• 更新日 : 2025年3月18日

外国人雇用の手続きは行政書士に任せるべき?依頼するメリットや費用を解説

外国人を雇用するにあたって、在留資格の取得・更新など、さまざまな手続きが必要です。これらの手続きを誤ると、雇用がスムーズに進まないだけでなく、法的リスクを伴う可能性もあります。

本記事では、外国人雇用の手続きを行政書士に依頼するメリットや費用の相場について解説します。

外国人雇用に必要な手続きとは?

外国人を雇用する際には、適切な手続きを踏むことが求められます。一般的な流れは、下記のとおりです。

  1. 外国人を採用する
  2. 在留資格の取得・更新を行う
  3. 必要書類を準備し、申請書類を作成する
  4. 申請後、審査結果をまつ
  5. 許可が下りたら、雇用契約を正式に締結する

在留資格の申請は、種類によって必要な手続きが異なるため、事前に確認することが大切です。

申請の種類対象となるケース申請者
在留資格認定証明書交付申請海外から新たに外国人を雇用する場合本人
在留資格変更許可申請すでに日本にいる外国人が別の在留資格へ変更する場合本人(企業代理可)
在留期間更新許可申請在留期間を延長する場合本人(企業代理可)
在留資格取得許可申請日本で出生した外国人、または日本国籍を離脱した場合本人

申請書のほかにも、在留資格の種類別に多くの書類を揃えなければいけません。企業が独自に対応すると、大きな負担がかかるでしょう。書類の不備や誤りがあると審査が遅れるため、正確な記入が必要になります。

また、外国人を雇用したあとは、税務手続きや社会保険の加入、雇用状況の報告などの手続きを行います。適切に手続きを進めるためにも、行政書士のサポートを活用するのもおすすめです。

以下の記事では、外国人労働者を受け入れる際のメリットや問題を詳しく解説していますので、あわせて参考にしてください。

行政書士が行える外国人支援

行政書士は、外国人本人と外国人を雇用する企業の双方に対して、在留資格申請をはじめとする支援を多数提供しています。

主に、下記の手続きや業務を、外国人支援という形で代行可能です。

  • 在留資格認定証明書交付申請
  • 在留期間更新許可申請
  • 在留資格変更許可申請
  • 永住許可申請
  • 再入国許可申請
  • 資格外活動許可申請
  • 就労資格証明書交付申請

これらの申請には専門的な知識が必要であり、手続きのミスがあれば不許可となる可能性があります。行政書士のサポートを受けることで、確実に手続きを進められるでしょう。

在留資格申請の代行は申請取次行政書士のみ対応可能

行政書士とは、官公署に提出する書類の作成や手続きの代行を行う専門職のことを指します。在留資格の代理申請は「その他特定業務」に該当し、すべての行政書士が対応できるわけではありません。

在留資格の申請を代行できるのは、特定の講習と効果測定を修了した「申請取次行政書士」のみです。申請取次行政書士は、出入国在留管理庁の規定にもとづき、一定の研修を受けた行政書士にのみ認められています。

通常、外国人を雇用する際には、本人が直接出入国在留管理局へ出向いて申請を行う必要があります。しかし、申請取次行政書士に依頼すれば、外国人本人の代わりに行政書士が出入国在留管理局に出向き、申請の代行が可能です。

この仕組みによって、外国人労働者が業務に専念できるだけでなく、申請に伴うトラブルや手間を大幅に減らせます。申請書類のミスによる差し戻しや、追加書類の要求といったリスクを軽減できるのは、企業にとっても大きなメリットです。

参考:
出入国在留管理庁|申請等取次制度について
日本行政書士会連合会|行政書士の業務

外国人雇用に必要な手続きを行政書士に依頼する際の費用相場

行政書士に外国人雇用の手続きを依頼する場合、費用は事務所によって異なります。書類の作成を依頼する場合は、6万~15万円が一般的な相場です。

書類の確認のみを依頼することで、費用を抑えられる可能性があります。一方、依頼内容に申請代行や入管への同行が含まれる場合は、費用が高くなる傾向があります。

依頼費用には、在留期間更新許可申請や在留資格変更許可申請にかかる手数料も含まれているか確認しましょう。事前に料金体系やサポート内容を確認し、適切な行政書士を選ぶことが大切です。

外国人雇用に関して行政書士に依頼する際の4つのメリット

外国人を雇用する際には、在留資格の取得・更新や必要書類の作成など、多くの手続きが求められます。

行政書士に依頼すれば、企業の負担を軽減し、スムーズな外国人雇用を実現可能です。以下では、行政書士に依頼するメリットを4つ紹介します。

1. 手続きの手間を削減できる

外国人の雇用には、在留資格の取得・更新をはじめ、多くの手続きが伴います。必要書類の収集・作成、外国人労働者とのやりとり、入管への申請など、多大な時間と労力を要します。
はじめて外国人を雇用する企業は、どのような手続きを進めればよいのか分からず、戸惑うこともあるでしょう。

