- 更新日 : 2025年11月28日
【テンプレ&記入例あり】顛末書とは?書き方や始末書との違い、例文までわかりやすく解説
業務上のミスやトラブルが発生した際に提出を求められる「顛末書」。しかし、始末書との違いや具体的な書き方、提出することで人事評価にどう影響するのか、不安に思う方も多いのではないでしょうか。顛末書は、懲罰ではなく、起きた事象を客観的に報告し、会社全体で再発防止策を考えるための重要な資料です。この記事では、顛末書の目的から、ケース別の正しい書き方、テンプレート、そして経営者や担当者が知っておくべき注意点まで、網羅的に分かりやすく解説します。
目次
顛末書とは
顛末書は、業務上のミスやトラブル、不祥事などが起きた際に、その経緯の一部始終を会社や関係者に報告するための書類です。単なる報告書とは異なり、原因の分析や再発防止策まで含めて記載するのが一般的です。その目的や、混同されがちな「始末書」「理由書」との違いを正しく理解することが、適切な書類作成の第一歩となります。
顛末書の目的は客観的な事実報告
顛末書の最大の目的は、発生した事象の事実関係を正確に、かつ客観的に記録し報告することです。「顛末」という言葉が「事の最初から最後までのいきさつ」を意味するように、個人的な反省や謝罪よりも、何が起きたのかを第三者が見ても正確に理解できるようにまとめることが求められます。この報告をもとに、組織として原因を究明し、具体的な再発防止策を講じるための重要な資料となります。
始末書との違い
顛末書と始末書は、目的と性質が大きく異なります。顛末書が「客観的な事実報告」を目的とするのに対し、始末書は、重大な規律違反や会社の損害につながるミスを犯した本人が、「反省と謝罪の意」を示し、二度と繰り返さないことを誓約する書類です。そのため、始末書は懲戒処分の根拠となることがありますが、顛末書は原則として懲罰的な意味合いを持ちません。誰が書くかという点でも、本人以外の上司や責任者が書くこともある顛末書に対して、始末書は必ず当事者本人が書きます。
理由書との違い
理由書も顛末書と混同されやすい書類ですが、役割が異なります。理由書は、決められた業務を行えなかった場合や、遅刻・早退・欠勤などの際に、その「理由」を簡潔に説明するための書類です。例えば、「電車遅延のため、始業時刻に間に合いませんでした」といった報告がこれにあたります。顛末書のように、トラブルの経緯や原因分析、再発防止策までを詳細に記述することは通常ありません。比較的軽微な事象に対して用いられることが多いのが特徴です。
顛末書の書き方
顛末書の作成を指示されたとき、何から手をつけて良いか迷うかもしれません。しかし、基本的な構成とポイントを押さえれば、誰でも分かりやすく正確な顛末書を作成できます。ここでは、顛末書に盛り込むべき要素と、事実を明確に伝えるためのフレームワーク、そして作成時の注意点を解説します。
顛末書の基本的な構成
顛末書には、一般的に以下の項目を盛り込みます。まず「宛名」「提出日」「提出者(所属・氏名)」を明記し、件名は「〇〇に関する顛末書」のように、内容がひと目でわかるようにします。本文では、発生した日時や場所、経緯、原因、損害の状況、そして講じた対策と今後の再発防止策を具体的に記述します。最後に「以上」で締めくくるのが基本的な書式です。会社のフォーマットがあれば、それに従いましょう。
5W1Hで事実を明確にする
報告の核心となる本文を作成する際は、「5W1H」のフレームワークを意識すると、情報が整理され、客観的で分かりやすい文章になります。
- When(いつ): トラブルが発生した日時
- Where(どこで): 発生した場所
- Who(誰が): 関係者(担当者、顧客など)
- What(何を): 何が起きたか(事象)
- Why(なぜ): 発生した原因
- How(どのように): どのように対応し、今後どうするのか この6つの要素を漏れなく記述することで、報告書としての信頼性が高まります。
書く際の注意点
顛末書を作成する際は、いくつかの点に注意が必要です。まず重要なのは、個人的な憶測や感情的な表現を避け、客観的な事実のみを記載することです。文章は冗長にならないよう、結論から先に書く「PREP法」などを意識し、簡潔にまとめましょう。また、他者へ責任を転嫁するような表現は避け、事実に基づいた原因分析と、具体的で実行可能な再発防止策を示すことが求められます。提出前に、必ず上長などの第三者に内容を確認してもらうことも大切です。
顛末書の例文
顛末書の実際の例文・作成例を、社内用と社外用に分けてご紹介します。顛末書を作成する際に参考にしてください。
社内用の顛末書の一例
発生日時:〇年〇月〇日発生場所:社外〇〇にて発生
内容:〇〇の紛失
当事者:〇〇部〇〇課〇〇〇〇
状況:社外での使用時に紛失。取得者からの連絡により発覚
原因:本来持ち出し禁止である〇〇を、〇〇が外部に持ち出したため
損害:特になし
対応:確認後、ただちに〇〇課長に報告。総務部〇〇部長の承認のもと〇〇を無効化
今後の対策:
- 社外への持ち出しが禁止されている物品について、改めて周知徹底する
- 上記の物品を持ち出すリスクに関しても周知する
- 〇〇の保管ルールを徹底する
- 退勤時の保管場所への返却を確認するリストの作成、およびリストへの記入を義務化する
