• 更新日 : 2025年3月3日

労働者名簿をエクセルで作成するには?無料テンプレートや取扱いの注意点を解説

労働者名簿をエクセルで作成するとき、法的要件を満たす内容にしなければならないことに加え、適切に管理することが求められます。本記事では、労働者名簿をエクセルで管理する際のポイントや必須記載事項、取扱いにあたっての注意点などを詳しく解説します。

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労働者名簿は必ず作成すべき?

労働者名簿とは、事業主が雇用する労働者に関する基本的な情報を記載する名簿を指します。労働者名簿は労働基準法および労働基準法施行規則で作成義務が定められており、事業主は雇用するすべての労働者の名簿を用意しなければなりません。

正社員に限らずアルバイトやパートタイマーなどの非正規雇用者、期間契約社員(日雇い労働者を除く)であっても、一定期間を超えて雇用される場合は労働者名簿の作成対象になります。

また、単に作成を行うだけでなく、法律に則った記載項目をきちんと網羅し、適切に保存しなければなりません。違反した場合には、行政指導や罰則が科される可能性があります。

労働者名簿と社員名簿・従業員名簿の違い

一般的に「社員名簿」「従業員名簿」と呼ばれるものと、「労働者名簿」とは法律上の位置付けが異なります。

労働者名簿

労働者名簿は、労働基準法施行規則によって明確に作成が義務付けられた法定帳簿です。必須項目が定められているため、これを満たしていない場合は「作成義務違反」とみなされるおそれがあります。

社員名簿・従業員名簿

企業が独自に作成する従業員情報の一覧表であり、業務上必要な情報(部署・役職・連絡先など)を取りまとめたものです。法的拘束力はありませんが、社内管理に役立つ名簿として運用されることが多い傾向にあります。

つまり、企業の独自フォーマットで管理している「社員名簿・従業員名簿」が必ずしも「労働者名簿」と同義ではない点に注意が必要です。もし社員名簿や従業員名簿を既に運用している場合は、その記載内容が法定帳簿としての労働者名簿を満たしているか確認し、不足があれば追加・修正を行うようにしましょう。

社内で社員名簿や従業員名簿という名称で運用されていても、労働者名簿としての法定要件を満たしていれば労働者名簿と同じく法定帳簿としての扱いになります。

厚生労働省の労働者名簿との違い

厚生労働省のホームページなどで示されている「労働者名簿」の様式と実務上の記載形式は、基本的に同じ必須項目を含むものであれば問題ありません。役所が提示するひな形は、企業規模や業種に関わらず使える最もシンプルなフォーマットを示す目的で公開されています。

一方で、実際に人事労務の現場で運用するとなると、厚生労働省のひな形に加えて社内独自の情報(社員番号、部署、社内資格など)を反映させたい場合も多いでしょう。そのため、厚生労働省が公開している例はあくまで「必要最低限のテンプレート」として参考にしつつ、自社の事情や運用フローに合わせて拡張していくことが求められます。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索
参考:労働基準法施行規則| e-Gov 法令検索

労働者名簿(エクセル)のひな形・テンプレート

マネーフォワード クラウド給与では、無料でご利用いただける社労士監修の労働者名簿(エクセル)、労働者名簿一覧をご用意しています。

いずれも基本的な内容になっているため、必要に応じてカスタマイズしてご利用ください。以下のURLからダウンロードできます。

労働者名簿(エクセル)の作成方法

労働者名簿をエクセルで作成する一般的な流れは、以下のとおりです。

  1. フォーマット(ひな形)を用意する
  2. 必須項目を記入する
  3. 保管・バックアップ体制の整備
  4. 定期的な更新・レビュー

必要項目は、労働基準法施行規則で定められた項目を正確に入力しなければなりません。また、エクセルファイルの保管場所やアクセス権限を決定し、定期的にバックアップを取得する必要もあります。

