• 作成日 : 2023年2月28日

就業規則の閲覧を求められたときの対処法を解説

就業規則の閲覧を求められたときの対処法を解説

就業規則はあるものの、従業員の多くが入社以来内容を把握していない、ということはありませんか。就業規則は作成・変更したら従業員に周知し、従業員が随時閲覧できるようにしておかなければなりません。この記事では、就業規則の概要や就業規則の周知義務、就業規則の閲覧を求められた際の対応、閲覧に関する注意点について紹介します。

就業規則の閲覧とは

労働基準法において、雇用主は、従業員が随時閲覧できるようにすることが義務付けられています。この義務を怠った場合は厳しい罰則を科せられる可能性もあります。なぜ就業規則はそれほど重要なのでしょうか。ここでは、今一度就業規則の役割について確認しましょう。

就業規則とは

そもそも就業規則とは、従業員の給与や労働時間などの労働条件、従業員が守るべき職場内のルールを規則として定めたものです。労働基準法第89条の規定により、常時10人以上の従業員を使用する雇用主は就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが義務付けられています。就業規則を変更する際も、所轄の労働基準監督署長への届け出が必要です。
就業規則は、会社の秩序を維持するために不可欠なものと言えるでしょう。社内の秩序は従業員と雇用主の信頼関係によって保たれているためです。就業規則によってお互いの権利や義務が明示されていることで信頼関係の構築につながります。また、万が一トラブルが起きたとしても、従業員や雇用主はその規定を根拠に適切な対処ができるでしょう。

参考:モデル就業規則について|厚生労働省

就業規則には周知義務がある

労働基準法において、就業規則を従業員に周知することが義務付けられています。就業規則を作成したり、変更したりした場合は必ず従業員に周知しなければなりません。周知を怠った場合は「周知義務違反」となり、是正勧告や指導、罰金が科される可能性があるので注意が必要です。

周知方法は、以下が挙げられます。

  • 常に各事業所の見やすい場所へ掲示し、または備え付ける
  • 書面で交付する
  • 従業員が随時パソコンなどから閲覧できるようにデジタルデータ化する

上記の周知方法については後ほど詳しく解説します。すべての従業員に周知し、随時就業規則を閲覧できる状態にしておかなければならないので、一部の従業員のみへの周知や、口頭の説明のみは周知したことにはなりません。就業規則を従業員に周知していない状態で労使間トラブルが発生した場合、就業規則自体が無効となる可能性があるので周知は徹底しておきましょう。

参考:労働基準法| e-Gov法令検索

就業規則の閲覧を求められたら

本来、就業規則は、従業員から「見たい」と言われてから開示するものではありません。前述したように「見やすい場所への掲示」「書面での配布」「データでの共有」いずれかの方法ですべての従業員が随時閲覧できるようにしておかなければならないのです。自社が取り入れやすい方法で、周知を行いましょう。

見える場所に掲示する

この方法では、休憩室や更衣室など社内の特定の場所に常時掲示するか、印刷した就業規則を机や本棚に置いておくようにします。従業員が随時確認できる場所に掲示または設置することがポイントです。複数事業所が存在したり、建物内で事業所が分かれていたりする場合は管理が煩雑になるかもしれません。また、就業規則を変更した場合は掲示や設置をやり直さなくてはならないため手間がかかるでしょう。従って、この方法は小規模の事業所向けの周知方法となります。

参考:労働基準法| e-Gov法令検索

書面で配布する

就業規則を印刷して各従業員に配布する方法です。すべての従業員に確実に周知できるものの、規則の変更を行った際に印刷と配布にコストと時間がかかる点はデメリットとなります。それ以上のデメリットは、セキュリティの問題です。個人に就業規則を配布することで紛失したり、社外に持ち出したりするなど情報漏えいのリスクがあります。書面で配布する際は、管理を徹底するように周知しなければなりません。

