• 更新日 : 2025年3月18日

賃金締切日(給料の締め日)とは?支払日との違いや変更する際のポイントを解説

賃金締切日は、給料を計算する該当期間の最終日を指します。企業によって自由に決められますが、労働基準法によるルールも存在しており、日にちを変更したい場合はどのように設定するべきか迷う担当者もいるでしょう。

そこで本記事では、賃金締切日について、支払日との違いや変更する際のポイントを解説します。

賃金締切日(給料の締め日)とは?

賃金締切日(給料の締め日)とは、1ヶ月分の給与を計算するために、給与計算の対象となる期間を区切る日のことです。賃金支払日(給料の支払い日)よりも前に設定され、給与計算の対象期間を区切る役割を持ちます。

締め日は一般的に「◯◯締め」と呼ばれ、たとえば月末締めの会社では、4月の締め日は30日、5月の締め日は31日です。企業は、従業員の労働時間や各種手当などをこの締切日までに集計し、給与計算を行います。締め日と支払日の間隔は、給与計算に必要な日数や事務処理の都合により、企業ごとに設定されるのも特徴のひとつです。

賃金締切日(給料の締め日)と賃金支払日(給料日)の違い

賃金締切日(給料の締め日)と賃金支払日(給料日)の違いは、以下のとおりです。

賃金締切日給与計算の対象となる期間の最終日
賃金支払日(給料日)従業員に実際に給与を支払う日

締切日から支払日までの期間は、給与計算業務の負担に大きく影響します。

たとえば、締切日が月末で支払日が翌月25日の場合、25日間の余裕があるため、給与計算業務に時間をかけることが可能です。しかし、締切日が15日で支払日が当月25日の場合、期間は10日間しかなく、迅速な給与計算が求められます。

このように、締切日と支払日の間隔は、給与計算担当者の負担を左右します。余裕を持たせたスケジュール設定であれば、正確な給与計算にもつながるでしょう。一方で、短い期間での処理は、効率的な業務フローと迅速な対応が不可欠です。企業は、自社の業務体制や従業員数などを考慮し、適切な締切日と支払日を設定することが重要です。

賃金締切日(給料の締め日)と賃金支払日はいつ?|25日や15日払いの場合

多くの企業では、賃金支払日は25日や15日に設定されています。それぞれの賃金支払日に対する賃金締切日の一例を表にまとめると、以下のとおりです。

賃金支払日賃金締切日
25日前月末、当月15日
15日当月5日

一般的に、25日払いであれば前月の月末や当月の15日に締切日が設定され、15日払いであれば当月の5日締めであるケースが多いです。また、支払日を月末に設定しているケースもありますが、その場合は月ごとに給料日が異なるため注意しましょう。

給料の支払いは当月払いと翌月払いではどっちが多い?

給与の支払い方法には「当月払い」と「翌月払い」の2種類がありますが、正社員の給与支払いにおいては、翌月払いを選択する企業が一般的です。当月払いとは、給与の締め日と支払日が同じ月内に設定されているケースを指します。一方、翌月払いは、締め日の翌月に支払日を設定するケースです。

給与支払日に関しては「月末だと日にちが固定化されない」「給与計算に必要な日数を確保するため」といった理由から、25日に設定されるケースが多く見られます。翌月払いを採用することで、企業は給与計算に必要な期間を確保し、正確な処理を行いやすくなるでしょう。

また、25日払いにすることで、従業員は生活費の計画を立てやすくなるというメリットもあります。

給料が翌月払いされる理由

給与支払いが月末締め翌月払いとなる理由は、主に以下の2つです。

締め日と支払月を分けることで、給与計算と支払業務を分割でき、業務負荷を分散できます。また、取引先との請求書や支払手続きも月末締め翌月払いに統一すれば、まとめて処理できるため、事務作業の効率化にもつながります。

資金繰りの面では、当月の売上を翌月の給与支払いに充当できるため、キャッシュフローの安定に貢献するでしょう。とくに中小企業では、売上金が入金されるまでの期間で資金繰りに苦慮することがありますが、給与支払いを翌月にすることで、資金の余裕を確保できます。

