- 更新日 : 2025年7月18日
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書の配偶者の有無の書き方とは?条件を解説
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書(通称「マル扶」)の申告書における「配偶者の有無」の欄は、配偶者控除・配偶者特別控除の適用可否を判断するうえで重要な項目の一つです。
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、給与所得者がその年の所得税・住民税における控除対象を勤務先に申告するための重要な書類です。記載された情報をもとに、勤務先は毎月の源泉徴収額や年末調整を行い、税金の過不足を調整します。
この記事では、「配偶者の有無」欄の記載方法とその意味、選択後に記入が必要となる情報、さらに控除制度との関係について詳しく解説します。
目次
扶養控除等(異動)申告書「配偶者の有無」欄とは?
扶養控除等(異動)申告書は、配偶者や扶養親族に関する情報を勤務先へ届け出て、所得税や住民税の控除を受けるための書類です。給与所得者であれば、雇用形態を問わず、原則として毎年提出が義務づけられています。扶養家族がいない場合でも、控除対象外であることを明示するために提出は必要です。
扶養控除等(異動)申告書の上部に記載された「配偶者の有無」欄は、「有」または「無」を選択するチェックボックス形式となっています。ここで「有」を選択すると、配偶者の詳細情報を記入しなければなりません。逆に「無」を選ぶと、配偶者に関する項目は記載する必要はありません。扶養親族や本人の寡婦・ひとり親などの状況に関する記載に移ることになります。
扶養控除等(異動)申告書「配偶者の有無」欄の書き方
給与所得者の扶養控除等(異動)申告書における「配偶者の有無」欄において、「有」または「無」を正しく選択することで、控除対象の範囲や記入すべき内容が大きく変わってきます。特に「配偶者有」と記載する場合は、その後の記入欄で配偶者の所得や氏名、生年月日などの具体的な情報を求められるため、誤りがないよう正しく記入しましょう。
「配偶者有(あり)」とする条件
「配偶者有(あり)」に○を付けるのは、申告者本人が民法上の婚姻関係にある配偶者(夫または妻)がいる場合です。つまり、婚姻届を役所に提出しており、法律的な婚姻が成立していることであり、事実婚や内縁関係は該当しません。
- 婚姻届を提出し、正式に結婚している場合
- 配偶者が同居・別居に関わらず、婚姻関係が成立している場合
「有」に○を付けることで、申告者には配偶者がいることが勤務先に伝えられ、配偶者控除や配偶者特別控除を受ける可能性がある人として扱われます。
- 内縁関係や同棲中であっても、婚姻届を提出していなければ「有」には該当しません。
見た目上「夫婦」のような生活を送っていても、税法上は「配偶者」として認められないため、申告ミスにつながる恐れがあります。 - 別居中であっても離婚が成立していなければ、「有」となります。
別居している理由(例えば単身赴任、家庭内別居、離婚協議中など)にかかわらず、法律婚が継続している限り、「配偶者あり」として申告します。 - 結婚が年内に成立した場合、その年の申告書には「有」と記載する必要があります。
年初は独身であっても、12月31日時点で法律婚をしていれば「有」が正しい選択です。
「配偶者無(なし)」とする条件
「配偶者無(なし)」に○を付けるのは、申告者が法律上の配偶者を持っていない場合です。つまり、扶養控除等(異動)申告書における「配偶者」とは、単なる同居相手やパートナーではなく、婚姻届を役所に提出し、法的に夫婦関係にある相手を指しています。この点を誤解して「有」と記載してしまうと、不要な情報の記入や、後に税務上の訂正が必要になる可能性があります。
- 独身(結婚経験がない)
- 離婚している
- 配偶者が亡くなっている(死別)
- 事実婚・内縁関係で婚姻届を提出していない
- 結婚予定があるが、年内に婚姻届を提出していない
- 離婚調停中や別居中でも、離婚が法的に成立していない場合は「有」となります。
離婚が成立するのは、協議離婚であれば役所に受理された日、調停であれば成立日、裁判や審判であれば確定日です。それ以前に「無」と記載すると、実際の婚姻状態と食い違うことになります。 - 年末時点の婚姻状況で判断します。
その年の途中で離婚があった場合「無」が正しい記載になります。 - ひとり親や寡婦(寡夫)控除など、配偶者がいないことによって該当する控除があるため、「無」でも税務上のメリットが発生することがあります。
配偶者が「有」の場合に記入すべき項目
