• 更新日 : 2025年3月24日

住民税非課税世帯とは? 対象世帯への臨時特別給付金も解説

住民税非課税世帯とは、所得が一定以下で住民税の「所得割」と「均等割」の両方が非課税となる世帯です。住民税非課税世帯に該当すると、優遇措置を受けられますが、事前に自分が非課税に当たるか確認しておくことも重要です。

本記事では、住民税非課税世帯の条件や年収の目安、どのような措置が受けられるのかを解説します。

住民税非課税世帯とは、所得割と均等割の両方が非課税の世帯

住民税非課税世帯とは、世帯全員が住民税の所得割・均等割の両方で非課税となっている世帯を指します。住民税は自治体が提供する行政サービスの財源となる税金で、一定の収入以下の場合は非課税となります。

住民税が非課税となる基準は地域や世帯構成により異なり、確定申告年末調整により​判定される仕組みです。

厚生労働省では「住居および生計を共にするものの集まり」や「独立して生計を営む単身者」を世帯と定義しており、単に同居しているだけでは世帯とはみなされません。

住民税については、下記の記事で詳しく解説しているため、参考にしてみてください。

住民税非課税の対象となる条件

住民税非課税世帯に該当するかは、特定の条件を満たしているかで判断されます。自治体により基準は異なるため、自分の収入や世帯構成が条件に当てはまるかを確認することが重要です。以下では、住民税非課税となる具体的な条件を紹介します。

所得割が非課税になる場合

住民税は「所得割」と「均等割」の2種類から成り立っています。所得割のみ非課税の場合、均等割の非課税条件を満たしていないため、均等割の支払いが必要です。

所得割の非課税条件は、単身世帯と一般世帯で異なります。単身世帯は、総所得金額が45万円以下であれば非課税です。

一般世帯の場合、「35万円 × (本人・同一生計配偶者・扶養親族の合計人数)+ 42万円」以下であれば、所得割が非課税となります。

同一生計配偶者や扶養親族が増えるほど基準額も上がるため、家族構成に応じた確認が必要です。

所得割の詳しい説明は、下記の記事をあわせてご覧ください。

所得割・均等割とも非課税になる場合

住民税が完全に非課税となるには、所得割と均等割の両方で非課税条件を満たす必要があります。主な条件は以下のとおりです。

住民税が非課税となる条件
  • 生活保護法による生活扶助を受けている
  • 障害者・未成年者・寡婦・ひとり親で、前年の合計所得金額が135万円以下(給与所得者は年収204万4千円未満)である
  • 前年の合計所得金額が自治体の定める基準以下である

たとえば、東京23区では、配偶者または扶養親族がいる場合「35万円 × (本人・扶養親族の合計人数)+ 31万円」、いない場合は「45万円以下」が基準です。もし、基準を下回った場合は、所得割・均等割ともに非課税となります。

所得割額と均等割額との合計で算出される住民税については、下記記事で紹介しているためぜひ参考にしてみてください。

住民税非課税世帯の対象になる年収の目安

住民税非課税世帯に該当するかどうかは、前年度の所得によって決まります。自分や家族が非課税対象となるか判断するには、年収の目安を知ることが重要です。以下では、世帯構成ごとの住民税非課税の基準となる年収の目安を解説します。

所得割が非課税になる場合

所得割が非課税となる年収の目安は自治体により異なりますが、一般的な基準は以下のとおりです。

単身世帯100万円
夫婦のみ170万円
夫婦+子1人221.4万円
夫婦+子2人271.4万円
高齢者単身(65歳以上)155万円
高齢者夫婦(65歳以上)222万円

参考:住民税世帯非課税の対象者等|厚生労働省

単身世帯は、所得控除が108.8万円まで適用されるため、年収100万円程度なら所得割は非課税です。高齢者単身世帯では、控除が増えるため、年収157.1万円まで非課税となります。自治体ごとの基準を確認し、自身の状況と照らし合わせましょう。

均等割が非課税になる場合

住民税の均等割が非課税となる基準は、生活保護基準の級地区分により異なります。級地区分は3つあり、1級地(東京23区や政令指定都市)は基準が高く、3級地(一般的な市町村)は低くなります。一般的な年収の目安は以下のとおりです。

【1級地の場合の年収の目安】

単身世帯100万円
夫婦のみ156万円
夫婦+子1人205.7万円
夫婦+子2人255.7万円
高齢者単身(65歳以上)155万円
高齢者夫婦(65歳以上)211万円

