• 更新日 : 2025年3月18日

外国人雇用において遵守すべき労働関係法規と注意点を解説

外国人雇用に関する労働関係法規は多く、法改正もあるため、理解しにくいと感じる人もいます。法令違反などのトラブルを避けるためにも、入管法や雇用対策法など、外国人特有の法律についても理解が必要です。

この記事では、外国人雇用において遵守すべき労働関係法規について解説します。

外国人労働者にも日本人と同様に労働関係法規が適用される

外国人労働者にも、日本人と同様に労働関係法規が適用されます。労働基準法や最低賃金法など、労働者の権利を守る法律は、国籍に関係なく適用されるのが原則です。労働基準法によって、国籍を理由に外国人と日本人の労働条件に差をつけることは禁止されています。

雇用する企業側は「外国人だから特別」と考えるのではなく、正しい法的知識を持ち、適切な雇用管理を行うことが求められます。法令に違反すると、企業側にも罰則が科される可能性もあるため注意が必要です。日本社会の一員として働く以上、外国人労働者も法的保護の対象になることを理解した上で雇用を進めましょう。

外国人雇用で遵守すべき主な労働関係法規

外国人雇用で遵守すべき主な労働関係法規は以下のとおりです。

  • 労働基準法
  • 入管法(出入国管理及び難民認定法)
  • 最低賃金法
  • 労働安全衛生法
  • 労働者災害補償保険法
  • 雇用保険
  • 労働施策総合推進法
  • 労働契約法
  • 厚生年金保険

労働基準法

労働基準法は、労働時間や休憩、休日、賃金、解雇などの基本的な労働条件を定める法律です。外国人労働者も対象であり、過重労働や不当な低賃金、解雇トラブルを防ぐための重要な基準となります。

労働基準法第三条では、均等待遇について以下のとおり定められており、外国人であることを理由に労働条件を差別すると労働基準法違反にあたります。

「使用者は、労働者の国籍、信条又は社会的身分を理由として、賃金、労働時間その他の労働条件について、差別的取扱をしてはならない。」

引用:労働基準法 第三条 均等待遇

入管法(出入国管理及び難民認定法)

入管法(出入国管理及び難民認定法)とは、日本に出入国するすべての人の管理と、外国人の在留を公正に管理することを目的とした法律です。入管法で認められた在留資格でしか就労できません。

29の在留資格があり、それぞれ活動できる範囲が異なります。外国人を雇用する企業は、労働者の在留資格を必ず確認しましょう。

資格外活動や在留期限超過があれば不法就労となり、企業側にも罰則が科されます。入管法は改正の頻度が高いため、必ず最新の内容を確認しましょう。

参考:出入国管理及び難民認定法

最低賃金法

最低賃金法は、労働者に対し地域別に定められた最低賃金を保障する法律です。外国人労働者にも日本人労働者と同様に適用されます。

最低賃金を下回る給与での雇用は、労働基準法違反となり、罰則の対象です。技能実習生や留学生アルバイトにも、適用される最低賃金以上の賃金を支払う必要があります。トラブルを避けるためにも、常に最新の最低賃金額を把握しておきましょう。

参考:最低賃金法

労働安全衛生法

労働安全衛生法は、労働者の安全と健康を守り、快適な職場環境づくりを促進するために制定された法律です。外国人労働者にも、日本人と同様に適用されます。

労働災害などが発生した場合、厚生労働省から改善計画の作成と提出が求められます。外国人労働者が増える製造業や建設業では特に、災害防止や衛生管理が重要です。

言語や文化の違いによって安全教育が不十分になるケースもあるため、多言語対応の研修やマニュアル作成などを行って丁寧に伝える必要があります。

参考:労働安全衛生法

労働者災害補償保険法

労働者災害補償保険法は、業務上の事故や通勤災害に対する補償を定めた法律です。国籍にかかわらず、外国人労働者も対象となり、保険料は事業主が負担します。

労働災害発生時には、治療費や休業補償などの給付が行われます。外国人労働者を雇用する際には、万が一の際の補償について説明し、安心して働ける職場環境づくりを心がけましょう。

