• 更新日 : 2020年9月17日

役員賞与は税金が高くつく!?

ボーナスと呼ばれる賞与は、もらう側にとって仕事が評価された喜びを高め、モチベーション・アップにもつながります。一方で、支払う側にとっては、そのモチベーション・アップを業績に反映させ、雇用環境をさらによくするための投資にもなります。

さらに、社員への賞与は経費として損金処理できるので、課税所得を圧縮し、節税にもつながるという一石二鳥の効果が期待できます。ところが同じ賞与でも、役員に対するものは節税になったりならなかったりする、ということをご存知でしょうか?

扱い方次第で節税できたりできなかったりする役員へのボーナス、すなわち役員賞与について、そのカラクリをみていきましょう。

役員報酬と役員賞与の違いについて

法人税法上の定義で役員とは、法人の取締役、監査役、理事、会計参与、執行役、監事といった役職の人を指しています。法人を解散するときの担当者となる清算人も役員に含まれます。

役員に対する給与の種類について税法上では、役員に対して支払われる給与を「定期同額給与」「事前確定届出給与」「利益連動給与」に分けています。

つまり、退職金のほかにこの3つに当てはまらないものが賞与になるというわけです。給与の3種類についての概要は以下のとおりです。

・定期同額給与:1カ月以下の一定期間に支給される給与で、同額のもの。変更があっても同額が続くものを含みます。
・事前確定届出給与:所轄税務署長に届け出ていた「事前確定届出給与に関する定め」に基づいて支給する給与。
・利益連動給与:法人(同族会社以外)の一定要件のすべてを満たした給与。

役員給与の詳細は下記を参照してください。

参照:「役員に対する給与|国税庁」

この3つの給与にあてはまらない役員賞与は、損金への算入が原則認められません。役員賞与を支払うと、会計上は利益が減ることになりますが、税法上では不算入分を加算しなければならず、役員賞与分にも法人税が課せられることになります。

役員賞与を損金に算入するための方法

役員賞与を損金に算入するには、まず前記の3つの給与の支払いに則って処理する方法が考えられます。つまり、役員賞与ではなく、次期の役員報酬を増額して役員賞与の代わりとしたり、株主総会や会社総会などで決議をしたりして事前確定届出給与の届け出をするわけです。

しかし、当期の納税額については節税できず、ごほうびが遅くなればモチベーション・アップにも悪影響を及ぼします。

社長ひとりと社員だけで頑張る会社なら問題は少ないかもしれませんが、役員が複数いる場合はそうもいかないでしょう。そこで考えられるのがもうひとつの方法、使用人兼務役員の適用です。

使用人兼務役員による役員賞与の損金算入の方法について

役員賞与を当期の損金に算入するには、その役員を税法上の使用人として働いたことにして処理する方法があります。

税法上の使用人とは役員ではなく社員を意味します。この場合は役員と社員を兼務しているという解釈になります。しかし、役員が使用人兼務役員であることと、支払いの目的が使用人としての働きに対するものであることを証明しなければ、認められません。

使用人兼務役員であることの証明について

使用人兼務役員になれない役職は代表取締役や代表執行役など、又は同族会社のみなし役員等です。(以下、これらに該当しない役員を一般の役員という。)詳しくは下記を参照して下さい。

参照:「役員のうち使用人兼務役員になれない人|国税庁」

賞与が使用人分であることについて賞与が役員賞与ではなく使用人への賞与と同じであることを証明するには、まず支給額にあまり差がないことが求められます。

社内に比較する社員がいない場合は、国税庁が考える「使用人分の給与の適正額」(「過大な役員給与の額|国税庁」)を参考に調整してください。

役員賞与と社員賞与の支払い時期が同じであることも、使用人兼務役員として認められるための重要な要件になります。

まとめ

一般の役員への役員報酬は、使用人兼務役員を適用することで当期の損金に算入することができます。ただし、社長や監査役のように、株主総会や会社総会で決議された役職の役員には適用できませんので注意が必要です。これは安易に役員報酬で課税所得額を調整することを防ぐ意味があります。

また、一般の役員への役員報酬には個人の所得として所得税・個人住民税が課せられます。とは言え、使用人兼務役員の適用は、一緒に頑張って会社の利益に貢献してくれた役員へのごほうびと節税の両立を可能にしてくれます。支給する側もされる側も嬉しい手段のひとつとして、要チェックです。

参考:
使用人賞与の損金算入時期|国税庁

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