- 作成日 : 2023年2月3日
社会保険料は日割りで計算できる?資格喪失日についても解説
社会保険料は月単位で算出されるため、従業員の退職時に日割り計算をする必要はありません。また、同じ月に退職するにしても、退職日が月の途中か末日かで、保険料の納付が必要となる月が異なります。
ここでは、具体的なケースをもとに従業員の退職にともなう社会保険料の算出方法について解説します。
目次
社会保険料は日割り計算できない
社会保険料は月単位で保険料が発生します。そのため、日割り計算ができません。たとえば、月の途中で従業員が退職した場合には、資格喪失月(退職日の翌日のある月)の「前月分」までの社会保険料の納付が必要となります。
社会保険料は、保険料が発生する月の翌月に支払う給与から控除するのが原則です。たとえば8月分の社会保険料は、9月に支払う給与から控除します。
社会保険の資格喪失日は?
社会保険の資格喪失日とは、原則として喪失の事由が発生した日の翌日、つまり、退職の事実があった日(退職日)や死亡した日の翌日を指します。ただし、70歳に達して厚生年金保険の被保険者の資格を喪失する場合や、退職日に新たな会社で被保険者資格を取得する場合などでは、その日(同日)に被保険者資格を喪失します。
社会保険料は、資格を取得した日がある月分から資格喪失日がある月の前月分までの保険料を納めることになっています。したがって、資格喪失日がある月分の社会保険料は発生しません。
退職日と社会保険料の関係
社会保険料の控除が必要となるかどうかは退職日が月末か否かによって異なります。「月の途中で退職するケース」と「月の末日で退職するケース」の2パターンで解説します。
月の途中で退職した場合
月の途中で従業員が退職する場合は、退職日の翌日となる資格喪失日は退職月に属することになります。退職月分の社会保険料は発生しませんので、給与から控除する必要はありません。
【例】
- 4月20日に従業員が退職する→資格喪失日は4月21日となり、4月分は資格喪失月であるため保険料は発生せず、3月分まで社会保険料が発生する。
- 保険料の控除は、退職月である4月に支払う給与から行う。
末日で退職した場合
月の末日で退職した場合、資格喪失日が翌月の初日となり、退職した月の社会保険料が発生します。
【例】
- 4月30日に従業員が退職する→資格喪失日は5月1日となり、資格喪失日のある月が5月となるため、その前月の4月分まで社会保険料が発生する。
- 「月末締め当月20日払い」というように、5月に支払う給与がない場合、保険料の控除は、退職月の前月と退職月の2カ月分を、退職月(4月)に支払う給与から控除する(このケースでは3月分・4月分の社会保険料を4月に支払う給与から控除する)。
- 「月末締め翌月20日払い」というように、5月に支払う給与がある場合には、これまでと同様に4月分の社会保険料を5月に支払う給与から控除する。
退職した場合の社会保険の手続き
従業員の退職に伴い会社がやるべき社会保険関連の手続きは主に2つあります。
1つは、保険証の回収です。従業員が持ってる保険証を退職日までに回収しましょう。このとき、被扶養者がいる場合には被扶養者の保険証も忘れず回収します。保険証が回収できない場合には「健康保険被保険者証回収不能届」の提出が必要となりますので注意しましょう。
もう1つは、被保険者資格喪失届の提出です。被保険者資格喪失届は、対象者が資格を喪失した日から5日以内に、管轄の年金事務所の窓口、もしくは郵送で年金事務センターへ送ります。期限以内に提出できるよう、しっかりと準備しましょう。
被保険者資格喪失届の書き方について詳しくはこちらの記事をご覧ください。
月の途中・末日の退職かで社会保険料の発生月が変わる
社会保険料は日割り計算ではなく、月単位で算出されます。そのため、従業員の退職のタイミングが月の途中か末日かで、社会保険料が徴収される月が変動します。月の途中に退職する場合には、資格喪失日(退職日の翌日)がある月の前月までの社会保険料が発生します。月の末日に退職した場合には、資格喪失日が翌月1日となるため、退職月分まで社会保険料が発生します。
社会保険料の納付が何月分まで必要となるかを間違えると、後から退職した従業員に連絡し、返金または不足分を支払ってもらうなどの対応が必要となります。間違いのないように給与から控除しましょう。
よくある質問
社会保険料は日割り計算できる?
社会保険料の日割り計算はできません。社会保険料は月単位で計算されます。月の途中で退職した場合、退職した月の社会保険料は発生しません。退職月の前月分までの社会保険料の納付が必要となります。詳しくはこちらをご覧ください。
社会保険料の資格喪失日は?
社会保険の資格喪失日とは、従業員が退職した日や死亡した日の翌日を指します。資格喪失日が属する月の社会保険料は発生しません。資格喪失日が翌月1日となる場合、前月分(退職月)まで社会保険料が発生します。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
人事労務の知識をさらに深めるなら
※本サイトは、法律的またはその他のアドバイスの提供を目的としたものではありません。当社は本サイトの記載内容(テンプレートを含む)の正確性、妥当性の確保に努めておりますが、ご利用にあたっては、個別の事情を適宜専門家にご相談いただくなど、ご自身の判断でご利用ください。
関連記事
労災保険料の支払い手続きや計算方法について解説
労災保険は、労働者保護を目的とした強制保険で、労働者が1人でもいる事業は労災保険に加入しなければなりません。保険給付の対象となるのは労働者で、労災保険料は全額を事業主側が負担します。労災保険料は賃金の総額に労災保険料率をかけて計算され、概算…
詳しくみる雇用保険を会社都合退職で受給する場合
会社を退職する理由としては、さまざまな理由が想定されます。自らの都合で会社を退職する場合もありますが、時には会社の都合により会社を退職するケースもあります。 会社側からの解雇通告により離職するケースや業績悪化に伴って会社が倒産してしまうケー…
詳しくみる社会保険は勤務期間の2ヵ月後から適用?令和4年10月の変更点
有期契約社員は、正社員とは社会保険の加入条件が異なります。旧制度では、契約期間が2ヵ月未満の方はその間の加入は不要でした。令和4年10月以降は更新の可能性がある場合、2ヵ月後からではなく契約時から加入が必須となります。3ヵ月目からの加入は違…
詳しくみるアルバイトも雇用保険に加入する?学生は?条件と手続き、未加入の罰則を解説
失業手当や育児休業に伴う給付等が受けられる雇用保険には、加入条件を満たす場合はアルバイトであっても加入させなければなりません。雇用保険の加入条件は労働者の種類に関わらず同じであるためです。 この記事で解説する雇用保険の加入条件、加入手続き等…
詳しくみる社会保険料とは?計算方法や負担額、法改正の内容をわかりやすく解説!
社会保険制度とは、病気やケガ、死亡、出産、老齢、失業、介護などに備えて、企業や被保険者が保険料を負担して保険給付を受けることができる公的な保険制度のことです。 今回は、社会保険料を決定する基準や負担額の計算方法を解説するとともに、法改正で注…
詳しくみる休業補償とは?休業手当との違い、支払い金額の計算方法を解説!
労働基準法の休業補償と休業手当は、平均賃金の6割を支払うところは同じですが、支払う目的が大きく異なります。休業補償は労働災害により労働者が療養のために勤務できない場合に企業が支払う補償であり、休業手当と違って賃金ではありません。 休業手当と…
詳しくみる