- 更新日 : 2024年12月20日
派遣のメリット・デメリットは?働く側・企業側それぞれ解説
人材派遣サービスの利用は、労働者側・雇用側双方にメリットがあります。労働者側にとっては、アルバイトより高時給、サポート体制が整っているなどがメリットです。一方、雇用者側は短時間で人材不足を解消できるなどのメリットがあります。よくあるメリットとデメリット、派遣サービスを利用する際の注意点を解説します。
目次
派遣で働くメリットは?
人材派遣サービスに登録し、派遣社員として働くことには次のメリットがあります。
- 仕事が選べる
- アルバイトより給料が高い傾向にある
- ライフスタイルに合わせられる
- 大手企業で働ける
- サポート体制が整っている
希望する働き方やライフスタイルによっては、正社員やアルバイトとして働くよりも派遣社員として働くほうが適していることもあります。それぞれのメリットについて見ていきましょう。
仕事が選べる
人材派遣サービスに登録する際には、今までのキャリアや培ってきたスキル、保有する資格などの情報を提供します。また、就業したい業界や職種についても登録するため、希望の仕事が見つかります。派遣会社から提案してもらった仕事が自分に合わないと感じたときは、断ることも可能です。
一方、正社員として働く場合は、希望しない部署に配置されることもあります。上司や人事に相談して変更してもらえることもありますが、必ずしも希望どおりの部署で希望どおりの仕事に就けるわけではありません。
アルバイトより給料が高い傾向にある
派遣社員の時給は、アルバイトよりも高い傾向にあります。
労働者派遣事業報告書(令和4年度)によれば、派遣社員の平均日給は15,968円(8時間換算)です。時給に換算すれば1,996円です。一方、毎月勤労統計調査(令和4年度)によると、アルバイトやパートなどのパートタイム労働者の平均時給は1,248円です。
1時間あたり約750円、1日(8時間)あたり約6,000円、派遣社員のほうが多くの給料を受け取れることになります。事業所によっても差はありますが、アルバイトよりも派遣社員のほうが効率良く収入を得られるといえるでしょう。
参考:厚生労働省 令和4年度 労働者派遣事業報告書の集計結果(速報)
参考:厚生労働省 毎月勤労統計調査 令和4年度分結果確報
ライフスタイルに合わせられる
派遣社員は、勤務地や勤務時間、期間などの希望に合わせた働き方ができます。正社員のように勤務地や業務が途中で変わることがないため、ライフスタイルに合わせた働き方が可能です。たとえば、育児や介護などの事情により、勤務地や勤務時間に制限がある場合でも、派遣社員として働くなら自分に合った働き方ができるでしょう。
また、契約期間が終わった後は、別の職場に変えられるのも派遣社員のメリットです。長く働くと人間関係のネガティブな部分に関わることもありますが、定期的に職場が変わるなら深く付き合うことがないため、トラブルも回避しやすくなります。
大手企業で働ける
さまざまな企業で働けるのも派遣社員のメリットです。人気が高く、正社員として採用されるのは難しいような大手企業でも、派遣社員としてなら働けるかもしれません。
中小企業から大手企業までさまざまな職場で働くことで、1つの職場だけでは得られない貴重な経験を得られます。経験は財産です。自分自身が社会人としてさらにレベルアップできるきっかけになるでしょう。
サポート体制が整っている
派遣会社では、サポート体制が整っていることが多いです。カウンセリングサービスや担当者との個人面談などを利用できるため、仕事探しや仕事関連の悩みを気軽に相談できます。
人材派遣サービスを利用して働くときは、まずは派遣会社と雇用契約を結び、派遣先で就業するスタイルをとることが一般的です。仕事の指示については派遣先から受けますが、給料は派遣会社から支払われるため、未払いや不払いなどのトラブルを回避しやすいのもメリットです。
【企業側】派遣社員を雇うメリット
企業側にとっても、人材派遣サービスを利用することは多くのメリットがあります。派遣社員を雇う主なメリットとしては、次の点が挙げられます。
- すぐに人材を確保できる
- 即戦力が補てんできる
- 採用コストを低く抑えられる
- 給与計算・社会保険の負担を軽減できる
各メリットについて見ていきましょう。
すぐに人材を確保できる
