• 更新日 : 2024年10月3日

複式簿記とは?メリットデメリットや単式簿記との違いを解説

複式簿記とは、すべての取引を仕訳して記録・集計する記帳方法です。単式簿記は収入と支出のみを記録しますが、複式簿記は資産および負債の増減も含めて二重に記帳します。

本記事では、複式簿記の概要や必要になる場面、青色申告との関連性、書き方を解説します。複式簿記への理解を深めて、経理業務に活かしてください。

複式簿記とは

複式簿記とは、取引を原因と結果の両面から記録する方法です。資産増加および負債の減少を表す「借方」を左側に記載して、資産減少および負債の増加を示す「貸方」を右側に記載します。

複式簿記により、お金の流れが明確になるため、企業の財務状況を的確に把握でき、経営判断が正確になります。また、貸借対照表などの財務諸表(1年間の企業の財務状況を報告する決算書類)の作成も可能です。

ただし、複式簿記の記帳は複雑で簿記の専門知識が必要なため、知識のある方の運用が求められます。その分、企業の正確な経営分析には必要な手法と言えるでしょう。

複式簿記と単式簿記の違い

簿記には単式簿記と複式簿記の2つの方法があります。

単式簿記とは、収入と支出のみを記録する簡易的な方法です。家計簿のようなイメージで、お金の出入りをシンプルに記録しますが、詳細な内訳を把握するのが難しい傾向にあります。例えば「どの項目に対してどれだけの支出があったのか」「収入の内訳はどうなっているのか」など、具体的な情報を把握するのが困難です。

一方、複式簿記は、収入と支出だけでなく、資産および負債の増減も含めて二重に記録する方法です。すべての取引が原因と結果の両面から記録されるため、資金の動きや財務状況を正確に把握できます。

特に、大規模なビジネスや精密な財務情報が求められる場面で複式簿記が役立つでしょう。経営戦略の策定や財務分析において欠かせない手法です。

複式簿記が必要になる場面

複式簿記が必要になる場面は、確定申告時に青色申告を選択した場合です。単式簿記で帳簿をつけた場合、青色申告特別控除において10万円の控除しか受けられなくなります。一方で、複式簿記であれば最大65万円の特別控除を受けられます。

そのため、複式簿記による帳簿の記録が望ましいでしょう。本項では、複式簿記が必要になる場面について詳しく説明します。

青色申告と複式簿記

青色申告とは、定められた帳簿に記帳し、その記録に基づき確定申告を行う制度です。仕訳帳現金出納帳などの帳簿を要件に従い、作成・保管することで、所得税の計算時に優遇措置を受けられます。

青色申告における簿記方法として、単式簿記と複式簿記の2通りがあります。単式簿記の場合の特別控除額は最大で10万円までです。

一方で、複式簿記で記帳を行い貸借対照表を提出すると、最大65万円の特別控除を受けられます。

青色申告を選択する際に複式簿記が推奨される理由は、資産や負債、純資産の変動を詳細に把握できるためです。さらに、収入と支出の全体像を正確に捉えられて、適切な税額を計算できます。

参考:国税庁 記帳や帳簿等保存・青色申告

複式簿記の書き方

複式簿記は、取引を借方と貸方の両面に分けて記録するため、単式簿記とは違った方法で仕訳を行う必要があります。本項では、複式簿記の書き方をわかりやすく解説するため、参考にしてください。

仕訳の例として、7万円のノートパソコンを売り上げて、代金を現金で受け取った場合を想定します。その際は「売上の増加」と「現金の増加」を記録しましょう。現金は借方で、売上は貸方として記入してください。

借方貸方摘要
現金70,000円売上70,000円ノートパソコン

一方で、7万円のノートパソコンを売り上げて、銀行振り込みされる場合「売上の増加」と「預金の増加」を記録することが必要です。預金は借方で、売上は貸方で記入しましょう。

