- 更新日 : 2025年3月24日
福利厚生賃貸とは?住宅系福利厚生制度と他の福利厚生制度を比較しながら解説
採用や人材定着、ブランディングなど、さまざまな部分に影響を与える福利厚生。
今回は福利厚生の基礎知識に加え、住宅系福利厚生制度(住宅手当/社宅制度)と他の福利厚生の比較、福利厚生賃貸サービスの概要・特徴などを分かりやすく解説します。
目次
福利厚生賃貸とは
そもそも福利厚生とは
福利厚生制度とは、企業が従業員とその家族の健康や生活を向上させるために提供する報酬の総称です。
報酬とはいっても給与や賞与とは別の報酬であり、各種保険や生活支援制度など「従業員向けに提供されるサービス」だとイメージすれば分かりやすいでしょう。
日本では少子高齢化により働き手人口が減少傾向にあるため、人材の獲得・定着はあらゆる企業における大きな課題です。
また、近年推進されている働き方改革を実現するためにも、従業員にさまざまなメリットを提供する福利厚生制度の強化に取り組む企業は増えています。
福利厚生賃貸の概要・特徴
福利厚生賃貸とは、多種多様な福利厚生の中でも特に人気の高い住宅分野に関する福利厚生サービスです。
具体的には、従業員が借りている賃貸住宅を法人名義に変更し、家賃を給与から差し引いた上で企業が家賃を支払います。これにより、社員は給与が減額される影響で社会保険料が安くなり、結果的に毎月の手取り額がアップ。さらに企業側も社会保険料の負担分が減額となるため、人件費削減を実現できます。
福利厚生賃貸のメリット
従業員側のメリット
福利厚生賃貸では、従業員側に以下のようなメリットがあります。
- 生活に欠かせない住居に関わる経済的な支援を受けられる
- 従業員1人あたり年16万円前後*1の手取りがアップする
- 従業員が住んでいる賃貸物件にそのまま導入できる
*1 月収30万円、家賃8万円の場合(2024年12月25日時点の概算)
企業側のメリット
福利厚生賃貸は、従業員側だけでなく、企業側にもさまざまなメリットをもたらします。
- 初期費用無料で導入できる
- 運用費用も実質無料(社会保険料削減をはじめとしたサービスのコストダウン分で相殺)
- 専用の借上社宅管理システムが用意されている
- 住宅系福利厚生制度の仕組みがなくても導入できる
- 従業員人気が高い福利厚生であるため、離職率改善、採用率アップに期待できる
福利厚生賃貸のデメリット
借上社宅制度は従業員側のメリットが大きい一方で、社員への説明会、契約・更新手続きなど企業側の運用工数が大きい点がネックです。
福利厚生制度の種類
福利厚生制度には、「法定福利厚生」と「法定外福利厚生」の2種類が存在します。
それぞれの概要と具体例を紹介するので、チェックしてみましょう。
法定福利厚生
法定福利厚生とは、文字どおり「法律で提供が義務付けられている福利厚生」のことです。
大きな特徴は、企業が所定の費用を負担しなければならない点で、以下6種類の法定福利厚生が存在します。
法定外福利厚生
法定外福利厚生とは、「法定福利厚生に含まれない福利厚生」のことです。
提供が法的に義務付けられていないだけでなく福利厚生の内容も自由となっているため、「企業が独自に設ける福利厚生」だとイメージすれば分かりやすいでしょう。
法定外福利厚生の種類は多種多様ですが、以下に代表例を紹介します。
- 住宅手当
- 通勤手当
- 家族手当
- 健康診断補助
- 社員食堂
- 託児施設の提供
- 社員旅行
- 健康/医療施設の費用補助
- お祝い金/見舞金
- 財産形成
- スキルアップ支援
住宅系福利厚生制度(住宅手当/社宅制度)と他の福利厚生を比較
法定外福利厚生は企業が独自に制定することが可能なため、膨大な種類が存在します。
中でも住宅系福利厚生は特に人気の高い制度ですが、他の福利厚生とどのような点が異なるのでしょうか。
両者の違いを以下の比較表にまとめますので、参考にしてください。
具体的な内容 | メリット | デメリット | |
---|---|---|---|
住宅系 | ・社宅の提供 ・住宅手当(家賃補助) | ・生活に欠かせない住宅支援であるため、あらゆる従業員にとって価値がある ・他の企業との差別化を図りやすく、人材獲得や定着につながる | ・住宅手当は給与所得となるため、税金や保険料の支払いが増える ・企業の負担が大きい |