新しい労働者が入社した場合や既存労働者の情報に変更があった場合は遅延なく反映しましょう。また、法改正などで記載事項に変更が発生していないか適宜確認することも大切です。

労働者名簿の必須項目

労働基準法第107条、労働基準法施行規則第53条に基づき、労働者名簿に記載が義務付けられているおもな項目は以下のとおりです。

  1. 氏名
  2. 性別
  3. 生年月日
  4. 住所
  5. 履歴(採用日、異動日、退職日など)
  6. 従事する業務の種類
  7. 雇入年月日
  8. 退職年月日・退職事由(解雇の場合はその事由)
  9. 死亡年月日・死亡事由

これらは最低限記載しなくてはならない項目です。上記を欠いている場合は、法定帳簿としての要件を満たしていないと判断される可能性がありますので注意しましょう。

その他必要項目

上記の法定必須項目以外にも、実務上は次のような情報を付加しておくと管理上便利です。

  • 緊急連絡先
  • 社会保険関連の情報
  • 取得資格・免許

会社として一覧で見たい情報、あるいは後々参照頻度が高い情報は、労働者名簿にまとめておくと日々の業務効率が格段に向上します。たとえば「マクロを用いて労働者名簿と給与計算データを連携する」「他の人事システムへの取り込みフォーマットとして利用する」といった応用も考えられるでしょう。

労働者名簿に家族構成は必要か

労働者名簿において、家族構成は法定必須項目ではありません。家族手当や扶養控除など税務・社会保険手続き上必要な情報がある場合、別途「扶養控除等(異動)申告書」や「健康保険被扶養者異動届」などで管理するのが一般的です。

ただし、家族構成や緊急連絡先をあわせて確認したい場合、労働者名簿の拡張項目として「家族情報(続柄・氏名・連絡先など)」を設ける企業もあります。

一方で、家族構成などプライバシー色の強い情報は、取扱いに特に注意しなくてはなりません。家族構成を労働者名簿に記載する項目とする場合、従業員間で共有すべき範囲を限定したり、暗号化やパスワード保護を施したりするなど、情報流出リスクを最小化する工夫が必要です。

エクセルで労働者名簿を作成・取扱い時の注意点

エクセルで労働者名簿を作成・管理する際には、以下の点に注意しましょう。

  • 事業場ごとに作成する
  • 労働者名簿の保存期間は5年
  • 記載に変更がある場合は迅速に対応する
  • プライバシーに配慮する
  • 労働者名簿のバックアップを取る

それぞれ、詳しく解説します。

事業場ごとに作成する

労働基準法施行規則では「事業場ごと」に作成することが定められています。そのため、本社・支店・工場など拠点が複数ある場合は、それぞれの事業場単位で労働者名簿を整備しなければなりません。

管理部門が一本化されている企業では、本社が一括して作成しているケースもありますが、その場合でも「事業場ごとに区分できるように整理する」必要があります。エクセルで一覧をまとめる際は、フィルタ機能やシート分割などを活用して、事業場ごとにすぐ参照できるように工夫するとよいでしょう。

労働者名簿の保存期間は5年

従来労働者帳簿の保存期間は3年とされていましたが、2020年4月の労働基準法の改正によって5年に延長されました。労働者が退職や解雇された場合、その日から起算して5年間は労働者名簿を保存しなければなりません(労働基準法 第109条)。ただし経過措置として、当分の間は3年が適用されます。

もし保存期間内に廃棄してしまったり、紛失したりすると法令違反となる可能性があります。

エクセルファイルで管理している場合、うっかり削除や上書きでデータを失ってしまう危険があるため、必ずバックアップを取り、複数の安全な場所(社内サーバーとクラウドなど)に保管しておくことが重要です。

記載に変更がある場合は迅速に対応する

労働者名簿は、作成して終わり、というものではありません。従業員の異動や部署変更、氏名変更(結婚・離婚など)、退職など、情報に変更があれば、速やかに労働者名簿を更新する義務があります。特に退職日の記載を失念していると、あとで離職証明書や助成金の手続きなどに影響が出るケースがあるため、こまめな更新が大切です。

