- 更新日 : 2025年8月26日
退職手続きの流れと受け取る書類一覧 – 会社を辞めるときの注意点
退職の理由はさまざまです。しかし、いざ仕事を辞める決意をしてから、ハローワークなど役所関係のめんどうな手続きがあることに気づくこともあります。今回は、退職の際に会社から受け取る書類、提出しなければならない書類とともに、退職後の手続きの流れについて解説してきます。
目次
退職のときに会社から受け取る書類一覧
まず、退職時に会社から受け取る書類には、どのようなものがあるのか、整理してみましょう。
基本的に役所関係の書類は、本人が会社に退職の意思を伝え、正式に退職してから手渡し、あるいは郵送で受け取ることになります。
離職票
雇用保険関係の書類として離職票があります。これは、本人が退職後、雇用保険の失業に関する給付を受給するために必要な書類です。
退職するまでの詳しい流れは後述しますが、本人が退職届あるいは退職願を会社に提出すると、その後、会社の担当者がハローワークに雇用保険の被保険者資格喪失に関わる手続きをすることになります。
手続き後、ハローワークから担当者に交付される書類が離職票です。この書類は1枚ではなく2枚あり、次のように表記されています。
「離職票-2」
「離職票-1」は、OCR用紙で被保険者番号、氏名などが印字されています。「離職票-2」は、会社が離職前の賃金の支払い状況や離職理由を会社が記入するA3サイズの大きめの書類であり、記載された内容は本人が確認し、署名するルールになっていますのですでに目を通していると思います。
「離職票-2」は、転職するまでの基本手当を受給する際に不可欠な書類であり、すでに転職先が決まっていて給付を受けない場合、本人が交付を希望しなければ、会社は作成しません。
年金手帳
本人が加入している公的年金に関わる情報を記載するための小冊子です。入社する際、会社が厚生年金保険の資格取得の手続きをする際、国民年金の基礎年金番号を確認する必要があるため、本人は提出を求められているはずです。
基礎年金番号を確認するだけであるため、コピーしたあとは、本人に返却するのが一般的ですが、会社が預かっているケースもあるようです。手元にない場合、確認してみましょう。
なお、令和4年4月からは冊子形式の年金手帳は廃止し、初めて公的年金に加入する人には基礎年金番号通知書を発行することになっています。
源泉徴収票
源泉徴収票とは、本人が1年間に会社から支給された給与金額と源泉徴収税額のほか、配偶者控除、扶養控除、各種保険控除(生命保険料・社会保険料)などを記載した書類のことです。
従業員が退職する際、会社には1月1日から退職時点までの給与に基づいた源泉徴収票を発行する義務があります。転職したとき、会社から提出を求められますので大切に保存してください。
退職証明書(希望する場合)
退職証明書は、労働基準法上、労働者が退職した際、一定事項について証明書を請求した場合、使用者に遅滞なく交付を義務付けている書類です(法22条)。転職の際に提出を求められることがあります。
労働者が請求できる証明事項は以下の通りであり、請求しない事項を記入してはならないとされています。
- 使用期間
- 業務の種類
- その事業における地位
- 賃金
- 退職の事由(退職の事由が解雇の場合は、その理由を含む)
退職するまでの手続きの流れ
では、退職日までに何をしなければならないのでしょうか。ここでは、一般的な退職日までの流れを確認していきます。
①1ヵ月前までに退職の意思表示・退職日を決定する
会社を辞めることを決めたら、実際に直属の上司に退職の意思と退職日を伝える必要があります。労働基準法では、使用者が労働者を解雇(雇用契約を解約)する場合の時期は少なくとも30日前としていますが、労働者側が雇用契約を解約する際の時期については、定めていません。
契約の一般法である民法では、雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申入れをすることができ、その申入れ日から2週間を経過することで終了するとしています(法627条1項)。