行政書士に依頼すれば、これらの手続きをすべて任せられるため、企業側は本業に専念できます。また、申請取次行政書士は、必要な書類を熟知しているため、適切な流れで申請を進めることが可能です。

入管局とのやりとりにも慣れているので、問い合わせ対応や追加書類の提出もスムーズに行える点もメリットです。的確なアドバイスのもと、迅速に申請が進められるため、許可が下りるまでの期間を短縮できます。

2. 書類や手続きの不備のリスクを避けられる

在留資格の取得や更新で、書類の記載ミスや必要書類の不足があると、審査に時間がかかるだけでなく不許可となるリスクも高まります。

たとえば、特定技能ビザでは業務範囲が細かく決められており、誤った内容で申請すると不許可となる場合があります。単純な記載ミスや必要書類の不足により、審査が長引くこともあるでしょう。

過去に不許可になった場合は、再申請時の審査が厳しくなる傾向があるため、初回の申請から確実に行うことが重要です。行政書士のサポートを受けることで、適切な申請が行え、スムーズな許可取得につながります。

3. ンプライアンスを遵守できる

外国人を雇用する際には、入管法や労働基準法など、多くの法令を遵守する必要があります。転職時や住居地変更時の届出を怠ると、企業だけでなく外国人労働者にも罰則が科される可能性があります。

また、在留資格で認められた範囲を超えた業務を行わせたり、在留期限が切れた外国人を雇用したりした場合は注意が必要です。企業は「不法就労助長罪」に問われ、3年以下の懲役または300万円以下の罰金が科される場合があります。

行政書士に依頼すれば、企業が知らずに法令違反を犯すリスクを回避でき、適切な雇用を維持できます。

また、外国人労働者の適正な管理や、法改正への対応についてもアドバイスを受けられるため、企業の信頼性向上にもつながるでしょう。

4. 外国人労働者の不安を解消できる

外国人労働者にとって、日本での在留資格の手続きは大きな不安要素となります。日本語が十分に話せない場合、企業の担当者や出入国在留管理局(入管)の担当者とのやりとりで誤解が生じる可能性があります。

結果、申請手続きが遅れたり、追加書類の提出を求められたりするケースもあるでしょう。最悪の場合、誤った情報が伝わってしまい、ビザが不許可となるリスクもあります。

行政書士に依頼すれば、外国人労働者との直接のやりとりを専門家が担当し、必要な情報や書類の収集をスムーズに行えます。

また、多くの行政書士は日本語だけでなく、英語・中国語・韓国語など複数の言語で対応が可能です。そのため、外国人労働者は言葉の壁に悩まされることなく、安心して手続きを進められるでしょう。

申請取次行政書士に依頼すれば、外国人本人が入管に出頭する必要がなくなるため、仕事や学業に専念することも可能です。企業側も外国人労働者のサポートにかかる負担を軽減できるため、双方にとって大きなメリットとなるでしょう。

以下の記事では、外国人の入社手続きや入社後のフォローについて詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。

外国人雇用する際のデメリット・注意点

外国人雇用の手続きを行政書士に依頼すれば、多くのメリットを得られますが、一方でデメリットも存在します。

大きなデメリットのひとつは、自社で対応するよりも費用がかかる点です。行政書士に依頼すると、外国人ひとりあたり約10万円の依頼費用がかかるため、雇用する外国人が多い企業ほど負担が大きくなります。

とはいえ、行政書士に依頼すれば面倒な手続きをスムーズに進められる、法令を遵守した適切な手続きが可能になるため、メリットのほうが大きいとも言えます。

とくに、下記に該当する企業は、行政書士に依頼するのがおすすめです。

  • 申請に割く時間がない企業
  • 許可が出るか不安な企業
  • 日本語で外国人とコミュニケーションを取れるか不安な企業

安心して外国人雇用を進めたい企業は、行政書士に依頼をし、不安要素を減らすとよいでしょう。

以下の記事では、外国人雇用の注意点について詳しく解説しています。

行政書士に外国人雇用の手続きを依頼する際のポイント

外国人雇用の手続きを行政書士に依頼する際、適切な専門家を選ぶことが重要です。行政書士によって対応の質や得意分野が異なるため、慎重に選びましょう。

ここでは、行政書士に依頼する際に確認すべき重要なポイントについて解説します。

1. 在留資格手続きの実績が豊富か

行政書士の経験や実績は、ビザ申請の成功率に大きく影響します。実績が少ない行政書士に依頼すると、ビザが不許可となるリスクが高まるだけでなく、手続きに時間がかかる可能性があります。

特定技能ビザや高度専門職ビザなどの特殊な在留資格に対応できるか、事前に確認することが重要です。行政書士のホームページや口コミをチェックし、ビザ取得の実績が豊富であるかを見極めましょう。

また、無料相談を利用して、実際に経験値を直接確認するのもおすすめです。経験豊富な行政書士であれば、スムーズな手続きをサポートしてくれるでしょう。

2. 丁寧に対応してくれるか

外国人雇用の手続きは、個々の状況に応じた細やかな対応が求められます。企業ごとに雇用する外国人の職種や業務内容が異なるため、依頼主の状況を理解した上で、適切なアドバイスをしてくれる行政書士を選びましょう。

