- 更新日 : 2023年3月24日
振替休日とは?労働基準法上の代休との違いも解説!
振替休日とは、あらかじめ休日と決められていた日に働き、代わりに他の労働日を休日とする制度です。労働日と休日を振り替える制度であるため、休日に働いても休日労働に該当せずに割増賃金も支払われません。
一方、代休の場合は休日労働として扱われ、割増賃金が支給されます。
この記事では、振替休日の概要と代休との違いを紹介しましょう。
目次
振替休日とは?
振替休日とは、労働基準法で定められた休日に働き、代わりに他の労働日の労働を免除する制度です。振替休暇と呼ばれる場合もあります。
そもそも、従業員を雇用している使用者は、労働者に対し少なくとも週に1回もしくは4週間に4回の休日を付与しなければなりません。労働基準法第35条に規定され、使用者が労働者に付与することが義務付けられた休日のことを「法定休日」といいます。
一方、週休2日制などを採用している場合、労使間合意に基づき就業規則等に規定された休日が「所定休日」です。法定休日に労働を課した場合は、労働基準法第37条に従い休日労働割増賃金を支払わなければなりません。
例えば、週休2日制の会社で土曜日を所定休日、日曜日を法定休日と定めていたとします。日曜日に労働した場合は、休日労働に該当するため割増賃金の支給対象です。しかし、土曜日に働いたとしても、労働基準法で定められた法定休日ではないため休日労働には該当せず、休日労働割増賃金も支払われません。ただし、土曜日に勤務することによって週40時間を超える場合は時間外割増(25%)の支払いは必要となります。
何曜日を法定休日とするかは業務形態等に応じて自由に定義することが許されていますが、法定休日と所定休日では意味が全く異なるということを覚えておきましょう。
労働基準法における休日の定義をおさらいしたところで、ここからは振替休日の定義と代休との違いを紹介します。
参考:労働基準法(第三十五条) | e-Gov法令検索
参考:労働基準法(第三十七条) | e-Gov法令検索
休みのタイミング
冒頭でも解説したとおり、振替休日とは法定休日に労働を課した代わりに、特定の労働日における労働を免除する制度です。例えば、法定休日として定められている日曜日に労働を課さなければならないことが事前に分かっている場合、水曜日の労働を免除し振替休日とするケースなどが該当します。
↓ 休日労働 | ↓ 振替休日 | 労働日 |
なお、振替休日を付与するタイミングについては労使間合意に基づき自由に設定することが可能です。例えば、日曜日に休日労働を課す場合、前週の水曜日に前もって振替休日を取得させることもできます。
↓ 振替休日 | ||||||
↓ 休日労働 |
振替休日は事前振替も可能だということを覚えておきましょう。なお、今回は週跨ぎで振替休日を付与するケースを紹介しましたが、月跨ぎでの付与も可能です。労使間で事前に協議し、双方都合の良い労働日を振替休日とすることが認められています。
給与計算の方法
振替休日は法定休日と労働日を振り替える制度であるため、法定休日に働いたとしても割増賃金は支払われません。労働基準法では、休日労働を課した場合に使用者は労働者に対して35%以上の割増賃金を支払わなければならないと規定されています。しかし、事前に労使間で協議し振替休日を付与した場合、休日労働の代償として特定の労働日における労働を免除したことになため、休日労働には該当せず割増賃金も支払われません。
なお、労働基準法には労働時間の上限についても規定されています。時間外労働ならびに休日労働も厳しく制限されていますが、振替休日を付与した場合は通常の労働日と全く同等の扱いです。休日労働割増賃金は支払われませんが、1日の上限8時間・週の上限40時間を超過した場合は時間外労働として25%以上の割増賃金が支払われます。週を跨いで振替休日を付与し、当該上限を超過した場合は時間外労働割増賃金を支払わなければならないため気をつけましょう。
振替休日と代休の違い
代休とは、労働基準法で定められた法定休日に労働を課した場合、その代償として以後の特定の労働日を休日とする制度です。休日労働の代わりに特定の労働日における労働を免除するという点では振替休日と同様ですが、振替休日は事前に労働日と休日を振り替えるのに対し、代休は事後に休日労働の代償として休日を付与するという点が異なります。
