評価の高い企業を積極的に選んで投資する |
インパクト投資 | 社会・環境課題の解決を目的に、成果が測定可能な投資を行う |
サステナビリティ・テーマ投資 | 再生可能エネルギーなど特定のテーマに焦点をあてた投資 |
規範に基づくスクリーニング | 国際的な規範・条約に違反する企業を除外する |
それぞれの手法には異なるアプローチや目的があり、投資家の価値観や投資スタイルに応じて選択できます。自分に合った手法を知ることは、ESG投資をより実践的に活用する第一歩になるでしょう。
ESG投資が注目されている3つの理由
ESG投資が注目されている背景には、企業の持続的成長を支える要素としてESGが重視されていることがあります。具体的にはSDGsへの関心の高まり、投資家の意識変化、年金積立金管理運用独立行政法人の推進の3つが主な理由です。
以下では、各理由について解説します。
1. SDGsへの関心が高まっているから
気候変動や資源枯渇などの環境問題が深刻化する中、SDGsへの関心が世界的に高まっています。
SDGsとは「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」の略で、2030年までに達成すべき国際目標です。持続可能性への配慮は企業の社会的責任という認識が投資家の間でも広がっており、企業にはSDGsに沿った経営姿勢が求められています。
環境問題への対応に消極的な企業は、SDGsに注目する投資家との関係構築が難しくなり、結果として資金調達や企業評価に影響を及ぼす可能性もあります
そのため、SDGsに真摯に向き合う企業は投資家からの信頼を集めやすく、将来的な成長にもつながりやすいといえるでしょう。
SDGsについては、下記の記事で具体的に解説しているため、ぜひあわせてご覧ください。
2. 投資家の意識が変化しているから
従来の投資家は短期的な利益や財務指標を重視する傾向がありました。
しかし、近年では環境問題や社会的責任、企業統治の重要性が認識され、ESG要素を投資判断に取り入れる動きが広がっています。投資家は財務情報だけでなく、非財務情報にも注目し、企業の持続可能性や潜在的なリスクを見極める投資家が増えてます。
上記のような意識の変化が、ESG投資への関心を高める要因の一つです。
投資家の価値観が変わる今、ESGに配慮する企業は、より多くの支持を得られる可能性が高まっています。
3. 年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)がESG投資を推進しているから
日本の年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)は、ESG投資を積極的に推進しています。
2015年には国連が提唱する責任投資原則(PRI)に署名し、ESG要素を投資判断に組み込むことを正式に表明しました。さらに、スチュワードシップ活動を通じて、投資先企業の価値向上や持続的な成長を支援しています。
上記の取り組みにより、GPIFが長期的な投資リターンの向上を目指す姿勢が明確となり、ESG投資への関心が高まっています。
ESG投資による4つのメリット
ESG投資には、企業にとって多くのメリットがあります。事前にメリットを知っておくことで、企業は投資家からの評価を高めやすくなり、資金調達や事業成長を有利に進めることが可能です。
以下では、ESG投資による各メリットについて解説します。
1. 長期の資産形成に適している
ESG投資は、長期的な資産形成に適した投資手法です。ESG要素を重視する企業は、リスク管理や社会的責任に配慮しており、長期的な企業価値の向上が期待できます。
ESG投資の結果、投資家は安定したリターンを得られる可能性が高まります。さらに、ESG投資を通じて、環境・社会・ガバナンスに関する課題を早期に把握し、適切に対応することも可能です。
ESG投資を取り入れることで、投資ポートフォリオ全体のリスクを抑え、長期的な安定性を確保しやすくなります。
2. 安定した資産運用ができる
ESG投資は、安定した資産運用を実現しやすい点がメリットです。
ESGに積極的な企業は、法規制の変化や社会的な要請軟に対応しやすく、持続可能な成長が期待できます。そのため、長期的かつ安定的な利益を得られる可能性が高まることが大きな魅力です。
さらに、世界的にESG投資への関心が高まっており、市場規模の拡大が進んでいます。したがって、ESGに配慮した企業への投資機会が増え、安定したリターンを狙いやすくなっています。
ESGの視点を取り入れることは、将来の利益だけでなく、安心して資産を育てるための土台にもなるでしょう。
3. 社会貢献につながる
ESG投資は、投資を通じて社会貢献につながる点が特徴です。
環境問題や社会課題に取り組む企業に資金が集まることで、持続可能な社会の実現に近づくことが可能です。たとえば、ESGを重視する企業は、二酸化炭素の排出が少ない再生可能エネルギーの開発や、ダイバーシティに配慮した経営などを進めています。
投資によってこうした取り組みがさらに強化され、活動が広がることで、社会全体の環境意識が高まり、より大きな貢献につなげられます。
ESG投資は、資産運用しながら社会にプラスの影響を与えられる、新しい投資のかたちといえるでしょう。
4. 投資先の選定においてリスク管理を強化できる
ESG投資は、投資先の選定においてリスク管理を強化できる点がメリットです。