中には、ビザの取得手続きを形式的に進めるのみで、依頼主の不安や疑問に対して十分な説明をしない行政書士もいます。そのため、相談時には、下記のポイントをチェックしましょう。

  • 質問に対して丁寧に説明してくれるか
  • 依頼者の状況に応じた適切な提案をしてくれるか
  • 手続きの流れやリスクについて正直に伝えてくれるか

無料相談を活用し、対応が親身で丁寧な行政書士かどうかを事前に見極めることが大切です。

3. 料金体系やサービス内容が明確か

行政書士に依頼する際、料金体系や提供されるサービスが明確であるかを事前に確認しましょう。行政書士によって費用の設定が異なるため、下記のポイントをもとに、適正な価格か見極めることが大切です。
  • ビザ申請代行の費用が明確に提示されているか
  • 追加料金が発生する場合の条件が説明されているか
  • サービス内容が具体的に記載されているか

注意すべきなのは、極端に安い料金を設定している行政書士です。費用が安すぎる場合、対応が雑だったり、サポート内容が不十分だったりする可能性があります。

適正価格かどうかを相場と照らしあわせ、安心して依頼できる行政書士を選びましょう。

外国人雇用で活用できる助成金

外国人雇用の手続きには、在留資格の取得や職場環境の整備など、さまざまな費用が発生します。行政書士への依頼で手続きの負担は軽減できますが、少しでもコストを抑えたい企業は、助成金の活用を検討するのがおすすめです。

ここでは、外国人雇用に役立つ主な助成金制度について解説します。

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)

人材確保等支援助成金(外国人労働者就労環境整備助成コース)は、外国人労働者を雇用する企業が職場環境の整備や、定着を促進するためにかかった費用の一部を支援する制度です。

助成対象となる主な費用は、下記のとおりです。

  • 通訳費
  • 翻訳機器導入費(上限10万円)
  • 翻訳料
  • 弁護士・社会保険労務士等への委託料
  • 社内標識類の設置・改修費

助成金を受けるためには、企業の実態に応じた取り組みを行う必要があります。さらに「外国人労働者離職率」と「日本人労働者離職率」の目標を達成することも条件です。

主な受給要件は、下表にまとめています。

項目詳細
主な受給要件外国人労働者を雇用している事業主であること
認定を受けた就労環境整備計画にもとづき、外国人労働者に対する就労環境整備措置(1と2は実施必須となり、3~5の取り組みはいずれかを実施する必要がある)を新たに導入し、外国人労働者に対して実施すること

  1. 雇用労務責任者の選任
  2. 就業規則等の社内規程の多言語化
  3. 苦情・相談体制の整備
  4. 一時帰国のための休暇制度の整備
  5. 社内マニュアル・標識類等の多言語化
外国人労働者の離職率の条件計画期間終了後1年以内に10%以下であること

※外国人労働者数が2人以上10人以下の場合は、1年経過後の外国人労働者離職者数がひとり以下であること

日本人労働者の離職率の条件計画期間前の1年間と比較し、離職率が上昇していないこと
支給額(上限額)賃金要件を満たしていない場合:支給対象経費の1/2(上限額57万円)

賃金要件を満たす場合:支給対象経費の2/3(上限額72万円)

出典:厚生労働省|外国人労働者を雇用する事業主の皆様へ

助成金の活用によって、企業は長期的な雇用の維持とコスト削減が可能になります。

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)

トライアル雇用助成金(一般トライアルコース)は、職業経験が不足している求職者や就職が困難な求職者を、一定期間試行的に雇用する企業に対して支給される助成金です。

受給要件や金額は、下記のとおりです。

項目詳細
企業側の受給要件
  • 雇用保険に加入している事業主であること
  • ハローワークまたは職業紹介事業者の紹介で求職者を採用していること
  • 原則3ヶ月間のトライアル雇用を実施すること
  • 1週間の所定労働時間が、通常の労働者と同じであること
助成金の支給額支給対象者ひとりにつき月額4万円

※対象者が母子家庭の母等、または父子家庭の父の場合は月額5万円

受給期間最長3ヶ月間

出典:厚生労働省|トライアル雇用助成金(一般トライアルコース) 
厚生労働省|トライアル雇用助成金リーフレット(事業者向け)

企業は求職者の適性を見極めながら雇用できるため、採用のミスマッチを最小限に抑えられるメリットがあります。

コストを抑えた雇用を実現させたい企業は、トライアル雇用助成金の活用を検討しましょう。

外国人雇用で失敗しないために、行政書士の活用を検討しよう

この記事では、外国人雇用の手続きを行政書士に依頼するメリットや費用の相場を解説しました。

外国人雇用の手続きは煩雑であり、企業が独自に対応すると時間や労力がかかるだけでなく、手続きのミスによるリスクも伴います。行政書士に依頼すれば、スムーズな申請手続きが可能となり、コンプライアンスを遵守した適切な雇用が可能となります。

本記事を参考に、適切なサポートを活用し、外国人雇用を成功へと導きましょう。


※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。

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