- 更新日 : 2025年4月17日
有給付与2回目のタイミングは?基準日統一のコツや5日取得義務への対策も解説
有給休暇は従業員の働き方によって付与される日数が異なるため、適切な管理が重要です。
とくに2019年の労働基準法改正により、企業には年5日の有給休暇取得を義務付けるルールが設けられ、労務管理の重要性がこれまで以上に高まっています。
適切な管理を行うことは、単なる法令順守にとどまらず、労働者の満足度向上や企業の採用力強化といったメリットも期待できるでしょう。
本記事では、有給休暇の2回目の付与タイミングや、管理をスムーズに行うための基準日統一のコツ、さらには年5日取得義務への対応策について詳しく解説します。
正しく理解し適切な運用を行うことで、企業にとっても従業員にとっても理想的な職場環境を目指しましょう。
目次
有給付与のタイミングと日数:1回目
有給休暇の付与日数と付与日は、労働基準法第三十九条で定められています。ただし、法律で定められている日数を下回る日数の付与は認められませんが、就業規則で定めて法定付与日数以上の日数を付与することは可能です。
次項では、雇用形態別に1回目における付与のタイミングと日数について、解説します。
なお以下の記事では、有給休暇の定義や繰越、リセットのタイミングについても紹介していますので、ご覧ください。
正社員・フルタイム
有給休暇を付与する条件は以下のとおりです。
- 雇い入れから6ヶ月継続して勤務していること
- 全労働日の8割以上の出勤があること
条件を満たしていれば、通常は「10日」の有給が付与されます。
なお原則通りの付与基準であれば、労働者は入社から6ヶ月経たないと有給休暇が使えないため、風邪などでやむを得ない事情の場合、欠勤扱いとなってしまいます。
しかし付与日は「雇い入れから6ヶ月」より前であれば、企業の裁量によって基準日を定めることも可能で、大企業では入社と同時に有給休暇を付与する例が多く見られます。
パート・アルバイト
有給休暇は雇用形態に関わらず、労働基準法で定める条件を満たしていれば、当然に付与されます。
ただし週所定労働日数が4日以下で、かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者の場合、労働日数に応じて比例付与されるため、正社員やフルタイムで働く場合とは付与日数が異なります。
週所定労働日数 | 1年間の所定労働日数 | 付与日 | |
---|---|---|---|
付与日数 | 5日以上 | 217日以上 | 10日 |
4日 | 169~216日 | 7日 | |
3日 | 121~168日 | 5日 | |
2日 | 73~120日 | 3日 | |
1日 | 48日~72日 | 1日 |
なおパートやアルバイトであっても、週所定労働日数が5日以上もしくは週30時間以上の場合は、正社員・フルタイムと同じ日数が付与されます。
有給付与のタイミングと日数:2回目以降
有給休暇の2回目以降の付与タイミングは、次項で解説する2つのパターンが考えられます。
- 従業員ごとに付与するパターン
- 入社日に関係なく一定の時期に付与するパターン
上記のどちらを基準に有給休暇を付与するか、企業の定めによるため、2つの違いを確認していきましょう。
従業員ごとに付与するパターン
「雇用から6ヶ月継続して勤務」の条件を満たした日を付与日とするのであれば、2回目の付与するタイミングは「1年6ヶ月以上継続して勤務した時」となります。
たとえば、2024年4月1日に入社した場合、最初の有給休暇の付与日は「2024年10月1日」です。そして2回目の付与日は1年6ヶ月以上継続して勤務した時となるので、「2025年10月1日」となり、2回目以降は毎年10月1日が付与基準日となります。
原則通りの基準を利用した付与日を基準とするのは、付与する有給休暇の日数を最低限にしたいと考えている企業には大きなメリットです。
ただし労働者によって付与日が異なるため、管理が煩雑になり、付与漏れなどを防ぐ対策が必要になります。
入社日に関係なく一定の時期に付与するパターン
入社日に関わらず、一定の日にまとめて有給休暇を付与する方法もあり、企業にとっては管理のしやすさがメリットです。
たとえば10月1日を一斉付与日とした場合、4月1日入社の労働者でも、労働基準法の規定通り「1年6ヶ月以上継続勤務した時」に新たに有給休暇が付与されるため、とくに問題はありません。
一方で4月2日以降に入社した労働者は、1回目の付与日から2回目の付与までの日数が1年未満となり、本来の付与日よりも短くなります。
たとえば2024年7月1日に入社した労働者の場合、1回目の付与日は2025年1月1日であり、2回目の付与日は入社から1年3ヶ月後である2025年10月1日に到来するということです。
