- 更新日 : 2024年12月20日
労務担当者必見!作成した就業規則の届出義務とは?
目次
就業規則の作成・届出義務とは?
原則として常時10人以上の労働者を使用している事業場では、会社の規則を明文化した就業規則の作成および管轄の労働基準監督署への届出が必要となります。
なお、就業規則の作成義務については「会社」単位ではなく「事業場」単位で考えますので、会社として10人以上雇用している場合でも、事業場(オフィス)が2つに分かれていて、それぞれの事業場に5人ずつ配属されているような場合は、作成・届出義務の対象にはあたりません。一方、事業場(オフィス)が2つに分かれていて、それぞれの事業場で10人以上ずつ働いている場合は、それぞれの事業場で、作成・届出が義務になりますので、注意が必要です。
ここでいう「常時10人以上の労働者を使用する」とは、雇用形態(正社員・パート等)に関係なく、雇用(所属)している労働者が常態として 10人以上いることであり、出勤している人数ではありません。 また、一時的に10人未満となっても、10人以上を使用することが常態である場合は作成・届出が必要になります。
さらに、就業規則で定めた内容が規範として拘束力を生ずるためには、就業規則の内容を、対象とした事業場の労働者に周知させる手続きが取られていなければなりません。周知の方法は、各事業場に掲示すること、各労働者に配布すること、パソコン等の電子機器において容易に労働者が閲覧できる環境であること、等が挙げられます。周知がなされていない就業規則は効力が認められず、また労働者側が「作成・変更されたことを知らなかった」ことよるトラブルも少なくないので、就業規則を作成または変更した場合には、所定の方法で速やかに内容を周知するようにしましょう。
就業規則を届出するためには、労働者の「同意」が必要?
作成または変更した就業規則は、遅滞なく労働基準監督署長に届出なければなりませんが、届出の際には労働者の意見を聴いたことを示す「意見書」の添付が義務付けられています。
意見を聴く相手は、労働者の過半数で組織する労働組合がある場合にはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がない場合においては労働者の過半数を代表する者とされています。この労働者の過半数を代表する者とは、以下のいずれにも該当する者である必要があります。
・協定をする者を選出することが明らかにして実施される投票・挙手等の方法による手続きにより選出された者であること
また、「意見を聴く」というのは、あくまでも意見を求めているに過ぎず、「同意をする」だとか「協議をする」といったところまで要求しているものではありません。
仮に労働組合より協議を求められ、または意見書に記載された意見が当該就業規則に全面的に反対するもの、特定部分に関して反対するものであっても、就業規則の効力には影響を及ぼしません。
就業規則の不利益変更は既存の労働者にも適用できる?
就業規則を新規作成・変更する場合、就業規則が適用される既存の労働者の労働条件が不利益に変更になる場合も問題なく変更できるのか、ということが疑問となります。
例えば、新たに懲戒規定を規定しようとした場合、就業規則作成前に入社している労働者に新たな懲戒規定を適用させることができるのか、なかなか判断が難しいところです。ただし、労働者にとって不利益と考えられる変更であっても、内容に合理性があれば変更が可能と考えられています。労働契約法10条では、『使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする』と規定しています。
つまり、労働者にとって不利益な労働条件を一方的に変更することは許されていませんが、客観的に合理性が認められる内容であれば変更は可能である、ということです。実務的には、就業規則の変更により新しく不利益な義務を課する場合には、過半数労働組合それがない場合は労働者の大多数の賛成が必要と考えておいた方がよいでしょう。
労働基準法と就業規則はどちらが効力が強い?
就業規則に記載していれば、どんな規定でも会社のルールにすることができるのか、というと、そうではありません。
そもそも就業規則は、法令(憲法、民法、労働基準法等)または該当する事業場について適用される労働協約に反してはなりません。例えば、就業規則の中で労働基準法に違反する(労働基準法の基準に達しない)ような記載があった場合、その部分については無効となり、労働基準法に定める基準が適用されます。
また、就業規則で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分について無効となり、無効となった部分は、就業規則で定める基準によることと規定されています。
これらをまとめると、効力の優先順位は以下の通りとなり、左側に位置するものほど効力が強い関係となります。
就業規則は定期的な見直しと社員周知が大事
労働環境の多様化にあわせ、法改正に合わせた改訂をするだけに留まらず、会社と労働者がより働きやすいルールとなるように、就業規則を定期的に見直す必要性が高まってきています。就業規則は会社のルールを明文化したものであるため、配布や閲覧環境を整えるだけに留まらず、社員教育や入社時の研修等に説明の時間を設け、事前に労働者の理解を深めることで、「知らなかった」「聞いていない」といった労使間のトラブルを大きく減らすことが期待できるでしょう。
<参考>
労働基準・労働契約関係(厚生労働省)
就業規則作成・届出に関する FAQ(厚生労働省)
<関連記事>
就業規則を変更する前に知っておくべき手順と2つの注意点
※ 掲載している情報は記事更新時点のものです。
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