扶養控除等(異動)申告書で「配偶者有」と記載した場合、申告書の中ほど以降にある「源泉控除対象配偶者」欄や、場合によっては「非居住者である配偶者」欄に、配偶者の情報を正確に記載する必要があります。この情報は、年末調整における所得控除の適用判断に直接影響するため、所得金額の見積もりや氏名、生年月日、住所などの記載ミスは控除の漏れや過剰控除につながるリスクがあります。
- 配偶者の正式な氏名(戸籍上の名前)を記入します。
- フリガナも記入欄があれば忘れずに。
- 旧姓や通称を使用している場合でも、戸籍に記載されている本名を記入します。
- 和暦の形式で記入します。
- 記入ミスを避けるため、保険証や住民票を確認するのが確実です。
- 会社によっては記載が任意または不要な場合があります。事前に勤務先の指示を確認しましょう。
- 原則として、税務処理に必要な場合には12桁の番号を正確に記入します。
- 配偶者がその年に得る合計所得金額の見積もりを記入します。
- 所得には給与、年金、事業、不動産などすべて含まれます。
【給与収入のみの場合】
- 給与所得控除後の金額(=所得)を記載。
- 例えば、給与収入が103万円の場合 → 所得は約48万円。
※103万円以下なら配偶者控除の対象、103万円超~201万円以下なら配偶者特別控除の対象になる可能性があります。
これらをすべて満たす場合、配偶者は「源泉控除対象配偶者」となり、年末調整で配偶者控除や配偶者特別控除の適用が可能になります。
- 配偶者の住所を記入します。本人と同じであれば「同上」と書いても問題ありません。
- 別居中の場合は、現住所を正確に記載し、「生計を一にしている」ことを証明する可能性もあります。
- 配偶者の収入や就業状況に年内で変動があった場合(就職・退職・死亡など)、その異動日と理由を記入します。
- 例:「10月1日就職のため扶養から外れた」など。
- 配偶者が日本国外に居住している場合は、「非居住者である配偶者」欄に○印を付けます。
- この場合、扶養関係を証明する書類(親族関係書類、送金記録など)の添付が求められることがあります。
収入や婚姻状況に基づいて、配偶者が控除対象かどうかの判断は税務上の判断に直結します。
所得金額を過小に見積もると、不適切な控除が適用される恐れがあるため、可能な限り正確な金額を記載しましょう。
迷った場合は、自分の源泉徴収票や配偶者の収入明細・源泉徴収票を確認しながら記入するのがおすすめです。
配偶者が「無」の場合の記入事項
扶養控除等(異動)申告書で「配偶者無」と記載した場合は、配偶者に関する欄は原則としてスキップし、扶養親族やその他の控除に関する情報の記入へと進みます。しかし、配偶者がいないからといって記入すべき項目が少なくなるわけではありません。むしろ、子どもや親を扶養している場合の申告、または「ひとり親控除」や「寡婦(寡夫)控除」などの適用対象になるかを適切に判断・記入することが重要です。
1. 基本情報の記入は必須
配偶者がいない場合でも、申告書の上部にある以下の項目は、すべて記入する必要があります。
- 氏名(フリガナ)
- 生年月日
- 個人番号(マイナンバー)
- 住所
- 世帯主の氏名・続柄
これらは、配偶者の有無にかかわらず税務処理の基礎となる情報であり、未記入の場合は書類が無効となることもあります。
2. 扶養親族がいる場合の記入
配偶者がいない場合でも、子どもや親、祖父母などを扶養している場合は、扶養親族として申告が可能です。以下の項目を、該当する親族ごとに記入します。
- 氏名・フリガナ
- 続柄(例:子、母など)
- 生年月日
- 所得の見積額
- 同居・別居の状況
- マイナンバー(会社によっては省略可能)
- 16歳以上の扶養親族 → 「控除対象扶養親族」欄に記載
- 16歳未満の子 → 控除対象外だが、住民税の申告のため記載が必要
- 19歳~22歳の子 → 「特定扶養親族」として、控除額が増える
- 70歳以上の親 → 「老人扶養親族」として追加控除あり
3. ひとり親控除・寡婦(寡夫)控除の確認と記入
配偶者がいない場合で、次のいずれかに該当する場合は、扶養控除等(異動)申告書の「C」欄に該当する控除として記載します。
- 婚姻をしておらず、扶養している子ども(総所得金額48万円以下)がいる
- 生計を一にする子どもがいる
- 自身の合計所得金額が500万円以下
- 死別または離婚しており、婚姻していない
- ひとり親に該当しない
- 総所得が500万円以下で扶養親族がいる(離婚の場合、死別の場合は扶養親族の要件なし)
注意点
ひとり親控除と寡婦控除は重複して適用できません。要件を満たす方を選び、適用の有無を記入欄にチェックしてください。
4. 他の扶養者との重複申告に注意(共働き家庭など)
共働きの場合、子どもなどをどちらの親が扶養親族として申告するかは選択が必要です。同じ子どもを夫婦で重複して扶養に入れることはできません。
- 夫が子どもを扶養親族として申告 → 妻の申告書には「D欄(他の所得者が控除を受ける扶養親族等)」にその子どもの情報を記入