このように、月末締め翌月払いは、企業の事務処理効率と資金繰りの両面を考慮した合理的な選択と言えるでしょう。

雇用形態による賃金締切日と支払日の違い

正社員の場合は「月末締めの翌月25日払い」が多い傾向がありますが、雇用形態ごとの賃金締切日・支払日の違いは以下のとおりです。

雇用形態賃金締切日賃金支払日
正社員10日・月末翌月25日
パート・アルバイト10日・月末翌月15日・翌月25日
派遣社員15日・月末翌月15日・翌月25日

パート・アルバイトは、正社員と同じように賃金締切日が設定されるケースが一般的であり、支払日は15日に設定されることもあります。派遣社員に関しては、月末のほか15日締めで設定されているケースが多いです。派遣会社によっては1ヶ月のうちに2回給与日を設けていることもあり、この場合は1回目の給料を当月25日、2回目の給料を翌月15日に支給する傾向にあります。

賃金締切日や支払日を変更する際のポイント

賃金締切日や支払日を変更する場合は、以下3つのポイントを押さえて対応しましょう。

賃金支払いの5原則に沿って設定する

「賃金支払いの5原則」とは、労働基準法の第24条により定められている賃金締切日や支払日に対する規定のことを指します。賃金支払いの5原則の内容は、以下のとおりです。

原則内容ポイント
通貨払いの原則賃金は通貨(日本円)の現金で支払う現物給与は原則認められない
直接払いの原則賃金は従業員本人に直接支払う仲介業者による搾取を避けるため
全額払いの原則賃金の全額を支払う法の定めがある場合等を除き、企業は無断で天引きはできない
毎月1回以上払いの原則賃金は毎月1回以上支払う定期的な賃金支払いによって従業員の生活を安定させる
一定期日払いの原則賃金は一定の期日で支払う支払いタイミングを「毎月25日」のように一定にすることで従業員の生活を安定させる

たとえば「直接払いの原則」に基づき、親族を含む本人以外の名義の口座へ振り込むことは本人の同意があっても禁止であり「毎月1回以上払いの原則」に基づき、年俸制の場合でも毎月分割して支払う必要があります。ただし、労働者の同意があれば銀行振込が認められたり、社会保険料や源泉徴収税といった法令による控除は認められたりなど、例外もあります。

賃金締切日の設定前には、労働基準法や厚生労働省のホームページも確認しておくといいでしょう。

賃金締切日と支払日は期間を空ける

賃金締切日と支払日の間隔は、給与計算の正確性を保つために、一定の期間を設けることが重要です。給与計算では、打刻ミスの修正や割増賃金の計算など、複雑な作業が伴います。

従業員数が多い企業ほど作業に時間を要し、期間が短いとミスが発生しやすくなるでしょう。また、祝日や休日が重なった場合は、前営業日に給料を支払うケースが多く、さらに時間に余裕を持たせる必要があります。

会社の規模や業務内容によって最適な期間は異なりますが、目安として10日程度の期間を設けるのがおすすめです。締切日から支払日までの期間を十分に確保することで、給与計算の精度を高め、従業員への正確な支払いを実現できるでしょう。

資金繰りを考慮する

従業員の給与は、会社の資金から支払われるため、資金繰りは重要な経営課題です。設備投資や契約金の支払いと、従業員の給与支払いが重なると、資金不足に陥るリスクがあります。とくに中小企業では、一時的な資金不足が経営を圧迫する可能性があります。

資金繰りを円滑にするためには、売上金の入金タイミングを考慮して給与支払日を設定するのが有効です。売上金が入金された後に給与を支払うことで、資金の余裕が生まれ、安定した経営を維持しやすくなります。また、給与支払いと他の支払いを分散させることで、資金の偏りを防ぎ、計画的な資金運用が可能になるでしょう。

給与支払日を適切に設定することは、従業員への安定した給与支払いを保証するだけでなく、企業の資金繰りを安定させ、経営リスクを軽減するうえでも重要なポイントです。

賃金締切日や支払日を変更する際の注意点

賃金締切日や支払日を変更する際には、以下2点に注意してください。

4月から6月以外に変更する

賃金締切日や支払日の変更は、4月〜6月の期間を避けるのが賢明です。この時期は社会保険料の計算期間と重なり、支払われる報酬を元に保険料が算出されるため、日付変更は計算を複雑化させてしまいます。とくに従業員数が多い企業ほど作業コストが増大するため、注意が必要です。

また、社会保険料の計算は従業員の生活に直結するため、正確性が求められます。計算の複雑化によって保険料の算出額を誤ってしまうと、従業員へ影響を及ぼす可能性もあります。