参考:労働基準法| e-Gov法令検索

データで共有する

パソコンなどでデジタルデータ化し、クラウド上で共有する方法となります。社内のファイルサーバーやポータルサイトに就業規則を設置することで、従業員は随時閲覧が可能です。事業所が複数ある場合にも対応しやすく、就業規則に変更があった際も容易に共有できる点が大きなメリットでしょう。社内サーバーがある事業所に適している方法と言えます。ただし、情報漏えいを防ぐためにもデータにダウンロード制限や印刷制限をかけておくことが必要です。

参考:労働基準法| e-Gov法令検索

就業規則の閲覧に関する注意点

就業規則の閲覧に関して、周知すること以外にも注意点が2つあります。それは、退職者から閲覧を求められた場合や就業規則を紛失した場合の対応です。いざというときのために、適切な対応について知っておきましょう。トラブルを防ぐためにも常に就業規則の周知および管理を徹底しておくことが重要です。

退職者から閲覧を求められた場合

退職者はすでに自社の従業員ではないことから、就業規則の閲覧を求められても対応する必要がないと考える方も多いのではないでしょうか。通常は、雇用関係がない退職者については就業規則を開示する必要はありません。しかし、退職者が事業者との間で権利義務関係等について訴訟を起こしている場合は該当部分を開示する必要があります。たとえば、退職者が「退職金が支払われないから、退職金に関する就業規則を開示してほしい」という訴えを起こした場合、就業規則において退職金に関する記載部分を開示する義務が発生します。

先ほど、常時10人以上の従業員を使用する雇用主は就業規則を作成し、所轄の労働基準監督署長に届け出ることが義務付けられていることをお伝えしました。労働基準監督署には会社が届け出た就業規則が保存されています。労働基準監督署はまず、退職者が在職時に就業規則の周知を行われていたかを確認します。周知が行われておらず、雇用主に求めても閲覧できる状態でないと判断した場合、労働基準監督署は保存している範囲の就業規則の閲覧許可または説明を行います。
結論として、退職者から閲覧を求められた場合に応じる必要はありません。とはいえ、退職者が在職中に就業規則を閲覧できる状態でなかった場合、すなわち、会社が周知を怠っていた場合は、労働基準監督署が署に保存している就業規則を開示することになる点は念頭に置いておきましょう。

就業規則を紛失した場合

従業員が会社の就業規則を紛失してしまって労働基準監督署に就業規則を求める場合もなかにはあります。この場合、従業員は就業規則を紛失した経緯や閲覧を希望する理由について説明し、必要書類を提出すれば閲覧可能です。しかし、労働基準監督署に会社が管理不足であると認識され印象が悪くなってしまうので、できれば避けたいところでしょう。書類で配布する場合は、就業規則を紛失した際の対応についても社則で決めておくことを推奨します。また、会社側でも就業規則は原本を大切に保管し、文書データのバックアップをとっておくなど管理を徹底することが大切です。

就業規則は従業員が随時閲覧できる状態にしておきましょう

ここまで、就業規則の閲覧を求められたときの対処法について解説しました。就業規則は、従業員だけでなく会社の権利や義務を明示するための重要な書類です。万が一、労使関係のトラブルに発展した際も、就業規則の記載内容を根拠に客観的な判断ができます。就業規則は、すべての従業員が随時閲覧できる状態にしておきましょう。
変更があった際もその都度周知する必要があります。就業規則の周知を行わないことは違法となり、厳しい罰則が科せられる可能性もあるのです。「見やすい場所への掲示または書面での設置」「書面での配布」「データでの共有」いずれかの方法で日頃から就業規則の周知を徹底しておきましょう。

よくある質問

就業規則の閲覧とは?

従業員の誰もが随時就業規則を確認できる状態のことです。詳しくはこちらをご覧ください。

就業規則の閲覧を求められた場合の対処法は?

「見やすい場所への掲示または書面での設置」「書面での配布」「データでの共有」のいずれかを行います。詳しくはこちらをご覧ください。


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