通勤手当 | ・交通費の支給 | ・従業員側の通勤費用の負担が減る | ・精算した交通費が戻ってくるだけであり、収入が増えるわけではない ・大半の企業が導入しており、差別化を図りにくい |
社員旅行 | ・社員旅行の実施 | ・従業員満足度向上につながる | ・機会自体が少ない ・社員旅行を好まない従業員にはマイナス |
お祝い金/見舞金 | ・結婚祝い金 ・出産祝い金 ・災害見舞金 ・傷病見舞金 | ・従業員側に金銭的なメリットをもたらす | ・従業員ごとに個人差がある ・事前に想定できないため、予算を立てにくい |
スキルアップ支援 | ・研修や講習の費用を補助 ・教材の費用を補助 | ・従業員のスキル向上が促進される ・人材の質が高まる | ・スキルアップを考えていない従業員にはあまり魅力的ではない ・支援内容によっては企業側のコスト負担が大きくなる |
住宅系福利厚生の特徴は何といっても、衣食住の「住」を支援することから、あらゆる従業員にとって大きな価値をもたらす点です。
他の福利厚生は従業員ごとに個人差が出る、もしくは得られるメリット自体が限定的なものが多く、従業員目線では住宅系福利厚生との魅力差に大きなギャップがあるといえるでしょう。
住宅系福利厚生制度(住宅手当/社宅制度)はこんな企業におすすめ
住宅系福利厚生制度(住宅手当/社宅制度)と相性の良い企業の特徴を4つ紹介します。
採用を強化したい
一般的に家賃は「給与の手取りの1/3」といわれることがあるとおり、住宅関連の負担は生活費の中でも大きな割合を占めています。
住宅手当や社宅制度などの住宅系福利厚生が用意されていることをアピールすれば、求職者にとっては大きな付加価値となり、良質な人材獲得の可能性を高められるでしょう。
離職率を下げたい
家賃をはじめとした住宅関連のコストは、毎月発生する固定費です。
住宅系福利厚生が整っている会社なら、従業員は在籍している限り、常に「経済的な負担が軽くなる」というメリットを受けられるため、従業員満足度向上にもつながるでしょう。
給与や他の福利厚生と組み合わせることで「この会社にいたい」という従業員の気持ちは強くなり、結果的に離職率低下にも良い影響を与えます。
企業イメージの向上を図りたい(ブランディング)
住宅系福利厚生制度の整備は、対外的にもメリットをもたらします。
住宅手当や社宅制度を用意していることをオープンにすれば、「あの会社は従業員を大切にしている」という印象を外部に与え、企業イメージ向上につながるでしょう。
節税に役立つ福利厚生を探している
住宅手当と社宅制度は同じ住宅系福利厚生ではあるものの、以下のような違いがあります。
- 住宅手当:一定の金額を支給する「給与」扱いであるため、所得税や住民税の課税対象となる。
また、企業の社会保険料負担も大きくなる。 - 社宅:社宅の家賃は経費として計上できるため、企業側に節税効果がある。
ご覧のとおり、社宅制度に分類される住宅系福利厚生なら、従業員だけでなく企業側にも節税のメリットがあるため、節税に役立つ福利厚生を導入したい場合におすすめです。
住宅系福利厚生を活用して、企業の魅力を高めよう
福利厚生にはさまざまな制度が存在するものの、どのような制度を導入するかによって企業と従業員が得られるメリットは変わります。
なかでも住宅手当や社宅制度などの住宅系福利厚生は、従業員の生活を直接支える制度として特に評価が高く、採用や定着率の向上、企業ブランディング、さらには節税効果にもつながる点が大きな特長です。
ただし、住宅系福利厚生には複数の選択肢があり、それぞれに特徴や導入時の注意点があるため、自社の経営方針や人事戦略に合わせた制度設計が求められます。
従業員の満足度と企業の成長の両立を目指すなら、まずは自社に合った住宅系福利厚生制度を検討し、長期的な視点での活用を考えてみましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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