借方貸方摘要
預金70,000円売上70,000円ノートパソコン

複式簿記で記録する際には、記載する場所や内容を間違えないようにしましょう。

複式簿記のメリット

複式簿記は、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を適切に作成できる点がメリットです。入出金の記録だけでなく、理由・原因が記録され、勘定科目が分類されているため、財務諸表を容易に作成できます。

また、勘定科目ごとに入出金の動きや背景を記録するため、企業のお金の流れを正確に把握できるのも特徴です。

本項では、複式簿記の2つのメリットを解説します。

財務諸表を適切に作成できる

複式簿記は、財務諸表を適切に作成できる点がメリットです。以下の5つの主要な勘定科目に沿って、貸借対照表や損益計算書などの財務諸表を作成できます。

  • 資産
  • 負債
  • 純資産
  • 収益
  • 費用

入出金の記録や理由・原因も記録され、勘定科目も分類されているため、仕訳の集計のみで財務諸表を作成できます。

財政状態を的確に把握できる財務諸表を作成できるため、複式簿記は重宝される方法です。

お金の流れを把握できる

複式簿記を利用すると、お金の流れを正確に読み取れるようになります。勘定科目ごとにお金の入出金の動きや背景を記録し、取引の詳細や資金の増減を詳細に追跡できるためです。

例えば、同じ収入でも収益によるものなのか、借入金によるものなのかをわけて確認できるため、財務状況を把握しやすくなるでしょう。

そのほかにも、現金や銀行預金でのお金のやり取りを記帳するため「どのような形態で資産を保有しているのか」もわかるようになります。

複式簿記のデメリット

複式簿記は、一定の専門知識が求められる点がデメリットです。取引の流れを原因と結果の側面から記帳するため、簿記の知識が求められます。

そのほかにも、経費の支払時に、適切な勘定科目に分ける手間も発生します。そのため、日頃から記帳しておくことが必要です。

本項では、複式簿記の2つのデメリットについて解説します。

一定の簿記知識が求められる

複式簿記は、仕組みがやや複雑であり、記帳の際に一定の簿記知識が求められます。取引の流れを原因と結果の側面で記帳したり、複数の勘定科目に分けたりするなどの作業が発生するためです。複式簿記特有の考え方に慣れるまで時間がかかる方もいるでしょう。

ただし、複式簿記の考え方や仕組みは、基本を理解すれば習得できます。日商簿記3級を取得して、業務に活かせるようにしましょう。

手間と時間がかかる

複式簿記は仕訳の手間がかかる点がデメリットです。

例えば、経費を支払った場合、交際費会議費通信費などを区別して、適切な勘定科目を記入する必要があります。さらに、支払方法に関しても、現金やクレジットカード、電子マネーなどに分けて記入することが求められます。

取引ごとに詳細な記録を残す必要があるため、手続きが煩雑に感じられる場合もあるでしょう。

単式簿記よりも、手間や時間がかかる作業が多いため、日頃から仕訳をしておくことが重要です。

複式簿記と貸借対照表との関係

貸借対照表とは、企業が所有する資産の状態を示す書類です。単式簿記では貸借対照表を作成できませんが、複式簿記により作成可能です。資産と負債、純資産の3つの項目に分けて記載されます。

資産は企業が所有する物や権利を表し、負債は借入金や支払義務を示します。純資産は資産から負債を差し引いたもので、企業の自己資本を指すものです。

複式簿記を用いて正確に記帳を行った後に、貸借対照表の作成が可能です。企業の財政状態の把握にもつながるため、ミスなく作成しましょう。

複式簿記の理解を深めて経理業務に役立てよう

複式簿記とは、取引において、お金の入出金と原因の2つの側面を記録する手法です。青色申告をしたり、取引を明確に記録したりする際に求められます。

複式簿記により、貸借対照表などの財務諸表の作成が可能になったり、企業のお金の流れを把握できたりするメリットがあります。

複式簿記を理解して、経理業務に活かしましょう。


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