参考:労働者災害補償保険法

雇用保険法

雇用保険法は、雇用保険について定められた法律です。外国人労働者も、原則として雇用保険の被保険者となります。以下の加入要件を満たしている場合は、必ず雇用保険への加入が必要です。

  • 1週間の所定労働時間が20時間以上
  • 同一の事業主にて31日以上の雇用見込みがある

31日以上雇用が継続しないことが明確である場合を除き、要件に該当します。被保険者は、雇用保険への加入により、失業時の失業給付や再就職のための教育訓練給付などを受けられます。

参考:雇用保険法

労働施策総合推進法

労働施策総合推進法は、労働者が生きがいをもって働ける社会の実現を目的とし、2020年6月に施行されました。労働政策総合推進法第28条により、外国人の雇入れ時と離職時に、氏名や在留資格などをハローワークに届け出ることが義務付けられています。

雇入れ時の届け出は、雇用保険の加入手続きと同時に行うことが可能です。雇用保険に加入しない外国人労働者に関しても、翌月末日までにハローワークに届け出を提出する必要があります。届出を怠ると行政指導の対象になることもあるため注意が必要です。

参考:労働施策総合推進法第28条 外国人雇用状況の届出等

労働契約法

労働契約法は、労働者の保護や雇用主とのトラブル防止のために、労働契約の基本的な理念やルールを規定した法律です。外国人労働者を雇用する際にも、労働契約は必ず書面で締結する必要があります。

契約書には、労働条件(勤務時間・給与・休日・仕事内容など)を明記します。外国人本人が契約書の内容を十分に理解していることが重要です。言語の違いにより誤解が生じやすいため、契約書の母国語翻訳や説明資料の提供も求められます。

参考:労働契約法

厚生年金保険法

厚生年金保険法は、企業に雇用されている労働者の老後の所得保障を目的に定められた法律です。日本に居住している限り、外国人も原則として日本の公的年金制度(厚生年金保険または国民年金)に加入する義務があります。

厚生年金保険の適用事業所で外国人労働者を雇用する場合は手続きが必要です。保険料の支払いは、日本人の場合と同様に、雇用主と労働者が折半で負担します。

参考:厚生年金保険法

外国人労働者の雇用に関する法律改正

人手不足の影響による外国人の受け入れ拡大に伴い、外国人労働者の雇用に関する法律改正が進められています。外国人労働者を雇用する際は、最新の情報を確認することが重要です。近年の入管法の改正について解説します。

2024年に入管法改正が成立

2024年6月14日、第213回通常国会において以下の改正案が成立し、同月21日に公布されました。

2024年の改正で、在留資格「技能実習」の廃止と、在留資格「育成就労」の創設が決まりました。また、特定技能の適正化や不法就労助長罪の厳罰化、永住許可制度の適正化なども変化した点です。

入管法は頻繁に改正されているため、常に最新の情報を確認する必要があります。雇用主が改正を見落とすと、知らぬ間に法律違反になるリスクがあるため注意しましょう。

参考:法務省 改正法の概要(育成就労制度の創設等)

外国人労働者雇用で法律問題や不法就労になるケース

外国人労働者雇用で法律問題や不法就労になるケースとして以下が挙げられます。

  • 不法滞在者や被退去強制者が働く
  • 就労できる在留資格を有していない
  • 出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働く

不法滞在者や被退去強制者が働く

不法滞在者や被退去強制者の外国人を就労させることは違法です。在留期限の切れた人や退去強制されることが決定している人を就労させることはできません。

企業側が知らずに雇用していたとしても、必要な確認義務を怠ったとみなされ、処罰の対象となる可能性があります。外国人労働者を雇用する際は、必ず在留カードを確認しましょう。

