- 更新日 : 2024年6月7日
労災保険の各種手続き
労災保険とは、労働者が勤務時間中に遭った災害や出退勤中に災害に遭った場合に、本人やその家族に補償するために、保険金を支払う制度です。
そのため、使用する従業員が正社員や契約社員、アルバイトかを問わず、労働者を使用する会社及び個人事業主は、労災保険に加入することが義務付けられています。ここでは、労災保険への加入や給付についての手続きを、必要書類や記入上のポイントを押さえて説明します。
目次
労災保険への加入手続き
会社は、従業員を新しく初めて雇い入れたとき、事業所として労災保険に新規加入することが必須になります。ただし、加入手続きを済ませると、その後に従業員が増えても、再度、手続きする必要はありません。
加入手続きに必要な書類
労災保険に加入するために必要な書類は、以下のとおりです。
・保険関係成立届
・概算・確定保険料申告書
書類提出の流れ
「保険関係成立届」には、会社名や会社所在地、従業員の数、事業を開始した日(保険関係が成立した日)などを記載します。また、これらの確認のために、登記簿謄本も添付します。この保険関係成立届を、管轄の労働基準監督署(業種によっては公共職業安定所)に届出すると、「労働保険番号」を発行してくれます。労災保険を申請するときには、この番号が必要となります。
それから、「概算保険料申告書」で、初年度分の労災保険料と雇用保険料(両方で労働保険料という)の総額を、概算額として申告・納付します。この保険料は、保険関係の成立日から年度末までの間に全従業員に支払う給与等の概算額に、料率を掛けて算出します。料率は、業種によって異なるため、前もって労働基準監督署の担当係に確認するほうがよいでしょう。
雇用保険の手続き時の注意
雇い入れた従業員が雇用保険被保険者に該当する場合は、労災保険と同時に、雇用保険に関する手続きをします。このとき、管轄の公共職業安定所へ「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を届出しますが、保険関係成立届の控えも必要になります。
手続きを怠った場合には
労働保険の新規加入手続きを踏まない場合には、関係する行政機関によって、強制で手続きが執行され、労働保険料が決められてしまうことがあります。さらに、その労働保険料を徴収する際に、追徴金が課せられる場合もありますので、注意しましょう。
労災保険の給付手続き
勤務時間中の災害や通勤途中に事故に遭ったなど、労災保険の申請が必要となったときは、原則として罹災した労働者が管轄の労働基準監督署へ病院等を経由して給付請求を出すことになります。提出書類の様式には様々なものがありますから、事前に労働基準監督署に確認しておきましょう。手続きの際には、労災保険の種類によって、以下のような点に注意します。
療養給付の請求手続き
療養の給付(指定医療機関による無料の治療)や、立替払いをした治療費用の全額支払を請求することができます。療養費用には、病院での治療にかかった費用だけでなく、薬や訪問看護、整体や針灸、あんまなどの費用も含まれます。
休業給付の請求手続き
病気やけがのため仕事に就けない日が4日以上となる場合は、休業給付を請求できます。休業した日数分を全てまとめて請求するか、分割して請求するかは、請求者本人の自由となっています。長期休業になる場合は、1ヵ月ずつ請求されることが多いようです。
障害給付の請求手続き
病気やけかが治っても身体に障害が残った場合に請求できる障害給付には、医師などの診断書やレントゲン写真などの資料の添付が必要です。なお、障害給付が必要になった方は、社会復帰のために必要な支援として障害者特別支給金や特別年金なども請求することができます。
遺族給付の請求手続き
労働者が勤務時間内あるいは通勤途中に死亡された場合、残された親族(受給対象者の要件があります)に対して、遺族給付が年金または一時金で支払われます。請求時には死亡診断書などが必要です。なお、受給権利を持つ遺族が複数いる場合でも、分割支給は認められておらず、代表者に対して給付されます。
葬祭給付の請求手続き
葬祭料は、亡くなった方の葬儀を行った方に対して、支給されます。そのため、遺族がおらず会社が社葬を行った場合は、その会社が葬祭料を請求することができます。
傷病年金の請求手続き
病気やけがをした労働者が、1年6ヶ月以上経っても治らない場合は、その障害の等級に応じて、傷病年金が支払われます。このとき、引き続き治療費の給付は受けられますが、休業補償はなくなります。
介護給付の請求手続き
障害年金又は傷病年金を受給している人のうち障害の程度に応じて、介護給付が支払われます。ただし、身体障害者の療養施設や老人保健施設などに入院している場合は、支給はされません。
まとめ
以上、確認してきたように、労災保険という制度を利用するためには、労働者を雇う会社は、労働基準監督署に労災保険の加入手続きを行う必要があります。会社がこの手続きを済ませていれば、業務災害や通勤災害にあった労働者は、労働基準監督署に然るべき保険金給付の請求をすることができます。会社も労働者も、各種手続きに関して、正しい知識を身に着けておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
転職したらマイナ保険証はどうする?必要な手続きや注意点を解説!
転職する際に健康保険の手続きを正しく行わないと、思わぬ不利益を被る可能性があります。例えば、前の会社の健康保険を抜けたあと新しい保険に加入しないまま放置すると「無保険」の空白期間が生じ、その間の医療費は全額自己負担となってしまいます。 本記…
詳しくみる厚生年金の保険料は一括払い・前納ができる?
厚生年金保険料は毎月支払う必要があり、数ヵ月分をまとめて支払う一括納付は認められていません。厚生年金の一括適用とは、社会保険の被保険者資格に関する各種手続きや保険料納付などを本社でまとめて行うことです。国民年金保険料は前納制度があり、定めら…
詳しくみる厚生年金の受給に必要な加入期間 – 10年未満の場合はどうなる?
日本の公的年金制度は2段階です。会社勤めで厚生年金保険に加入していた方は、国民年金の制度で受け取れる老齢基礎年金に加え、老齢厚生年金が上乗せされます。 国民年金の支給額が年間約78万円のため、厚生年金がいくらもらえるか気になる方も多いでしょ…
詳しくみる厚生年金保険料が引かれすぎ?計算方法を解説!
会社員に支払われる給与と賞与からは、所得税(源泉徴収税)などが差し引かれています。厚生年金保険料も控除されているものの1つで、給与からは標準報酬月額に厚生年金保険料率をかけた金額、賞与からは標準賞与額に厚生年金保険料をかけた金額が天引きされ…
詳しくみる転職で空白期間がある場合の健康保険や年金の手続きは?保険証切り替えについても解説!
退職してから転職まで期間が空く場合、任意継続や家族の扶養に入ることを選択しない場合は、一度国民健康保険に切り替える必要があります。国民健康保険加入の手続きは14日を過ぎても行えますが、退職日翌日までさかのぼって保険料を徴収されます。今回は、…
詳しくみる算定基礎届と月額変更届との違いは?対象者や提出方法を詳しく解説
算定基礎届と月額変更届は、企業の社会保険手続きにおいて重要な書類です。従業員の標準報酬月額を決定するために提出が必要な手続きであり、提出方法や提出先に関して注意すべきポイントがあります。 本記事では、算定基礎届と月額変更届との違いや提出方法…
詳しくみる