参考:住民税世帯非課税の対象者等|厚生労働省

【3級地の場合の年収の目安】

単身世帯93万円
夫婦のみ137.8万円
夫婦+子1人168万円
夫婦+子2人209.7万円
高齢者単身(65歳以上)148万円
高齢者夫婦(65歳以上)192.8万円

参考:住民税世帯非課税の対象者等|厚生労働省

自分の住む地域の級地区分を確認し、基準を満たしているか判断することが大切です。

前年度の所得次第で住民税非課税世帯に該当しないことがある

住民税の課税・非課税は前年度の所得によって決まるため、前年の所得が基準額を超えると、住民税非課税世帯には該当しません。扶養親族の人数や各種控除を考慮しても、基準を満たさなければ住民税が課税されます。

たとえば、年を跨いで退職し収入が減った場合でも、前年の年収が非課税基準を超えていれば、住民税の支払い義務が生じます。現時点で収入が少なくても、住民税は前年度の所得で決まるため注意が必要です。

自身の収入状況を把握し、住民税の負担が厳しい場合は減免制度について自治体に相談するようにしましょう。

住民税非課税世帯になるための手続きは必要ない

住民税非課税世帯になるための特別な手続きはありません。

住民税の課税・非課税は、主に年末調整や確定申告で判定されます。自身で確定申告するか、会社で年末調整を受けて収入の申告をすれば、世帯全員の住民税が非課税となり、住民税非課税世帯に該当します。

ただし、年末調整や確定申告を行っていない場合、自治体が所得情報を把握できないことにより住民税の申告が必要になるため注意が必要です。

住民税非課税かどうかは、給料天引きの場合「特別徴収税額の決定・変更通知書」で確認できます。それ以外の方は、毎年6月頃に発行される市区町村の納税通知書で確認可能です。

また、手元に通知書がない場合は、課税証明書や所得証明書で確認できます。

住民税非課税世帯が受けられる7つの優遇措置

住民税非課税世帯に該当すると、さまざまな優遇措置を受けられます。優遇措置を活用することで、教育費や医療費、生活費などの負担軽減が可能です。知らないうちに受け取れる支援を見逃さないために、以下で7つの優遇措置を紹介します。

1. 授業料・入学金が減免される

住民税非課税世帯の学生は、高等教育の就学支援制度を利用すると、授業料や入学金の免除・減額に加え、給付型奨学金を受けられます。支援を受けるには、入学後3ヶ月以内に所定の期日までに申し込まなければいけません。

支援金額は、世帯の収入や進学先、住居形態などにより異なります。たとえば、私立大学に自宅以外から通う学生は、最大で年間約91万円の給付型奨学金と最大約70万円の授業料減免、26万円の入学金減免を受けられます。住民税非課税世帯の学生は、支給額が2/3または1/3となる場合もあるため、事前に確認しましょう。

申し込みは年2回、春と秋に大学を通じて行われ、各学校の窓口で詳細を確認できます。支援を受けるためには、世帯の収入や学ぶ意欲が要件となるため、申し込み前に確認を必ず行いましょう。

2. 国民健康保険料が減免される

住民税非課税世帯の方は、国民健康保険料が減免される場合があります。災害や特別な事情により、国民健康保険料(税)の納付が困難な場合、減免や納付猶予が適用されることがあります。

市町村国保の場合、住んでいる市町村の窓口、国民健康保険組合の場合は加入している保険組合や都道府県の窓口への問い合わせが必要です。

たとえば、東京都港区では、前年の所得が一定基準以下であれば、均等割額が減額されます。しかし、住民税が非課税でも前年に所得があった場合、所得割額が科されるため、保険料が0円になることはありません。

均等割額の減額は最大7割ですが、残りの保険料は支払う必要があります。地域により減免の内容や対応は異なるため、具体的な条件や手続きは各自治体の窓口で確認することが重要です。

3. 介護保険料が減免される

住民税非課税世帯は、65歳以上の第1号被保険者が支払う介護保険料の減免を受けられます。2019年(令和元年)10月から、すべての住民税非課税世帯に適用されており、金額は自治体により異なるため事前確認が重要です。

