- 更新日 : 2025年7月25日
10時間労働の休憩は何時間?1時間半〜2時間必要?取れなかった場合の対処法も解説
「毎日10時間労働なのに、休憩はたったの1時間…これって法律的に大丈夫?」
「拘束時間が長いのに、しっかり休めていない気がしてきつい…」
長時間労働が続くと、心身ともに疲れが溜まり、休憩時間が適切に取れているか不安になりますよね。特に1日の労働時間が長くなるほど、心身の健康を保つための休憩は非常に重要です。
この記事では、10時間労働における正しい休憩時間について、労働基準法を基に分かりやすく解説します。休憩が取れない場合の具体的な対処法もご紹介しますので、ご自身の権利を守るためにぜひ参考にしてください。
目次
10時間労働の休憩は最低1時間
まず結論からお伝えすると、10時間労働の場合、法律で定められた最低限の休憩時間は1時間です。会社の就業規則で、休憩時間は1時間と定められていれば、それは労働基準法に則った合法的なルールとなります。なぜなら、日本の法律では労働時間に応じた休憩時間が明確に定められているからです。次の項目で、その根拠となる法律について詳しく見ていきましょう。
労働基準法で定められた休憩時間のルール
日本の労働者の権利は、労働基準法という法律で守られています。その第34条には、休憩時間について次のように定められています。
- 労働時間が6時間を超え、8時間以内の場合:少なくとも45分
- 労働時間が8時間を超える場合:少なくとも1時間
この法律は、労働者を過度な労働から守り、健康を維持するために非常に重要な役割を果たしています。この時間を下回る休憩しか与えていない会社は、法律違反となります。
10時間労働や11時間労働も8時間超に該当する
上記のルールに当てはめて考えると、10時間労働や11時間労働も「労働時間が8時間を超える場合」に該当します。したがって、会社は労働者に対して少なくとも1時間の休憩を与えなければなりません。法律上の義務はあくまで最低1時間であるため、たとえ12時間働いたとしても、法律上の最低休憩時間は1時間のままです。ただし、企業によっては、従業員の健康や安全に配慮し、1時間を超えた休憩時間を設けている場合もあります。
休憩時間が1時間半や2時間ある理由
法律で定められた最低基準(1時間)を上回る休憩時間を設定することは全く問題ありません。むしろ、従業員想いの良い会社だと言えるでしょう。1時間半や2時間といった比較的長めの休憩を取ることや、勤務の合間に短時間休憩を取ることは、集中力の回復や生産性に良い影響を与える可能性があるためです。ご自身の会社の休憩時間が何時間なのかは、雇用契約書や就業規則で確認できます。
休憩時間にまつわる3つの原則
休憩時間は、単に時間が確保されていれば良いというものではありません。労働基準法では、労働者が適切に休息を取れるように、休憩時間の与え方について3つの原則を定めています。
原則1. 労働時間の途中に与えること
休憩時間は、必ず労働時間の途中に与えられなければなりません。例えば、「始業前に1時間の休憩を取ってから出社して」あるいは「終業後に1時間休憩してから帰って」といった与え方は認められていません。仕事の合間に心身を休ませることが休憩の目的なので、労働時間途中に業務から解放される時間帯でなければ意味がないのです。
原則2. 全労働者に一斉に与えること
休憩時間は、原則として、その事業場で働くすべての労働者に対して一斉に与えられなければなりません。お昼休みになるとオフィスが一斉に静かになるのは、この原則に基づいているからです。ただし、これには例外があります。運送業や飲食業、商業など、一斉に休憩を取ることが難しい特定の業種では、この限りではありません。また、事業所内で労使協定を締結した場合も、交代で休憩を取ることが認められています。
原則3. 休憩時間は自由に利用できること
休憩時間は、労働から完全に解放されている時間でなければなりません。つまり、その時間をどのように使おうと労働者の自由です。外出する、仮眠をとる、趣味に時間を使うなど、何をしても問題ありません。もし休憩時間中に電話番や来客対応を指示されている場合、それは実質的に会社の指揮命令下に置かれているため、労働時間と見なされ、休憩時間には該当しません。その場合は、別途休憩時間を与え、その時間分の賃金を支払う必要があります。
10時間労働の休憩が法律通りに取れなかった場合の対処法