休日を振り替えるタイミングが事前か事後かという違いがあるため、混同しないように気をつけましょう。振替休日と代休では給与計算も異なるため、次章で詳しく解説します。
代休の場合は割増賃金の支給対象
急な業務量の増加やトラブル対応など、突発的な事由により休日労働を課した場合、使用者は労働者に対し35%以上の割増賃金を支払わなければなりません。事前に労使間で協議し代わりの休日を定める振替休日とは給与計算の方法が異なるため、注意が必要です。
なお、休日労働には労働基準法に定められた労働時間の上限規定も適用されます。具体的には、時間外労働を課す場合に労使間で締結し労働基準監督署に提出しなければならない、いわゆる「36(サブロク)協定」と、事前に予見できない突発的な事由により上限規定を超えて時間外労働を課す場合に追加で締結することが義務付けられている「特別条項」の範囲内でなければなりません。
特別条項付き36協定において「月100時間未満(法定休日労働含む)」かつ「2・3・4・5・6ヶ月の平均が80時間以内(法定休日労働含む)」と規定されているため、休日労働を課す場合は十分気をつけましょう。
36協定の限度時間
- 年360時間
- 月45時間
特別条項付き36協定の限度時間
- 年720時間以内(法定休日労働除く)
- 月100時間未満(法定休日労働含む)
- 2ヶ月ないし6ヶ月の平均が80時間以内(法定休日労働含む)
- 特別条項付き36協定を締結できるのは年6回まで
参考:36協定で定める時間外労働及び休日労働 について留意すべき事項に関する指針 (労働基準法第三十六条第一項の協定で定める労働時間の延長及び休日の労働について留意すべき事項等に関する指針)|厚生労働省
振替休日の取得に関する注意点
前章では、振替休日と代休の違いを解説しました。改めて違いを整理すると、下記のとおりです。
※時間外労働を伴う場合は36協定を締結し時間外労働割増賃金を支払う必要があります。
これらの違いは、振替休日を付与した場合は休日に働いても休日労働に該当しないということに起因します。ここでは、振替休日を取得する上での注意点を紹介しましょう。
事後の振替は代休扱い
振替休日を付与する場合は事前に労使間で協議し、代わりの休日をいつにするのかを定めなければなりません。事後になってしまった場合は代休として扱われ、休日出勤割増賃金を支払わなければならないため注意が必要です。
振替休日と代休では給与計算の方法も異なるため、混同せずに明確に区別して扱ってください。事前に代わりの休日を定めた場合は振替休日、突発的な事由によって休日労働を課し、その代償として事後に休日を付与した場合は代休ということを覚えておきましょう。
再度の振替ができるかどうか
前述の通り、振替休日を取得するタイミングは労使間の協議によって自由に決定することができます。何らかの事由によって当初定めていた日程に振替休日を取得できなかった場合は、法定休日に関する規定である1週1休または4週4休の範囲内であれば再度振り替えることも可能です。
なお、労働基準法第24条には「賃金は(中略)その全額を支払わなければならない」と規定されています。締め日を跨いで振替休日を付与する場合は、賃金全額払いの原則に従い一旦全額支払い、次の給与から振替休日の分を差し引くようにしましょう。
就業規則への記載
振替休日は、就業規則などに定められた規定に従い付与しなければなりません。就業規則には法定休日や所定休日などについて規定されますが、「休日を他の労働日に振り替えることがある」旨を合わせて明記しておきましょう。ただし、就業規則等に規定がない場合でも、労使協定を締結することで個別に振替休日を付与することも可能です。
なお、代休を付与する場合は休日労働を課すための36協定を締結する必要があり、就業規則等に規定する必要はありません。しかし、法定休日を確実に確保するには振替休日と合わせて代休についてもルールを規定しておく必要があるでしょう。労働基準法に則って取得条件・取得期限・賃金の取り扱いなどについて規定してください。
振替休日に関して理解を深め、適切に勤怠管理を行いましょう!