必要なときに必要な人材を確保できるのも、人材派遣サービスを利用するメリットです。人材が不足するとき、通常なら求人広告を公開して応募者を募り、書類選考や面接によって絞り込んでいく必要があります。応募者が来ないケースや、応募者が求める条件を満たしていないケースもあり、予想以上に採用までに時間がかかるかもしれません。
派遣会社に相談すれば、希望する人材をすぐに紹介してもらえます。わずか数日で派遣してもらえることもあるため、急な人材不足にも対応しやすくなります。
即戦力が補てんできる
新入社員が一定以上の業務をこなせるようになるまでには、相応の時間がかかります。また、研修サービスを利用したり、指導役の社員を配置したりするため、多額の費用がかかることもあるでしょう。
派遣社員ならば、すでにスキルを持った人材も多いため、教育する時間・費用を節約できるかもしれません。即戦力が必要なときも、人材派遣サービスを検討できるでしょう。
採用コストを低く抑えられる
採用にはさまざまなコストがかかります。
- 求人広告費用
- 選考費用
また、採用後もさまざまな費用がかかります。
- 研修費用
- 備品・貸与品の調達費用
指導役の社員を配置する場合は、本来の業務に従事しないことで多額の利益を逸したと考えられるため、さらにコストや損失は大きくなります。
しかし、派遣社員なら採用前後にかかるコストを大幅に抑えることが可能です。特に短期間のみ人材が必要なときは、採用コストをかけてもそれに見合った利益が得られないかもしれません。採用コストを抑えたいときも、派遣社員を検討してみましょう。
給与計算・社会保険の負担を軽減できる
派遣社員は派遣会社が雇用しているため、給与も派遣会社から受け取ります。派遣先企業は派遣社員の給与計算をする必要がなく、派遣会社から請求された費用をそのまま支払えば完了です。
また、派遣社員の社会保険料を負担する義務があるのも、派遣会社です。派遣先企業は負担する必要がないため、従業員にかかるコストを抑えられます。
派遣で働くデメリット
派遣会社で働くデメリットとしては、次のものが挙げられます。
- 就業の上限は3年
- 突然仕事が途切れるリスク
- ボーナスや賞与がない
- 社会的な信用度が低い
- 裁量のある仕事は任せてもらえない
それぞれのデメリットについて解説します。
就業の上限は3年
特定の派遣会社の派遣社員として働く場合、同一組織に就業できるのは3年が上限です。仕事内容や環境が自分に合っていたとしても、3年を超えて派遣契約を延長してもらえません。
突然仕事が途切れるリスク
派遣会社から常に仕事を紹介してもらえるわけではありません。希望する場所や職種の案件がなく、仕事が途切れてしまうリスクがあります。
ボーナスや賞与がない
基本的には、派遣社員にはボーナスや賞与はありません。ボーナスや賞与は時給に含まれているため、別途、支給されないことが一般的です。
ただし、派遣会社によっては、派遣先の賞与制度が派遣社員にも適用される「派遣先均等・均衡方式」を採用していることもあります。このようなケースでは、ボーナスの時期に派遣社員もボーナスを受け取れることがあります。
社会的な信用度が低い
派遣社員は数ヶ月、数年単位で雇用契約を締結するため、仕事が安定しているとはいえません。
雇用契約終了後に次の仕事がすぐに見つかるとも限らず、場合によっては、収入のない時期が続く可能性もあります。そのため、社会的な信用を得にくく、金融機関のローン審査において不利になるかもしれません。
裁量のある仕事は任せてもらえない
派遣社員は長くても3年までしか同一の職場で働けないため、企業の機密に関わる重要な仕事を任されることはあまりありません。また、比較的単純な業務を担当するため、裁量のある仕事を任されることもあまりないでしょう。
【企業側】派遣社員を雇うデメリット
派遣社員を採用することにはデメリットもあります。主なデメリットは、以下をご覧ください。
- 人材を選択できない
- 業務内容に制限がある
- 派遣期間に制限がある
- 重要な仕事は任せられない
それぞれについて解説します。
人材を選択できない
派遣先企業は、どのような人材を派遣してほしいのか派遣会社に対して希望を述べることはできます。しかし、適切な人材かどうかを判断するのは派遣会社のため、派遣先企業は人材を選ぶことはできません。
業務内容に制限がある
派遣社員の業務内容は、契約時に合意したもののみです。契約外の業務をさせることはできないため、契約時に業務内容を吟味してください。
派遣期間に制限がある