会社の就業規則で退職の申出日を定めている場合であっても、労働法の法源としては法律である民法が優先されますので、法的には2週間前の申出でもかまわないということになります。
とはいえ、会社も人員配置や引継ぎの手続きがあります。「立つ鳥跡を濁さず」のことわざにあるように、労働基準法が解雇予告で定めている「30日前」までには退職の意思を伝えるのがよいでしょう。
➁ ①のあとに退職届を提出・社内での仕事の引継ぎを行う
上司に退職の意思を伝えたら、退職届を提出します。時期としては、退職日の2週間前までには提出し、仕事の引継ぎをすることになります。引継ぎはケースによって時間がかかることもあるため、資料などは整理しておくことを心がけましょう。
転職先が決まっておらず、雇用保険の基本手当を受給する場合には、前述の離職票を交付してもらう必要があります。その際、会社は資格喪失の手続きの際に退職理由を確認する書類として退職届(写し)を添付書類として提出します。
離職理由は、会社が作成した「離職票-2」に記載したものと整合している必要があります。ハローワークでチェックしますが、安易に「一身上の都合により」と記載していて、会社の作成した「離職票-2」にも「自己都合」となっていながら、実際にはリストラなどの会社都合であると本人に不利益が生じます。自己都合退職では、失業給付である基本手当の支給開始が遅れる給付制限を受けるからです。
会社都合であれば、その旨を記載し、併せて「離職票-2」の記載事項をしっかりと確認して署名することが大切になります。
③ 取引先への挨拶・担当の入れ替わりを伝える
その後、取引先に退職の挨拶とともに担当者が交代することを伝えます。重要な取引先には対面で挨拶することになりますが、それ以外の取引先についてもメールで伝えることを忘れないようしてください。
④ 最終出社日に備品を返却する
退職日には、備品などを会社に返却します。備品には、社員証・IDカード、社章、制服、名刺、貸与された携帯などが考えられます。
また、入社時に会社から交付された健康保険証(健康保険被保険者証)も返却します。扶養家族用に交付されている健康保険証も同様です。
退職時の有給休暇はどうなる?消化・買取の基本と注意点
退職時に有給休暇が残っている場合、その扱いについて正しく理解しておくことは重要です。未消化のまま退職すると損をする可能性もあるため、有給休暇の取得・買取の制度や注意点を把握し、早めに準備を進めることが大切です。
有給休暇は原則「取得による消化」が基本
労働基準法では、労働者が自ら指定した時季に有給休暇を取得することが原則とされています。退職が決まった段階で、上司や人事担当者と相談し、有給休暇の残日数と退職日までの勤務計画をすり合わせましょう。退職日を調整することで、有給を全て消化して円満に退職することも可能です。会社には時季変更権がありますが、退職後の時季を指定することはできません。
有給休暇が消化できない場合の「買取」制度とは
やむを得ず有給休暇を全て取得できない場合、会社によっては未消化分の有給休暇を買い取る制度を設けていることがあります。ただし、有給休暇の買取は法律上義務ではなく、会社の就業規則や慣行に基づいて行われます。したがって、退職前に人事担当者に確認しておくことが重要です。特に、即時退職や会社都合退職の場合には買取が行われやすい傾向があります。
有給の取り扱いに関するトラブルを防ぐために
有給休暇の消化や買取をめぐってトラブルになることもあります。退職の意思を伝える際には、できるだけ文書やメールでやりとりを残し、取得日数や最終出勤日を明確にしましょう。必要に応じて労働組合や労働基準監督署へ相談することも検討してください。円満退職のためにも、有給休暇の扱いは計画的かつ慎重に進めることが求められます。
在職中に取得・更新した資格・証明書はどうなる?確認すべき扱いと対応方法
会社の支援を受けて取得・更新した資格や証明書については、退職時に返却や名義変更が必要な場合があります。トラブルを防ぐためにも、退職前にそれらの取り扱いを確認し、会社の規定や契約内容をしっかり把握しておきましょう。