「法律で決まっているのは分かったけど、実際にはあまり休憩が取れていない…」そんな時は、決して一人で抱え込まず、適切な行動を起こすことが大切です。ここでは、具体的な対処法をステップごとに解説します。
1. まずは証拠を記録する
会社に相談したり、専門機関に申し出たりする際には、客観的な証拠が非常に重要になります。休憩が取れなかった日の記録を具体的に残しておきましょう。
- タイムカードや勤怠システムのコピー・写真
- 業務日報や手帳へのメモ(始業・終業時刻、休憩が取れなかった状況など)
- 休憩時間中に行った業務内容を示すメールの送受信履歴やPCのログ
これらの記録は、いざという時にあなたを守る強力な武器になります。
2. 信頼できる上司や人事部に相談する
直属の上司が話を聞いてくれる人であれば、まずは現状を相談してみましょう。部署全体の慣習などが原因で、上司が問題を把握していないケースもあります。もし上司への相談が難しい場合は、人事部や労務部に直接相談するのも一つの手です。会社のコンプライアンス窓口が設置されていれば、そこへ匿名で相談することも可能です。
3. 外部の専門機関へ相談する
社内での解決が難しい場合は、ためらわずに外部の専門機関を頼りましょう。これらの機関は労働者のための相談窓口であり、無料で相談に乗ってくれるケースがほとんどです。
- 労働基準監督署(総合労働相談コーナー)
全国に設置されており、労働問題に関するあらゆる相談に対応してくれます。会社に対する調査を実施した上で、指導や是正勧告を行ってくれることもあります。 - 労働組合
社内に労働組合があれば、組合を通じて会社と交渉してもらうことができます。社内にない場合でも、一人からでも加入できる合同労組(ユニオン)があります。 - 弁護士
未払い賃金の請求などを考えている場合は、法律の専門家である弁護士に相談するのが最も確実です。法テラスなどを利用すれば、無料の法律相談が受けられる場合もあります。
10時間労働の休憩に関してよくある疑問
ここでは、10時間労働の休憩に関して、多くの方が抱く疑問についてQ&A形式で分かりやすくお答えします。
休憩時間が労働時間に含まれることはある?
いいえ、原則として休憩時間は労働時間には含まれません。そのため、休憩時間に対して賃金は発生しません。例えば、「9時〜20時(休憩1時間)」の契約の場合、拘束時間は11時間ですが、休憩の1時間を除いた実働10時間に対して給与が支払われます。もし休憩時間中に業務を命じられた場合は、その時間は労働時間となり、賃金支払いの対象となります。
「10時間勤務がきつい…」これって普通?
「きつい」と感じるのは決して甘えではありません。日本の法定労働時間は原則1日8時間であり、10時間労働は2時間の法定外残業を含んでいます。拘束時間が長くなるため、プライベートな時間が削られ、疲労も蓄積しやすくなります。特に、休憩が法定通りの1時間のみだと、十分にリフレッシュできず、精神的な負担を感じやすいでしょう。質の高い休憩を取る工夫や、働き方そのものを見直すことも時には必要です。
12時間労働の場合、休憩は何時間必要?
労働基準法上は、10時間労働と同じく最低1時間です。法律では、8時間を超える労働に対して一律で1時間以上の休憩を義務付けているため、労働時間が9時間であっても12時間であっても、法律上の最低ラインは変わりません。しかし、12時間もの長時間労働に対して休憩が1時間しか無いのは、心身への負担が大きいと言えるでしょう。安全配慮の観点から、企業が自主的により長い休憩時間を設けることが望ましいです。
10時間労働の正しい知識で、自分の権利を守ろう
今回は、10時間労働の休憩時間をテーマに、法律のルールから具体的な対処法までを解説しました。
長時間労働は、知らず知らずのうちに心と体に大きな負担をかけます。その中で、休憩時間は唯一、仕事から解放され、自分自身をリセットできる貴重な時間です。この記事で得た知識を元に、ご自身の労働環境が適切かどうかを今一度確認してみてください。そして、もし問題があると感じたら、どうか一人で悩まず、勇気を出して行動を起こしてください。あなたの健康と権利が守られることを心から願っています。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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