• 更新日 : 2025年7月7日

育休中いくらもらえる?給付金の計算方法や金額を子どもの人数別に解説

「赤ちゃんとの新しい生活は、喜びと同時に「お金」に対する不安を感じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。特に「育休中って、一体いくらもらえるの?」という疑問は、多くの方が抱く共通の悩みかもしれません。

この疑問を解消するため、この記事では育児休業給付金の計算方法を、お子様の人数別に分かりやすく解説します。

育休中にもらえるお金「育児休業給付金」

育児休業(以下、育休)を取得する際に、多くの方が気になるのが「お金」の問題でしょう。育休期間中の生活を支える重要な柱となるのが「育児休業給付金」です。ここでは、その基本的な仕組みについて解説します。

制度の目的

育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が育児休業を取得する際に受け取れる給付金です。主な目的は、育休期間中の収入を保障し、経済的な不安を軽減することで、育休の取得を促進することにあります。これにより、労働者が安心して子育てに専念できる環境を整備し、仕事と育児の両立を社会全体で支援することを目指しています。

誰がもらえるの?

育児休業給付金を受給するには、いくつかの条件を満たす必要があります。主な条件は以下の通りです。

  1. 雇用保険の被保険者であること
    原則として1歳未満の子を養育するために育休を取得した方が対象です。
  2. 被保険者期間の要件
    育休開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(または就業時間80時間以上の月)が12ヶ月以上必要です。
  3. 賃金支払いの状況
    育休期間中に、休業開始前の賃金の8割以上の賃金が会社から支払われていないこと。
  4. 就業日数・時間の制限
    育休期間中の1支給単位期間(通常1ヶ月)における就業日数が10日以下(10日を超える場合は就業時間が80時間以下)であること。
  5. 有期契約労働者の場合
    「子が1歳6ヶ月に達する日までの間に、労働契約が満了し、更新されないことが明らかでないこと」のみが条件です。以前の「同一事業主の下で1年以上継続雇用」という要件は撤廃されました。

いつまで、いくらもらえる?

育児休業給付金がいつまで、どのくらいの割合で支給されるかは、家計を計画する上で非常に重要です。

支給期間

原則として、子どもが1歳の誕生日の前々日まで支給されます。保育所に入れないなどの特別な理由がある場合は、1歳6ヶ月、さらに最長で2歳まで延長可能です。「パパ・ママ育休プラス」制度を利用し、両親ともに育休を取得する場合は、子どもが1歳2ヶ月まで支給期間が延長されます。

給付率

育休開始から180日間は「休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%」、181日目以降は50%で計算されます。

育児休業給付金の給付率と期間の概要

期間給付率備考
育休開始~180日67%
育休開始181日目~子が1歳に達する日まで50%
パパ・ママ育休プラス利用時67%
/50%
子が1歳2ヶ月に達する日まで(給付率は上記期間に準ずる)
延長時(子が1歳6ヶ月または2歳に達する日まで)50%保育所に入れない等の特別な理由がある場合

育児休業給付金について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。

【子ども人数別】育児休業給付金の計算方法

育児休業給付金の受給額は、お子様の人数や状況によって注意すべき点が異なります。ここでは、1人目、2人目、3人目以降の場合に分けて、計算方法と特に気をつけるべきポイントを解説します。

1人目の育休の場合

1人目のお子様の育休の場合、育児休業給付金の計算は以下のようになります。

計算式

支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率

給付率:育休開始から180日間は67%、181日目以降は50%。

休業開始時賃金日額

原則として、育休開始前6ヶ月間の賃金総額(賞与等除く)を180で割った額。

支給日数

原則として1支給単位期間あたり30日。

具体例

育休開始前6ヶ月間の平均賃金月額が30万円だった場合:

休業開始時賃金日額 = 300,000円 × 6ヶ月 ÷ 180日 = 10,000円

当初180日間の1ヶ月あたりの支給額目安:

10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円

181日目以降の1ヶ月あたりの支給額目安:

10,000円 × 30日 × 50% = 150,000円

支給額の上限・下限

「休業開始時賃金日額」には上限額と下限額があり、毎年8月1日に改定されます。令和6年8月1日から令和7年7月31日までの賃金日額の上限は15,690円、下限は2,869円です。 このため、賃金が非常に高い方でも支給額には上限が設定されます。例えば、賃金日額が15,690円の場合、30日あたりの支給上限額は、67%の期間で約31万5千円、50%の期間で約23万5千円となります。