資格によっては手続きが必要
業務上必要な資格(例:宅地建物取引士、施工管理技士、電気工事士など)で、専任者を置いている場合には、退職に際して変更の手続きが必要となる場合があります。退職者自身が変更登録申請を行わなければならない場合もあるため、必要な手続きを忘れずに行いましょう。
自分名義の証明書や合格通知は私物として保管できる
自分の氏名で発行された証明書や合格通知書は、基本的に個人の所有物です。ただし、業務で使用していた場合には、会社の方針に従ってコピーの提出や報告が必要なケースもあります。原本は退職後も問題なく保管できますが、念のため、提出先や保管方法について社内で確認しておきましょう。
退職後に困らないためのメール整理と社外対応の進め方
退職を控えたら、業務の引継ぎと同様に、社外との関係整理も忘れてはいけません。ビジネスメールの対応や社外連絡先の管理、取引先への挨拶などは、社会人としての基本的なマナーであり、次のステップへ進むための信頼構築にもつながります。
社外関係者への挨拶メールは退職の数日前がベスト
長年付き合いのあった取引先や外部パートナーには、退職の1〜3営業日前を目安に、個別にメールで挨拶を行いましょう。内容には、これまでの感謝の気持ちと、今後の連絡先(後任者の氏名・メールアドレスなど)を明記します。
例文を記載します。
本文:「このたび一身上の都合により、〇月〇日をもちまして退職することとなりました。これまでのご厚情に心より御礼申し上げます。今後のお問い合わせは〇〇が担当させていただきます。」
形式的でも、感謝を伝えることが重要です。BCC送信や一斉メールは便利ですが、関係が深い相手には個別の送信が望ましいです。
自分宛のメール対応と転送設定の確認
自分の社用メールアドレス宛に来る可能性のあるメールに備え、自動返信設定を行っておきましょう。自動返信には、退職したこと、今後の連絡先(後任者や代表窓口)を記載しておきます。
また、会社によっては退職者のメールアカウントが即日削除される場合もあるため、社内のIT部門と連携し、メール転送設定やアーカイブのルールを確認しておくと安心です。
引継ぎ対象の連絡先・業務リストの整理
社外との連絡で使用していた取引先の電話番号・メールアドレス・SNSなどの連絡先は、業務引継ぎの一環としてまとめておきます。ExcelやGoogleスプレッドシートなどで「企業名/担当者名/業務内容/連絡頻度」などの情報を整理し、後任者がスムーズに対応できるよう引き渡しましょう。
今後の人脈づくりに向けた関係維持
取引先の中には、今後の転職先やフリーランス活動などで再び関係を持つ可能性のある人もいます。業務上の付き合いを越えて信頼関係を築いてきた相手には、個人的な連絡先(プライベートのメールアドレスやLinkedInなど)を伝え、今後もつながれる関係性を保っておくのも有効です。
退職時の確定拠出年金(DC)の移管手続き
60歳未満で企業型確定拠出年金(DC)に加入していた場合、退職後は必ず移管手続きを行う必要があります。手続きを怠ると「自動移換」され、運用停止・手数料発生などの不利益を受けることになります。転職先の制度の有無や再就職までの期間に応じて、以下のような対応が求められます。
転職先がDC対応企業の場合:資産の「移換手続き」を行う
転職先に企業型DC制度がある場合、前職の年金資産を新しい制度に移す「移換手続き」が可能です。新しい勤務先の人事担当者に、加入手続きと併せて「移換の意思」を伝えましょう。原則として6か月以内に手続きを完了させる必要があり、遅れると自動移換扱いになります。運用商品の選択も再度行う必要があります。
転職先がDC非対応企業の場合:iDeCoへの移管を検討
新しい勤務先に企業型DC制度がない場合、個人で管理できる「個人型確定拠出年金(iDeCo)」へ移すのが基本です。iDeCo口座を開設し、資産の移管手続きを行うことで、引き続き運用を継続できます。移管が完了すれば、将来の老後資金として非課税で積み立て・運用が可能です。手続きには1〜2か月かかるため、早めの対応が推奨されます。