急ぎでない限りは、社会保険料の計算期間を避けた7月〜3月の間に行うのがおすすめです。給与計算の担当者の負担を軽減し、正確な処理を維持できるようにしましょう。

従業員の資金繰りをサポートする体制が必要になる

賃金締切日や支払日の変更は、従業員の生活にさまざまな影響を及ぼす可能性があります。とくに、クレジットカードや住宅ローンなどの支払日に間に合わなくなるケースは、従業員にとって大きな負担となるでしょう。また、変更によって一時的に支給額が減少する月が生じることもあり、従業員の生活設計に影響を与える可能性もあります。

これらの影響を最小限に抑えるためには、変更前に従業員への十分な周知が不可欠です。変更理由や具体的な影響、変更後のスケジュールなどを丁寧に説明し、従業員の理解を得られるようにしましょう。また、必要に応じて、無利息の社内貸付制度や一時的な経済支援策などを検討することも有効です。

賃金締切日や支払日を変更する流れ

賃金締切日や支払日を変更する流れは、以下の3ステップです。

従業員への周知を行う

賃金締切日の変更は、従業員の生活に影響を与えるため、事前通知が不可欠です。給与支払いのタイミングは、従業員一人ひとりの生活設計に関わるため、変更の3ヶ月から半年前には周知するのが望ましいでしょう。

とくに住宅ローンのような多額の返済を抱える従業員には、念のため貸付金制度などの支援策を検討しておくことも重要です。変更によって生じる可能性のある経済的な影響を最小限に抑え、従業員の不安を軽減できるようにしましょう。

従業員の同意を得る

賃金締切日や支払日の変更には、従業員への周知だけでなく、同意を得ることも大切です。変更の際は説明会を開催し、変更理由やメリットを丁寧に説明して理解してもらえるようにしましょう。

従業員が納得していない場合は、個別面談を実施し、不安を解消してあげる対応も必要になるでしょう。一方的な変更は、従業員の不信感を招き、労使間のトラブルにつながる可能性があります。十分な説明と同意を得ることで、円滑な変更を実現し、従業員の理解と協力を得ることが大切です。

就業規則を変更して労働基準監督署に届け出る

従業員の同意を得て賃金締切日や支払日の変更が決定したら、就業規則の改定を行います。改定時には、過半数代表者の意見を聴取し、意見書を添付して労働基準監督署へ届け出る必要があります。

就業規則の変更手続きには時間がかかる場合があるため、とくに4月から6月の社会保険料計算期間を避けるよう、余裕を持ったスケジュールで進めましょう。適切な手続きを踏むことで、円滑な変更が可能になります。

賃金締切日(給料の締め日)に関するよくある質問

最後に、賃金締切日(給料の締め日)に関するよくある質問を3つ紹介します。

賃金締切日は毎月末日?

賃金締切日は、企業によって自由に決められるため末日とは限りません。「月末締め翌月25日払い」のケースが多いものの「5日締め翌月15日払い」といったケースもあります。

ただし、一定の期日で支払う必要があるため「毎月10日〜20日の間」のように期間を設けることや、曜日指定することは違反となります。賃金支払いの5原則に則り、賃金締切日を設定しましょう。

15日が給料日の場合、賃金締切日はいつ?

給料日が15日の場合は、前月の5日が締め日であることが多いです。たとえば、4月15日が給料日であれば、3月5日が締切日となり、4月5日までの期間が賃金計算の対象となります。

ただし、あくまで一般的な例であり、企業によってばらつきがあります。自社の賃金締切日は就業規則や労働契約書を確認してみましょう。

給料を翌月払いするのは違法?

就業規則に明記している特定の日に毎月支払えていれば、翌月払いは違法ではありません。たとえば、3月1日から3月31日に働いた分の給料を翌月の4月25日に支払うことは、問題ではありません。

ただし、就業規則に明記されている期日とは異なるタイミングで支払ったり、2ヶ月分の給料をまとめて支払ったりするのは違法となります。

賃金締切日は資金繰りや支払日との間隔を考慮して設定しよう

賃金締切日とは、月ごとの給与計算を行うために設定された期間の最終日のことです。対して、賃金支払日は従業員に給与を支払う日のことを指し、この間隔に余裕を持たせることで、給与計算者がミスなく丁寧に計算しやすくなります。

賃金締切日を変更する際は「賃金支払いの5原則」に則り、資金繰りを考慮して経営を圧迫しないタイミングで設定しましょう。変更時には3ヶ月〜半年前に従業員に周知し、全従業員が納得したうえで変更手続きを進めると、円滑な変更につながります。


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