派遣期間は最大3年のため、長期的なプロジェクトなどを派遣社員に任せることは難しいでしょう。長期的に働ける人材を求めるなら、派遣社員ではなく、自社で正社員として直接雇用することが必要です。
重要な仕事は任せられない
派遣社員は数ヶ月~数年で仕事を辞める前提で働いているため、企業への帰属意識が低い傾向にあります。そのため、重要な仕事を任せられないように感じるかもしれません。
派遣社員の種類
派遣社員にはいくつか種類があります。それぞれの特徴やメリット、注意点などを紹介します。
登録型派遣
登録型派遣とは、登録した人材(派遣社員)の派遣先が決まったら、派遣会社と人材との間で有期雇用契約を締結することです。派遣期間が終了すると雇用契約も終了するため、派遣先が決まっていない間は、派遣会社は人材に対して給与を支払う必要がありません。
なお、ほとんどの派遣社員は登録型派遣の形で働いています。
無期雇用派遣
無期雇用派遣とは、期限を定めずに派遣会社に雇用されることです。登録型派遣とは異なり、派遣先が決まっていないときでも派遣会社と派遣社員の間で雇用関係は継続し、派遣会社から派遣社員に給与が支払われます。
なお、登録型派遣の場合は派遣会社に登録していても、必ずしも仕事をするわけではありません。そのため、複数の派遣会社に登録する方もいます。一方、無期雇用派遣の派遣社員は派遣会社で常に働いている状態のため、1つの派遣会社のみに登録することが一般的です。
紹介予定派遣
紹介予定派遣とは、正社員や契約社員などの派遣先での直接雇用を前提に、一定期間のみ派遣社員として働くことです。派遣期間は3ヶ月~6ヶ月程度で、期間終了後、派遣先と派遣社員の合意のもと直接雇用契約を締結します。
シニア派遣
シニア派遣とは、明確な決まりはありませんが、50代~70代程度の方を派遣社員とすることです。フルタイムで働きたい方や、自分のペースで短時間のみ働きたい方など、さまざまな方が登録しています。
派遣社員が無期雇用派遣になる条件
同じ派遣会社との契約が複数回更新され、2013年4月1日以降の契約期間が通算5年を超えたときは、派遣社員が希望した場合は「無期雇用派遣」に転換できます。
ただし、派遣社員が希望しない場合は、無期雇用派遣に切り替える必要はありません。
正社員との違い
雇用期間に定めがないという点では、無期雇用派遣と正社員は同じです。しかし、ボーナスや手当などの労働条件は、正社員と異なることがあります。
無期雇用派遣の労働条件は、雇用契約書に記載されています。雇用期間は無期であっても、労働条件において正社員と差があることも珍しくありません。
派遣社員は何歳まで働ける?
派遣社員には年齢制限はありません。ただし、無期雇用派遣の場合は、派遣会社の定年制で定められた年齢まで働けます。
なお、年齢を理由に派遣登録を断られることはありません。しかし、派遣会社により派遣先に通知される「派遣通知書」には以下の情報が記載されるため、場合によっては派遣先に年齢が知られることもあります。
派遣社員を採用する際の注意点
派遣社員を採用する際には、次の点に注意が必要です。
- 派遣社員を採用できない業種がある
- 事前面接はできない
- 派遣先責任者の配置が必要なケースがある
それぞれのポイントを解説します。
派遣社員を採用できない業種がある
派遣労働法では、警備業務や医療業務、建設業務、港湾運送業務の労働者や士業に関しては派遣社員を採用できないと定められています。事前に確認しておきましょう。
事前面接はできない
派遣社員を採用する前に面接することはできません。ただし、紹介予定派遣の場合は、事前面接が可能です。
派遣先責任者の配置が必要なケースもある
派遣先は、派遣社員100人につき1人以上の派遣先責任者を自社の社員から選任しなくてはいけません。ただし、派遣社員と派遣先が雇用する社員の合計が5人以下のときは、派遣先責任者の配置は不要です。
派遣社員の働き方を確認しておこう
派遣社員として働くとき、派遣社員を採用するときは、派遣社員の特性を正確に理解しておく必要があります。派遣社員として働くこと・採用することにはメリットが多いですが、半面、長期就業・採用ができないなどのデメリットもあります。
また、仕事が不安定になりがちなことや、人材を選べないこともデメリットです。ぜひ派遣社員の働き方について今一度確認しておきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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