月収別・育児休業給付金支給額シミュレーション(目安)

(注:実際の支給額は個々の状況や最新の料率により異なります。)

休業開始時賃金月額(※)育休開始~180日の支給額目安 (月額)育休開始181日目~の支給額目安 (月額)
20万円約13.4万円約10万円
30万円約20.1万円約15万円
40万円約26.8万円約20万円
50万円約31.5万円(上限考慮)約23.5万円(上限考慮)
60万円約31.5万円(上限)約23.5万円(上限)

※賞与等を含まない、育休開始前6ヶ月の平均賃金

2人目の育休の場合

1人目の育休後、間を置かずに2人目の育休を取得する場合、「被保険者期間」の要件(育休開始日前2年間に賃金支払基礎日数11日以上の月が12ヶ月以上)を満たせないケースがあります。1人目の育休期間は基本的に就労期間とみなされないためです。

「4年遡りルール」とは?

続けて育休を取得する場合の課題に対応するため、「4年遡りルール」という特例があります。育休開始日前の2年間に、第1子の産休・育休や本人の疾病等で30日以上賃金を受けられなかった期間がある場合、その日数を本来の2年間の算定対象期間に加算し、最大で過去4年間まで遡って被保険者期間を計算できます。

3人目以降の育休の場合

3人目以降の育休を連続して取得しようとする場合、4年遡りルールを適用しても、1人目、2人目の育休期間が長いと、実際の就労期間が不足し、支給要件を満たせない可能性が高まります。 この場合、2人目の育休終了後に一度復帰し、少なくとも1年以上就労して新たに被保険者期間の要件を満たすことが現実的な対策となることが多いです。また、復職の意思がない場合は支給対象外です。早めに勤務先やハローワークに相談することが重要です。

【2025年4月改正】育休手当はどう変わる?新しい給付金制度

2025年4月1日より、育休を取得する方への経済的支援を強化する新しい給付金制度が施行されます。

出生後休業支援給付金:夫婦で育休取得なら手取り増も

「出生後休業支援給付金」は、子の出生直後の一定期間内に、両親がともにそれぞれ14日以上の育休(産後パパ育休含む)を取得した場合、既存の育休給付金に上乗せして支給されます。 休業開始時賃金日額の13%相当額が最大28日間支給され、既存の育休給付金(給付率67%)と合わせると実質80%となり、非課税社会保険料免除のため「手取りで10割相当」と試算されています。

育児時短就業給付金:時短勤務中の収入をサポート

同じく2025年4月1日から「育児時短就業給付金」が創設されます。2歳未満の子を養育するために時短勤務し、賃金が低下した場合、その低下した賃金の10%相当額が支給されます(時短前の賃金を超えない範囲)。育休復帰時の収入減の不安を和らげることを目指しています。

育休関連給付金比較表(2025年4月~)

給付金の種類主な対象者主な支給要件(例)給付内容(例)主な期間
育児休業給付金1歳未満の子を養育する被保険者育休開始前2年に被保険者期間12ヶ月以上等休業開始時賃金日額×支給日数×67%(当初180日)、以後50%子が1歳まで(延長あり)
出生時育児休業給付金子の出生後8週以内に4週間まで休業する父親等同上、産後パパ育休取得休業開始時賃金日額×休業日数×67%最大28日間
出生後休業支援給付金両親ともに14日以上の育休取得(出生直後等)育休給付金等の受給者、夫婦で所定期間の育休取得等既存給付に加えて賃金日額の13%上乗せ(合わせて80%、手取り10割相当)最大28日間
育児時短就業給付金2歳未満の子を養育するため時短勤務する被保険者時短勤務により賃金低下、育休からの継続または被保険者期間12ヶ月以上(または80時間以上)等低下した賃金の10%相当子が2歳になるまで(条件あり)

産後パパ育休(出生時育児休業給付金)とは

父親の育児参加を促す制度として「産後パパ育休(出生時育児休業)」と、それに伴う「出生時育児休業給付金」があります。

「産後パパ育休」は、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日間)まで父親などが取得できる休業制度で、2回に分割取得も可能です。期間中は「出生時育児休業給付金」が支給され、額は原則「休業開始時賃金日額 × 休業日数(上限28日) × 67%」です。 母親の産後の大変な時期に父親がサポートでき、通常の育休とは別なので、産後パパ育休後に改めて通常の育休も取得可能です。労使協定があれば、休業中に一定範囲で就労することもできます。

産後パパ育休について詳しく知りたい方は、こちらの記事も併せてご覧ください。

育休中の「お金」に関するQ&A

育休中のお金に関するよくある質問と回答をまとめました。

育休中に働いても給付金はもらえる?条件は?