社外用の顛末書の一例
発生日時:〇年〇月〇日内容:仕様変更前での納品
当事者:〇〇部〇〇課〇〇〇〇
経緯:納品後、依頼内容が仕様に反映されていないことに気づいた先方からの連絡により、発覚
原因:担当者の確認不足
損害:商品〇個分〇〇万円分の損失
対応:ただちに仕様を実装した商品を製造、〇月〇日に先方へ送付
今後の対策:
- 納品前の複数名によるチェックの徹底
担当者コメント:この度は、私の不注意によりご迷惑をおかけしてしまい大変申し訳ございませんでした。今回のことは、確認不足と思い込みが原因です。今後はこのようなことがないよう、ご依頼内容の確認を徹底していく所存であります。
顛末書の提出を求められたら
上司から突然「顛末書を書いてほしい」と指示されたら、戸惑いや不安を感じるかもしれません。これは業務命令なのか、人事評価にどう響くのか、従業員として知っておくべきことがあります。ここでは、顛末書の提出を求められた際の法的な位置づけや、評価への影響、そして報告における誠実さの重要性について解説します。
提出は業務命令か
業務上で発生したミスやトラブルに関して、会社が事実関係を把握するために顛末書の提出を求めることは、一般的に正当な「業務命令」と解釈されます。したがって、従業員は原則としてこの命令に従う義務があります。正当な理由なく提出を拒否した場合、就業規則の違反とみなされ、懲戒処分の対象となる可能性もあります。ただし、私生活上の事柄や、業務とは無関係な内容の報告を強要することは、業務命令権の濫用にあたる場合があります。
人事評価への影響
「顛末書を書くと評価が下がる」と心配する方も多いですが、必ずしもそうとは限りません。顛末書は懲罰を目的とするものではないため、提出したこと自体が直接的にマイナス評価につながるわけではありません。むしろ、報告されたミスやトラブルの内容が評価の対象となります。重要なのは、ミスに対して誠実に向き合い、客観的な分析と具体的な再発防止策を示せるかどうかです。真摯な対応は、かえって信頼回復につながり、今後の評価に良い影響を与える可能性さえあります。
虚偽報告のリスク
顛末書を作成する際、自身の立場を悪くしたくないという思いから、事実を隠したり、内容を偽って報告したりすることは絶対にしてはいけません。虚偽の報告は、問題の根本的な解決を遠ざけるだけでなく、後から事実が発覚した場合に、より深刻な事態を招きます。会社の信用を大きく損ない、状況によっては就業規則違反として懲戒解雇などの重い処分を受ける可能性もあります。自身の保身よりも、組織全体のリスク管理を優先し、正直に報告することが重要です。
顛末書を求めるときの注意点
経営者や人事・労務担当者、管理職の立場として、従業員に顛末書の提出を指示する際には、適切な運用が求められます。目的を誤ると、パワハラと受け取られたり、組織の課題解決につながらなかったりする可能性があります。ここでは、顛末書を効果的に活用し、健全な組織運営に役立てるための注意点を解説します。
顛末書の提出命令とパワハラ
顛末書の提出を求めること自体は正当な業務命令ですが、その方法や目的によってはパワーハラスメントと見なされるリスクがあります。例えば、ミスをした従業員に対する見せしめや精神的な圧迫を目的として、何度も書き直しを命じたり、他の従業員の前で大声で叱責しながら提出を強要したりする行為は、パワハラに該当する可能性が高いです。あくまで目的は客観的な事実の把握と再発防止であることを忘れてはなりません。
提出された顛末書の活用法
顛末書は、提出させて終わりにするのではなく、組織の貴重な資産として活用することが重要です。提出された内容をもとに、なぜその問題が起きたのかを分析しましょう。原因が個人のスキル不足だけでなく、業務プロセスやマニュアルの不備、人員配置の問題など、組織的な課題に起因しているケースも少なくありません。顛末書を個人の責任追及の道具とせず、業務改善やリスク管理体制の見直しにつなげる視点が、経営者や管理者には求められます。
関連する法改正の動向
2022年4月から、パワーハラスメント防止措置が中小企業を含むすべての企業に義務化されました(改正労働施策総合推進法)。この法律は、職場におけるハラスメントを許さないという社会的な要請を背景としています。ハラスメント事案が発生した際、企業は事実関係を迅速かつ正確に調査する義務があり、その過程で顛末書が客観的な資料として活用されることがあります。このような背景からも、顛末書の取り扱いには一層の慎重さと公正さが求められていると言えるでしょう。
顛末書は組織の未来を守るための報告書
顛末書は、単なる報告書ではなく、起きてしまった問題を組織の貴重な学びに変えるための第一歩です。目的や始末書との違いを正しく理解し、客観的な事実を5W1Hに沿って記載することが重要です。従業員、管理者双方がその役割を認識し、適切に運用することで、再発防止策の立案や業務プロセスの改善が実現します。本記事で解説したポイントを押さえ、個人の責任追及で終わらせるのではなく、組織全体の課題解決と成長のために顛末書を有効活用していきましょう。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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