参考:法務省 不法就労防止

就労できる在留資格を有していない

就労できる在留資格を有していない外国人で、出入国在留管理庁から働く許可を受けていないのに働くケースも不法就労になります。

入国の目的が観光等の短期滞在の人や留学生、難民認定申請中の人が、許可を受けずに働くことは不可能です。就労不可の外国人を雇用した場合、企業側は不法就労助長罪に問われます。

出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働く

就労可能な在留資格を有している外国人でも、出入国在留管理庁から認められた範囲を超えて働くと不法就労になります。

在留資格によって、任せられる業務内容や労働時間が異なるため、必ず事前に確認する必要があります。

外国人雇用の労働関係法規における注意点

外国人雇用の労働関係法規における注意点は以下のとおりです。

  • 不法就労させた事業主も処罰の対象になる
  • 外国人労働者の在留資格を確認する
  • 在留カードの偽造に注意する
  • 労働条件を理解しているか確認する

不法就労させた事業主も処罰の対象になる

不法就労は法律で禁止されています。不法就労した外国人だけでなく、雇用した事業主も処罰の対象となるため注意しましょう。

不法就労させたり、不法就労をあっせんしたりすることは「不法就労助長罪」になります。処罰の対象になると、3年以下の懲役または300万円以下の罰金、場合によっては両方が科されます。

2025年6月からは、不法就労助長罪の罰則の引き上げが決まっているため、さらに注意が必要です。具体的には、拘禁刑5年以下・500万円以下の罰金が科せられるようになります。

外国人労働者の在留資格を確認する

外国人労働者を雇用する際は、必ず在留資格を確認する必要があります。在留資格を持たない外国人が働くと、不法滞在および不法就労になります。

在留資格の種類にも注意が必要です。在留資格が、文化活動、短期滞在、留学、研修、家族滞在の場合は、原則として就労できません。

留学、家族滞在は資格外活動許可があれば就労できますが、留学生は週28時間までと定められています。就労可能な時間より多く働かせていたことで逮捕されているケースもあるため注意しましょう。

在留カードの偽造に注意する

在留カードは偽造されていることもあるため、本物の在留カードか確認することも重要です。在留カードの偽造は、出入国管理及び難民認定法違反になります。偽造を見極める方法として挙げられるのは、顔写真下のホログラムの変化やカード左端の縦型模様の色の変化などを確認することです。

詳しい確認方法は、法務省のYouTube動画を参考にすることをおすすめします。出入国在留管理庁が無料配布している「在留カード等読取アプリケーション」でも、偽造・改ざんなどの確認が可能です。

労働条件を理解しているか確認する

外国人を雇用する際は、給与や就業時間、残業時間などの労働条件を理解しているかを確認することが重要です。トラブルを回避するため、口約束ではなく、必ず契約書を作成しましょう。

労働契約を締結する際には「雇用契約書」または「労働条件通知書」の用意が必要です。雇用する外国人の日本語レベルが低い場合は、外国人労働者の母国語で書類を作成して丁寧に伝えることをおすすめします。

外国人労働者受け入れ拡大の現状

日本の外国人労働者の受け入れは急速に拡大しています。

厚生労働省が公表している外国人雇用状況によると、2024年10月末時点の外国人労働者数は前年比12.4%増の230万2587人で、過去最多となっています。外国人を雇用する事業所数も、前年比7.3%増の34万2087カ所と過去最多です。

少子高齢化で人手不足が深刻化していることから、外国人労働者を採用する企業が増えています。そのため、外国人労働者は今後さらに増える可能性が高いです。

参考:厚生労働省「外国人雇用状況」

外国人雇用における労働関係法規を守ろう

外国人雇用においても、日本人と同様に労働関係法規が適用されます。外国人労働者特有の法律として挙げられるのは、入管法や雇用対策法などです。

外国人を雇用する際は、特に不法就労に注意が必要です。外国人を不法就労させると、企業側も不法就労助長罪に問われる可能性があるため、在留資格の確認を必ず行いましょう。


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