転職予定が当面ない場合:速やかにiDeCo加入を
無職や自営業に転向するなど、すぐに転職しない場合でも、DC資産を放置してはいけません。手続きを行わないと、6か月後に「国民年金基金連合会」へ自動移換され、運用が停止されてしまいます。この間も手数料が差し引かれ、資産が目減りする可能性があります。iDeCoへの加入を選択し、自分で管理を続けましょう。
退職後の各種手続き【転職の場合】
いざ退職したあとにも、やるべきことはいくつもあります。転職する場合と、転職しない場合に分けてみていきましょう。
必要となる書類をすべて転職先に提出する
退職後、間もなく就職した場合、先方から提出を求められる書類としては、次のようなものがあります。
あらかじめ準備しておくと慌てることもありません。
退職後の各種手続き【転職予定がない場合】
転職する予定がない場合は、ハローワークで雇用保険の失業給付(基本手当)の受給手続きをすることになります。次のような流れになります。
失業手当等の手続き
- 住所地を管轄するハローワーク(公共職業安定所)に出向いて「求職の申込み」を行います。その際、前の会社から退職時に交付された 「離職票-1」「離職票-2」 を提出します。
- その後、基本手当の受給資格の決定がなされ、受給者説明会の日時が案内されます。
- 受給者説明会に出席します。ここでは「受給資格者証」「失業認定申告書」 が交付されるとともに第1回目の失業認定日が知らされます。
- 第1回目の失業の認定を受けます。ここでは、失業の3要件の確認、つまり、離職していること、労働の意思・能力があること、職業に就くことができないこと、の3つを満たしていれば失業と認定されます。具体的な手続きは、求職活動の状況を記入した「失業認定申告書」と「受給資格者証」を提出します。
- 失業と認定されれば、失業の認定日から通常5営業日で指定した金融機関の預金口座に基本手当が振り込まれます。振り込まれるのは、最初の受給資格決定日に遡って7日間を待期期間とし、その満了日の翌日から認定日の前日までの失業している日についての金額です。なお、給付制限がある場合は、7日間の待期期間に加えて給付制限期間(原則1ヵ月)は支給されません。
再就職が決まるまでは、本人の離職理由、離職時の年齢、被保険者であった期間などによって決まる所定給付日数(90日から360日)を4週間に1回、失業の認定を受けながら受給することができます。ただし、原則として離職日の翌日から1年間が受給の期限になるため、離職後、ハローワークに出頭するのが遅くなると、所定給付日数分がもらえなくなることもあります。
その他に必要な手続き一覧
退職届のテンプレート(無料)
以下より無料のテンプレートをダウンロードしていただけますので、ご活用ください。
やるべきことはたくさんある退職。正しい知識を持って次につなげよう。
会社を辞めることは簡単そうで、実はそうではありません。やるべきことは多々あり、会社から受け取る書類にしてもさまざまな書類があります。いずれも、転職時、あるいは雇用保険の失業給付の受給手続きをするときに不可欠なものばかりです。
退職を意識したときから、退職日まで、あるいは退職後は何をすべきなのか、基本的な知識を知っておくことが大切です。揃えるべき書類をきちんと準備できれば失業給付も受け取ることができ、転職や再就職が決まった際もスムーズにつながるでしょう。
よくある質問
退職のときに会社から受け取る書類にはどんなものがありますか?
離職票、保養保険被保険者証、源泉徴収票などです。詳しくはこちらをご覧ください。
退職後にはどういった手続きを行えばよいですか?
すぐに転職しない場合には、ハローワークで雇用保険の失業給付を受給するための手続きをしなければなりません。詳しくはこちらをご覧ください。
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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