一定の時期に付与日をまとめる手法は、労働者にとって不利益になる点はなく、企業にとっても管理が簡単なため、有給休暇の管理には有効的な手段とされています。
有給休暇を管理しやすくする方法
労働基準法で、有給休暇が10日以上付与される労働者には、年に5日以上取得させるのが義務となっています。そのため企業は有給休暇の取得状況管理が必須となりました。
しかし有給休暇は労働者ごとに付与日数や残日数が異なり、「雇用から6ヶ月継続して勤務」の原則のもと付与日を決めている場合、さらに管理が煩雑になります。
企業の負担が増えると、付与のタイミングを誤るなどのリスクが生じるため、管理方法は以下のようなシンプルにするのが望ましいです。
- 基準日を年始や年度初めに統一する
- 基準日を月初めに統一する
たとえば4月1日を付与基準日に統一した場合、4月1日入社の労働者は、最初の付与日が6ヶ月経過後の10月1日です。
そして2回目は、「4月1日」の基準日に付与されるため、通常よりも6ヶ月繰り上げての付与となり、以降は毎年4月1日を基準として付与していきます。
また基準日を月初めに統一した場合、4月15日に入社した労働者の最初の付与日は10月15日ですが、2回目は翌年の「10月1日」となり、14日繰り越しての付与となります。
基準日を統一すると、労働者にとっては繰り上げで付与されることになり、企業は管理が簡素化できるため、双方にとってメリットがある手段といえるでしょう。
基準日を統一する場合の注意点
有給休暇の基準日を統一する方法は、管理が簡単になりますが、いくつかの注意点を押さえておかないと、違反になる可能性や労働者に不公平感を抱かせてしまう場合があります。
次項で3つの注意点を解説しますので、基準日の統一を検討している方は、参考にしてみてください。
基準日の統一については、以下の記事でも具体例とともに解説しています。
付与日数を下回らないようにする
有給休暇の最低付与日数は労働基準法で定められているため、基準日を統一したからといって、基準を下回ってはいけません。
たとえば付与日を1月1日にした場合、4月1日に入社した従業員に対する付与のタイミングは雇用から9ヶ月後になってしまいます。
それでは労働基準法で定められている、「雇用から6ヶ月継続して勤務」の条件を満たした日が1回目の付与日となる基準を超えてしまうので違法です。
上記の例では、最初に10月1日に1回目の付与をして、2回目は統一した基準日に11日を付与するのが正しい方法となります。
基準日の統一は、労働基準法の定める基準をクリアしたうえで、企業の裁量によって決められる手法である点に留意しましょう。
不公平感を緩和する
基準日を統一した場合、入社日に関わらず、有給休暇の付与日が全員同じとなるため、不公平感が生じてしまう可能性があります。
1月1日が基準日で、すでに5日取得している場合の例を見ていきましょう。
入社日 | 付与(1回目) | 付与(2回目) | 消化 | 繰越日数 |
---|---|---|---|---|
4月1日 | 10月1日に10日 | 1月1日に11日 | 5日 | 16日 |
6月1日 | 12月1日に10日 | 1月1日に11日 | 5日 | 16日 |
上記のように、先に入社した労働者と、後から入社した労働者の有給休暇付与日数が同様だと、先に入社した労働者に不満が生じるかもしれません。
そのため企業は、入社した月により最初の付与日数を調整するなどして、不公平感が生まれないような対策が求められるでしょう。
就業規則に記載して労働基準監督署へ届出をする
企業が有給休暇に関して法定基準を上回るルールを定める際、法律上、就業規則に記載して労働基準監督署へ届け出る義務はありません。しかし社内のルールを明確にするため、就業規則に記載し、届出を行うのが望ましいとされています。
届出の手順は以下のとおりです。
- 就業規則の変更届を作成
- 労働者の代表者の意見書を添付
- 労働基準監督署へ提出
有給休暇の基準日を統一する場合、その内容を記載した就業規則の変更届を作成します。
それから変更内容について、労働組合の代表者または従業員の過半数が支持する代表者の意見をまとめた書類を用意しましょう。
準備が整ったら、労働基準監督署に提出します。
なお変更届と意見書には決まったフォーマットはありませんが、厚生労働省でも様式を配布しているので、厚生労働省のホームページをご覧ください。
有給休暇を5日取得させる義務
2019年4月の労働基準法改正により、企業は年間10日以上の有給休暇が付与される労働者に対して、年5日以上取得させるのが義務となりました。これは有給休暇の取得を促進し、労働者の健康を守る目的があります。