- 妻が扶養する場合も同様
誤って双方が同じ子どもを申告した場合、税務署からの指摘や調整が入ることがあります。
間違えて記入した場合のリスク
配偶者がいない状態で「有」と記入してしまうと、不要な配偶者情報の記載や、税務処理の誤りの原因になります。
一方で、配偶者がいるのに「無」と記載してしまうと、配偶者控除の権利を放棄してしまう形になり、本来受けられる控除が適用されずに税金が高くなることがあります。
扶養控除等(異動)申告書「配偶者の有無」記入時の注意点
ここでは、扶養控除等(異動)申告書の「配偶者の有無」欄におけるよくある誤解や失敗例をもとに、記入時に注意すべきポイントを解説します。
マイナンバーの記入は会社の指示に従う
扶養控除等(異動)申告書には、申告者本人だけでなく、配偶者や扶養親族のマイナンバー(個人番号)の記入欄があります。ただし、必ずしも全ての欄を記入する必要があるとは限りません。勤務先がマイナンバーをすでに管理している場合には、省略することも可能です。
反対に、記入を求められている場合には、12桁の番号を正確に書きましょう。マイナンバーの未記入によって申告書が差し戻されたり、処理が遅れることもありますので、必ず会社の指示に従って対応してください。
配偶者の所得見積額は収入ではなく所得を記入
配偶者控除や配偶者特別控除を受けるためには、配偶者の年間所得金額を正確に見積もることが必要です。ここで注意すべきなのは、「収入」ではなく「所得」を記入するという点です。たとえば、配偶者がパートで年間103万円の収入を得ている場合でも、所得控除(給与所得控除)を差し引いた後の所得は約48万円になります。この「48万円」が申告書に記載するべき金額です。また、給与以外にも、年金、事業、不動産などの所得がある場合は、すべて合算して見積もらなければなりません。不確かな場合は、前年の源泉徴収票や収入明細を参考にしましょう。
両親の申告書で同時に子どもを扶養親族として記載してしまう
共働きの夫婦に多いのが、子どもを両親の申告書で同時に扶養親族として記載してしまうという誤りです。扶養控除は、同一人物については一人の納税者しか受けることができません。つまり、夫婦のいずれか一方が扶養者として申告し、もう一方は「他の所得者が控除を受ける扶養親族等」欄にその子どもの情報と、誰が扶養しているかを明記する必要があります。話し合いがされないまま重複申告がなされると、年末調整で差し戻しが発生したり、税務署から連絡が来ることがあります。事前に夫婦で扶養親族の分担を確認しておきましょう。
年の途中で状況が変わった場合
結婚、離婚、配偶者の就職・退職、扶養親族の増減など、年の途中で家庭の状況に変化があった場合には、変更内容を反映させるために「異動届」として扶養控除等申告書を再提出する必要があります。原則として、異動があった日以後、最初に給与の支払いを受ける日の前日までに提出しなければなりません。異動欄には、例えば「9月1日 就職のため扶養対象外」など、具体的な異動日と理由を明確に記載するようにしましょう。これを怠ると、誤った税額で源泉徴収が続けられてしまい、年末調整や確定申告での修正が必要になることがあります。
扶養控除等(異動)申告書「配偶者の有無」よくある質問
Q1. 今年12月に結婚予定です。申告書提出時点では未婚ですが「有」としてもいいですか?
→ 年末(12月31日)時点の婚姻状況で判断します。年内に婚姻届を提出する予定であれば「有」と記載して問題ありません。
Q2. 別居中ですが離婚していません。「無」でよいですか?
→ いいえ。法的に婚姻関係が継続しているなら「有」と記載します。生計が別でも婚姻が解消されていなければ「配偶者有」です。
Q3. 配偶者が海外に住んでいますが、日本で生活費を仕送りしています。申告可能ですか?
→ 可能です。「非居住者である配偶者」に〇印を付け、送金証明書類等を用意すれば、条件に応じて配偶者控除の対象になります。
Q4. 扶養親族がいなくても申告書は提出しなければなりませんか?
→ はい。扶養がいない場合でも、扶養控除申告書は必ず提出が必要です。未提出の場合、控除が適用されず、年末調整も行えません。
扶養控除等(異動)申告書の「配偶者有無」は税額を左右する重要項目
扶養控除等(異動)申告書の「配偶者の有無」欄は、配偶者控除や配偶者特別控除の可否を決定し、所得税や住民税に大きく影響する重要な項目です。法律上の婚姻関係に基づいて正しく選択することが求められ、誤って記入すると控除が受けられず、税額に過不足が生じるリスクもあります。特に配偶者の所得や扶養状況については、実際の収入資料などを確認し、家庭の実情に即して丁寧かつ正確に申告することが大切です。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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