- 更新日 : 2025年11月19日
社会保険料は日割りで計算できる?資格喪失日についても解説
社会保険料は月単位で算出されるため、従業員の退職時に日割り計算をする必要はありません。また、同じ月に退職するにしても、退職日が月の途中か末日かで、保険料の納付が必要となる月が異なります。
ここでは、具体的なケースをもとに従業員の退職にともなう社会保険料の算出方法について解説します。
目次
社会保険料は日割り計算できない
社会保険料は月単位で保険料が発生します。そのため、日割り計算ができません。たとえば、月の途中で従業員が退職した場合には、資格喪失月(退職日の翌日のある月)の「前月分」までの社会保険料の納付が必要となります。
社会保険料は、保険料が発生する月の翌月に支払う給与から控除するのが原則です。たとえば8月分の社会保険料は、9月に支払う給与から控除します。
社会保険の資格喪失日は?
社会保険の資格喪失日とは、原則として喪失の事由が発生した日の翌日、つまり、退職の事実があった日(退職日)や死亡した日の翌日を指します。ただし、70歳に達して厚生年金保険の被保険者の資格を喪失する場合や、退職日に新たな会社で被保険者資格を取得する場合などでは、その日(同日)に被保険者資格を喪失します。
社会保険料は、資格を取得した日がある月分から資格喪失日がある月の前月分までの保険料を納めることになっています。したがって、資格喪失日がある月分の社会保険料は発生しません。
退職日と社会保険料の関係
社会保険料の控除が必要となるかどうかは退職日が月末か否かによって異なります。「月の途中で退職するケース」と「月の末日で退職するケース」の2パターンで解説します。
月の途中で退職した場合
月の途中で従業員が退職する場合は、退職日の翌日となる資格喪失日は退職月に属することになります。退職月分の社会保険料は発生しませんので、給与から控除する必要はありません。
【例】
- 4月20日に従業員が退職する→資格喪失日は4月21日となり、4月分は資格喪失月であるため保険料は発生せず、3月分まで社会保険料が発生する。
- 保険料の控除は、退職月である4月に支払う給与から行う。
末日で退職した場合
月の末日で退職した場合、資格喪失日が翌月の初日となり、退職した月の社会保険料が発生します。
【例】
- 4月30日に従業員が退職する→資格喪失日は5月1日となり、資格喪失日のある月が5月となるため、その前月の4月分まで社会保険料が発生する。
- 「月末締め当月20日払い」というように、5月に支払う給与がない場合、保険料の控除は、退職月の前月と退職月の2カ月分を、退職月(4月)に支払う給与から控除する(このケースでは3月分・4月分の社会保険料を4月に支払う給与から控除する)。
- 「月末締め翌月20日払い」というように、5月に支払う給与がある場合には、これまでと同様に4月分の社会保険料を5月に支払う給与から控除する。
退職した場合の社会保険の手続き
従業員の退職に伴い会社がやるべき社会保険関連の手続きは主に2つあります。
1つは、保険証の回収です。従業員が持ってる保険証を退職日までに回収しましょう。このとき、被扶養者がいる場合には被扶養者の保険証も忘れず回収します。保険証が回収できない場合には「健康保険被保険者証回収不能届」の提出が必要となりますので注意しましょう。
もう1つは、被保険者資格喪失届の提出です。被保険者資格喪失届は、対象者が資格を喪失した日から5日以内に、管轄の年金事務所の窓口、もしくは郵送で年金事務センターへ送ります。期限以内に提出できるよう、しっかりと準備しましょう。
被保険者資格喪失届の書き方について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
月の途中・末日の退職かで社会保険料の発生月が変わる
社会保険料は日割り計算ではなく、月単位で算出されます。そのため、従業員の退職のタイミングが月の途中か末日かで、社会保険料が徴収される月が変動します。月の途中に退職する場合には、資格喪失日(退職日の翌日)がある月の前月までの社会保険料が発生します。月の末日に退職した場合には、資格喪失日が翌月1日となるため、退職月分まで社会保険料が発生します。
社会保険料の納付が何月分まで必要となるかを間違えると、後から退職した従業員に連絡し、返金または不足分を支払ってもらうなどの対応が必要となります。間違いのないように給与から控除しましょう。
よくある質問
社会保険料は日割り計算できる?
社会保険料の日割り計算はできません。社会保険料は月単位で計算されます。月の途中で退職した場合、退職した月の社会保険料は発生しません。退職月の前月分までの社会保険料の納付が必要となります。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険料の資格喪失日は?
社会保険の資格喪失日とは、従業員が退職した日や死亡した日の翌日を指します。資格喪失日が属する月の社会保険料は発生しません。資格喪失日が翌月1日となる場合、前月分(退職月)まで社会保険料が発生します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
企業年金は3種類!厚生年金基金・確定給付企業年金・確定拠出年金の違いと特徴を解説
退職時または60歳以降に受け取ることができる給付に企業年金があります。企業年金は、3階建ての年金の3階部分(1階部分の「基礎年金」、2階部分の「被用者年金」)を担っている年金制度で、3種類の制度が存在します。 今回は、企業年金の種類とそれぞ…
詳しくみる個人住民税は社会保険料に含まれる?給与から引かれる税金をおさらい
毎月の給与や定期的な賞与からは、社会保険料や税金などが天引きされます。勤続年数の長い方には当たり前かもしれませんが、社会人1年目の方などはどのように給料の手取り額が決まるのか把握していない方も多いことでしょう。個人住民税は社会保険料に含まれ…
詳しくみる労災申請を本人が行うデメリットとは?弁護士に依頼するメリットも解説
労災保険は、仕事中や通勤中のケガ・病気など万が一のときに労働者を守る大切な制度です。しかし、手続きが複雑だったり、補償内容に制限があったりと、申請者本人には見えにくいデメリットも存在します。本記事では、労災保険の基本的な内容から、本人が申請…
詳しくみる基礎年金番号通知書と年金手帳の違いは?提出する場面やよくあるトラブルを解説
就職や転職の際に会社から提出を求められる「年金手帳」。令和4年4月以降は新規発行が終了し、代わりに「基礎年金番号通知書」が交付されるようになりましたが、制度変更の内容や会社とのやりとりについて、正しく理解できていない方も多いのではないでしょ…
詳しくみる退職後の健康保険 – 国民健康保険と健康保険任意継続制度を比較
国民皆保険制度を採用している日本では、会社を退職したら、なんらかの公的保険に加入しなければいけません。退職後は国民健康保険に加入することもできますが、会社の健康保険を継続する選択肢もあります。 ここでは、国民健康保険と健康保険任意継続制度の…
詳しくみる算定基礎届はいつ届く?提出期限や書類の書き方、訂正方法も解説
「算定基礎届」は、標準報酬月額を決定するために年に一度提出が必要な書類です。この書類は毎年6月中旬以降に日本年金機構から事業主宛に送付されます。 本記事では、算定基礎届が届く時期や対象者について解説します。詳しい書き方や訂正方法、提出期限に…
詳しくみる