有給休暇を5日取得させる義務において、企業が守るべきポイントは以下の3つです。
- 5日以上取得している場合は対象外
- 5日未満の場合は企業が時季指定
- 労働者の意見を尊重することが重要
労働者がすでに自主的に5日以上取得している場合、企業が取得時季を指定する必要はありません。
ただし労働者が5取得している日数が5日未満の場合は、企業が有給休暇の取得時季を指定し、確実に取得させなければいけません。
なお企業が時季指定を行う際は、労働者の希望を十分に考慮し、できるだけ本人の意向に沿う形で休暇を取らせるようにしましょう。
有給休暇取得率向上のメリット
企業にとって有給休暇の取得率向上は「業務が回らなくなる」「人手が足りなくなる」といった不安を感じることがあるかもしれません。しかし、実際には企業にとって多くのメリットがあるのです。
次項では、3つのメリットについて解説します。
労働者の健康維持やエンゲージメント向上
有給休暇の取得を促進することで、従業員の健康維持や仕事への意欲向上が期待できます。
法定休日があったとしても、繁忙期や業務の負担が大きいと、心身の疲労が蓄積しがちです。しかし必要なタイミングで休暇を取得できる環境が整っていれば、従業員は適切にリフレッシュができます。
また有給休暇を積極的に取得させてくれる企業は、従業員にとって魅力的な職場と映るため、エンゲージメントが高まり、離職率の低下にもつながるでしょう。
企業イメージの向上と採用力強化
有給休暇の取得しやすさは、企業のイメージ向上や採用力の強化にも貢献します。
近年ワークライフバランスを重視する求職者が増えており、企業が有給休暇の取得を推奨していることを明示することで、働きやすい職場環境をアピールできます。
また有給休暇取得率の公開や有給休暇の取得について積極的な姿勢を示すことにより、優秀な人材を惹きつけるだけでなく、社内の満足度向上にもつながるのです。
業務の効率化と属人化の防止
有給休暇の取得を推進することは、業務の効率化や属人化の防止にも役立ちます。
従業員が安心して休暇を取れるようにするためには、業務の無駄を省き、業務フローの見直しが求められます。この過程で業務効率が向上し、結果として企業全体の生産性が上がるのです。
また休暇を前提とした業務の引き継ぎやチーム内でのフォロー体制を整えることで、特定の人にしかできない業務を減らし、急な欠員にも柔軟に対応できる体制を構築できます。
このように有給休暇の取得率を向上させることは、単なる福利厚生の強化ではなく、企業全体の成長や安定につながる重要な施策といえます。
従業員が安心して働ける環境を整えることで、企業と従業員双方にとって、より良い職場づくりが実現できるでしょう。
有給休暇管理なら勤怠管理システムが便利
有給休暇の管理を手書きやExcelで行っている場合、有給休暇の付与タイミングを誤るリスクや、従業員の人数が増えるにつれて管理が煩雑になるといった問題があります。
とくに2019年の労働基準法改正により、企業には年5日の有給休暇を取得させる義務が課せられたため、適切な管理が求められるようになりました。
こうした課題を解決するために役立つのが、勤怠管理システムです。システムを導入すれば、リアルタイムで従業員ごとの有給休暇の取得状況を把握できるため、管理の手間を大幅に削減できます。
また、有給休暇の残日数や取得状況を一目で確認できるため、従業員も自身の休暇の計画を立てやすくなるでしょう。
マネーフォワードの勤怠管理システムを活用すれば、次のような情報を簡単に管理できます。
- 有給休暇の付与・取得状況の確認
- 取得義務のある有給休暇の日数の把握
- 有給休暇を取得すべき義務期間の管理
自動管理システムの導入により、有給休暇の付与ミスを防ぎ、取得状況を適切に把握することで、法律を遵守しながら円滑な労務管理を実現できます。
とくに多くの従業員を抱える企業や、管理工数を削減したい企業にとって、勤怠管理システムの導入は大きなメリットとなるでしょう。
有給休暇の適切な管理は企業にとってもメリットがある
有給休暇の適切な管理は、企業にとっても従業員にとっても大きなメリットがあります。
2回目の付与タイミングを把握し、基準日を統一することで管理の負担を軽減しながら、適正な運用が可能です。また、年5日取得義務への対策を講じることで、法令順守だけでなく、社員の満足度や働きやすさの向上にもつながります。
企業が積極的に有給休暇の取得を推奨し、適切な管理体制を整えることで、従業員のモチベーション向上や離職率の低下が期待できるでしょう。
今後の労務管理を見直す際には、本記事で紹介したポイントを参考にしながら、より良い職場環境の構築を目指してみてください。