この記事では、振替休日について紹介しました。振替休日とは、労働基準法で定められた法定休日に労働を課す代わりに、他の労働日を休日とする制度です。似たような制度に代休がありますが、振替休日は事前に労使間の協議によって代わりの休日を定めるのに対し、代休は休日労働を課した代償として事後に休日を付与します。振替休日では休日と労働日を振り替えるため、休日に働いても割増賃金は支払われません。
一方、代休の場合は休日労働の対価として割増賃金が支払われます。給与計算の方法が異なるため、振替休日と代休を混同しないように気をつけましょう。なお、振替休日を付与するに就業規則等に根拠規定を定めておく必要があります。代休については、休日労働を課すため36協定の締結が必要です。振替休日と代休の違いを理解し、適切に勤怠管理を行いましょう。
よくある質問
振替休日とは何ですか?
振替休日とは、労働基準法で定められた法定休日に労働を課す代わりに、他の労働日を休日とする制度です。詳しくはこちらをご覧ください。
振替休日と代休の違いは何ですか?
振替休日は事前に労使間協議の上代わりの休日を定めるのに対し、代休は休日労働を課した代償として事後に休日を付与します。代休は休日労働割増賃金が支払われますが、振替休日は支払われないため気をつけましょう。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
10連勤は法律上違法ではない!労働基準法の定めや違法になるケースを解説
「10連勤は違法?」「違反するとどうなる?」「正社員は何日まで連勤できる?」 労働環境が厳しい職場では、連勤が続くことが増え、そもそも法律的にどうなのか気になる方もいらっしゃるでしょう。 結論、10連勤務は違法ではありません。しかし、従業員…
詳しくみる残業時間の平均はどれくらい?2024年4月からの上限規制についても解説!
日本の全産業の残業時間の平均は、厚生労働省の調査で月10時間と言われています。近年、残業時間は減少傾向にありますが、その大きな理由の一つが働き方改革です。 この記事では日本の残業時間の概況、残業時間の上限規制や残業時間の削減方法について解説…
詳しくみる半休(半日休暇)とは?時間有給との違いや使用理由を紹介!
半休とは、半日単位の年次有給休暇のことです。半休は労働基準法に規定されておらず、各企業が任意に設けるもので、短時間の用事を済ませる際などに活用できるため、従業員のワークライフバランス向上に有効です。この記事では半休の定義、半休の際の労働時間…
詳しくみるテンプレート付き – 休日出勤届について解説!
休日出勤届とは、法令で定められた法定休日に休日出勤する際に必要となる申請書です。使用者は労働者に一定の休日を付与しなければならず、休日労働させた場合は割増賃金を支払わなければなりません。そのため、休日出勤は休日出勤届によって厳格に管理する必…
詳しくみる雇用契約とは?労働契約との違いや雇用契約書・労働条件通知書の必要性も解説!
会社と雇用契約を結んで仕事に従事する人は、労働者として定義されています。そして、労働者はパート・アルバイトなどの雇用形態に依らず、労使間で雇用契約を結ぶことが法律で義務付けられています。この雇用契約は労働条件を明確にする重要な契約ですが、業…
詳しくみる有給消化とは?消化義務や退職時の対応など
労働者は、一定の条件を満たした場合に年次有給休暇が付与されます。有給休暇は、用事を済ませるため、心や体の疲労を回復させてリフレッシュするためなどで利用されることが多いです。 今回は有給消化について、法改正による取得の義務化、有給消化のメリッ…
詳しくみる