たとえば、大阪市では、世帯全員が市町村民税非課税で生活が困難な場合や、収入が大幅に減少して所得が保険料第6段階以下になった場合に介護保険料が軽減されます。

対象となる年収は、1人世帯150万円、2人世帯198万円、3人世帯246万円以下です。軽減内容は、公費による保険料軽減強化により、第4段階保険料(年額72,846円)の半額になります。申請が必要で、適用には申請を経ることが原則です。

4. 高額療養費が減額される

高額療養費制度は、医療機関で1ヶ月に支払う医療費が一定額を超えた場合、超過分が支給される制度です。高額療養費制度を活用すれば、重い病気や高額な医療費の負担が軽減されます。住民税非課税世帯は、とくに自己負担額の上限が低く設定されています。

住民税非課税世帯の患者負担割合は、70歳未満が3割、70〜74歳が2割、75歳以上が1割です。2025年8月からの上限額は、70歳未満の場合は36,300円(複数回該当する場合は25,200円)、70歳以上の場合は個人ごとに8,000円、世帯ごとに25,300円です。また、所得が一定以下の住民税非課税世帯は、70歳以上で個人ごとに8,000円、世帯ごとに15,400円となります。

5. 幼児教育・保育が無償化される

住民税非課税世帯は、幼児教育・保育が無償化される場合があります。

幼児教育・保育の無償化は、0歳から2歳までの子どもが対象で、幼稚園や保育所、認定こども園を利用する場合は利用料が無償になります。また、3歳から5歳の子どもも住民税非課税世帯であれば無料で利用可能です。

2人以上の子どもがいる世帯では、保育所等を利用する最年長の子どもを第1子として、0歳から2歳までの第2子は半額、第3子以降は無償となります。さらに、年収360万円未満相当世帯では、第1子の年齢に関係なく無償化が適用されます。

市町村により無料化の手続きに認定や償還払いが必要な場合もあるため、事前に確認しておきましょう。

6. NHK受信料が免除される

住民税非課税世帯は、NHK受信料の全額または半額免除を受けられます。NHK受信料の免除は、障害を持つ世帯の経済的な負担を軽減することが目的です。

とくに、市町村民税非課税の身体障害者、知的障害者、精神障害者がいる世帯が対象です。障害者がいる世帯で、全員が市町村民税非課税の場合、NHK受信料の全額免除を受けられます。

具体的には、身体障害者手帳や知的障害者の認定書、精神障害者保健福祉手帳を所持する世帯が対象です。手続きは、免除申請書に必要事項を記入し、自治体に提出し、証明書を受け取ってNHKに提出する流れです。

免除申請には、住民票や非課税証明書、障害者手帳の写しが必要なため事前に準備しておきましょう。

7. 給付金の対象になる

住民税非課税世帯は、特定の給付金の対象となることがあります。給付金の支給は、物価高騰や経済対策の一環として生活支援が目的です。

たとえば、大阪市の物価高騰対策給付金では、令和6年度住民税均等割が非課税の世帯に対し、1世帯あたり3万円が支給されます。子育て世帯には、子ども1人につき2万円の加算があり、支給予定は令和7年2月18日からで申請期限は4月30日です。

また、堺市では「低所得者世帯等臨時特別給付金」が支給され、住民税均等割非課税世帯に1世帯あたり3万円が支給されます。子ども加算があり、児童1人につき2万円が追加されます。申請期間は令和7年2月上旬から4月30日までです。

住民税非課税世帯についてしっかり理解しよう

住民税非課税世帯は、所得が一定基準以下であり、住民の所得割・均等割に課税されない世帯です。住民税非課税世帯と認められると、医療費の負担軽減や保険料の減免などの優遇措置が受けられる可能性があります。

ただし、前年の所得や世帯構成により該当しない場合もあるため、制度の詳細を理解し、自身の状況を確認することが重要です。

よくある質問

住民税非課税世帯とはなんですか?

住民基本台帳に記載されている都道府県や市区町村に支払う地方税のことですが、既定の条件や所得に当てはまる場合、非課税となります。世帯全員が住民税非課税である世帯を住民税非課税世帯と言います。詳しくはこちらをご覧ください。

臨時特別給付金はどういった条件を満たせば受け取ることができますか?

令和3年(2021年)分の住民税均等割非課税世帯と、令和3年の収入が新型コロナウイルス感染症の影響により減少し、住民税均等割非課税世帯と同様の状況となった世帯(家計急変世帯)です。詳しくはこちらをご覧ください。


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