企業が環境・社会・ガバナンスに対して適切に対応しているかを確認することで、将来的な業績悪化のリスクを見極めやすくなります。たとえば、二酸化炭素排出量や廃棄物処理に関する規制を守らない企業は、罰金や規制強化によるコスト増加のリスクを抱えています。
ESGを重視することで、上記のようなリスクや経済的・社会的な影響を回避することが可能です。
ESG投資における3つのデメリット
ESG投資には、企業の持続的成長や社会貢献といった多くのメリットがありますが、一方で注意すべきデメリットも存在します。
ESGの基準や評価が明確でない点や、情報の偏りなどにより、投資判断が難しくなることもあります。事前にデメリットを確認しておくことで、より適切な投資判断につながるでしょう。以下では、ESG投資による各デメリットについて解説します。
1. 短期の資産形成には向いていない
ESG投資は、短期の資産形成には向いていません。
ESGが対象とする環境問題や社会課題などは、短期間で解決できるものではなく、投資効果もすぐには現れにくいためです。ESG投資は企業の持続可能性や社会的責任に着目し、長期的な価値向上を目指す投資手法です。
そのため、短期的なリターンを重視する投資戦略とは目的が異なります。実際に、短期的には収益が小さくなる傾向があり、即時の利益を期待する投資家には不向きといえるでしょう。
2. グリーンウォッシュのリスクがある
ESG投資には、グリーンウォッシュのリスクがある点に注意が必要です。
グリーンウォッシュとは、実際には環境に配慮していないにもかかわらず、あたかも配慮しているかのように見せかける行為を指します。たとえば、自然やエコを連想させる写真を使い、商品やサービスに環境的な価値があるように印象づけるケースがあります。
上記のような企業に投資すると、実際には行われていない取り組みを支援することになり、ESG投資の本来の目的が損なわれる可能性があるため注意が必要です。そのため、投資先の実態を見極める目が必要です。
3. 情報開示のルールが定められていない
ESG投資には、情報開示のルールが定められていないという課題があります。
企業のESG活動に関する情報開示は、経済産業省や気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)、国際会計基準財団(IFRS)などのフレームワークを参考にしています。
しかし、国際的な指針は存在するものの、現時点では統一された明確なルールが確立されていません。
そのため、開示内容の範囲や深さは企業の判断に委ねられており、投資家にとっては情報の比較や信頼性の判断が難しい状況です。
ESG投資の始め方
ESG投資を始めるには、事前に正しい方法を理解しておくことが重要です。
やり方を知らずに始めてしまうと、ESGの本質を見誤った投資先を選んでしまう恐れがあり、期待した効果が得られない可能性があります。また、自分の投資方針や目的に合わない商品を選んでしまうリスクもあるため注意が必要です。安心して投資を進めるためにも、基本的な流れを知っておくことが大切です。
以下では、ESG投資の始め方について解説します。
株式で投資する
ESG投資の方法の一つに、株式で投資するスタイルがあります。
株式による投資は、ESGに積極的に取り組む企業を選び、個別に株式を購入する方法です。ただし、各企業のESGの取り組みを自分で分析するには時間と手間がかかるため、初心者にはややハードルが高いといえるでしょう。
そこで活用したいのが、ESG企業を評価する指標(指数)です。専門機関が評価した企業を参考にすることで、個別の分析が難しい場合でも、比較的簡単にESG投資を始められます。
投資信託・ETFで投資する
ESG投資は、投資信託やETFを活用することで手軽に始められます。
ESGに積極的な企業を中心に組み込んだファンドを選ぶことで、個別銘柄を選ばずにESGの考え方を取り入れた投資が可能です。
分散投資の効果により、特定の銘柄に集中するリスクを抑えながら、安定的な運用が期待できます。代表的なESG投資信託には、グローバルESGハイクオリティ成長株式ファンドやブラックロックESG世界株式ファンド、SBIグローバルESGバランス・ファンドなどがあります。
投資信託やETFを活用すれば、初心者でも効率よくESG投資を実践できるでしょう。
債券で投資する
ESG投資は、債券を通じて行うことも可能です。環境改善や社会貢献を目的とした事業の資金調達に使われる債券を購入することで、間接的に社会課題の解決を支援できます。
代表的な債券には、再生可能エネルギーなどに使われるグリーンボンド、教育や医療に資金をあてるソーシャルボンド、両方の目的に活用されるサステナビリティボンドがあります。
上記のような債券では、資金の使い道や選定基準、管理方法などの情報開示が推奨されており、透明性のある投資が可能です。
社会的影響を意識しながら透明性のある運用を求める人にとって、債券型ESG投資は有力な選択肢となるでしょう。
企業と投資家にメリットをもたらすESG投資を効率的に活用しよう
ESG投資は、企業と投資家の双方にとって持続可能な成長と安定したリターンをもたらす有効な手法です。
ただし、デメリットやグリーンウォッシュのリスクも理解し、適切な投資判断を行うことが重要です。ESG投資を効率的に活用し、持続可能な社会と資産の成長を実現しましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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