エクセルで管理していると、担当者が変更時期を見逃す、あるいは反映漏れが起こる可能性があるため、ワークフローを明確にし、変更手続きのトリガーを社内で周知しておくとよいでしょう。たとえば「退職届を受領した際にまず労働者名簿を修正する」といった手順をマニュアル化しておけば、更新漏れを防ぎやすくなります。

プライバシーに配慮する

労働者名簿には個人情報が多く含まれるため、社内外問わず漏洩リスクを避けるための措置が必要です。昨今は個人情報保護法の改正により、企業の情報管理体制がより厳しく問われるようになっています。

そのため、アクセス権限を設定して担当者以外は閲覧できないようにする、エクセルファイルにパスワードを設定し、外部流出リスクを低減するなどの対策が必要です。紙で印刷した名簿を取り扱う場合は、施錠できるキャビネットに保管し、不要になったコピーは適切にシュレッダー処理するようにしましょう。

労働者名簿のバックアップを取る

エクセルによる管理はカスタマイズがしやすく、低コストというメリットがある一方、データ損失リスクがある点はデメリットだといえます。

誤ってファイルを上書き・削除してしまう、システムトラブルなどでファイルが破損する、サイバー攻撃などのリスクがあるため、定期的なバックアップとバージョン管理機能のついたクラウドストレージの活用などで対策しましょう。

自社のセキュリティポリシーに則りつつ、可能であれば複数の異なる方法でバックアップを取り、万が一のトラブル時に迅速に復旧できる体制を整えておくことをおすすめします。

参考:労働基準法 | e-Gov 法令検索
参考:労働基準法施行規則| e-Gov 法令検索
参考:厚生労働省労働基準局|改正労働法に関するQ&A

労働者名簿の作成や保存を怠った場合のペナルティ

前述のとおり、労働者名簿は法定帳簿であり、作成・保存義務を怠ると労働基準法違反となる可能性があります。

行政指導だけで済むケースもありますが、指導に従わないなど悪質とみなされれば労働基準法第120条に基づき、30万円以下の罰金が科されることがあるため、注意しましょう。

また、労働者名簿を整備していないと、従業員が労働争議を起こした際や助成金の申請などで必要書類を提出する際に大きな不利益を被る可能性があります。最悪の場合は裁判などで不利に扱われるケースも想定されるため、コンプライアンス上、労働者名簿の作成・保存は企業にとって絶対に軽視できない事項といえます。

エクセル以外で効率よく労働者名簿を管理する方法

エクセルは導入コストが低く、自社に合わせたカスタマイズの自由度が高い反面、データの重複入力や管理負荷が大きくなりやすいという欠点もあります。マクロを活用すればある程度の自動化は可能ですが、大規模企業や急成長中の企業では運用面で限界が生じるケースも少なくありません。

そこで近年は、人事労務管理システム(HRシステム)やクラウドサービスを導入し、労働者名簿相当のデータを一元的に管理する方法が主流になりつつあります。

特に従業員数が増えている企業や、複数拠点を管理する必要がある企業にとっては、クラウドシステムを導入することで長期的な業務効率化が期待できるでしょう。ただし、システム導入にはコストが発生するため、企業規模や予算、運用体制を考慮して検討する必要があります。

小規模事業所であれば、エクセルを中心としながらマクロでの自動化や、定型帳票のテンプレート化などを組み合わせて運用するのも十分に有効な手段です。

労働者名簿は適切な方法で作成・管理しよう

労働者名簿は、労働基準法および労働基準法施行規則で作成義務が課されている重要な法定帳簿です。不備があったり、作成していなかったりすると法令違反になるため、エクセルなどを活用して正しく作成し、適切に管理する必要があります。

最新の法規制や厚生労働省の情報をキャッチアップしつつ、自社に合った労働者名簿の運用体制を整備しましょう。


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