• 作成日 : 2023年2月17日

労災保険の適用対象者とは?特別加入者についても解説!

労災保険の適用対象者とは?特別加入者についても解説!

労災保険の補償対象は、業務災害と通勤災害です。対象者はすべての労働者で、特別加入制度により中小企業事業主や一人親方等、特定作業従事者、海外派遣者も給付を受けられます。療養補償等給付や休業補償等給付といった、さまざまな種類の給付があります。労災保険料は賃金の総額に労働保険料率をかけて計算され、全額を事業主が負担します。

そもそも労災保険とは?

労災保険は労災事故に遭ってケガをした労働者に対して、医療や年金といった給付を行う保険です。労災保険は労災事故の他、どのような場合に給付を行うのでしょうか。労災保険の補償の対象や、労災保険料について説明します。

労災保険の補償対象は?

労災保険労働者の労働時間中のケガや業務に起因して発症した疾病、通勤途中のケガなどに対して給付を行う公的保険で、業務災害と通勤災害を補償対象としています。

業務災害

業務を原因として労働者が負ったケガや疾病、障害、死亡が業務災害です。業務上の負傷・業務上の疾病も業務災害に該当します。

通勤災害

通勤によって労働者が負った傷病などが通勤災害です。労働のために行う以下のものが、通勤とされます。

  1. 住居と仕事場の間の往復
  2. 仕事場から他の仕事場への移動
  3. 単身赴任先と帰省先の間の往復

労災保険の給付の種類は?

労災保険は業務災害と通勤災害に対して、以下の給付を行います。

業務災害に対して行う給付

  • 療養補償等給付
  • 休業補償等給付
  • 傷病補償等年金
  • 障害補償等給付
  • 遺族補償等給付
  • 葬祭料
  • 介護補償等給付
  • 二次健康診断等給付

通勤災害に対して行う給付

  • 療養等給付
  • 休業等給付
  • 傷病等年金
  • 障害等給付
  • 遺族等給付
  • 葬祭給付
  • 介護等給付

療養補償等給付と療養等給付、休業補償等給付と休業等給付、傷病補償等年金と傷病等年金、障害補償等給付と障害等給付、遺族補償等給付と遺族等給付、葬祭料等と葬祭給付、介護補償等給付と介護等給付は、同じ給付内容です。業務災害は事業者に補償責任があることから、「○○補償○○」という給付名が付けられています。

労災保険料の計算方法は?

労災保険料は事業所の賃金の総額に、労災保険保険料をかけて計算します。計算式は以下のとおりです。

労災保険料=賃金の総額×労災保険料率

労災保険料率は業務の種類ごとに、労災事故の発生率に応じて決められています。

労災保険料の事業主負担はいくら?

労災保険料は、全額を事業主が負担しなければなりません。社会保険料や雇用保険料は労働者と事業主がそれぞれの負担分を支払いますが、労災保険料は全額を事業主が支払います。

労災保険の適用対象者は?

労災保険の正式名称は「労働者災害補償保険」で、公的保険です。業務災害や通勤災害を補償対象としていますが、どのような人が給付を受けられるのでしょうか。労災保険の対象者について解説します。

原則としてすべての労働者が対象

労災保険は、すべての労働者に適用されます。労働者とは、以下の条件に該当する人のことです。

使用者に従属している人
賃金を受け取って働く人

この2つに該当する人は、正社員・契約社員・パート・アルバイト・日雇いといった雇用形態に関わらず労働者となり、労災保険の適用を受けます。外国人労働者や高年齢労働者であっても、不法就労外国人であっても労災保険は適用されます。

代表取締役や個人事業主は労災保険の適用範囲外

代表取締役は使用者であり労働者ではないため、労災保険の適用対象ではありません。ただし会社の代表権を持たない工場長や、兼務役員には労災保険が適用されます。また、同居の親族も使用従属関係が認められることから、労災保険の適用を受けることができます。
個人事業主は使用者との従属関係がないことから、労災保険の適用は受けられません。

労災保険の特別加入者とは?

