- 更新日 : 2025年10月2日
【2025年】年末調整と専業主婦の関係
年末調整は、所得税の過不足を調整することを目的に行われます。そのため、所得のない専業主婦は無関係と思っている方も多いのではないでしょうか。
しかし、専業主婦も控除という形で年末調整と関わってきます。当記事では、年末調整と専業主婦の関係について解説しますので、ぜひ参考にしてください。
目次
年末調整と専業主婦の関係
専業主婦とは、就業せず、家事や子育てなどに専念する既婚女性をいいます。基本的には、専業主婦は収入を得る仕事に就いていないため、税務上の収入はないとみなされ、年末調整での配偶者控除や扶養控除の対象になります。
パートやアルバ-イトなどをしている場合でも、一定の要件を満たせば、これらの所得控除を受けることは可能です。
ここでは、家族に専業主婦がいる場合の年末調整のポイントについて解説します。
専業主婦と配偶者控除
納税者の妻が専業主婦の場合、「配偶者控除」として、年末調整において一定の所得控除を受けることができます。
その要件は以下のとおりです。
配偶者がパートやアルバイトなどで収入がある場合は、給与収入を123万円以内におさめる必要があります。これは給与所得控除額が65万円だからです。
給与収入123万円から控除される65万円を引くと、合計所得金額が58万円になります。また、給与収入以外に不動産所得や譲渡所得があっても、年間の合計所得金額が58万円以下なら配偶者控除を受けることができます。
配偶者控除の控除額について
年末調整における配偶者控除額は、控除の対象となる配偶者の年齢が70歳以下の場合は38万円、70歳以上の場合は48万円と定められています。
さらに、配偶者が障がいを持っていて、税法上の障がい者として認められる場合は、配偶者控除に加えて障害者控除27万円を受けることができます。(特別障害者は40万円、同居特別障害者は75万円)
配偶者特別控除について
配偶者の所得が58万円を超える場合には、配偶者控除の対象からは外れてしまいますが、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下で、配偶者の合計所得金額が58万円超133万円以下の人については配偶者特別控除を受けることができます。
配偶者特別控除額は、配偶者の合計所得によって変動しますが、最高で38万円です。
扶養控除について
家族に控除対象となる扶養親族がいる場合は「扶養控除」の対象となり、年末調整で一定の所得控除が受けられます。
その要件は以下のとおりです。
- 配偶者以外の親族(6親等内の血族およ3親等内の姻族)、または都道府県から養育を委託された児童や市町村から養護を委託された高齢者であること
- 納税者本人と生計を共にしていること
- 年間の所得金額の合計が58万円以下であること(パートやアルバイトなどで給与収入のみの場合は、給与収入が123万円以下であること)
- 青色申告者の事業専従者として、その年は一度も給与をもらっていないこと、もしくは白色申告者の事業専従者でないこと
- 上記の4つの要件を満たす扶養親族のうち、16歳以上であること
扶養控除の額について
年末調整における扶養控除額は、扶養親族の年齢や同居しているかどうかでも、変動します。
具体的には、以下のとおりです。
- 一般の控除対象扶養親族の場合は38万円
- 控除対象扶養親族のうち、年齢が19歳以上23歳未満の場合は63万円
- 控除対象扶養親族のうち、年齢が70歳以上で同居の場合は58万円
- 控除対象扶養親族のうち、年齢が70歳以上で同居していない場合は48万円
年齢が70歳以上の控除対象となる扶養親族が病気治療で入院している場合は、長期であっても「同居」と認められます。一方、老人ホームなどへ入居している場合は、その老人ホームに住んでいるとみなされます。
【改正】特定親族特別控除
令和7年度税制改正により、配偶者控除や扶養控除とは別に「特定親族特別控除」が新たに創設されています。家族に対象となる特定親族がいる場合、特定親族1人について、合計所得⾦額に応じ、最大63万円が控除される制度です。
特定親族とは、居住者と生計を一つにする以下の親族を指します。
- 年齢:19歳以上23歳未満
- 合計所得金額:58万円超123万円以下
※配偶者や青色事業専従者として、給与支払いを受ける者および⽩⾊事業専従者を除く
なお、親族には、児童福祉法の規定により、養育を委託されている里子を含むものとされています。
特定親族特別控除の控除額は、以下の通りとなります。
合計所得金額 | 控除額 |
---|---|
58万円超85万円以下 (給与収入123万円超150万円以下) | 63万円 |
85万円超90万円以下(給与収入150万円超155万円以下) | 61万円 |
90万円超95万円以下(給与収入155万円超160万円以下) | 51万円 |
95万円超100万円以下(給与収入160万円超165万円以下) | 41万円 |
100万円超105万円以下(給与収入165万円超170万円以下) | 31万円 |
105万円超110万円以下(給与収入170万円超175万円以下) | 21万円 |
110万円超115万円以下(給与収入175万円超180万円以下) | 11万円 |
115万円超120万円以下(給与収入180万円超185万円以下) | 6万円 |
120万円超123万円以下(給与収入185万円超188万円以下) | 3万円 |
参考:令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について|国税庁、「令和7年度税制改正による 所得税の基礎控除の見直し等について(源泉所得税関係)」
配偶者の生命保険料の支払いがある場合
妻が専業主婦の場合、妻が契約している生命保険料を、妻の銀行口座から引き落としているケースもあるでしょう。
妻が収入を得ていないとしたら、実質上は、生命保険料を負担しているのは夫のわけですから、夫の生命保険料控除の対象としてもよいのでしょうか?
年末調整において生命保険料控除を受けるために重要なことは生命保険料を支払ったのが誰かということで、生命保険の契約者が誰かは関係ありません。そのため、収入がない妻の代わりに夫が支払いをしているかぎり、契約者が妻であったとしても、生命保険控除を受けることができます。
ただし、控除には限度額があるので、よく確認してください。
専業主婦と控除の関係について理解しよう
親族に扶養対象者等がいる場合、年末調整において配偶者控除や扶養控除、特定親族特別控除などの所得控除を受けられる可能性があります。配偶者の収入の有無やその金額などを事前に確認し、正しく年末調整を行いましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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