育休中に一時的に就労しても、一定条件を満たせば給付金は受給可能です。

  • 就労日数・時間の条件
    1支給単位期間の就労日数が10日以下(10日を超える場合は就労時間が80時間以下)であること。
  • 賃金が支払われた場合の調整
    就労して賃金が支払われた場合、その額に応じて給付金が減額・不支給になることがあります。

    • 支払われた賃金が「休業開始時賃金月額の13%(給付率50%期間は30%)以下」なら満額支給。
    • 「13%(30%)超~80%未満」なら減額支給。
    • 「80%以上」なら不支給。
    • 就労日数・時間が上記条件を超えた場合も不支給。

育休中の就労ルールは複雑なため、事前に勤務先やハローワークに確認が必要です。

育休中の就労と給付金への影響

就労条件(1支給単位期間あたり)支給される給付金
就労日数10日以下(10日を超える場合は就労時間80時間以下) かつ 支払われた賃金が休業開始時賃金月額の13%(給付率50%期間は30%)以下満額支給
就労日数10日以下(10日を超える場合は就労時間80時間以下) かつ 支払われた賃金が休業開始時賃金月額の13%(30%)超~80%未満減額支給(原則:休業開始時賃金月額×80% - 支払われた賃金額)
就労日数10日以下(10日を超える場合は就労時間80時間以下) かつ 支払われた賃金が休業開始時賃金月額の80%以上不支給
就労日数が10日超 かつ 就労時間が80時間超不支給

社会保険料や税金(所得税・住民税)はどうなるの?

育休期間中は経済的負担を軽減する措置があります。

  • 育児休業給付金と税金
    育児休業給付金は非課税所得のため、所得税はかからず、翌年度の住民税算定基礎所得にも含まれません。
  • 社会保険料の免除
    健康保険料・厚生年金保険料が被保険者本人・事業主負担分ともに免除されます(要手続き)。2022年10月から免除要件が改正され、月途中開始・終了の育休や賞与にかかる保険料の取り扱いも変更されています。
  • 住民税の支払い
    住民税は前年の所得に対して課税されるため、育休中でも前年に所得があれば支払い義務が生じます。
  • 配偶者控除
    育休中の所得が一定額以下の場合、配偶者が配偶者控除等を受けられることがあります。

これらの措置により、育休給付金の額面上の給付率よりも実質的な手取り額の割合は高くなる傾向があります。

申請手続きと振込までの期間は?

育休給付金の申請は原則として勤務先の事業主を通じて、事業所管轄のハローワークに行います。

申請のタイミング

初回申請は育休開始から4ヶ月を経過する月の末日までなど期限があります。2回目以降は原則2ヶ月に一度申請が必要です。

振込までの期間

ハローワークで支給決定後、通常約1週間程度で振り込まれます。ただし初回は審査に時間がかかり、母親の場合、出産日から4~5ヶ月後になるのが一般的です。

詳細は勤務先の人事担当者に確認しましょう。

育休中にもらえるお金について、事前に確認を行おう

育児休業給付金は、育休期間中の貴重な収入源であり、安心して子育てに専念するための重要な制度です。給付額の計算方法、支給期間、お子様の人数に応じた注意点などを正しく理解し、計画的に活用することが大切です。

育休中の就労の可否や条件、社会保険料の免除、税金の取り扱いなど、お金に関する疑問は多岐にわたります。これらの情報を事前にしっかりと把握しておくことが、育休期間中の経済的な不安を軽減し、安心して育児に臨むための第一歩となります。

個別の状況や詳細については、必ず勤務先の人事労務担当者や管轄のハローワーク、あるいは社会保険労務士などの専門家にご相談ください。


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