労災保険には、労働者以外でも給付対象となる特別加入制度が設けられています。特別加入し、保険料を納付することで、業務災害となった場合に労働者でなくても補償を受けられます。労災保険の特別加入には、第1種・第2種・第3種があります。

第1種特別加入者

以下の人が、労災保険の第1種特別加入者に該当します。

  • 中小企業事業主
  • 中小企業事業主の家族従事者
  • 中小企業の役員

事業主やその家族、役員は労働者ではないため、本来は労災保険の対象にはなりません。しかし、中小企業の場合は労働者とともに業務を行うことも多く、労災事故に遭う可能性も労働者と同等と考えられるため、特別加入が認められています。

第2種特別加入者

以下の人が、労災保険の第2種特別加入者に該当します。

  • 一人親方等
  • 一人親方等とは個人タクシー運転手や左官など、労働者を雇用せずに一人で事業を営む人を指します。

  • 特定作業従事者
  • 特定作業従事者とは、労災発生率の高い作業に従事する人を指します。

以下の9種類の作業に従事する人が対象となります。

  • 特定農作業従事者
  • 指定農業機械作業従事者
  • 国又は地方公共団体が実施する訓練従事者
  • 家内労働者及びその補助者
  • 労働組合等の常勤役員
  • 介護作業従事者
  • 芸能関係作業従事者(令和3年4月1日から追加)
  • アニメーション制作作業従事者(令和3年4月1日から追加)
  • ITフリーランス(令和3年9月1日から追加)

第3種特別加入者

海外に派遣される労働者は、労災保険の第3種特別加入者に該当します。海外で働く労働者は現地の保険制度が適用されますが、国によって保障は異なります。低い水準の保障しか受けられないといった事態を防ぐために、海外に派遣される労働者には労災保険の特別加入が認められています。

労災保険の加入手続きは?

労災保険に加入する際は、雇用保険とともに労働保険として手続きを行います。事業によって一元適用事業と二元適用事業に分かれ、それぞれの方法で手続きを行う必要があります。

一元適用事業の場合

一元適用事業では、労災保険と雇用保険を1つのものとして扱います。二元適用事業以外の事業が、一元適用事業に該当します。一元適用事業の労災加入手続きは、以下の方法で行います。

  1. 保険関係成立届を、保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に、所轄の労働基準監督署に提出する
  2. 概算保険料申告書を、保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内に、所轄の労働基準監督署・所轄の都道府県労働局・日本銀行(全国の銀行などでも可)に提出する。
  3. 雇用保険適用事業所設置届を、設置の日の翌日から起算して10日以内に、所轄の公共職業安定所に提出する
  4. 雇用保険被保険者資格取得届を、資格取得の事実があった日の翌月10日までに所轄の公共職業安定所に提出する

1と2は同時か1→2の順番で行い、3、4は1の後に行います。

二元適用事業の場合

二元適用事業では、労災保険と雇用保険を別のものとして扱います。農林漁業や建設業などが、二元適用事業に該当します。二元適用事業の労災加入手続きは、以下の方法で行います。

  1. 保険関係成立届を保険関係が成立した日の翌日から起算して10日以内に、所轄の労働基準監督署に提出する
  2. 概算保険料申告書を保険関係が成立した日の翌日から起算して50日以内に、所轄の労働基準監督署・所轄の都道府県労働局・日本銀行(全国の銀行などでも可)に提出する。

と2は同時か、1→2の順番で行います。

万一の場合に備えて労災保険加入手続きは怠らないようにしよう

労災保険は、業務災害や通勤災害に対して補償を行う保険です。対象者はすべての労働者で、パートやアルバイト、高年齢労働者、外国人労働者などが給付を受けられます。業務災害に対しては療養補償等給付や休業補償等給付、障害補償等給付、遺族補償等給付などの給付が行われ、通勤災害に対しては同じ内容の療養等給付や休業等給付、障害等給付が行われます。
労災保険に加入する際は、保険関係成立届と概算保険料申告書の提出といった手続きが必要です。万一の場合に備えて、労災保険加入手続きは怠らないようにしましょう。

よくある質問

労災保険の適用対象者は?

労災保険はパートやアルバイト、高年齢労働者、外国人労働者などの労働者に適用されます。詳しくはこちらをご覧ください。

労災保険の特別加入者とは?

中小企業事業主や一人親方等、特定作業従事者、海外に派遣される人などが労災保険に特別加入できます。詳しくはこちらをご覧ください。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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